BtoB営業とは?BtoCとの違いや必要なスキル!「売る仕組み」の再構築の仕方について解説

BtoB営業の現場で、「以前のようには売れなくなった」「昔のやり方が通用しなくなった」といった声をよく耳にします。その背景として、市場環境が大きく変化し、BtoB営業は従来以上に組織的・戦略的なアプローチが求められているのです。そのため解決が難しく、「どこから手を付ければよいか分からない」と感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、 BtoB営業の課題や必要なスキルなどを解説します。また商材のライフサイクル(プロダクトライフサイクル)に焦点を当てて営業戦略を見直すことで、売る仕組みを再構築する方法を紹介します。BtoB営業で伸び悩む企業の営業部門長やマネージャーの方々にとって、何かしらのヒントになれば幸いです。

BtoB営業とは?

BtoB営業とは、企業(法人)同士で製品やサービスを売買する営業活動のことです。

BtoB営業では1件あたりの取引金額が大きい反面、顧客数は限定されがちです。また、商談から成約までに時間がかかり、複数の部署・担当者が関与するのが特徴で、製品・サービスの利用者(現場担当者)と最終的な決裁者(役員など)が異なるケースも一般的です。

BtoB営業とBtoC営業との違い

BtoB営業とBtoC営業は、対象となる顧客や取引のプロセスにおいて大きな違いがあります。BtoB営業は商談から契約に至るまでには現場担当者や管理職、経営層といった複数の関係者が関与し、稟議や承認などを経て進むため、意思決定のプロセスは複雑で長期化しやすい特徴があります。

さらに契約後も継続的なフォローや改善提案を重ね、顧客の事業課題解決に寄り添う姿勢が求められる点も重要です。つまり、BtoB営業は単なる売買にとどまらず、顧客企業にとってのパートナーとして長期的な信頼関係を築くことが前提となるのです。

一方でBtoC営業は、対象が一般消費者であるため1件あたりの取引金額は小さいものの、顧客数は膨大です。購買の意思決定者は基本的に本人ひとりであり、購買までのスピードも速い傾向があります。

また、購買行動には感情や直感が大きく影響するため、商品のデザインや価格、広告の印象が意思決定に直結しやすいといえます。BtoCの場合は商品購入そのものがゴールとなることが多く、購入後のフォローや追加提案は限定的であり、必ずしも次の購買に結びつくわけではありません。

このように、BtoB営業は「信頼関係と課題解決への伴走」が中心であるのに対し、BtoC営業は「数の多さと購買決定の速さ」に特徴があると言えるでしょう。

BtoB営業の主な特徴

BtoB営業は、単なる商品やサービスの販売にとどまらず、企業同士の長期的な信頼関係の構築を前提としています。そのため、成約に至るまでのプロセスや契約後の関係性において、独自の特徴があります。

成約までに時間がかかる

先述したように、BtoB営業では、契約に至るまで長期間を要するのが一般的です。企業は投資対効果を重視し、自社の利益に直結するかを慎重に判断するため、商談開始から社内稟議・決裁を経て契約までに時間がかかります。

関与者が多い組織的な意思決定

商談の相手は営業担当者だけではなく、技術部門や経営層など複数のステークホルダーが関与します。その過程では社内意見の調整が必要となり、提案内容の修正や追加説明を求められるなど、プロセスは複雑化します。

コンサルティング的な提案力が必要

顧客企業ごとに抱える事情や課題は異なるため、単なる商品説明だけでは不十分です。顧客の課題を深く理解し、最適な解決策を提案するコンサルティング的なアプローチが求められます。その分、一度契約に至れば他社へ乗り換えにくく、安定した取引関係を築きやすいのも特徴です。

契約後のフォロー営業が重視される

BtoB営業は成約がゴールではなく、契約後の継続的なフォローも欠かせません。定期的にヒアリングを行い、顧客の状況に応じた提案を積み重ねることで、追加受注(アップセル)や関連商材の提案(クロスセル)につなげ、長期的な関係性を強化していきます。

BtoB営業でよくある課題とは?

