企業向け|DXレポートとDX推進指標で進捗を見える化する実践法
最終更新日:2026.03.24
目次
DDXの推進は「やっているつもり」で止まりがちです。経産省のDXレポートが示した課題と、改訂版DX推進指標(自己診断)を使えば、現状・ギャップ・次の一手を社内で合意し、進捗を継続的に見える化できます。本記事では大企業のDX推進部門・広報・人事が社内ポータルで展開できる実務手順を整理します。
経産省のDXレポートによるDXの現状と課題
DXレポートとは、経産省が2018年9月に公開した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』を指します。
経産省はこのDXレポートにおいて、約8割の企業が「レガシー(=時代遅れの)システム」を抱えており、DX推進ができていないこと、さらにこのレガシーシステムの保守運用に人材とコストがとられていることを明らかにしています(2018年9月時点)。このレガシーシステムこそがDXの足かせとなっており、企業もそれを理解している状況です。にもかかわらず、ほとんどの企業が今も変革に着手できていません。
さらに注目すべきは、「2025年の壁」という経済リスクでしょう。これは2020年現在でも多くの企業において今もなお解決できて極めて危険な状態です。
政府はほかにもDXに関するさまざまな資料を公表しているので、あわせてご覧ください。
- 企業IT動向調査報告書 2020
- デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会 第2回議事要旨
- Society5.0時代のデジタル・ガバナンス検討会 デジタルガバナンス・コード
- デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査
キーワードは「2025年の崖」
企業のシステムは特に大企業において刷新が行われず、そのまま複雑化、老朽化、さらに内部構造が見えにくくなるブラックボックス化が進んでいます(=レガシーシステム)。レガシー化したシステムは企業経営だけでなく日本経済にまで大きな打撃を与える大きなリスクがあることをご存知でしょうか。
デジタル技術が日々進化している一方で、レガシーシステムはDX推進を阻害するばかりか、企業の生産性を低下させ、コストを肥大化させています。実際、レガシーシステムに投下されている予算は9割を超え、レガシーシステムの運用・保守にも多くの人が割かれている状態です。そればかりか、DX推進が実現しないことで2025年以降には日本全体で年間最大12兆円という、今の3倍もの経済損失を生む可能性があると経産省が公表しています。それが、DXレポートで言及されている「2025年の崖」です。
DXレポートによる、DX推進を妨げる要因
経産省のDXレポートでは、企業のDXを妨げる要因が特定され、解説されています。
経営層が既存システムの問題点に気づいていない
約8割の企業が現在もレガシーシステムを抱えていることは上記で示したとおりですが、経営層にとってシステムの新旧は、さしたる問題ではないと思われがちです。システムの刷新には莫大なコストと時間がかかる上に、刷新後にどういった好影響があるかを見据えて経営層に進言できるようなDX人材が企業に存在しないことも要因となっているでしょう。そのため、大企業においてレガシーシステムの刷新が遅々として進まないわけです。
しかし現状、日本ではIT関連のコストのうち80%が、既存ビジネスの維持および管理に割り当てられています。これは「ラン・ザ・ビジネス(run the business)」と呼ばれており、2025年の崖への言及とともに問題として挙げられるようになりました。
本来であれば既存ビジネスへのコストは削減し、新たなビジネスを創出にコストを割くことがグローバル市場での競争を勝ち抜く鍵となるのですが、日本企業にその体力が残っていないのはラン・ザ・ビジネスが原因と言えます。
DXに対する経営層のコミットがない
レガシーシステム刷新の必要性を経営層が感じておらず、彼らがコミットしていない状態では、システム刷新は「誰のためでもない」ものと化してしまいます。そうなると現場からは「よくわからないことをやらされて負担が大きくなる」と抵抗が生まれ、もともと失敗しやすいDX推進は案の定失敗に終わります。レガシーシステムから脱却することで企業や社員にどんな影響があり、組織がどう変わっていくのかを経営層自らが描き、未来を示せないことには、DX推進は決して叶わないでしょう。
実際DX推進を行う際は、経営層の声を代弁し、DX推進を牽引するプロデューサーの存在が不可欠となります。
時間とコストがかかる
