インターナルコミュニケーション経営の悩み―新調査と解決策3選
最終更新日:2026.02.02
目次
デジタル化が急速に進展し、働き方が多様化する現代において、多くの大企業が「組織の一体感」や「経営戦略の浸透」に課題を抱えています。組織の成功には、従業員間の強いつながりと帰属意識が不可欠です。そのため、組織内での情報共有や意見交換を活性化させる「インターナルコミュニケーション」が重要な要素となっているのです。
しかし、DX推進やリモートワークの導入が進む一方で、経営層からは「現場の状況が見えなくなった」「戦略が伝わらない」といった新たな悩みが噴出しており、現場からは「情報過多で何が重要かわからない」「1on1が形骸化している」という悲鳴が上がっています。これらの悩みは、単なるコミュニケーション不足ではなく、組織構造や企業文化の変革期における「成長痛」とも言えるでしょう。
この記事では、インターナルコミュニケーションが経営にどのように役に立ち、経営業績に良い影響を与えるのか、具体的な事例を交えながら解説していきます。また、効果的なインターナルコミュニケーションを実施するためのポイントや手法についても整理していきます。組織の変革と成功のために、インターナルコミュニケーションの重要性についてあらためて考えてみましょう。
インターナルコミュニケーション経営における悩み
現代の企業経営において、インターナルコミュニケーションは「経営の神経系統」とも呼ぶべき重要な機能を担っています。しかし、その機能不全は多くの経営者や担当者を悩ませています。
経営層と現場の間に横たわる「認識の断絶」
経営層が抱える最大の悩みは、ビジョンや戦略が現場に正しく伝播しない「情報の風化」と「認識のズレ」です。弊社ソフィアの調査では、経営戦略や目標に対して「共感している」と回答した社員はわずか約1割にとどまるという結果が出ています。
経営層は「伝えたつもり」でも、現場には「やらされ仕事」としてしか届いていない。この深刻な断絶は、組織の実行力を著しく低下させます。情報は伝達過程でその熱量を失いやすく、特に多階層の大企業においては、中間管理職のフィルターを通すことで意図が歪曲されるリスク(情報の風化)が常につきまとうのです。
「ツールの導入」が「コミュニケーション」ではない
DX推進部門や情報システム部門における悩みとして顕著なのが、「ツールの導入=課題解決」という誤解から生じる混乱です。多くの企業がSlackやTeams、社内ポータルなどの最新ツールを導入していますが、それが必ずしも活性化につながっていません。
むしろ、ツールの乱立による「情報インフラの混乱」や、使いこなせない従業員の疎外感、そして対面コミュニケーションの希薄化による「サイロ化(部門間の分断)」が進行しています。経営層は、デジタル投資に見合う組織風土の変革(チェンジマネジメント)が追いついていないことに焦りを感じています。
インターナルコミュニケーションの目的
インターナルコミュニケーションの目的を再定義することは、経営課題解決の第一歩です。それは単に「仲良くすること」や「情報を伝えること」ではありません。組織内での情報共有や理解を促進し、従業員同士の連携やコミュニケーションを活性化させることです。組織の理念やビジョンを共有すること、従業員同士のコミュニケーションを活性化させること、企業文化を浸透させること、モチベーションの向上、情報の共有を徹底することなどがインターナルコミュニケーションの目的として挙げられます。
戦略実行のための「関係性の設計」
インターナルコミュニケーションの真の目的は、制度やツールの導入ではなく、組織課題を解決するための「人と人との関係性の設計」にあると言えます。単に情報を流すだけでなく、その情報を受け取った社員がどう感じ、どう行動するかという「行動変容」までをデザインすることが求められます。組織の理念やビジョンを共有することは、全従業員が同じ方向を向いて働くために重要です。ビジョンを共有することで、各部署や個人の目標設定や行動が一致し、組織全体の成果につながります。
イノベーションの土壌づくり
また、従業員同士のコミュニケーションを活性化させることは、チームワークや協力関係の構築につながり、情報の共有や意見交換を通じて、問題解決や意思決定のスピードを上げることができます。
部門の壁を超えた偶発的な出会いや対話(セレンディピティ)こそが、新たなイノベーションの源泉となります。大企業特有の「セクショナリズム」を打破し、横の連携を強化することも、現代におけるインターナルコミュニケーションの主要な目的です。
さらに、企業文化を浸透させることは、組織のアイデンティティを強化し、従業員の行動や価値観を統一する役割を果たします。組織の文化を共有し、共通の価値観を持つことで、従業員の行動や判断が一致しやすくなります。
