2024.06.14
1on1で話すこととは?雑談で終わらせないための目的別テーマ例を紹介
目次
1on1ミーティングは、円滑な業務遂行やチームの発展に欠かせない重要な要素です。しかし、1on1で話すべき内容や目的が明確でないと、雑談に終始してしまうことも少なくありません。本記事では、1on1での有意義なコミュニケーションを実現するための目的別のテーマ例と、実際に対話をする際のポイントを紹介します。
1on1の目的
意義のある1on1のためには、目的を明確にすることが重要ですが、実施の目的と言っても組織または職場によってさまざまでしょう。ここでは代表的な目的例を紹介します。目的をベースに1on1の話題・テーマを決定することで1on1が意義のあるものになります。
企業理念・パーパスの浸透
1on1は個々の従業員と直接対話する機会であり、その際に経営理念やパーパス経営について話すことで、従業員が自らの行動を組織の理念に結びつけることができます。経営者やリーダーが従業員とのコミュニケーションを通じて経営理念を浸透させることで、組織全体でより目的意識を持ち、成果を上げることが可能となります。企業がパーパス経営を実践し、1on1ミーティングを通じて経営理念を従業員に浸透させることは、組織の成長や持続可能な成功に向けて重要な一歩と言えるでしょう。
上司と部下のコミュニケーションコストの低減
1on1ではお互いがじっくりと向き合い、率直なコミュニケーションを取ることができます。上司は部下の意見や悩みを直接聞くことができ、部下も自分の考えや目標をしっかりと伝えることができます。このようなコミュニケーションの場があることで、お互いの理解が深まり、信頼関係が築かれるのです。
さらに、上司が部下の業務で抱えている課題を把握し、対話を通して一緒に解決方法を考えることも可能です。また、部下からの悩みや不満などを知ることで、適切な人材マネジメントのヒントも得られるでしょう。
部下が現状どのような精神状態であるか、どのようなキャリアプランを考えているのか、プライベートでの悩みも含め、部下本人の話したい話題や悩みを引き出せるよう、上司側が努めて促す必要があります。
部下の成長をサポートする
部下は、業務での成功や失敗を上司に話し、一緒に考えることを通して、問題解決や業務改善などについて強く意識するようになります。上司は部下の話すことに傾聴し、部下の能力を引き出すためのフィードバックを行い、部下の成長をサポートすることに注力します。
新規事業の適任者を発掘する
新規事業のアイディアなどは、そもそも1on1の種目的ではないのですが、副次的な効果として最近注目されています。1on1を実施することにより細やかな人事情報が共有され、非常に珍しいタレントが発掘できることがあります。
また、上司が部下のスキルや経験、また希望する業務やモチベーションなどを把握しておけば、最適な仕事を部下に割り当てられます。特に新規事業を立ち上げる際などには、適材適所の人材配置をスムーズに行える可能性が高まります。新規事業は究極的に言えば、計画やアイディアも重要ですが、何をやるかということよりも誰とやるかが重要です。
社内では上限関係だけではなく、普段からのコミュニケーションや部下の目線に立った会話を心がけることで、社員にとって居心地の良い職場環境となり、会社へのエンゲージメントが上がることで離職防止等の効果も期待できます。
従業員や社内の状況を把握する
社員個人や社内の状況を把握することは、上司が適切な人事評価をする上で重要な要素です。結果だけでなく過程も含めた評価ならば、部下も納得して受け入れやすいでしょう。部下が評価への不服から急に退職するのを防ぐ効果も期待できます。
上司はこれらの目的を部下に伝えた上で、あくまでも「部下について知る・興味を持つ」という姿勢で1on1を実施します。ミーティングでは現況を確認し、上司が把握していることと部下本人の認識に大きな相違はないかをチェックしましょう。このとき、「困っていることがないか?」と聞いてみることから始めると、部下も話しやすくなるはずです。
1on1で扱うテーマ例
1on1ミーティングの主役は部下のため、話すテーマを決めるのも上司ではなく部下ということを念頭において取り組むことが重要です。しかし、漠然と「好きなことを話して」と言われても、部下が困惑してしまいます。
そこで上司はアジェンダを準備し、それをもとに部下から話を引き出していくと効率的でしょう。その後のマネジメントにも行いやすくなります。