システムの刷新には非常に大きなコストと長期間の改修期間が必要です。さらに既存システムがブラックボックス化している以上、担当者が異動したり退職したりすれば改修が頓挫し、ビジネスそのものが立ちいかなくなるリスクも大いにあり得ます。さらに、たとえ経産省が警鐘を鳴らしているとしても、投資に見合っただけの効果を見出せるとは限りません。もし失敗すれば企業にとっては大きなダメージでしょう。これらを考慮するとどうしても二の足を踏んでしまう経営者も少なくなく、それがDX推進を妨げる大きな要因のひとつになっています。
ITベンダーとの関係に亀裂
これまでのシステム改修案件では企業がITベンダーに丸投げしてきた場合が多く、要件定義が不明確でトラブルが発生するケースも少なくなくありませんでした。しかし、DX推進の取り組みを経てユーザーたる企業とベンダー企業との関係性が変わってきています。開発手法も増え、既存の契約モデルでは対応できない場合も増えてきました。これらの背景からITベンダーと新たな関係を構築する必要があるものの、特に長年自社のITを特定のベンダーへ丸投げしてきた大手企業ではうまくいかずにDX推進の計画が頓挫するケースが多発しています。
DX人材の不足
DX推進は単に業務のIT化、デジタル化ではありません。DXとは、データやIT・デジタル技術を企業が活用し、組織や組織のビジネスモデルを変革し、価値提供の手法を根本から変えていくことを指します。しかし、この定義はおろか、データやIT・デジタル技術によって企業に何ができ、ビジネスをどう変革できるかを理解し、具現化し、実践できるようなハイパフォーマーの人材が不足しているのが日本の現状です。しかも日本のIT人材は「ラン・ザ・ビジネス」に手を取られ、新たなテクノロジーでの競争領域にシフトしきれていません。これは大企業のDX推進スピードの遅さから見ると顕著でしょう。DX推進を始めようと思っても、DXを理解し、自社を変革できるDX人材を確保できていないため動くに動けないというのが今の状態だといえます。
DXレポートが訴える、DX推進施策
以上のように、DXレポートは企業のDX推進を阻害する要因を挙げ、2025年の崖についても触れつつ警鐘を鳴らしています。ここからは、DXレポートが訴えるDX推進施策について触れていきます。
指標を見える化
まずは経営者自らがDX推進にコミットする必要があります。そのためには、自社のレガシーシステムにどんな問題があり、このままだと2025年にはどうなっていくか、そしてあるべき姿はどういったものかをしっかりと把握しなければなりません。
ここでは、経産省が公表している「DX推進指標」が役立つでしょう。これは、自社のDX推進の成熟度を自己診断できるツールであり、プロジェクトの進行による企業の経年変化も把握できます。以下のURLからフォーマットをダウンロード可能です。
https://www.ipa.go.jp/ikc/info/dxpi.html
DX推進システムガイドラインを策定
DX推進においては、どのような体制で進めるかという「体制のあり方」やどうやって進めていくかという「実行プロセス」を明示する必要があるでしょう。これは長期的かつ大規模なプロジェクトを立案し実行する際と同様です。これらを社内の経営層やDX部門、関連部門だけでなく経営者、取締役会、株主などとも共有し、理解を得るとともに、コーポレートガバナンスのガイダンスや、「攻めのIT経営銘柄」※と連動させることも必要です。
※「攻めのIT経営銘柄」とは、経済産業省が選定したデジタル技術を前提とし、ビジネスモデル等を抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に取り組む企業を意味します。
ITシステム構築におけるコスト・リスク低減に対応
コストを低減させるためには、不要なシステムを洗い出して刷新前に破棄しておくと効果的です。これによって刷新するシステムを軽量化できます。
またリスクについては、マイクロサービスを活用しながら改修を細分化することで、大規模化・長期化に伴うリスクを低減できます。マイクロサービスとは、これまでのように一枚岩でシステムを構築するのではなく、サービス単位でアプリケーションを組み合わせてシステムを作る方法です。柔軟性に優れ、ブラックボックス化を解消できるメリットがあります。
さらに、グループ会社や子会社と協働できる場合は別々ではなくすべての企業に共通で使用できるプラットフォームとしてのシステムを構築することで、コストを割り勘にできるというメリットもあります。
そして何より、刷新後のシステムが実現できるゴールをしっかりとイメージし、共有することで道に迷うことなく最短距離でDXを推進できるため、経営者やDXプロデューサーがきちんと先導しましょう。
ITベンダーとの新たな関係性の構築
