ファシリテーターとは?その必要性と役割を徹底的に解説!

昨今、会議などでファシリテーターの存在が重視されるようになりましたが、それらの場でファシリテーターにはどのような役割が期待されているのでしょうか。

また、ファシリテーターが存在することで会議などの主催者や参加者にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ファシリテーターに求められているスキルなどもあわせて解説していきます。

ファシリテーターとは?

まずはファシリテーターという言葉の基本的な意味を理解し、ファシリテーターとは何をする人なのかについて見ていきましょう。

ファシリテーターの意味を解説

ファシリテーターという言葉は、「促進する、容易にする、円滑に進める」といった意味を持つfacilitateという英単語が元になっています。
集団活動で物事がうまく進むようにかじ取りをすることを「ファシリテーション」といい、ファシリテーションをする人はファシリテーターと呼ばれます。

もう少し具体的に考えてみましょう。
IAF WorldやINIFACによると、ファシリテーターは公平な立場からより効率的に会を進めたり、物事を選択したり手助けを行う役割です。

各参加者がグループに貢献しながら議論を進められるよう、バランス感のあるリーダー役になったうえで、活動の目的を達成するようガイドすることが求められます。
つまりファシリテーターとは、参加者の発言を促したり意見を整理したりしながら、会議などの円滑な進行をサポートする役割を担った人物のことです。

会社などの組織で仕事を進める際には、考え方がそれぞれに異なる多様な人々の相互理解を図り、合意形成をすることで問題を解決しなければなりません
そこで、議論のかじ取り役を担うことで会議のパフォーマンスを向上させ、アジェンダを整えたり進行をサポートしたりしながら最終的にグループが独自の選択をするのをサポートするのが、ファシリテーターなのです。

ファシリテーターと司会との違い

ファシリテーターが司会と混同されることがありますが、両者に求められている役割は異なります。
一見するとどちらも中心的存在であることは共通していますが、司会は、参加者との会話のキャッチボールと時間管理やアジェンダ確認などをしながら会を進行する役割です。あらかじめ決められたシナリオに沿ったゴールまで滞りなく進行することが仕事で、参加者から少し離れた立ち位置にいることが一般的です。

一方でファシリテーターは、中心にあって司会のような中心的役割を行いません
必要に応じて参加者に発言を促したり議論の論点を軌道修正したりするなど、会議の目的を達成する道筋を築くといったことが役割です。

ビジネスにおいて大きな意思決定をする際、感情や論理がバランスよく融合し納得感のあるものでなければなりませんが、集団の意見を落とし込むことは容易ではありません。

そのためファシリテーターがサポートして最終的な意思決定へ導くことで本来の目標としたところへ着地することができます。概して一段高いところから俯瞰で見て、気づきや発言を促すことをサポートすることが本来のファシリテーションのかたちです。

なぜファシリテーターが必要なのか?

会議では、バックグラウンドや組織内での立ち位置が異なる参加者が集まるため、効率的に目的達成を目指すためには調整役が必要です。

たとえば、最近注目されているDXを社内で取り入れるようなケースを考えてみましょう。
企画部門やコンサルなどはデジタル化を推進することで業務が効率的になり、組織にポジティブな影響がもたらされると考えているかもしれません。
DXに関する知見も有していることでしょう。

一方で、実際に現場の業務を担っている部門では、新しい技術やプロセスの導入について現場の視点からの懸念を持っています
異なる部門間では損得や価値観が異なるため、物事を決めるプロセスが複雑になりがちです。

そこで、ファシリテーターが参加者の心情や実務的な懸念事項等をうまく調整しながら会議を進める必要があるのです。

新しいテクノロジーの導入を例に挙げましたが、他にも気候変動対策やダイバーシティ&インクルージョン推進、地政学的リスクなど、企業が対応すべき今日的な問題には複雑な内容も多く、問題解決にむけて議論する際には経営陣や問題に関連する担当者だけでなく外部の専門家など、多様な視点を取り入れる場面が増えています。