BtoB営業は長期的な関係構築を前提とするため、大きな成果につながる一方で、特徴ゆえの課題も多く存在します。ここでは代表的な課題を3つに分けて見ていきましょう。

新規開拓・フォローアップ不足

既存顧客対応や大型案件への注力により、新規開拓やフォローアップが後回しになるケースが少なくありません。短期的には成果が安定しても、長期的に新規顧客の流入が滞ることで、将来的な売上減少や成長停滞につながるリスクがあります。そのため、既存顧客との関係維持と新規顧客開拓のバランスを取る仕組みが必要です。

営業活動の属人化

経験豊富な特定の営業担当者に依存することで、その人が異動や退職をすると顧客関係やノウハウが途絶えてしまいます。また、個人の勘や経験頼みでは組織全体で成果を再現できず、安定した成績を残すのが難しくなります。属人化を防ぐには、顧客情報や営業ノウハウを一元管理・共有し、誰でも一定水準の営業ができる仕組みづくりが必要です。

部門間連携の不足

マーケティング部門と営業部門の情報共有不足も大きな課題です。見込み顧客の育成(ナーチャリング)や効率的なアプローチには部門横断の連携が欠かせませんが、KPIが統一されていなかったり顧客データが共有されていなかったりすると、せっかくのリードを活用できず商機を逃す恐れがあります。

BtoB営業の商材のライフサイクルと主な営業活動

製品・サービスには導入期・成長期・成熟期・飽和期・衰退期というライフサイクル(Product Life Cycle)の段階があります。BtoB商材の場合も例外ではなく、市場投入から成長、成熟を経ていずれ需要が頭打ちになり衰退期に至ります。

それぞれの段階で顧客層の性質やニーズは変化し、それに合わせて取るべき営業戦略も異なってきます。以下に各フェーズの概要と主な営業活動の違いを整理してみましょう。

導入期

製品を市場に出した直後の時期です。市場自体がまだ発展途上で需要も小さく、売上は大きくありません。まずは製品の認知度向上と市場の創出が最優先課題となります。営業活動では仮説を立てた上で見込み顧客へのアプローチを行い、フィードバックを製品開発に活かすなど試行錯誤を重ねる段階です。

成長期

製品・サービスが市場に受け入れられ需要が急拡大する時期です。売上・利益が一気に増大し、新規参入の競合も増えるため市場全体も拡大します。このフェーズでは競合に打ち勝つために製品改良やブランド確立を急ぎつつ、営業では成功パターンを定型化して高速に大量アプローチを仕掛けることが重要になります。

成熟期

市場の成長が鈍化し、売上や利益の伸びが頭打ちになり始める段階です。競合製品も出揃い顧客は新鮮味を感じにくくなるため、市場全体で価格競争が激化します。自社シェアを守り伸ばすには差別化による付加価値提供が欠かせません。営業活動では既存顧客一社一社に深く入り込み、個別ニーズに合わせて提供価値を最適化することで顧客の囲い込みを図ります

飽和期

成熟期の末期で、市場成長が止まり需要が飽和状態となった段階です(成熟期に包含される場合もあります)。売上ピーク後の横ばい状態で、各社シェア争いが続きます。大きな市場成長が見込めない中、営業は効率化や既存顧客からの収益最大化(アップセル・クロスセル)に注力するようになります。

衰退期

製品需要が減少に転じ、市場規模が縮小していく段階です。代替技術や競合サービスの台頭などにより市場そのものが衰退し、多くの企業が撤退を余儀なくされます。自社がこのフェーズに入ったと判断したら、営業戦略としては大きく二択です。事業ピボット(方向転換)を図って新市場へ活路を見出すか、あるいは現行事業の撤退を見据えてコスト削減と効率化を進めるかです。いずれにせよまず自社製品・サービスの置かれた立ち位置を正確に見極め、次の打ち手を判断する必要があります。

以上のように、商材のライフサイクルに応じて市場環境や顧客層は変化し、それに伴って営業活動の内容もシフトさせる必要があります。では具体的に、各フェーズでどのような営業スキル・組織・支援策が求められるのでしょうか。

BtoB営業の各フェーズで必要な営業スキルとは?