DXという大きなシステム再構築や、昨今主流の開発手法となっているアジャイル開発にしっかりと合致した契約ガイドラインを締結できるよう、ITベンダーと協力体制を築いていきましょう。トラブル解決時の対応として、ADR(裁判外紛争解決手続)を活用することも手です。
また、これまでにないサービスを開発するなど、ITベンダーと共同でR&D の要素が強い開発を行う際には、「技術研究組合(産業技術に関する試験研究を協同して行うことを目的として、技術研究組合法に基づき設立された法人)」の活用検討も推奨されています。この技術研究組合は、研究内容に事業化の目処が立てば株式会社や合同会社へと改組できます。また逆に、複数の会社や技術研究組合に新設・分割することも可能です。さらにこの組織を解散し、組合員が研究成果を持ち帰って活用できるというメリットもあります。
DX人材の育成・確保
社内におけるDX人材の確保は、レガシーシステムのラン・ザ・ビジネスから人材を解放し、DX分野にシフトさせることで実現できるでしょう。また、DX人材を外部から採用したり、アジャイル開発・認定制度の導入によってDX人材の育成を行ったりすることも可能です。
もっとも大変なのは人と組織の問題
ここまではDX推進を妨げる外部要因を中心に解説してきましたが、組織内にも大きな要因があります。
DX推進に必要な人材(DX人材)は「プロデューサー」「ビジネスデザイナー」「アーキテクト」「データサイエンティスト」「UXデザイナー」「エンジニア」などが存在しますが、DX部門は業務部門を横断して動くことが多いことから管掌が難しく、さらに今挙げた役割の中には「組織(部門)や人に関する専門性を持った人材」が存在していません。
DX推進に必要なツールやシステム改修については、ITベンダーなど外部企業から助力を受けて推し進めることは可能です。しかしながら、デジタルで働き方やビジネスそのものを変えていくという困難なプロジェクトを達成するには、経営戦略と現場の業務を深く理解し、ツールや仕組みと人や業務をつなげていく、「組織のマネジメント」が重要になってきます。そして、外部企業からもたらされたテクノロジーと社内の人間とをつなげる、すなわち組織のカルチャーを変革していける人材は、日本国内ではまだまだ少ないというのが現状です。
ソフィアは、そんなDX推進の現場での組織風土改革の支援も行っています。どうぞお気軽にご相談ください。
経産省のDXレポートの概要
DXレポートが示すDXの現状と課題
DXレポートとは、経産省が2018年9月に公開した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』を指します。
DXレポートは、老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存ITシステムが、データ活用や迅速な業務・ビジネス変革を阻害する点に焦点を当て、企業と政策の双方に”行動”を促す報告書です。
なお現在は初版だけでなく、DXレポート2(中間取りまとめ)やDXレポート2.1(追補版)、DXレポート2.2(概要)など関連レポートが継続的に公開されています。
経産省はこのDXレポートにおいて、約8割の企業が「レガシー(=時代遅れの)システム」を抱えていることや、レガシーシステムがDXの足かせになっていると感じる企業が多いことを示しています(2018年9月時点)。
さらに注目すべきは、「2025年の崖」という経済リスクでしょう。レガシーシステムが足かせとなりDX推進が遅れることで、企業・産業全体の競争力に影響が出ると警鐘を鳴らしています。
こうした課題意識は、その後のデジタルガバナンス・コードやDX推進指標、DX認定制度など、経産省・IPAの一連の施策にもつながっています。
【読者向けメモ】DXレポート本文は、経産省のDX推進施策ページから最新版のリンクを辿れます。
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/20180907_03.pdf
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc3.0.pdf
DXレポート2・2.1・2.2の読み方と優先順位
結論から言えば、まずは初版DXレポート(2018年)で”問題設定(2025年の崖)”を理解し、そのうえで自社がつまずいている論点に応じてDXレポート2以降を参照するのが効率的です。
経産省のDX推進施策ページでは、DXレポート(サマリー/概要/本文)に加え、DXレポート2(中間取りまとめ)、DXレポート2.1(追補版)、DXレポート2.2(概要)が整理されています。