心理的安全性の確保とエンゲージメント
モチベーションの向上は、従業員の働きがいややる気を引き出すために重要です。情報の共有やフィードバックの機会を設けることで、従業員は自身の貢献度や成果を実感しやすくなります。さらに、情報の共有を徹底することは、組織内の情報格差を解消し、全従業員が同じ情報を持つことができる状態を作り出します。情報の透明性が高まることで、不確実性や不安を減らし、組織全体の効率性を向上させることができます。
このように、インターナルコミュニケーションの目的は、組織内の連携やコミュニケーションを活性化させることであり、組織の成果や従業員の満足度を高めるために欠かせない要素と言えます。
インターナルコミュニケーションの実態
組織の現状をデータで直視することは、改善への第一歩です。多くの企業が施策を講じているにもかかわらず、なぜ成果が出ないのでしょうか。組織の成果や従業員の満足度にかかわる社内コミュニケーション活性化のためにさまざまな施策に取り組んでいる企業も多いと思いますが、組織としてのインターナルコミュニケーションの実態はどうなっているのでしょうか。
調査結果(サマリ)を見ると、社員のアンケートをもとに企業理念と人事制度の浸透に関するデータを見て、半数に満たない割合で企業理念への理解を示し、自身の日々の行動とリンクしていると答えています。
1on1のパラドックス:実施率1位だが効果は疑問
弊社ソフィアの調査では、社内コミュニケーション促進の取り組みとして最も多く実施されているのが「1on1(個人面談)」(54%)であることがわかりました。しかし同時に、この1on1が「効果的でない取り組み」としても上位に挙げられるというパラドックス(矛盾)が生じています。
これは、目的が曖昧なまま制度だけが先行し、上司が「業務進捗の確認」や「一方的な指導」の場として利用してしまっているためです。結果として、部下にとっては「詰められる時間」となり、かえってエンゲージメントを下げる要因となっています。
しかし「共感しない、事業計画を理解していない従業員が半数以上」という結果にはなっていますが、この結果は悲観視ばかりではなく、ワークエンゲージメントやモチベーションの向上の面で改善の余白が大きいとも言えます。
経営と現場の「重視するポイント」のズレ
また従業員から見た社内コミュニケーションの重要視するポイントとして、厚生労働省の「令和元年労使コミュニケーション調査」によれば、会社が社内コミュニケーションで重視する内容は、回答が多い順に「日常業務改善」75.3%、「作業環境改善」72.9%、「職場の人間関係」69.5%となっています。社内コミュニケーションの本来の意味である「企業利益」の部分が色濃く反映されていることがよくわかります。
一方、従業員が社内コミュニケーションで重視するのは回答の多い順から「職場の人間関係」66.2%、「日常業務改善」57.7%、「賃金、労働時間等労働条件」53.0%です。これには、「本人の働きやすさ・待遇」の面が強く現れていて、これだけ見ても、経営層と現場の着地点に大きな開きがあることがわかります。
このギャップを埋めない限り、経営層がいくら「生産性向上」を叫んでも、現場は「自分たちのことを考えてくれていない」と感じ、心は離れていくばかりです。
インターナルコミュニケーションの経営へのメリット
インターナルコミュニケーションへの投資は、決してコストではなく、将来の収益を生み出すための「人的資本への投資」です。第一に、インターナルコミュニケーションは組織内の連携を強化し、効率的な業務遂行を可能にします。情報や意思の共有が円滑に行われることで、部署間の壁がなくなり、チームワークが向上します。これにより、業務のスピードや質が向上し、組織全体の生産性が高まります。
グローバル・多文化対応力と生産性
グローバル化が進む大企業においては、外国人従業員とのコミュニケーションも重要な課題です。言語や文化の壁を超えたインターナルコミュニケーションの基盤を整えることは、多様な人材(ダイバーシティ)のポテンシャルを最大限に引き出し、グローバル市場での競争力を高めることにつながります。
また、生産性の向上は単なるスピードアップだけでなく、重複業務の削減やナレッジの共有による「車輪の再発明」の防止といった具体的なコスト削減効果ももたらします。
第二に、インターナルコミュニケーションは従業員のモチベーションを高める効果があります。経営者の考えや目標が明確に伝えられることで、従業員は自身の仕事への関与感や責任感を持つようになります。また、情報共有やフィードバックの仕組みが整えられることで、従業員は自身の成長や意見の反映を実感できます。これにより、ワーク・エンゲージメントが高まり、組織の活力が向上します。
