インターナルブランディングを経営戦略に取り入れるべき理由とは

インターナルブランディングは、企業の経営における重要な戦略のひとつです。
この記事では、インターナルブランディングを経営に取り入れていくべき理由を詳しく解説します。さらに具体的な手順に触れながら、実際にインターナルブランディングを導入する際のポイントをまとめていきます。

インターナルブランディングとは

インターナルブランディングとは、企業理念や価値を定義し、自社の従業員に対して共感と行動変容を促す活動を指します。「インナーブランディング」と呼ばれることもありますが、「インターナルブランディング」が正しい表現です。

インターナルブランディングで従業員の士気を高めることが可能

『コトラーのB2Bブランド・マネジメント』によると、ブランドに命を与えるのは従業員です。強力なインターナルブランディングは社内だけでなく、対外的にも強力なブランド力を構築します。従業員は、単なる会社のリソースではありません。従業員こそ会社そのものであり、自社ブランドのすべてです。

ブランドが多数乱立し、差別化が難しくなっている現代において、インターナルブランディングを戦略的に行い従業員の自社のブランドに対する従業員の誇りや愛着を高めることは、とても重要になっています。

インターナルブランディングでは理念の浸透が重要

理念・価値観は、企業活動の軸となるものです。特に外部環境が激しく変化し、構成員も日々変わり続ける昨今の企業組織を長く維持するためには、この軸を確立することが不可欠なのです。そこで多くの企業が、組織維持のために、理念や価値観の確率・浸透に注力しているのです。

実際会社選びの際に、その企業の事業内容よりも価値観・理念を重要視するという人もいます。ビジネス戦略や商品・サービスにどうしても目が行きがちですが、価値観・理念を明確にして浸透させることは、企業にとってとても重要な活動なのです。

ただし、より多くの従業員に企業理念を理解してもらうためには、伝え方に気を付けなければなりません。価値観や理念は個人の心情に関わるものであり、強制力によって浸透させるものではないからです。もし、企業が理念を不動のものとして長らく掲げていたとしても、伝え方は現代に合う形でアップデートしなくてはなりません。伝え方に工夫を凝らすことが、昨今のインターナルブランディングにおいては重要です。

インターナルブランディングと経営戦略

企業理念は、経営戦略を立てる際の土台に位置するものです。そのため、企業理念と整合性がとれているのかを考え、経営戦略を立てることが大切です。

従来は、アルフレッド・D・チャンドラーJr.の書籍『組織は戦略に従う』の主張にも代表されるように、戦略が組織を先行し、戦略によって企業の業績が上がっていくものと考えられていました。しかし外部環境の変化が激しくなった現代においては、戦略は必ずしも企業の競争を優位にするものではなくなったのです。

近年では、カナダのマギル大学デソーテル経営大学院教授であるヘンリー・ミンツバーグが「創発的戦略:エマージェントストラテジー」、つまり「戦略を決めずにとにかく行動するという戦略」の必要性を主張しています。行動をとることでその先の景色を見て、それに合わせて変化を続けることができれば、組織は大きな成長を遂げるはずだという主張です。たしかに机上で戦略を立てていても、変化の激しい昨今では、現実が戦略通りに進む可能性は低くなるため、臨機応変に軌道修正をしながら進んでいくことが大切になります。その際に指標となるのが、企業理念やバリューなのです。

インターナルブランディングを成功させれば、企業理念に則った経営戦略が自ずと生み出されていきます。

インターナルブランディングを経営戦略に取り入れるメリット

インターナルブランディングを経営戦略に取り入れると、どのようなメリットがあるのでしょうか。項目に分けて紹介します。

生産性と顧客満足度が向上する

社員一人ひとりのモチベーションが向上し、社内の助け合いが生まれるでしょう。結果、社員同士の結束が強まり、生産性を高めることが期待できます。また、生産性が高まることで顧客満足度の向上にも繋がります。

従業員エンゲージメントが向上する

理念や価値観のもとで個人同士がつながれば、社員は所属欲求を満たすことができるでしょう。相乗効果として組織との一体感を感じられて幸福感が向上します。それにより離職率の改善も見込めます。