各ライフサイクルの段階ごとに、営業担当者に求められるスキルも変わってきます。以下に主なフェーズと重要なスキルをまとめてみました。

導入期:「開拓力」

未知の市場を切り拓く力です。市場を創造するこの時期には、仮説構築と検証を繰り返しながら顧客を開拓し、成功パターンを確立していく試行錯誤が求められます。ゼロから市場を作る粘り強さとフットワークの軽さが重要でしょう。

成長期:「基礎営業力」

営業の基本動作を大量に実行する力です。市場が急拡大する成長期には、導入期に見つけた成功パターンをもとに訪問・提案・クロージングなどの当たり前のプロセスをひたすら数多くこなすことが必要になります。言い換えれば体力勝負の側面もあり、基本に忠実な行動力が求められます。

成熟期:「密着力」

既存顧客に深く寄り添う力です。市場が飽和状態になる成熟期では、新規開拓よりも今いる顧客を逃さず囲い込むことが重要になります。顧客ごとの細かな要望に応える提案力や、自社内の関連部署を巻き込んでカスタマイズ対応を調整する力が必要です。単なる営業トークだけでなく、顧客企業の事情に合わせて柔軟に動ける調整力・対応力が問われるでしょう。

※衰退期に関しては、新規営業よりも事業転換や撤退判断が中心となるため、特定の営業スキルというより経営判断や効率的な顧客対応が重視されます。

BtoB営業の各フェーズで最適な営業組織の体制とは何?

製品ライフサイクルの推移に合わせて、営業組織の体制も臨機応変に変えていく必要があります。フェーズごとの最適な組織デザインの方向性を見てみましょう。

導入期

能力・経験のある少数精鋭チームを組成します。市場開拓に人的コストを投入すべき段階なので、選抜メンバーで小回り良く動ける体制が望ましいです。また、情報の分断を避けるためにマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスといった役割分担を敢えて設けず、単一のチームで一貫して顧客アプローチを行います。各メンバーが収集した顧客反応データはすぐにチーム内で共有し、組織全体で学習できるようにしましょう。

成長期

大量の人員投入と分業体制に切り替えます。市場拡大に伴い見込み顧客も増加するため、エントリーレベルの新人でも短期間で育成して現場投入し、人海戦術で顧客開拓を進めましょう。組織構造としてはマーケティング部署、インサイドセールス(内勤電話やメールでの見込み客対応)、フィールドセールス(外勤訪問営業)などに役割分担し、確立した成功パターンに沿って効率よく大量のアプローチを展開できる体制にします。

成熟期

営業人員規模を徐々に縮小・再編します。成長期ほど多数の新規営業要員は不要となるため、他事業への人員シフト等でチーム規模をスリム化しましょう。組織の編成も、地域担当制から主要顧客アカウント担当制に変更するなど、一社一社の顧客に寄り添い深耕できるよう再編成すると良いでしょう。より少数精鋭で密着度の高い営業ができる組織へと移行します。

衰退期(ピボット期)

さらに人員削減・統合を進めます。市場縮小に合わせ営業組織もコンパクトにまとめ、より少ない人員で効率的に動かせるよう組織統合を図ります。新規事業へのピボット(方向転換)を目指す場合は、人員の役割変更・再配置など大胆な組織改革も検討しましょう。撤退を選択する場合でも残存顧客対応は続くため、最小限の人数で既存顧客フォローを行える体制とし、不要な営業コストは徹底して削減します。

BtoB営業の各フェーズで求められるセールスイネーブルメント(後方支援)施策とは?