例えばDXレポート2.1(2021年8月31日公表)は、ユーザー企業とベンダー企業の関係が”低位安定”に固定されることで双方の競争力を削ぐ、という問題意識を提示し、産業全体の変革まで見据えた方向性を示しています。
DXを”社内最適のIT刷新”に閉じず、産業・エコシステムまで視野を広げたい企業は、2.1のエグゼクティブサマリから読むと理解が進むでしょう。
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dx.html
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dxreport2.1_honbun.pdf
キーワードは「2025年の崖」
企業のシステムは特に大企業において刷新が行われず、そのまま複雑化、老朽化、さらに内部構造が見えにくくなるブラックボックス化が進んでいます(=レガシーシステム)。レガシー化したシステムは企業経営だけでなく日本経済にまで大きな打撃を与える重大なリスクがあることを、ご存知でしょうか。
DXレポートでは、我が国企業のIT関連予算の約80%が現行ビジネスの維持・運営(ラン・ザ・ビジネス)に割り当てられ、変革投資へ資金・人材を十分に振り向けられていない点が課題として示されています。
さらに、ラン・ザ・ビジネス予算が90%以上を占める企業が約40%と大多数を占めるというデータも紹介されており、構造的に”攻めの投資”が生まれにくい実態が示されています。
また、レガシーシステムに起因するトラブルリスクの増大を前提に、レガシーシステムによる経済損失が最大で約12兆円/年にのぼる可能性があると推定されています。
2025年の崖と2026年以降の関係性
あります。2025年は”暦の区切り”であり、問題の本質は「技術的負債が積み上がり、変化に追随できない構造が企業価値を毀損する」ことです。
実際、経産省は”2025年の崖”を迎えた後も、レガシーシステムの現状把握と対策検討を目的とした委員会を設置し、総括レポートを取りまとめています。
いま問われているのは”2025年を過ぎたかどうか”ではありません。レガシーシステムを起点とするリスク(運用継続・人材枯渇・セキュリティ・データ連携・俊敏性低下)を、経営としてどう低減し、価値創造へどう転換するかです。
- https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250528003/20250528003.html
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/20180907_03.pdf
DXレポートによる、DX推進を妨げる要因
経産省のDXレポートでは、企業のDXを妨げる要因が特定され、解説されています。ここでは主な要因を整理してみましょう。
経営層が既存システムの問題点に気づいていない
約8割の企業が現在もレガシーシステムを抱えていることは上記で示したとおりですが、経営層にとってシステムの新旧は、さしたる問題ではないと思われがちです。システムの刷新には莫大なコストと時間がかかる上に、刷新後にどういった好影響があるかを見据えて経営層に進言できるようなDX人材が企業に存在しないことも要因となっているでしょう。そのため、大企業においてレガシーシステムの刷新が遅々として進まないわけです。
しかし現状、DXレポートでは、IT関連予算の約80%が既存ビジネスの維持および管理(ラン・ザ・ビジネス)に割り当てられている点が示され、変革投資へ振り向ける余力を奪っている構造課題として整理されています。
この構造課題は、単に予算配分の問題ではありません。『何を変えるDXなのか(ビジネスモデル/業務/組織文化)』『そのためにどのデータをどう使うのか』が腹落ちしていないと、現場は”怖くて触れないシステム”を温存し、結果としてラン・ザ・ビジネスから抜け出せなくなります。
だからこそ、後述するDX推進指標のような”共通言語”で、経営・事業・ITの認識を揃える取り組みが重要になるのです。
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/20180907_03.pdf
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-shihyo.html
DXに対する経営層のコミットがない
レガシーシステム刷新の必要性を経営層が感じておらず、彼らがコミットしていない状態では、システム刷新は「誰のためでもない」ものと化してしまいます。そうなると現場からは「よくわからないことをやらされて負担が大きくなる」と抵抗が生まれ、もともと失敗しやすいDX推進は案の定失敗に終わります。レガシーシステムから脱却することで企業や社員にどんな影響があり、組織がどう変わっていくのかを経営層自らが描き、未来を示せないことには、DX推進は決して叶わないでしょう。