参加者の状況にあわせて議論する内容の専門性や議論のレベル感などを調整し、組織を俯瞰したときに最適な選択肢に導くためにも、会議でのファシリテーターの役割は重要と言えます。

また、ビジネスも複雑になっていると同時に人の多様性も複雑になってきています
従って、ビジネスにおける会議や場は、乗数的に複雑さを増しており、経済合理の側面と人間関係という側面が併存しているのです。

つまりは、複雑な業務遂行に加え、多様性のなかの人間関係を考慮せざるを得ない状況にあるということです。
そのため、明示的な合理性と暗示的な人情のずれから場の規範や雰囲気は複雑怪奇な内容になることは必然です。
二重構造がひどくなればなるほど「面従腹背」「忖度」「本音と建て前」が作用し、メンバーは場の空気に任せたり、場を荒らす意見をいうようになります。
ビジネスにおいて、二重構造のギャップをゼロにすることは不可能です。さりとてファシリテーターは二重構造のギャップをゼロに近づけるための緩衝材として必要なのです。

一般的なファシリテーターの役割

ファシリテーターの役割を、もう少し具体的に見ていきましょう。会議などで、ファシリテーターには次のような役割が求められています。

会議の責任者やオーナーとの関係作り

ファシリテーターはまず、会議の責任者やオーナーとの関係作りをする必要があります。
会議の運営に必要なタスクや求められる成果を把握し、ファシリテーターに求められる具体的な役割や責任について明確化したうえで、それらについてコンセンサスを形成することが大切です。
会議の責任者やオーナーのニーズを汲み取り、どのようなプロセスで進めてどの程度の成果を出すのかを設計し、あらかじめ合意を得ておきましょう。

大きなプロジェクトでは、一度の会議ではなく複数回の打ち合わせやイベントを経て結果に結びつけるのが一般的です。
会が終わるごとに会議の責任者やオーナーとあらためて意識のすりあわせを行い、ファシリテーションへの満足度についてフィードバックを得たうえで次回につなげていくこともポイントです。

グループプロセスを予測し、準備する

会議のなかで起こり得るグループプロセス(グループにおける参加者の発言や態度、参加者同士の関係性、感情など)を、参加者の顔ぶれからある程度予測し、準備しておくことも、ファシリテーターの重要な役割です。

問題解決や合意形成を行ううえで大切なのは、ファシリテーターがグループの文化や参加者の多様性を受け入れたうえで、オープンな対話へ参加を促すことです。

価値観や情報に対する処理の仕方が周囲と異なる人も積極的に巻き込んでいきます。そうすることで、会議の責任者やオーナーのニーズを満たす質の高い結果を導き出すことができます。

参加者について事前に情報を得ておくことで、議論や対話の「幅」を想定することも可能になります。
合意形成であれば「どのくらいコンフリクトが起きそうか」、討論であれば「どのくらい深い内容になりそうか」を想定し、議論のなかで提供できる情報をどのくらい準備するかを事前に確認しておきましょう。

また、会を開くための時間と空間の準備も必要です。会議の目的に合ったスペースや備品等の確保、限られた時間を効率的に使えるようなプログラムの作成などを行い、会を開くために適した環境を整えましょう。

参加しやすい環境の構築と維持

発言しやすい場を作ることも、ファシリテーターの役割の一つです。会議や研修などでは参加者が緊張してしまい、議論がなかなか活発にならないことがあります。

ファシリテーターが課題設定をしたり議論の入り口を提起したりするなど、参加者が意見を出しやすくなるようにすることが大切です。

そのために重要なのが、参加者との信頼関係を築くことです。
多様性を尊重したうえで、安心して参加できる環境の基礎を構築し、さまざまな意見やアイデアを受け入れることで参加者にとっての会議への参加の障壁を取り除くことがポイントです。

