心理的安全性とは?企業で求められる理由と高め方
最終更新日:2024.06.11
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「うちのチームでは、誰も本音を言ってくれない」「失敗を報告しづらい雰囲気がある」——そんな悩みを抱えるマネージャーや経営者の方は、少なくないのではないでしょうか。その根本にある課題が、「心理的安全性」の欠如かもしれません。
心理的安全性とは、チームのメンバーが発言や失敗を恐れずに安心して働ける状態のことを指します。Googleが実施した大規模な組織研究「プロジェクト・アリストテレス」でも、チームの成果を左右する最重要因子として心理的安全性が挙げられており、今や経営・人材戦略における不可欠なキーワードとなっています。
本記事では、心理的安全性の定義・背景から、組織にもたらす効果、そして実践的な高め方まで、最新の研究データと当社調査の結果を交えながら解説します。
心理的安全性とは
心理的安全性とは、英語では「Psychological safety」と表現されるもので、特定のチーム内で人が安全を感じていられる性質を指します。安心感を持ちながらその組織に所属していられる状態です。この心理的安全性という概念を初めて提唱したのは、1954年カール・ロジャーズ(Carl Rogers)氏だといわれています。その後、Googleの実験によって注目を浴びました。心理的安全性が高いことは、ビジネスをスムーズに進める上で必要なことであるとされています。
現代のビジネスは第4次産業へ移行する中で、人的資本の価値が高まり、人間関係や多様性が重要な課題となっています。これらの問題は見えにくく、個人差もあるため対処が難しいですが、社会の傾向やメンタル面の保護からも無視できない問題となっており、心理的安全性は、職場が安全であると認識できることを意味し、投資が増える人的資本にとって重要です。感情に基づく攻撃や葛藤を避け、心理的な危険性を排除することが必要です。
ハラスメントや過労からのメンタル疾患、コミュニケーションの問題やミスのリスクなど、心理的安全性が損なわれると企業にも損失が生じてしまうため、心理的安全性を高めるためには、トラブルが起きた際に話し合いの場を設け、社内規範を改善する努力が必要となります。
Googleが注目した心理的安全性——プロジェクト・アリストテレスの成果
Googleはチームの生産性を高める条件を探る「プロジェクト・アリストテレス(2012〜2014年頃)」で、心理的安全性の重要性を実証しました。同社の研究チームは効果的なチームの5つの力学を特定し、その中で心理的安全性が最重要であると結論づけています。具体的には、心理的安全性が高いチームはメンバーの離職率が低く、他メンバーの多様なアイデアを活用しやすく、収益性が高いという結果が出ています。高パフォーマンスを発揮するチームでは、メンバーが「リスクを取っても安全だ」と感じ、お互いの弱みをさらけ出せる心理的安全性が観察されています。
これらの研究結果は、企業でのチームづくりに大きな示唆を与えています。心理的安全性を高めることで、メンバー各自が挑戦意欲を持ち、生産性向上につながる環境が実現できると言えるでしょう。
心理的安全性が高い組織・チームの特徴
ここまで心理的安全性の定義と背景を見てきました。では、実際に心理的安全性が高いチームには、どのような特徴があるのでしょうか。代表的なポイントを整理してご紹介します。
自由な発言の文化
メンバーがミスや質問を恐れずに発言でき、アイデアが活発に共有されます。誰かの意見が否定されることなく、「まずは言ってみよう」という雰囲気が醸成されている状態です。
相互信頼と透明性
情報が隠されることなく透明に共有され、社員間の信頼関係が築かれています。「上で何かが決まっているはずなのに、自分には知らされていない」という不安がない環境です。
チーム力とパフォーマンスの向上
高い心理的安全性はチームパフォーマンスやイノベーションの土台となり、結果的に業績向上や顧客満足度の上昇につながります。
逆に言えば、心理的安全性が低い職場では意見が抑制され、ミスが報告されにくくなることでチーム力が低下し、離職率の増加やトラブル防止の機会損失を招くことになります。つまり、心理的安全性の有無が組織全体の成長に大きく影響すると言えるでしょう。
心理的安全性における不安の原因はコミュニケーションの不足
心理的安全性を高めるにはどのようにすればいいのでしょうか。その鍵となるのは、コミュニケーションです。コミュニケーション不足が常態化していると、活発な議論をする環境がなくなっていきます。発言に際してのハードルが上がり、行動を起こすことへの不安感が増していきます。これが心理的安全性の低下を招き、さらに意見や行動を表に出せなくなるという悪循環に陥りかねません。企業は、心理的安全性を高めるために社内コミュニケーションの活性化をすることが必要です。