実際DX推進を行う際は、経営層の声を代弁し、DX推進を牽引するプロデューサーの存在が不可欠となります。
時間とコストがかかる
システムの刷新には非常に大きなコストと長期間の改修期間が必要です。さらに既存システムがブラックボックス化している以上、担当者が異動したり退職したりすれば改修が頓挫し、ビジネスそのものが立ちいかなくなるリスクも大いにあり得ます。さらに、たとえ経産省が警鐘を鳴らしているとしても、投資に見合っただけの効果を見出せるとは限りません。もし失敗すれば企業にとっては大きなダメージでしょう。これらを考慮するとどうしても二の足を踏んでしまう経営者も少なくなく、それがDX推進を妨げる大きな要因のひとつになっています。
ITベンダーとの関係に亀裂
これまでのシステム改修案件では企業がITベンダーに丸投げしてきた場合が多く、要件定義が不明確でトラブルが発生するケースも少なくありませんでした。しかし、DX推進の取り組みを経てユーザーたる企業とベンダー企業との関係性が変わってきています。開発手法も増え、既存の契約モデルでは対応できない場合も増えてきました。これらの背景からITベンダーと新たな関係を構築する必要があるものの、特に長年自社のITを特定のベンダーへ丸投げしてきた大手企業ではうまくいかずにDX推進の計画が頓挫するケースが多発しています。
DX人材の不足
DX推進は単に業務のIT化、デジタル化ではありません。DXとは、データやIT・デジタル技術を企業が活用し、組織や組織のビジネスモデルを変革し、価値提供の手法を根本から変えていくことを指します。しかし、この定義はおろか、データやIT・デジタル技術によって企業に何ができ、ビジネスをどう変革できるかを理解し、具現化し、実践できるようなハイパフォーマーの人材が不足しているのが日本の現状です。しかも日本のIT人材は「ラン・ザ・ビジネス」に手を取られ、新たなテクノロジーでの競争領域にシフトしきれていません。これは大企業のDX推進スピードの遅さから見ると顕著でしょう。DX推進を始めようと思っても、DXを理解し、自社を変革できるDX人材を確保できていないため動くに動けないというのが今の状態だといえます。
DXレポートが訴える、DX推進施策
ここまでDX推進を阻害する要因を整理してきました。では、DXレポートが訴えるDX推進施策には、どのようなものがあるでしょうか。
指標を見える化
まずは経営者自らがDX推進にコミットする必要があります。そのためには、自社のレガシーシステムにどんな問題があり、このままだと何が起き得るのか、そしてあるべき姿はどういったものかをしっかりと把握しなければなりません。
ここでは、経産省とIPAが提供する「DX推進指標」が役立ちます。これは、自社のDX推進状況を自己診断し、関係者の認識共有や進捗把握につなげるツールです。
特に2026年2月の改訂により、デジタルガバナンス・コード3.0に基づき設問と成熟度レベルが見直され、企業価値向上をより意識した構成になりました。
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-shihyo.html
- https://www.meti.go.jp/press/2025/02/20260213001/20260213001.html
DX推進システムガイドラインを策定
DXレポートでは、DXを実現すべくITシステムを構築する上でのアプローチや必要なアクション、典型的な失敗パターンを示したガイドライン(DX推進システムガイドライン)を策定する方向性が示されています。
ITシステム構築におけるコスト・リスク低減に対応
コストを低減させるためには、不要なシステムを洗い出して刷新前に破棄しておくと効果的です。これによって刷新するシステムを軽量化できます。
またリスクについては、マイクロサービスを活用しながら改修を細分化することで、大規模化・長期化に伴うリスクを低減できます。
ITベンダーとの新たな関係性の構築
DXという大きなシステム再構築やアジャイル開発に合致した契約ガイドラインを締結できるよう、ITベンダーと協力体制を築いていきましょう。
DX人材の育成・確保
社内におけるDX人材の確保は、レガシーシステムのラン・ザ・ビジネスから人材を解放し、DX分野にシフトさせることで実現できるでしょう。
DX推進指標とは何か
DX推進指標は、経営者や社内関係者がDX推進の現状・課題に対する認識を共有し、アクションにつなげるための”自己診断”の仕組みです。自己診断を基本としつつ、あるべき姿と現状のギャップ、対応策の議論を促すことを目的としています。