また、参加者の様子を観察したり意見を吟味したりして適切なフィードバックを提供するスキルも、参加型の環境を維持し参加者の当事者意識を醸成するためには重要です。

すべての参加者が積極的に発言できるように進行することも、ファシリテーターに求められる役割です。
少数意見であっても否定せず、相槌を打ったり興味があるという態度を示したりすると、異なる見解を持つ参加者も発言しやすくなります。
グループ内において対立や緊張が生じる要因を理解して適切に対処することで、意思決定のサポートをしましょう。

また、参加者の発言を要約したり、検討が必要な点を反復したりすることで、ほかの参加者の情報処理を助けたり理解をサポートしたりすることも期待されています。

参加者の理解が高まれば高まるほど、創造的な思考が深まったりさまざまなアプローチからの視点が加わったりするため、より深い議論につながるのです。

結論を導き出す

ファシリテーターには、最終的にその場の議論をゴールに導く役割が期待されています。
参加者が議論しながら絞り込んでいった意見やアイデアをあらためて整理することで、最終的な結論に導きます。会議等で参加者全員の意見が一致することは少ないですが、それぞれにとって納得感のある結論になるかどうかは、ファシリテーターの手腕にかかっています。

また、会議によっては、必ずしも全員で合意を形成することを求められているわけではありません。いくつかの見解に対して意味付けをしたり、今後の課題点を挙げたりして会を終わらせることもあります。

出た結論に対して、ネクストステップをまとめることも大切です。次に誰が何をしなければいけないのか、会議の先を見据えたアクションを明確にし、参加者に行動を促すこともファシリテーターの役割です。



会議にファシリテーターを導入する3つのメリット

会議の目的はさまざまですが、ビジネスにおけるファシリテーターの存在は、会議の品質を向上させ、効果的な意思決定や問題解決を促進する重要な要素です。
ここからはファシリテーターのメリットを以下の3つのプロセスに分けてお伝えします。

意見を出す 発散させるプロセス

ディベートやブレインストーミングは、意見の出し合いを促進するための効果的な手法であり、共通しているのは意見の出し合いを通じてアイデアを生み出すことです。

意見の出し合いを行う際には、いくつかのルールや原則を守ることも重要で、ブレインストーミングでは、批判や制約を排除し、自由な発想を促すことが求められ、ディベートでは、相手の意見を尊重し、議論のルールを守ることが求められます。

ゲームと同様にいくつかのルールのもとでスタートします。そのとき論争可能なものであるとか、制限時間を決めるなど、参加者の立場を明確にし、論点がわかりやすく簡潔に意見を出せるようにすることが重要です。
こうすると批判も賛成のアイデアも浮かびやすくなります。これらの要諦を以下にまとめてみました。

・テーマは論争可能なもの

賛成か反対どちらかの意見にくっきり分かれるテーマを選ぶことで、意見がわかりやすくなります。なるべく正反対の意見が出るようなテーマがよいでしょう。

・制限時間を決める 立論や反対尋問といった工程ごとに制限時間を設定しておくことで、簡潔にまとめるよう促します。

・理由や根拠と共に主張する 意見を述べる際は、客観的なデータと自身の意見を結びつける理由が必要です。

・発言の記録をとる ディベートでは議論の応酬が短時間で展開されるため、記録がなければそれぞれの主張をきちんと理解することができません。

このように意見を出すことは、新たなアイデアを生み出すために欠かせない要素です。これらの手法を上手に活用し、創造性豊かな環境を作り出すことが、企業や組織の発展につながります。

意見をぶつけあうプロセス

ディスカッションは「議論」や「討論」を思い浮かべる人も多いと思いますが、「徹底的に打つ・たたく」という意味で議論を徹底的にたたきあげることが、本来のディスカッションです。