セールスイネーブルメントは、アメリカで提唱され始め、近年は日本でも注目されるようになった概念です。イネーブルメント(Enablement)は「有効化」といった意味を持ちます。簡単に言うとセールスイネーブルメントは営業における人材育成や、生産性を高める取り組みのことです。

営業担当が適した時期に適したスキルを発揮し、パフォーマンスを上げていくためには、プロダクト・ライフサイクルの各フェーズにおいてどのようなイネーブルメント施策(後方支援策)が必要となるのでしょうか。

導入期のセールスイネーブルメント施策

導入期においては、市場や企業情報の収集や、それを効率的に行えるツールの提供といった支援施策が欠かせません。見やすく整備された情報や、使いやすい情報収集ツールを活用することで、営業活動の精度を高めることができます。

ただし、情報を得るだけでは十分ではありません。営業担当がその情報をどう解釈し、どのように行動へつなげるかが重要です。そのためには、思考力を鍛えるトレーニングや、活動内容をチームで共有する仕組みを取り入れる必要があります。以下では、導入期に特に有効な施策を具体的に見ていきます。

思考トレーニング

プロダクトやサービスを開発するときは、まず市場を調査し、どの市場やどの企業がターゲットになるのかを明確にします。そして、その企業が抱える本当の課題を見つけ、その解決策として商品やサービスを作っていくのが一般的な流れです。

一般的には「開発部門が考え、営業部門はそれを伝える」という役割分担になりがちです。ですが、開発部門が最初に想定した内容が、そのまま顧客に合うとは限りません。特に導入期は、製品やサービスを市場に合わせて改善していく大切な時期です。

そのため営業担当は、用意されたセールストークを話すだけでなく、顧客の反応から本当の課題を見抜き、開発部門にフィードバックする役割も担う必要があります

また、顧客の声を丁寧に引き出してヒアリングし、目の前の事象を大きな視点で整理したうえで、製品やサービスにどう活かすかを考える力が重要です。もし営業担当にそのスキルが足りなければ、研修やロールプレイングなどのトレーニングで補うことが効果的です。

「活動の言語化と共有」を促す場の設定

情報収集したことや、営業活動を通して考えたこと、立てた仮説、失敗したこと、うまくいったことを共有できる場を設置しましょう。会議のような堅苦しい場ではなく、雑談形式の対話であったり、お互いに壁打ちしたりできる場を用意しましょう。オンラインであればグループチャットや社内SNSツールも活用しましょう。

成長期のセールスイネーブルメント施策

利益や収益が見込める成長期では、成功例のパターン化と、スピーディなアタックがカギとなります。後方支援施策としては、以下が適していると言えます。

営業プロセスの整備と浸透、運用

営業プロセスを整理し、浸透させることで、受注までのステップが明確になり、どのステップで何をしなければいけないのかを把握することができます。また、誰がどのプロセスでつまずいているのかも早期に発見することができるため、リカバリーも早く行うことができます。

営業プロセスが整理できたら、SFA(セールス・フォース・オートメーション)ツールなどを導入して運用していくことも有効でしょう。

営業マニュアルの作成・改定

どのような顧客にどのようなセールストークを展開するか、どのタイミングでどのような情報提供や提案をおこなったらうまくいくか等、ノウハウをまとめて、誰が見ても分かりやすく学べるようにしたものを作成しましょう。営業マニュアルは、営業担当のこれまでの経験が凝縮されているため、マニュアルそのものが会社の財産となるでしょう。また、マニュアルがあればエントリーレベルの人材にも効率よく教育を実施できます。

成熟期のセールスイネーブルメント施策

成熟期に行いたい後方支援施策は、以下の通りです。

各顧客実績の事例化と共有

顧客に合わせたサービス(プロダクト)のカスタマイズ実績の事例化と共有を行うことで、それぞれが抱えている顧客に対するカスタマイズ提案への気付きにつながるでしょう。分かりやすいコンテンツ(記事・動画)づくりの他、共有しやすい場と組織内の関係性の構築も必要不可欠です。