また、心理的安全性においてコミュニケーションによる「情報の透明性」も重要です。職場やチームの大きさやメンバーの地位や雇用形態の違いなどによって、情報がうまく共有されないことがありますが、特に情報を秘匿しやすい職場やチームのリーダーによって情報の共有が不十分であると、上層部で何が決まっているか社員に伝わらず、説明もされない状態が心理的安全性を損なうことにつながります。
逆に情報の透明性が確保されると、チームや組織内の心理的安全性が高まります。これは、社員が不安や心配を感じることなく意見を述べることができる環境を作り出すからです。このような環境では、さまざまな情報やアイデアが自由に共有され、チーム全体での知識や洞察が増えます。情報の透明化や可視化は、生産性の向上やミス・トラブルの予防にも役立ちます。さらに、個々の社員が成長する機会も増えるでしょう。
現代企業における心理的安全性の重要性
多様な人材と複雑な業務が共存する現代企業では、イノベーションとスピードが求められるため、社員一人ひとりが自由に意見を交換できることが不可欠です。心理的安全性が確保された職場では、社員がストレスや不安感なく創造的に取り組め、結果的に業務パフォーマンスや組織エンゲージメントが向上します。
経済産業省のガイドでも「心理的安全性が確保されたチームは業務パフォーマンスが高い」と明示されており、実際にGoogleをはじめとする先進企業では採用競争に対応するためにも、マインドフルネスや心理的安全性への投資が活発化しています。
また、心理的安全性は社員のメンタル不調予防や組織の生産性向上にも寄与し、健康経営・人的資本経営の文脈でも「心の健康」施策の重要な要素として位置づけられています。
心理的安全性を高める実践的ポイント——社内コミュニケーションとの関係
心理的安全性を向上させるカギは、コミュニケーションの活性化と透明性の確保にあります。弊社調査では、部署間連携策として「定例会議・全社集会」を実施している企業が48%あった一方、何も取り組まない企業も26%に上ることが判明しています。また、他部署からの情報入手経路として「定例会議・全社会議」が40%と最多で、メールや上司伝達、口コミなど複数のルートで共有されていることもわかりました。
情報の透明性が低いと、従業員は「上層部で何が決まっているかわからない」という不安を抱え、心理的安全性が低下します。一方で、情報共有が十分であれば社員は不安を感じることなく意見を述べられるため、組織文化が活性化していきます。では具体的に、どのような取り組みが有効なのでしょうか。
1on1ミーティングの実施
上司と部下が定期的に1対1で対話する場を設け、個別の課題やキャリア、働き方を話し合います(2週間に1回程度が目安)。これにより、信頼関係が深まり心理的安全性が醸成されます。
学習と改善を重視した文化づくり
失敗を責めず学びに変える文化をつくります。たとえば、問題が起きた際には関係者で話し合い、次に活かせるよう組織規範やプロセスを見直すことが大切です。エドモンドソン氏も「仕事の機会を学習機会と捉え、間違いを認める」などの実践を提唱しています。
参加型コミュニケーションの推進
会議やプロジェクトでは「誰が異なる視点を持っているか?」と質問を投げかけ、積極的に意見を求めるようにします。上司は部下の発言に対し感謝や支援の言葉で返し、否定的な反応を避けることが重要です。
情報共有の仕組みづくり
社内報、イントラネット、メール、チャットなどを活用して意思決定や業務情報をオープンに公開し、全員がアクセスできる環境を整えます。透明な環境を整えることで、社員は組織への不信を抱かず、安心して考えを発信できるようになります。
これらの施策を通じて、一人ひとりが安心して発言し合える土壌を築いていきましょう。
まとめ
本記事では、心理的安全性の定義から実践的な高め方まで解説してきました。要するに、心理的安全性とはメンバーが失敗や質問を恐れずにチームへ貢献できる状態であり、組織の業績・創造性を高める基盤となるものです。逆に心理的安全性が低い環境では、パフォーマンスの低下や不信感の蔓延につながります。
企業においては、情報共有と対話を重視しながら、定期的なミーティングやオープンなコミュニケーションを推進することで心理的安全性を育んでいくことができます。「まず一つ」の取り組みとして、上司と部下の1on1ミーティングや情報共有の仕組みを見直してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