判断基準が整い意思決定が速くなる

理念やブランドが、業務における社員の価値観や判断基準となるということを、事前に述べなければ意味が分かりづらいです。
インターナルブランディングを徹底し、社員一人ひとりに理念や企業ブランドが浸透すれば自ずと目線がそろい、現場での判断を個人に任せることができるでしょう。同じ方向を向く社員が判断をすれば、コンプライアンスや誠実性が担保されます。

コラボレーションできるようになる

企業は、専門性や業務内容が異なる人同士の集まりです。しかし、企業理念に対し同一の価値観・考え方を持たせ、集団として一定の規範やスタイルを創り出すことができれば、社員同士や部下上司の間でコラボレーションが加速するでしょう。

変革・改善が正しく行えるようになる

ブランド像を確立し共有することで、ビジネス上の変革・改善が正しく行えるようになるでしょう。企業として変革や改革をする際に根拠となるブランド像がなければ、変えるべき部分・守るべき部分のジャッジを誤り、改悪につながってしまう可能性があります。

インターナルとエクスターナルブランディングは表裏一体

インナーブランディングと対になる言葉がアウターブランディングで、インターナルブランディングと対になる言葉はエクスターナルブランディングです。日本では一般的に「アウターブランディング」と言われていますが、英語として正しいのはエクスターナルブランディングです。この「エクスターナルブランディング」は、社外に向けて自社のサービスやブランドを訴求するものです。社内と社外で訴えたいことが大きく変わらないように、インターナルブランディングはエクスターナルブランディングと一体化させましょう。対外的なブランディングが社員の意識に浸透した場合、それが社内におけるブランディングにつながります。類似ケースとしてカスタマーエクスペリエンスとエンプロイーエクスペリエンスの統合の重要性が語られていますが、文脈としては多少の違いはあれど波及効果としては同じです。

インターナルブランディングの具体的なやり方・手順

では、インターナルブランディングに実際に取り組みたい場合、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。具体的なやり方を簡単に紹介します。

現状を理解する・共感を醸成する

まずは出発点として、現状の把握を行いましょう。インターナルブランディングの後にどのような状態になっていたいのか、その状態から逆算して何が必要なのかを科学的に整理します。必要があれば専門家を入れたり、フレームワークを活用したりしながら進めましょう。

進める際は従業員が納得できるような形で進めることが重要です。社員の感情に寄り添い、社員を主語にして語ることで、共感のフックを作りましょう。また、より深く納得してもらうために「センスメイキング理論」を活用して、行動に意味づけを施します。納得感を与えることで、意図的に社内の方向性を揃えるのです。こうして、理念の浸透を促す骨格にしていきましょう。

企業理念・価値観を再定義する

次に、企業として掲げる理念・価値観を再定義しましょう。そもそも、事業を行っている目的はどこにあるのでしょうか。顧客を満たしたいという「顧客主義」だけであれば、今の事業によって実現する必要はないかもしれません。より根源的な目的意識に迫ることで、真のバリューを見つけていきましょう

理念や価値観を再定義したうえで、組織を動かすためのストーリーを作ることも大切になります。組織の強み(コアコンピタンス)や可能性(ケイパビリティ)に着目して、組織を動かすストーリーを組み立てていくと効果的です。

具体的な施策を決定して制度化する

最後に、実際に何をやるのかを決め、それを社内に周知していきましょう。具体的な施策を社員が意識して行動するようになることで、さまざまな状況が改善され始めるのです。 具体的な施策として、セミナーや研修などが考えられます。従来このような研修やイベントは座って話を聞くという形式で多く開かれていました。しかし、昨今では社員が自発的に発言できるものにするなど、双方向でコミュニケーションがとれる環境にすることが重要視されています。そういった場でインターナルブランディングを一堂に発表しインパクトを与えます。

また企業のトップのメッセージを発信したい場合には社内報も効果的でしょう。最近では紙面だけでなくWeb社内報も一般的になってきており、メディアとしての活用度が上がっています。ほかにも社内表彰制度やコンテストを企画し、全体の士気を高めるという方法もあります。

取り組むべきことが決まったら、単発で終わってしまわないように、制度化して継続できるようにしましょう。また、やりっぱなしではなく、取り組み内容を都度評価できるような体制を整えましょう。

まとめ

インターナルブランディングは、経営戦略を打つよりも先に気に留めるべきとても重要なものです。インターナルブランディングに成功すると、企業が活性化するなど大きなメリットを享受できます。経営戦略の一環として、ぜひ取り組んでみてください。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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