危機管理とレジリエンスの向上
さらに、インターナルコミュニケーションは経営陣にとっても重要です。現場の声や意見が経営陣に届けられることで、経営戦略の改善や意思決定の質が向上します。従業員のフィードバックを受けて組織を改善することは、経営者にとって貴重な情報源となります。
また、経営者の考えやビジョンを社員に伝えることで、組織全体が一体感を持ち、目標に向かって協力して働くことができます。災害やパンデミックなどの有事において、強固な信頼関係と情報ルートを持つ組織は、迅速な安否確認や事業継続計画(BCP)の実行が可能となります。平時からのコミュニケーションが、組織のレジリエンス(回復力)を高めるのです。
最後に、インターナルコミュニケーションは信頼関係の構築にも役立ちます。情報の透明性や公平性が確保されることで従業員同士の信頼関係が深まります。相互理解やコミュニケーションを通じて、意見の違いや衝突を解消することも可能です。これにより、組織内のコミュニケーションの質が向上し、職場の雰囲気が明るくなります。
組織内の連携やモチベーションの向上、経営陣とのコミュニケーション、信頼関係の構築など、さまざまな側面で組織の成果を高めることができます。インターナルコミュニケーションを活性化させることは、現代の組織において不可欠な要素と言えるでしょう。
従業員間のつながりと帰属意識の重要性
リモートワークやハイブリッドワークが定着した現在、物理的なオフィスという拠り所が希薄化する中で、「心理的なつながり」の重要性が増しています。従業員間のつながりと帰属意識は、組織内での効果的なコミュニケーションと協力関係を築く上で非常に重要です。従業員同士が、組織の一員としての誇りや責任感を共有することで、組織全体のパフォーマンス向上や離職率の低下などのメリットが得られます。
EI(感情知性)と心理的安全性
従業員間のつながりを深める上で欠かせないのが、EI(Emotional Intelligence:感情知性)の概念です。
弊社ソフィアのプログラムでも導入されているように、リーダーや従業員が互いの感情を理解し、適切に扱う能力を高めることは、心理的安全性の高い職場づくりに直結します。心理的安全性があれば、ミスを恐れずに挑戦でき、率直な意見交換が可能になります。まず、従業員間のつながりを深めることで、組織内のコミュニケーションが円滑になります。チームメンバー同士が信頼関係を築き、意見や情報をスムーズに共有することができれば、業務の効率性や品質向上につながります。
また、コミュニケーション不足が原因で起こるミスやトラブルも減少するため、業務の進行に変化があらわれます。さらに、従業員間の帰属意識が高まると、個々のモチベーションや生産性が向上し、自分が組織の一員であることを誇りに思いながら仕事に対する責任感や熱意が高まるため、より良い成果を生み出すことができます。
また、組織のビジョンや目標に共感し、自身の役割を理解することで、自ら進んで業務に取り組む姿勢が醸成されます。
「自分ごと化」を促す工夫
さらに、帰属意識の高い従業員は、組織への長期的なロイヤルティを持つ傾向があります。現代は終身雇用の減少や多様な働き方の普及により、従業員の離職率は上昇しています。しかし、従業員が組織に帰属意識を持ち、自身の成長やキャリアパスを見出せる環境が整っていれば、組織への関心が持続し、離職率の改善につながるでしょう。
企業理念を単なるスローガンで終わらせず、従業員一人ひとりが「自分の業務とどう関わっているか」を理解し、「自分ごと化」するためのワークショップや対話の場が、帰属意識を高める鍵となります。従業員間のつながりと帰属意識を高めるためには、さまざまな取り組みが必要です。
たとえば、社内イベントの開催やコミュニケーションツールの導入により、従業員同士の交流を促進することが重要です。また、働き方や待遇の改善、インナーブランディングの実施など、従業員の働きやすさや組織への誇りを高める施策も必要です。組織内の従業員間のつながりと帰属意識の重要性は、組織全体の成果向上や従業員の満足度向上につながるため、重点的に取り組むべき課題と言えます。組織のリーダーシップや従業員一人ひとりの意識改革が必要ですが、コミュニケーションコストをかけて人材を育成することは大きな価値があります。
組織内情報共有と意見交換の活性化
情報共有は、「量」よりも「質」と「流れ」が重要です。単にイントラネットにPDFを掲載するだけでは、情報は共有されたことになりません。組織内での情報共有と意見交換の活性化は、企業のあらゆる成功に深くかかわっています。組織内での情報や知識を共有すると、チーム間の連携や効率性が向上し、意思決定のスピードも加速させるのです。