ディスカッションを成功させる3つのポイント

  • テーマとゴールを明確にする
  • ディスカッションのプロセスを構築する
  • 議論の流れをサポートする役目を作る

では一つずつ見ていきましょう。

テーマとゴールを明確にする

まずはテーマとゴールを明確にしたうえで何について話しあうのか、そしてゴールが何なのか、開始時に「本日のテーマ」として議題を共有し、「〇時までにXXを決定します」とあらかじめ宣言しておきましょう。

ディスカッションのプロセスを構築する

ディスカッションでは、プロセスをあらかじめ決めておくことも成功の秘訣です。
たとえば資料は事前に配布されるのかその場で提示されるのか、発言は挙手で行うのか自由発言なのか等を決めておくだけでもディスカッションを効率的に進められます

議論の流れをサポートする役目を作る

ファシリテーターは交通整理のような役割で、ディスカッションに参加した人たちの意見をよりわかりやすく伝えたり、発言を促したりします。
このほか、話題がテーマからが逸れたら軌道修正する、ディスカッションが長引かないようタイムキープするなどがあります。

また、参加者同士で論点がかみ合っていないこともしばしば、言葉の定義をそれぞれ異なる意味で使っているような場面がありますが、ファシリテーターの立場からそれらを整理し、定義の認識やとくに優先すべきポイントを絞り込み、論点がずれることを防ぎます

しかし、感情的にかみ合っていない場合は、情報や言語を整理するのではなく、感情を整理することがファシリテーターの役割です。

感情の整理とは、ファシリテーターが参加者の感情を直接的に指摘したり言語化したりするのではなく、質問や問いを丁寧に繰り返し、参加者自身が感情的にかみ合っていないことを気づかせることです。
感情の整理の方法は、当事者同士が問いや質問を活用したアプローチで、当事者自身の気づきを促します。

意見まとめる

ディスカッションや合意形成は、感情的な納得感と論理的な納得感のバランスが重要です。
論理的に水も漏らさない結論を導き出しても、感情的な納得がなければ、合意形成をしたとしてもその後の行動に移ることができません。
逆に勢いだけで中身が空っぽ、抽象的で曖昧な総論では論理的な納得感はおろか、感情的な納得感や高揚感すらもなく、いざ行動に移る段階で各自が何をすればよいのかが不明になってしまいます。

つまり、意見をまとめる段階において無駄に時間を費やしても意味がなく、感情的な納得感と論理的な納得感を時間的制約のなかで、どのようなかたちで合意するかが重要です。

この段階で重要なのは、スピード感とある程度の妥協と譲歩のうえでの意思決定であることを理解しましょう。
ありがちな失敗例として、参加者の意見の共通部分のみを抜き取って、それを総意にしてしまうことです。
そのときの意思決定はそのときのものとし、重大な決定であってもあまり固執せず、実行段階で不備が見つかれば再度修正をかければいいといった具合の温度感で進めるといいかもしれません。

参加者が安心感を持ちながら議論に参加できる

会議などの場では、発言力のある人や立場の高い人に遠慮してなかなか意見を述べられない参加者もいます。
しかし、ファシリテーターがいることでそのような参加者にも目がむけられ、より多くの意見を引き出すことが可能です。

多くの意見が出る会議というのは、参加者がよい心理状態であるからこそ発言をしやすくなるという側面もあります

議論の当事者ではなく客観的な第三者としてファシリテーターが会議の場にいることで、「周囲と異なる意見でも発言していい」という場の雰囲気を作ることができ、多様性のある議論を形成しやすくなる、というメリットが生じるのです。

議論がうまくいかない理由

会議前

ファシリテーターがいても議論がスムーズに進まない原因の一部は、会議前の準備不足にあります。

たとえば、議題について参加者が充分な情報を得ていなかったり、知識が不足していたりすると、議論はうまくいきません。
参加者の専門領域によって議論のテーマやその背景に関する理解に隔たりがあったり、立場が異なるためにそれぞれちがうゴールを見ていたりすることもあり、会議前に情報格差をなくすなどの配慮が必要です。