ここでは、1on1ミーティングで話すこととしてテーマの例を提示し、具体的な会話と応用例をご紹介します。
体調やメンタルの状態
体調やメンタルの状態は、業務を遂行するうえで基礎となる部分です。普段から気配りを行っておく必要がありますが、必ずしも見た目で判断できるものばかりではないので、1on1の機会に話を聞いてみるとよいでしょう。
普段はなかなか話しづらいことであっても、1on1の場であれば心身に感じていることを話してくれるかもしれません。心身の健康状態について確認しておきたい点として、次のようなものが挙げられます。
- 業務量の負担はないか
- 業務外の時間はきちんと休めているか
- 睡眠時間をしっかり確保できているか
- 体調やメンタルに変化を感じる部分はないか
- 健康について、周囲に相談できる人はいるか
特に相談できる相手がいない場合は、突然心身の不調が生じてしまう恐れがあります。離職につながる原因にもなるので、早期発見を行うためにも1on1の機会を活かしてみましょう。
モチベーション
部下のモチベーションについては、1on1向きのテーマともいえます。モチベーションの低下などの悩みを部下が抱えているときは、本人自身も何が原因となっているのか把握できていないことがあるからです。
モチベーションの低下を防ぐための話をする一方で、モチベーションを高めるための話題も振り向けてみることが大切です。特に次のようなアプローチを行ってみると、部下のモチベーションを向上させることにつながります。
- 業務に対する普段の取り組みを褒める
- 業務の成果にたどり着くまでのプロセスを評価する
- チームによい影響を与えていることを伝える
- 社内での評価が高まっていることを知らせる
本人の意欲を引き出すには、できるだけポジティブな評価を伝えることが大切です。逆に、モチベーションの低下を防ぐための話題としては、業務でストレスに感じることや人間関係で悩んでいることなどを聞いてみましょう。
部下自身が自分の言葉で語ることで、新たな気づきを得るきっかけになるはずです。
将来のキャリア
1on1はじっくりと話を聞ける機会でもあるため、部下がこれから積んでいきたいと思えるキャリアについてもテーマとして取り上げてみましょう。1on1では、本人の強みと弱みを踏まえたうえで、どのような業務であれば力を発揮できるのかを一緒に考えていくことが大事です。
また、普段の業務でやりがいを感じている点やこれから挑戦したいと思っている仕事などを尋ねてみましょう。将来のキャリアがまだ漠然としているときは、部下自身が大切にしている価値観や生き方などについて話し、キャリアを支援していくことが重要です。
業務や組織の課題
日々の業務や組織の課題に関するテーマは、1on1でも取り上げられる機会が多いものとなるでしょう。現在関わっている業務のことや、何か業務で困っていることがないかなど丁寧に話を聞くことが大切です。
また、メンバーとの人間関係やチームが抱えている課題、どのような取り組みを会社に行ってもらいたいかなど、その時々の状況に応じて質問する内容にも変化をつけてみましょう。
特に人間関係で抱えている悩みや上司・会社に対する不満は、普段は聞きづらいものでもあるため、1on1の機会を通じて話を聞いてみることが重要です。きめ細かく話を聞くことによって、部下のモチベーションを高め、仕事の生産性をアップさせることにつながります。
目標設定と自己評価
部下の目標設定や自己評価についても、1on1のテーマとして取り上げてみましょう。会社やチームが掲げる目標と、部下が目標とする部分をうまく擦り合わせていくことが大切です。
一緒に考えて設定した目標は、定期的に部下に自己評価を行ってもらいましょう。テーマとしては、以下のものが挙げられます。
- これから関わってみたい業務について
- どのような目標を目指したいか
- 目標を達成して得られたこと
- 自身の業務に対する取り組みへの評価
部下が会社やチームが掲げる目標をきちんと認識しながら、自分の目標を設定できているかを確認しておきましょう。
企業の戦略・方針の共有
1on1は、普段は思うように時間が取れずに話せないことであっても、じっくりと話をする機会として活用できます。経営戦略や事業方針などは、部下の立場からではわかりづらい点もあるので、上司から改めて説明していくことも必要です。
会社の方針に対する疑問点を尋ねたり、部下の立場でどのような貢献ができたりするのかを話し合ってみましょう。会社に対する帰属意識が強くなれば、離職を予防することになり、仕事に対するモチベーションを高められるはずです。