チェンジマネジメントによるDX推進
DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功させるためには、システム導入と並行して「人の意識変革」を促すチェンジマネジメントが不可欠です。新しいツールやプロセスに対する現場の抵抗感(不安)を解消し、なぜ変わる必要があるのかを丁寧に説明し、納得感を得るプロセスこそが、真の情報共有活性化につながります。
組織内の情報共有を活性化するためには、コミュニケーション手段の整備が欠かせません。具体的には社内報やメール、チャットツールなどを活用し、情報を円滑に共有する仕組みを整えることが重要です。また、情報共有の頻度や形式を明確に定め、各部署やチームに共通のルールを設けることも効果があります。
さらに、意見交換の活性化も重要な要素です。意見交換の場を設け、積極的に参加を促すことで、さまざまな視点やアイデアが生まれます。たとえば、定期的なミーティングやブレインストーミングセッション、グループディスカッションなどを通じて、社員同士のコミュニケーションを活発化させることができます。
上司・リーダーの「翻訳力」
また、情報共有や意見交換を促進するためには、上司やリーダーの役割も重要です。上司は情報を適切に伝えるだけでなく、社員の意見や提案に対しても積極的に耳を傾ける姿勢が求められます。上司がオープンなコミュニケーションを実践することで、社員も自由に意見を述べることができる風土が醸成されます。経営層の抽象的なメッセージを、現場の具体的な業務レベルに翻訳して伝える「結節点(ハブ)」としてのミドルマネージャーの役割が、情報共有の成否を握っています。
さらに、情報共有や意見交換を活性化するためには、情報の可視化やアクセスの容易化も重要です。社内ポータルサイトや共有ドキュメント管理システムを活用し、必要な情報にスムーズにアクセスできる環境を整えることが求められます。組織内での情報共有と意見交換の活性化は、組織の成果や競争力に大きな影響を与えます。組織全体の情報を共有することで、チームの連携や効率性が向上し、新たなアイデアや解決策が生まれる可能性も高まります。組織内の風通しを良くし、積極的なコミュニケーションを促進することで、組織全体の活性化を図りましょう。
インターナルコミュニケーションによる経営業績への影響
インターナルコミュニケーションは、最終的にP/L(損益計算書)やB/S(貸借対照表)といった財務指標にどう影響するのでしょうか。インターナルコミュニケーションは、経営業績に大きな影響を与えており、経営層と従業員との間での円滑なコミュニケーションが取れることで、組織全体が一体となり、共通の目標に向かって進んでいます。経営者から従業員へのビジョンや理念が浸透することによって、一人ひとりが意欲を高め、仕事への取り組みを促すことができます。
顧客満足度(CS)と売上への連動
インターナルコミュニケーションが機能している企業では、従業員が必要な情報に即座にアクセスできるため、顧客への対応スピードと質が向上します。これは直接的に顧客満足度(CS)を高め、リピート率や売上の向上に寄与します。従業員体験(EX)の向上は、顧客体験(CX)の向上と表裏一体の関係にあります。また、異なる部門間のコミュニケーションや関係構築も重要です。部門間の情報共有や協力体制の構築により、業務の効率化や品質向上が図られます。たとえば、生産部門と販売部門が密接に連携し、需要予測や生産計画を適切に調整することで、在庫の過剰や不足を防ぐことができます。
さらに、インターナルコミュニケーションは従業員の満足度やモチベーションにも影響を与えます。経営者が社員の意見や要望を真摯に受け止め、フィードバックを行うことで、社員は自身の声が届くと感じ、より働きやすい環境を実現することができます。これにより、社員の定着率や生産性の向上が期待できます。
インターナルコミュニケーションを促進するためには、定期的なコミュニケーションツールやイベントの活用が有効です。社内報やメールニュースレターを通じて情報を共有し、社員同士の交流を促すことができます。さらに、定期的な会議やワークショップを開催し、意見交換や意識共有の場を設けることも重要です。
このような日々の取り組みを積み重ねながら経営業績向上につなげ、組織全体が一丸となり、共通の目標に向かって進むことで、生産性や品質の向上、社員の満足度の向上などが実現されます。経営者は積極的にインターナルコミュニケーションを重視し、従業員との接点を絶やすことなく組織の成長と発展に貢献していく必要があります。
効果的なインターナルコミュニケーションのポイント