DX推進指標はなぜ2026年に改訂されたのか
経産省とIPAは、環境変化を踏まえ、検討会の議論を経て2026年2月にDX推進指標を改訂しました。
改訂のポイントは、従来の「経営とITシステム」中心の構成を、デジタルガバナンス・コード3.0の認定基準/望ましい方向性に基づく構成へ見直したこと、成熟度を再定義したことです。
また、データ活用・連携、デジタル人材の育成・確保、サイバーセキュリティといった要素を重視する構成であることも示されています。
- https://www.meti.go.jp/press/2025/02/20260213001/20260213001.html
- https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2025/press20260213.html
DX推進指標とデジタルガバナンス・コード3.0との関係性
デジタルガバナンス・コード3.0は、経営者がDX経営を通じて企業価値を向上させるために実践すべき事項を整理した文書です。
同コードでは、課題ごとにKPIを用い、目指す姿(To be)と現在の姿(As is)のギャップを定量的に把握し、戦略を不断に見直す重要性が示されています。
改訂版DX推進指標は、このデジタルガバナンス・コード3.0に基づき、自己診断の設問と成熟度レベルが見直されました。つまり、DX推進指標は”コードの内容を、社内で議論し行動に落とすための実務ツール”として位置づけると理解しやすいでしょう。
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc3.0.pdf
- https://www.meti.go.jp/press/2025/02/20260213001/20260213001.html
DX推進指標はどのように活用すればよいか
経産省は、DX推進指標の活用方法として①社内での認識共有、②次のアクションの議論、③進捗の把握の3点を挙げています。毎年診断することで経年変化を把握し、進捗管理に活用できます。
またIPAは、自己診断フォーマットに現在の状況と3年後の目標を入力し、関係者が集まり議論しながら記入することを推奨しています。
おすすめの運用手順は、準備→診断→設計→運用(レビュー)→年次更新の流れです。Excel入力を目的化させず、差分が大きい項目を3〜5個に絞ってアクションとオーナーを決めると、実行に繋がりやすくなります。
なお、IPA分析(2024年提出分)では成熟度が低位に偏り、全社戦略に基づく実施まで到達できていない企業が多いことが示されています。指標を”全社合意の装置”として回す設計が不可欠です。
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-shihyo.html
- https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/about.html
- https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/tbl5kb0000007nt4-att/dx-suishin-report2024-gaiyou.pdf
DX推進指標はどのように提出し何のメリットがあるのか
提出は、指定の様式をダウンロードし、DX推進ポータルから行います。改訂版フォーマットは2026年4月3日から受付開始予定で、現行のVer2.4で提出する場合は2026年4月2日までに提出完了が必要です。
提出メリットとして、経産省は①日本政策金融公庫による金利優遇(中小企業向け)、②DX認定制度の基準の一部を満たす、③ベンチマークレポートの無償提供、を挙げています。
大企業にとって特に実務的なのは③のベンチマークです。自社の現在地を相対比較できると、投資判断・重点テーマ選定・社内説明(なぜ今なのか)の説得力が上がります。
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-shihyo.html
- https://www.ipa.go.jp/digital/dx-suishin/about.html
DX推進指標とDX認定制度・DX銘柄の違い
DX推進指標は自己診断ツールであり、DX認定制度は「情報処理の促進に関する法律」に基づき、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。
またDX銘柄は、上場企業の中から、企業価値向上につながるDX推進の仕組みを構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業を選定する取り組みです。