そのためにも、議論のテーマ等に対しファシリテーターが事前に把握しておくことが重要です。
そのうえで、会議中の対立や心情の変化等も想定して事前にいくつかのシナリオを作成し、それに沿ってアジェンダを設定しておくことが成功のポイントなのです。

会議中

では、会議中に議論がうまく進まない理由はどのようなものでしょうか。
それは、議論の内容が複雑であるために参加者が同じ理解のもと話を進めることができておらず、議論がかみ合っていないという状況です。

言葉の定義が曖昧だったり、論点が整理できていなかったりするために、論理的な討論が行われていないのです。

議論の焦点が明確になれば、本質的な対立がどこにあるのかが見えてくるため、より議論を深めたり見方を変えて解決につなげたりすることができるようになります。

参加者の議論の内容や様子からどこにずれがあるのかをファシリテーターが把握し、曖昧性を排除したり論点によりフォーカスした議論を促したりすることが必要です。

終わり方

見落とされがちですが、会議の終わり方も重要です。
会議の結論は、一部の人が押しつけたりファシリテーターが無理やりまとめたりしたものではなく、参加者それぞれが議論したうえで導き出したと思えるものでなければなりません

ファシリテーターはそれまでの議論を踏まえて、ある程度は参加者に先導を任せつつ、結論をまとめる役割に徹したり、次回につながる問いかけをするとよいでしょう。

ただし、結論も出ていないのに会を無理やりに終わらせるのはよくありません。納得できる落とし所がないにもかかわらず無理やり終わらせると、参加者に不満やわだかまりが残ってしまいます。結論が出ない場合は、すぐに次回以降の話の流れを考えて、次回の会議を設定しましょう。

全員が結論を導き出すプロセスに納得できるような方法で会を終わらせる必要があります。そのためには、ファシリテーターとしての経験値も非常に重要になります。

ファシリテーターに必要なスキルとコツ

ファシリテーターを務める際には、どのようなスキルが必要でしょうか。また、会議をファシリテートするコツもあわせてみていきましょう。

目的設定と設計力

ファシリテーターは、会議の目的を設定することが求められます。
そして、グループが目的を達成するためには時間と空間の準備が必要です。そのため、まずは適切な場所を手配し、参加者を選定することが重要です。

また、タイムマネジメントもしながら会議の進行ができなければいけません。

参加者や発言者をある程度ファシリテーターの裁量で決めることができる場合、誰にどの段階で発言を求めれば有意義な話し合いができるのか、といった視点も求められます。目的達成をサポートするために、会議の雰囲気作りをすることも求められているのです。これらはいわば、会議の設計力とも言えるスキルです。

コミュニケーション力と議事進行力

ファシリテーターには進行力も必要です。そのためには、さまざまな立場や価値観の人とコミュニケーションをとることのできるスキルが求められています。

参加者が初対面であまり関係が築けていない場合や、意見の対立が生じやすい場面である場合などには、自己紹介や簡単な交流などアイスブレイクを導入することで場の空気を穏やかにするような工夫も必要です。
ファシリテーターには、決められた時間のなかで議事を適切に進行していくことができる経験値も期待されているのです。

発言を整理して相違点を視覚化する、分析・図解力

多くの意見を整理したり、深まった議論を視覚化したりすることも、ファシリテーターに求められるスキルです。

会議は合意形成が目的の場合もありますが、意見の相違を見つけたり課題を洗い出したりすることが目的の場合もあります。

必ずしも何らかの結論を出すことが求められているわけではなく、当初設定した目的に到達するためにはどのような方向でまとめていけばいいのかを見極める力が必要とされています。

そこで、ファシリテーターには、議論の内容を集約して会議の成果を視覚化できる力が必要となるのです。

プロセス(過程)についての対話を促す観察・介入力

ファシリテーターには、プロセスについての対話を深める気配りも必要です。
会議等の場ではどうしても結論が重視されてしまいがちですが、実際にはそこに至るまでの過程に、大切な示唆があったり課題が隠れていたりするからです。