弊社ソフィアの調査で、効果的なインターナルコミュニケーションを実現するためには、「対話(Dialogue)」「教育(Education)」「ツール(Tools)」の三本柱をバランスよく組み合わせることが重要であることが分かりました。
ここからは効果的なインターナルコミュニケーションのポイントについて考えてみましょう。
1. 理念・ビジョンの浸透(教育×対話)
具体的なポイントとしては、まずは理念やビジョンの浸透が挙げられます。従業員が企業の方向性や目標を理解し、共有することは非常に重要です。これによって、全体の目標に向かって一丸となって働くことができます。このためには、単にビジョンを唱和するだけでなく、それが日々の業務にどう繋がるかを考える「教育」と、上司部下で意味付けを行う「対話」のセットが必要です。
2. 従業員同士のコミュニケーションの活性化(対話×ツール)
また、従業員同士のコミュニケーションの活性化もポイントの一つです。部署間や階層間の壁を取り払い、情報や意見が円滑に共有される環境を整えることが求められます。定期的なミーティングやチームビルディングの活動などを通じて、自然とコミュニケーションが取れる環境を整えましょう。
ここでは、ChatworkやSlack、Teamsといったビジネスチャットツールの活用が、気軽な「雑談」や「称賛」を生み出すインフラとして機能します。
3. 組織風土の醸成(継続性)
さらに、組織風土も重要なポイントです。日々業務に追われるなかで、企業の価値観や行動指針を唱えながら仕事することはそうはないと思いますが、社内イベントや研修といった機会があればパーパスを意識するきっかけにもなり、一貫性のある活動が実現できます。継続的に取り組んで理解を深めましょう。
4. 情報共有の徹底とメディアの最適化(ツール)
最後に、情報共有の徹底もポイントの一つです。重要な情報やプロジェクトの進捗状況などを適切に共有すると全体の連携がスムーズになります。社内報の発行や内部SNSの活用など、効果的な情報共有手段を導入しましょう。
社内報を発行するにあたり「媒体選択」と「双方向化」は重要なポイントです。紙媒体には一覧性と情緒的価値があり、Web媒体には速報性とログ解析によるデータ活用の利点があります。これらを戦略的に使い分け、一方通行の発信ではなく、社員からのリアクション(いいね、コメント)を引き出す双方向メディアへの転換が求められます。
ヒエラルキー型から自律分散型への組織の変革
従来のトップダウン型のコミュニケーションは、現代のスピード感には対応できません。急速に変化する市場や技術の進展により、従来の中央集権型の組織構造では対応しきれない課題が生じています。そのため、組織は権限を現場に近いところに委譲し自律分散型への移行が進みはじめました。
アジャイルな組織づくりと権限委譲
自律分散型組織は、従来のヒエラルキー型のような上下関係や指示命令の仕組みではなく、フラットな組織構造を持ちます。管理職の役割は減少し、各従業員が自ら考え、自主的に行動し、他のメンバーと連携しながら業務を進めます。このような組織形態は、柔軟性や迅速な意思決定を可能にし、イノベーションの創出にも貢献します。
とくに、現代のVUCA(変動、不確実、複雑、曖昧)な時代では、自律分散型組織が力を発揮します。市場の変動や競争の激化により、組織は素早く対応する必要があるなかで、ヒエラルキー型の組織では情報の伝達や意思決定に時間がかかるため、迅速な行動が難しくなります。一方、自律分散型組織では、各メンバーが自ら判断し行動するため、スピード感を持ったイノベーションが生まれやすくなります。
リモートワーク時代の自己管理と自律
また、リモートワークが普及したことも自律分散型組織への変革を促進しました。従来のオフィスでのコミュニケーションや監督は難しいため、従業員自身が自己管理や自己責任を持ち、業務を遂行する必要があります。自律分散型組織は、リモートワークに適した形態であり、柔軟な働き方を実現することができます。
しかし、自律分散型組織への変革は容易ではありません。従業員の意識やスキルの変革、組織文化の転換など多くの課題があります。組織は、従業員の意欲や能力を引き出すための環境づくりや、情報共有の仕組みの整備などに取り組む必要があります。
変化の激しい時代においては、柔軟性やスピード感を持った組織が競争力を維持するために必要です。組織は、自律分散型への転換を進めることで、イノベーションの創出や従業員の能力を最大限引き出すことができます。
インターナルコミュニケーションがうまくいかない原因の解明
ここからは多くの企業がつまずくポイントを整理します。
まず、経営層がインターナルコミュニケーションの重要性に気がついていないことが挙げられます。双方向のコミュニケーションがなされてはじめて、情報共有や意思疎通がスムーズになり、組織全体のパフォーマンスが向上します。しかし、一方からの発信では不十分であることに気づかず、インターナルコミュニケーションに力を入れない組織も存在します。