プライベート
1on1では、部下とざっくばらんに話をして、信頼関係を深めることも大事なポイントだといえます。業務に関する話だけでなく、プライベートな話題も取り入れることで部下の緊張が和らぎ、穏やかな雰囲気で話ができます。
何か特別なことを話すというより、休日の過ごし方や趣味といった何気ない話題を振ってみましょう。部下があまり話したがらないことは、話題をすぐに切り替えて興味のありそうなことを尋ねてみてください。プライベートなことを詮索しすぎると、場合によってはパワハラだと捉えられかねません。何がOKでNGなのかは、その人の個性やその人との関係性にもよります。ポイントは相手が話したいかどうかで、詮索はしない方が良いでしょう。
相手が話したいかどうか、を客観的に判断することは困難なので、相手が自発的に話してくれたら、耳を傾けるくらいのスタンスでいるのがおすすめです。
話す際に意識したいポイント
1on1ミーティングで話すべきテーマがわかったからといって、それをただ話題として提示するだけでは対話にならない場合があります。ここでは、テーマ別に話す際のポイントを解説します。
聞くだけではなく、自己開示をする
相互理解を進める上でポイントになるのが、自己開示を行うことです。一方的に聞いているうちは、部下は本音で話してくれない場合があります。自分の話も交えて話すことで、緊張感を解き、部下から積極的に話ができるような場を作りましょう。ただ、プライベートのことを聞かれるのを嫌がる従業員もいるので無理やり聞くようなことはないように注意が必要です。
上司と部下のコミュニケーションは、「組織に所属している個人」という側面と「一人の人間としての個人」という側面の相克が主因であるといっても過言ではないと考えられます。上司と部下のコミュニケーションは、企業視点やビジネス的側面などの組織関連要素と、個人の感情や考え方など人間的側面が複雑に交錯しています。そのような多面性を持つため、時には現実世界との矛盾から、「表裏一体」「気を使うこと」「本音と建前」といった合理的な側面と情緒的な側面とのバランスを保つための二層構造が生じます。
重要なのは、どちらかが正しいということではなく、この二重構造の中で揺れ動いていることを認識することが肝要です。
部下の話を解決しようとしない
部下の育成を1on1で行うにあたってポイントになるのが、対話によってヒントを与えることです。上司が部下の課題に対して解決策としていきなり答えを与えることもできますが、それでは部下は成長しません。それどころか上司に聞けば答えが返ってくるものと思い、自分で考える力を失ってしまう可能性すらあります。直接的に答えを与えるのではなく、話の背景を理解することに努めたうえでヒントを伝え、自分で考えるきっかけを作ることで部下の育成を図りましょう。
また、家庭の事情など、そもそも解決が難しい問題もあります。その場合は耳を傾け、話を聴くだけで考えが整理されたり、気持ちが楽になったりすることもあります。それだけで十分に役割を果たしていると言えるでしょう。
チームでの役割を意識させる
チーム力を上げるために重要なのが、チームにおける役割を意識してもらうことです。チームにどのような形で貢献すればいいのか、どのような役割を求められているのかを意識することで、能動的な行動を促すことができます。特に、その時チームが抱えている課題に対しての関わり方を伝えられるとよいでしょう。
部下の業務との関係性を伝える
経営戦略や組織戦略を伝えるときにポイントになるのが、部下の業務との関係性を併せて伝えるということです。自分自身の業務がどのように会社の経営に関わっているかを知ることで、モチベーションやエンゲージメントの向上を期待できます。1on1での対話を通じて、経営戦略を自分事化することが大切です。
まとめ
1on1を通じて、従業員との関係を強化し、成果を最大化するためには、それぞれの目的に合ったテーマを選び、具体的かつ建設的な対話を行うことが必要です。
雑談だけでなく、意味のある会話を通じて、上司と部下のコミュニケーションを深めることで成長や関係性の向上につながります。
上で紹介したポイントを意識して対話をし、1on1を有意義に活用することで組織全体のパフォーマンス向上につなげていきましょう。
株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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