かたちになっていない事柄や抽象的な事柄も言語化することで、より精度の高い議論ができる可能性もあるため、参加者の様子を観察しながら適切な介入を行い、プロセスも重視した議論を進めることもファシリテーションに必要なスキルと言えます。

ファシリテーターとして会議に参加する場合の注意点

では、実際にファシリテーターの役割を果たさなければいけない場面ではどのようなことに気をつけたらよいのかを考えてみましょう。

自分の意見を主張しない

一般的には、議論に参加する際には自分の意見を主張することが重視されます。

しかし、ファシリテーターとしての役回りでは、基本的には自分の意見を主張しない方がよいでしょう。
ファシリテーターが偏った意見をいってしまうと、ほかの参加者が異なる意見をいいにくくなってしまうからです。
つまり、その会議には結局ファシリテーターがいないのと同じになってしまいます。

できる限り主観や意見は含めずに、全体を俯瞰しながら進行することに集中しましょう。

サポートに徹する

ファシリテーターとして会議に参加する際は、サポートに徹するようにしましょう。

参加者の意見や考えをまとめて論点を整理したり意思決定の方向性を形作ったりするのがファシリテーターの役割です。自分の意思で最終的な決定を変えてはいけません。

ただし、ファシリテートをするからといって意思決定の場に参加してはいけないわけではありません
ファシリテーターには、議論をどのような方向性に動かしていくかについて大きな裁量があります。
上手に進行し、適切なタイミングで議論に介入することで、自らの意思に沿って議論の流れを形成することも可能です。

会議への介入と放任のバランスも重要

議論への介入と放任のバランスも重要です。ファシリテーターが議論に介入すればするほど、会議の方向性を参加者ではなくファシリテーターが作るかたちになってしまい、自分たちで結論を出したという納得感を参加者が得にくくなります

一方で、まったく介入せずに放任すると、議論が盛り上がらなかったり、ただの会話になってしまい何も決まらなかったりする可能性があります。
また、それぞれの意見の対立が大きくなり参加者同士の関係性が悪くなってしまうかもしれません。

介入と放任のバランスが非常に難しいからこそ、事前の準備が重要になるわけです。
シナリオを想定する際に合意形成の段階を小刻みにしてみるなど、さまざまな状況に対応しやすいような計画を立て、うまく会議への介入と見守りを両立できるようにしましょう。

また、良質なコミュニケーションができれば結論に至らなくても、内容を振り返ることができます。
最終的には、ファシリテーターがいなくても参加者が自分たちで議論できるような状況を作ることが、ファシリテーションの理想形です。

具体的な会議の進め方

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アイスブレイク

アイスブレイクは一般的には、相互の緊張をほぐしたり、ウォーミングアップなどの目的で用いられます。

従って、会議の目的や内容にあわせて、アイスブレイクのツールを揃える必要があり、勝手知ったる人たちの会議で、アイスブレイクは不要です。初顔合わせなどのシーンに用いると効果的です。

グランドルールの設定および会議の目的・目標・手順を確認

“一人一回は意見はいいましょう”のような会議の作法みたいなものは、ファシリテーターを入れる必要があるテーマではありません。ここでいうグランドルールは、役割や立場といった、参加者のこの場の役割を明示します。

たとえば、役員会のファシリテーションにおいて、現場の社員からの提言などに対し、評価や評論になることが多く見られます。この場合のグランドルールは、指摘や評価だけではなく、解決も提示するなど、普段とはちがうこの場の役割をファシリテーターから参加者(役員)に提示することです。

ブレインストーミング

ブレインストーミングは、グループでアイデアを自由に生み出すための手法で、集団思考や集団発想法とも呼ばれます。個々のアイデアの評価や批判を行わずに、多くのアイデアを受け入れることで、新たな発想の可能性を広げることができます。参加者が自由に意見を出し合い、アイデアを共有することで新たな発想を生み出します。そのためにはアイデアが受け入れられる環境を整えることが大切です。