「手段の目的化」と主導人材の不足
社内報の発行や1on1の実施自体が目的化し、「何のためにやるのか」というKGI(重要目標達成指標)が設定されていないケースが散見されます。
また、推進するための専任担当者がおらず、総務や人事が兼務で片手間に行っていることも大きな要因です。主導人材(旗振り役)の育成や確保が急務です。
次に、ボトムアップの意思疎通をする体制がないことが原因として挙げられます。上司や役員からの指示や情報共有が一方的に行われる場合、部下や社員の意見やフィードバックが反映されず、組織内のコミュニケーションが偏ります。ボトムアップの意思疎通を促すためには、上司や役員が部下や社員の意見を積極的に受け入れる姿勢が求められます。
さらに、主導する人材を見つけるのが難しいことも、インターナルコミュニケーションがうまくいかない原因として考えられます。コミュニケーションを円滑に進めるためには、リーダーシップやコミュニケーションスキルに優れた人材が必要です。しかし、このような人材を見つけることは容易ではありません。組織内でリーダーシップのある人材を発掘し、育成する取り組みが求められます。
ボトムアップの意思疎通をする体制の構築
現場の声を経営に届ける「逆流の回路」を作る方法を見ていきましょう。ボトムアップの意思疎通をするためには、まず従業員とのコミュニケーションを振り返る必要があります。定期的なミーティングやフィードバックセッションを通じて、従業員の声を聞く機会を設けること、オープンなコミュニケーションチャネルやアイデアボックスの活用などのいくつかのチェックポイントがあります。
デジタルを活用したフィードバックループ
タウンホールミーティングのような対面の場に加え、デジタルツールを活用した常設の意見箱や、匿名でも投稿できるQ&Aセッションを設けることで、心理的ハードルを下げることができます。
重要なのは、集まった意見に対して経営層がどう反応したか(採用したのか、見送ったならその理由は何か)を可視化することです。従業員が自由にアイデアを提案できる環境を整えることで、意思疎通がスムーズに行われます。上司やリーダーが従業員の意見を真剣に受け止めることにも意識を向けましょう。従業員が提案したアイデアや意見に対して、フィードバックや感謝の言葉を伝えることで、従業員はより積極的に参加し、意見を出すことができます。上司やリーダーは、出された意見を尊重し組織全体の利益につながるような意思決定を行うことが求められます。ボトムアップの意思疎通をする体制の構築には、時間やリソースが必要です。従業員のアイデアや意見を集約し、分析するためには適切な時間と人員を確保しなければなりません。
また、従業員の提案に対して具体的なフィードバックやアクションプランを示すことも重要です。従業員が自身の意見が実際に反映されることを実感できれば、より意欲的に参加することができます。ボトムアップの意思疎通をする体制の構築は、組織の活性化や創造性の向上につながります。従業員は自身のアイデアや意見が重要視され、組織の一員としての自己実現感を得ることができます。結果として、組織全体のパフォーマンスが向上し、競争力を高めることができるでしょう。
またこのような取り組みは、持続的な成長と発展のために欠かせない要素です。従業員のアイデアや意見を大切にし、積極的に取り入れることで、組織はより柔軟に変化に対応し、新たな可能性を追求することができます。
効果的なインターナルコミュニケーションの手法
具体的な手法を「対話」「教育」「ツール」の観点から整理します。効果的なインターナルコミュニケーションの手法は、企業内で円滑なコミュニケーションを促進し、従業員の満足度と生産性を向上させる重要な取り組みです。インターナルコミュニケーションの手法には、さまざまな方法があります。
社内報の発行(Web・動画・紙)
社内報は、企業内での情報共有やコミュニケーションを促進するために効果的な手法です。定期的に発行される社内報には、組織の最新情報やプロジェクトの進捗状況、従業員へのメッセージなどが掲載されます。社内報を通じて従業員が互いの活動や成果を知ることで、組織全体の連帯感やコミュニケーションが深まります。
近年では、Web社内報による閲覧ログ解析を活用し、どの部署がどの記事に関心を持っているかをデータで把握し、企画に活かす動きが進んでいます。
社内イベントの開催
社内イベントは、従業員同士の交流やコミュニケーションを促進する方法です。たとえば、テーマパーティーやスポーツ大会など、楽しい活動を通じてチームビルディングや協力関係を築くことができます。また、社内イベントでは上司と部下が一緒に参加することもあり、距離を縮める機会となることもあります。