クロスセルのためのツール開発・情報収集

顧客単価の向上のためには、クロスセルが欠かせません。効率的なクロスセルのために、営業資料などのツールを作成しましょう。また、競合他社や顧客企業の情報収集もあわせて実施しておくとクロスセルを促進することができるでしょう。

営業スキルトレーニング

成長期に採用した営業担当は、かつての成功体験から、紋切り型のセールスになりがちです。従来の信念やルーティーンをアンラーニングし、個々の顧客に合わせたコンサルティングセールスを行えるよう、トレーニングの場を設計しましょう。

衰退期(ピボット期)のセールスイネーブルメント施策

衰退期においてピボットを選択した場合は、ピボットを狙う場合は、再び導入期に戻るため、導入期で行った「活動の言語化と共有」、「思考トレーニング」、「市場や企業情報の収集または収集ツールの提供」といった支援施策が必要になってきます。 加えて、かつての成功経験が通じないことも多くなるため、アンラーニングを促進していきましょう。

撤退を選択した場合は、下記の施策を実施します。

ITツールなどを利用した省力化

衰退期に入った商材や事業では、市場全体の需要が縮小しているため、大きな売上や利益の伸びは期待できません。そのため、新規開拓や大規模な投資にリソースを割くよりも、限られた人員と予算で効率的に営業活動を続けることが求められます

デジタルツールを導入して業務を効率化することで、人員を最小限に抑えつつも、必要な顧客対応を継続することが可能です。売上が大きく伸びない時期だからこそ、コストを徹底的に削減し、残存顧客への対応を持続可能な形で行うことが重要です。

まとめ

利益増大のためには、商材のライフサイクルを意識した組織設計や人材配置、活動とそれに対する後方支援が重要です。

従来のやり方が上手くいかないと感じた場合、まずは自社の商材がライフサイクルのどの位置にいるのかを把握しましょう。その立ち位置と現状の組織体制、マネジメントスタイル、営業担当のスキルなどがかみ合っているのか確認していく中で、改善箇所が見えてきます。

BtoB 売れる仕組みについてよくある質問
  • BtoB営業の主な手法にはどのような種類がありますか?
  • BtoB営業の手法には大きくアウトバウンドとインバウンドの2種類があります。

    アウトバウンド営業は自社から見込み顧客に積極的にアプローチする方法で、新規開拓の飛び込み訪問や電話・メールでのアプローチ、DM(ダイレクトメール)送付などが含まれます。特に電話やメールだけでなく、役職者宛ての手書きDMなども有効とされ、興味を引く工夫次第で反応率を高めることができます。

    一方、インバウンド営業は顧客側からの問い合わせや資料請求を促す方法で、オウンドメディア(自社ブログやホワイトペーパー)、ウェビナーや展示会出展などによって見込み客との接点を作り出します。質の高いコンテンツを提供し、興味を持った顧客が問い合わせてくる形を作るのがインバウンドの特徴です。

    加えて、既存顧客から追加受注を得るアップセルや関連製品を提案するクロスセルも重要な手法です。BtoBでは一部の優良顧客が売上の大半を占めることも多いため、契約後のフォローを通じてこうした機会を創出することが営業成績に直結します。

  • BANTとは何ですか?
  • BANT(バント)とは、見込み顧客の案件見極めに用いられるフレームワークで、以下の4要素の頭文字を取ったものです。

    Budget(予算): 顧客が購入に充てられる予算はあるか

    Authority(決裁権): アプローチしている相手は契約の決裁権を持っているか

    Needs(ニーズ): 顧客が自社製品・サービスに対して抱える課題やニーズは明確か

    Timeframe(導入時期): 顧客はいつまでに導入・解決したいと考えているか

    これらを事前に把握し評価することで、効率的に見込み案件を絞り込むことができます。たとえば「予算はあるが導入時期が来年以降なので優先度低」のようにBANTの観点で判断すれば、営業リソースを集中すべき案件を見極められるわけです。BtoB営業では限られた商談機会を最大限成果につなげる必要があるため、BANTを意識した案件管理が不可欠でしょう。