ブレインストーミングを行う際は、10人以下の複数人が集まって行うことが一般的ですが、1人でアイデア出しを行う場合もブレインストーミングと呼ばれています。個人の場合も集団と同じく、思いついたアイデアを紙などにどんどん書き出していき、最終的に精査するかたちをとります。

またアイデア出しだけでなく、アイデア・発想の整理に役立てることができるのもポイントです。アイデア・発想を可視化し、関連付けカテゴライズすることにより、より具体的なアクションを策定することができます。

KJ法(親和図法)

KJ法は、複雑な問題を解決する際に有用なツールですが、初心者や新入社員にとっても理解しやすい手法でビジネスや教育、医療など、さまざまな分野で活用されています。アンケート調査やインタビューなどの方法で収集したデータを整理していき、具体的な問題をつきとめ、その解決策を見つけるために使用されます。KJ法の特徴は、参加者全員がアイデアを出し合い、それをグループ化して整理することにあります。 KJ法を実践するためには、まず具体的で明確なテーマを設定し、関連するデータを集める必要があります。データを単位化し、一行見出しを作成します。次に、カードを小グループ化し、関連するアイデアをまとめます。その後、小グループを概念化し、共通の要素を抽出します。最後に、中グループ化を行い、より大きなカテゴリーにまとめます。このようにして、問題の構造を可視化することができます。

合意形成

最終段階の合意形成にむけて、いくつかの重要なポイントをまとめます。

その前に、合意形成はそのときの最善策であって、実行に移した結果うまくいかなければ、また議論して修正を加えます
とはいえ何度も修正しないためには疑問を残さないことが重要です。
関係者が意見を述べる際に、なぜそのような意見を持つのか、どのような根拠や経験があるのかを明確にすることで、各々の意見の背後にある考え方や価値観を理解することができます。

次に、論点を絞り込みます。議論が広範囲に及ぶと、意見が分散してしまい合意形成が難しくなります。
そのため、関係者とともに議論の焦点を明確にし、具体的な問題や目標に絞り込むことが必要です。
これにより、議論が具体的な方向性を持ち、合意形成がスムーズに進められます。これは議論の方向性を示唆することでも重要です。
関係者が意見を述べる際に、他の関係者との共通点や相違点を示し、議論を重ねましょう。
また、具体的な解決策や提案を提示することも大切なことです。
議論の最終段階では、関係者が合意形成にむけて具体的な行動や決定を行う必要があります。
その際には、質問形式で結論を共有し、各々の意見を再確認しますが、これにより、関係者の納得感や責任感を高め、合意形成を確固たるものとすることができます。

まとめ

この記事では、ファシリテーターの役割について見ていきました。
ファシリテーターがうまく機能し、良質なコミュニケーションが実現している会議では、意見の対立があったり議論が停滞したりしても、振り返って打開策を探ることができます。

また、参加者それぞれにファシリテーションのスキルがあれば自分たちで議論の流れを作ることは可能であり、必ずしもファシリテーターの役割を特別に置かなければいけないわけではありません。
むしろ、これからの時代に対応するためには一人ひとりがファシリテーションスキルを保有していることが大切でしょう。

今後の組織改革や人材育成についてお悩みがあれば、ぜひソフィアにご相談ください。


よくある質問
  • ファシリテーターの役割とは何ですか?
  • 参加者に発言を促したり議論の論点をまとめたりするなど、司会よりも積極的に会議の中に入っていくことが求められます。

    会議の目的を達成する道筋を築く役割を担っているという点で、ファシリテーターは司会と大きく異なります。

  • なぜファシリテーターが必要なのですか?
  • ビジネスと人財多様性を活かすことでイノベーションや高い成果を掴むことができます。しかし多様性は共創することできなければ混乱を招くだけです。ファシリテーターは、多様性を十二分に活かすため媒介です。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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