オフィス環境の整備
快適なオフィス環境は、従業員のコミュニケーションを促進する効果があります。たとえば、共有スペースやカフェテリアの整備、コラボレーションスペースの設置などが挙げられます。また、オープンスペースやフレキシブルな作業環境を導入することで、柔軟なコミュニケーションが生まれるでしょう。
1on1ミーティング(質の改善)
1on1ミーティングは、マネージャーと従業員の個別面談です。これはコミュニケーションの重要な手段であり、従業員の声を直接聞くことで問題や課題を早期に把握し、解決策を見つけることができます。定期的かつ一対一で行われるこのミーティングは、信頼関係を構築し、開かれたコミュニケーションを推進します。形骸化を防ぐためには、上司への「傾聴スキル研修」や、評価面談と切り離した「対話の時間」としての定義付けが必要です。
社内研修・グループワーク(EI開発)
従業員のスキルアップやチームワーク強化のために、定期的な社内研修やグループワークを実施しましょう。トレーニングセッションやワークショップを通じて、従業員同士の知識や経験を共有し、相互学習を促進します。また、プロジェクトにおけるチームビルディングや問題解決力の向上にも効果的です。感情知性(EI)を高める研修を導入することで、自己理解と他者理解を深め、対話の質を根本から向上させる取り組みも有効です。
社内表彰の実施
優れた成績や貢献をした従業員を公的に認めることは、インターナルコミュニケーションを活性化させる重要な手法です。社内表彰制度を設け、功績があった人々に感謝の意を示しましょう。これによって、従業員は自身の仕事への取り組みを認められ、モチベーションが高まります。
タウンホールミーティング(対話集会)
タウンホールミーティングは、企業トップと従業員全体が対話する場です。これは情報共有だけでなく、質問や意見交換が盛んに行われる場でもあります。従業員が経営陣に直接意見を発言できる機会を持つことで、よりオープンなコミュニケーションが交わされます。
インターナルコミュニケーションの実施における注意点
次に、施策を実行する際のマインドセットについてみていきましょう。社内での効果的なコミュニケーションは、どのような点について注意しなければならないのでしょうか。インターナルコミュニケーションの実施について考えていきましょう。
意見の押し付け合いにならないようにする
まず、意見の押し付け合いにならないようにすることが重要です。社内では、さまざまな立場や考え方を持つ人々がいますので、一方的な意見を強制することは避けるべきです。すべてのメンバーの意見を尊重し、議論を通じて共通の目標に向かって進むことが大切です。
少数派の意見も取り入れるようにする
意見の多様性は、新たなアイデアや切り口を生み出すために重要です。少数派の意見に耳を傾け、その意見を取り入れることで、より多くの視点を得ることができます。これにより、より良い意思決定ができる可能性が高まるため、少数派の意見も聞きもらさないようにしましょう
ダイバーシティへの配慮(外国人従業員など)
外国人従業員や障がいを持つ従業員など、多様なバックグラウンドを持つメンバーへの情報保障や配慮も忘れてはなりません。多言語対応やユニバーサルデザインの視点を取り入れることで、誰一人取り残さないインクルーシブなコミュニケーションを実現できます。
さらに、これらの意見を円滑に吸い上げるためには、適切な手法やツールを選ぶことも重要です。たとえば、定期的な会議や報告書、メールやチャットツールなど、情報の共有や意見交換を行うためのコミュニケーション手段を適切に選択する必要があります。また、コミュニケーションのスタイルや言葉遣いにも注意を払うことで、円滑なコミュニケーションを実現することができます。
インターナルコミュニケーションの継続的な評価と改善
やりっ放しにしないためのPDCAサイクルについてみていきましょう。まず、インターナルコミュニケーションの評価は、定期的なアンケート調査やフィードバックの収集を通じて行います。従業員の意見やフィードバックを収集し、コミュニケーションの課題や改善点を把握することが重要です。また、上司や部門間のコミュニケーションの質や頻度を評価することも重要です。
1on1(ワンオンワン)とは?目的やメリット、部下の成長を促すテクニックや話題例を紹介
最近は米国シリコンバレー由来の「1on1(ワンオンワン)」という新たなミーティングの手法がトレンドになっています…
定量的なKPIの設定とモニタリング
効果測定を具体化するために、以下の指標(KPI)を設定することが推奨されます。
・具体的なKPI例
・浸透度