おすすめの考え方は、まずDX推進指標で社内の現状と課題を可視化し、必要に応じてDX認定の取得やDX銘柄等の外部評価へ繋げる、という順序です。
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-nintei/dx-nintei.html
- https://www.meti.go.jp/press/2025/04/20250411002/20250411002.html
- https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-shihyo.html
DX推進指標をKPIとしてどう設計・運用すればよいか
DX推進指標は”そのままKPI”にもできますが、より効果を出すにはKPIを二層に分けるのがおすすめです。
第一層は、DX推進指標の成熟度(現在値・目標値・差分)。第二層は、重点テーマに紐づく先行指標(データ連携率、育成受講率、監査実施率など)と遅行指標(リードタイム短縮、顧客体験指標、収益性など)です。
デジタルガバナンス・コード3.0でも、KPIによりAs is/To beのギャップを把握し、戦略を不断に見直す重要性が示されています。点数化が目的化しないよう、必ずアクションと成果に接続しましょう。
DX推進指標を社内ポータルで展開するにあたって最初に始めること
社内ポータル担当(DX推進部門・広報・人事)が担うべき役割は、指標を”見える化”するだけでなく、理解と行動に転換できる情報設計にすることです。
弊社ソフィアの調査では、従業員数1,000人以上企業の回答者の79%が「社内コミュニケーションに問題がある」と回答しました(フル_IC実態調査2024_材料、2024/8/21-9/17、n=496)。また「取り組みの必要性・重要性について現場から十分理解を得られている」は10%にとどまり、推進側と現場の認識ギャップが示唆されました。
同調査では、経営目標・戦略を「十分把握している」従業員が8%、「十分共感している」が9.9%と、メッセージが届いても腹落ちしにくい状況も示されています。
この状態でDX推進指標の結果だけを掲示しても、現場は動きません。ポータルでは次の3点をセットで運用してください。
・Why:なぜ今この重点テーマなのか(外部環境/経営課題/リスク)
・What:DX推進指標の”差分”と、今期の重点テーマ(3〜5個)
・How:現場が今日からできる行動(手順、FAQ、相談窓口、成功事例)
運用リズムは、フロー情報(直近の進捗・イベント)とストック情報(指標・方針・FAQ)を分けると安定します。なお弊社ソフィアの調査では、社内広報の効果測定を「十分実施している」企業が15%にとどまり、PDCAが回りにくい実態も示唆されました。まずはアクセス解析やアンケート等で最低限の効果測定から始めるのが現実的です。
もっとも大変なのは人と組織の問題
ここまではDX推進を妨げる外部要因を中心に解説してきましたが、組織内にも大きな要因があります。
DX推進に必要な人材(DX人材)は「プロデューサー」「ビジネスデザイナー」「アーキテクト」「データサイエンティスト」「UXデザイナー」「エンジニア」などが存在しますが、DX部門は業務部門を横断して動くことが多いことから管掌が難しく、さらに今挙げた役割の中には「組織(部門)や人に関する専門性を持った人材」が存在していません。
DX推進に必要なツールやシステム改修については、ITベンダーなど外部企業から助力を受けて推し進めることは可能です。しかしながら、デジタルで働き方やビジネスそのものを変えていくという困難なプロジェクトを達成するには、経営戦略と現場の業務を深く理解し、ツールや仕組みと人や業務をつなげていく、「組織のマネジメント」が重要になってきます。そして、外部企業からもたらされたテクノロジーと社内の人間とをつなげる、すなわち組織のカルチャーを変革していける人材は、日本国内ではまだまだ少ないというのが現状です。
ソフィアは、そんなDX推進の現場での組織風土改革の支援も行っています。どうぞお気軽にご相談ください。
まとめ
DXレポートが示したリスクと課題は、「2025年の崖」という言葉のインパクトだけで終わらせず、今のアクションに落とし込むことが重要です。
2026年改訂のDX推進指標は、デジタルガバナンス・コード3.0に基づき、企業価値向上をより意識して自己診断とアクションをつなぐ設計へアップデートされています。
まずは関係者で現在値と目標値を合意し、重点テーマを絞り、社内ポータルで進捗を継続的に発信・改善していきましょう。
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