  • 営業活動の属人化を防ぐにはどうしたらよいですか?
  • 属人化を防ぐポイントは、情報共有と仕組み化に尽きます

    まず顧客情報や案件の進捗、提案内容などを営業チーム内でオープンに共有できるよう、SFA/CRMなどのツールを導入して一元管理することが有効です。例えば名刺管理や顧客データベースのサービスを活用すれば、担当者以外でも顧客とのやり取り履歴や属性情報を把握できます。これにより「誰が担当でないと分からない」といった状況を減らせます。

    また、営業プロセスやノウハウをマニュアル化し定期的にアップデートすることも大切です。ベテランの暗黙知を見える化して新人教育に活かしたり、成功事例を社内ポータルで展開して横展開する仕組みを作りましょう。

    さらに定期的なミーティングや社内勉強会で案件共有・ロールプレイングを行い、チーム全員で知識とスキルを底上げしていくことも有効です。こうした取り組みにより、「特定のエース営業だけに頼る」のではなく組織全体で顧客を支援できる体制が整い、属人化リスクを低減できるでしょう。

  • インサイドセールスとフィールドセールスの違いは何ですか?
  • インサイドセールスとフィールドセールスはいずれも営業職種ですが、その役割は異なります。

    インサイドセールスは主に社内から電話やメール、オンライン会議などで顧客アプローチを行う内勤型の営業スタイルです。新規リードへのアプローチや既存顧客のフォローアップをテレワークで担当し、見込み度の高い商談機会を創出する役割を担います。

    一方、フィールドセールスは外勤営業とも呼ばれ、実際に顧客先へ訪問して商談・提案・契約交渉を行う担当者です。インサイドセールスが育成した商談見込み客に対して、フィールドセールスが直接出向いて詳細提案し契約につなげる、というように分業するケースが増えています。

    端的に言えば、インサイドセールスは内勤での見込み客育成、フィールドセールスは外勤でのクロージングという違いがあります。ただし企業や商材によって分業体制は様々で、両者を一気通貫で担う営業も存在します。自社の営業効率を上げるには、自社商材や顧客属性に応じてインサイドセールスを活用するかどうか検討すると良いでしょう。

  • セールスイネーブルメントとは何ですか?
  • セールスイネーブルメントとは、直訳すると「営業有効化」で、その名の通り営業組織の生産性や効果を高めるための仕組み全般を指します。

    具体的には、営業パーソンへの教育研修、営業資料やツールの整備、営業プロセスの可視化と最適化、部門間連携の促進など、営業活動を裏から支援する取り組みがセールスイネーブルメントに該当します。アメリカで提唱され近年日本でも注目が高まっており、営業部門の人材育成専門チームを設けたり、営業支援ツールを積極導入するといった動きが増えています。

    一言で言えば、優秀な営業マン個人の力量に頼るのではなく、組織として営業力を底上げするための仕組み作りがセールスイネーブルメントです。本記事内でもご紹介したように、プロダクトライフサイクルの各段階に応じて必要となる支援策(情報提供、ツール、トレーニング等)を講じ、営業が最大限力を発揮できる環境を整えることが重要です。

    セールスイネーブルメントを推進できれば、属人化の解消や新人育成の効率化、ひいては営業ROIの向上につながるのではないでしょうか。

株式会社ソフィア

事業開発部 リーダー

三上 晃潤

人事部、広報部、経営企画部、情報システム部などにうかがい、企業によって異なる組織のお悩みや課題、お困りごとを聞き、解決するための提案をしています。