・経営理念の認知度、戦略への共感度(%)、社内報の閲覧率・読了率
・活性度
・1on1実施率、社内SNSのアクティブ率、投稿数、コメント数
・成果
・従業員エンゲージメントスコア、離職率、eNPS(推奨度)
評価結果をもとに、改善策を導入することが必要です。たとえば、情報共有のプラットフォームやツールの導入、定期的な会議や報告書の改善、コミュニケーションスキルのトレーニングなどが考えられます。改善策は、従業員の意見やフィードバックを踏まえて決定することが重要です。
さらに、改善策の効果を定期的に評価することも重要です。改善策の実施後、従業員の満足度や業務効率、コミュニケーションの質などを再評価し、必要な場合は再度改善策を見直すことが必要です。継続的な評価と改善により、コミュニケーションの課題を明確化し、より良い職場環境を築くことができます。
インターナルコミュニケーションの継続的な評価と改善は、組織の成果や従業員の満足度向上に深く関わってきますので組織として、コミュニケーションの課題や改善点に対して積極的に取り組み、従業員の声を反映させることが重要です。継続的な評価と改善を行うことで、より良いコミュニケーション環境を構築し、組織の成長と発展を促進することができます。
インターナルコミュニケーション経営の事例
実際の企業がいかにして課題を乗り越えたか、具体的な事例を紹介します。
ユーグレナ:完全オンライン形式の総会による一体感醸成
ユーグレナを使ったヘルスケア商品などで有名な株式会社ユーグレナでは、コロナ禍の中、2021年4月に完全オンライン形式で、グループ総会を実施しました。総会の前後には、MicrosoftのSwayを活用したオンラインパンフレットを作成。総会の内容を発信し、簡単にコンテンツを確認できるようにしました。結果、情報共有に役立ったのはもちろん、今後の総会への参加モチベーションを高めることにも寄与しました。インターナルコミュニケーションによって、社員の意欲向上を実現できたのです。
三井不動産:オウンドメディアによる企業風土の変革
三井不動産グループの新規事業創出を支援する、三井不動産株式会社のビジネスイノベーション推進部は、企業風土の刷新のための情報ポータルサイトを作りました。同社はもともと体育会系のカルチャーが強く、創造性やクリエイティビティを発揮しにくい雰囲気がありました。そこで、情報発信の拠点となる「WARP PORTAL」を立ち上げ、社内の新規事業事例を紹介したり、さまざまな起業に取材をして記事を掲載したりしたのです。企業風土を刷新し、新しいことにチャレンジする人を応援する気風を創っています。
NTTデータ:中堅社員の視座を高める経営参画
NTTデータでは、中堅社員の育成を促すために、ワーキンググループ型のプログラムを実施しました。同社の中堅社員は現場で経験を積んできた人が多く、目の前の課題に対して適切に効率よく取り組むことができます。しかし彼らを将来のミドルマネージャーに育てるためには、より抽象的な問題への思考能力をつける必要がありました。そこで、通常は経営層が策定する「新中期経営計画」を、中堅社員に真剣に考えてもらうワークを実施。最終的に経営層へプレゼンする場も設け、マインドの向上、エンゲージメントの向上を促しました。
トヨタ自動車:現場主導型DXとコミュニケーション
トヨタ自動車では、製造現場の「カイゼン」文化にデジタル技術を融合させ、現場主導型の生産革新を進めています。経営層が戦略的な環境整備を行い、現場がボトムアップで改善サイクルを回すこの取り組みは、コミュニケーションとDXが一体となった好事例です。
まとめ
本レポートでは、大企業の経営層が抱えるインターナルコミュニケーションの悩みについて、最新の調査データと具体的な解決策を交えて解説しました。効果的なインターナルコミュニケーションのポイントとして、組織の変革や意思疎通の体制の構築が挙げられます。ヒエラルキー型から自律分散型への組織の変革を行うことで、従業員の意欲や創造性を引き出すことができます。
また、インターナルコミュニケーションがうまくいかない原因を明確にし、改善策を導入する必要があります。弊社ソフィアの調査で見えてきた「経営戦略への共感がわずか1割」という現状を変えるためには、「対話」「教育」「ツール」の三本柱をバランスよく推進することが不可欠であると考えます。
効果的なインターナルコミュニケーションの手法として、満足度調査やアンケートの実施、社内イベントの開催、社内報や日報の活用、ミーティングの重要性、ビジネスチャットの導入などがあります。これらの手法を組み合わせて、従業員同士のコミュニケーションを促進し、情報共有を円滑にしましょう。インターナルコミュニケーションを検討する際にぜひ参考にしてください。






