企業内大学に注目!社内研修制度との違いとメリット

#ビジネススキル#ラーニングデザイン#研修・ワークショップ

26.Oct.2020

企業内大学は、コカ・コーラやソフトバンク、東芝などの大手企業が続々と導入している人材育成の新たな手法です。従来の社員研修とは異なり、企業が一方的に行うものではなく、社員自身が受講したいと自発的に声を上げなければ実施されません。しかし、社員と会社が手を取り合って企業内大学を開設することで、双方に大きなメリットが生まれます。
本記事では、企業内大学の概要と注目される理由、実際に実施している事例について解説します。

企業内大学が注目される理由

企業内大学の設置は、多くの企業が直面する人材不足の解消策になるとされています。若い世代は企業を「成長する場」と考える傾向があり、その価値がないと感じたらすぐに離脱してしまうのです。そのため、稀少な人材に企業が選ばれるためには、企業内大学のように教育制度を整えることが効果的な手段のひとつとなっています。
また、こうした制度は入社後の社員を定着させるという面でも効果を発揮し、動機づけの一環にもなるでしょう。
このように、企業内大学の開設は従来の人材育成とは異なるメリットを企業と社員の両方にもたらします。

企業側のメリット

企業側のメリットは大きく3つあります。

・社員の能力向上

企業内大学は社員が自発的に取り組むものなので、意欲の高い社員の能力をさらに伸ばすことができるため、集合研修よりも効率的に教育を施すことができるといえるでしょう。また、特定のポジションに就くために必要なスキルを段階的に用意することで、早期からの育成を見込むことができます。そして、そのカリキュラムにのせた人材の離職を防ぐという副次的な効果も期待できそうです。

・経営層の育成

企業内大学では組織や経営陣の考え方・理念を社員へダイレクトに伝えられるため、経営層育成に向けたカリキュラムを実施するには最適な場と言えます。次世代リーダー・経営者育成研修はトップ層に求められる資質が各々の企業によって異なるものの、現状は外部の研修会社による一般的なコンテンツに収めた内容で集合研修を行うことが多いようです。しかし、企業内大学では現リーダー・経営者の意向や企業理念を踏まえて講義やディスカッションを柔軟に行えるため、外部委託の研修よりもビジョンやミッションが浸透しやすく、それぞれの企業に合った経営層の育成が可能となります。

・成長意欲が高い求職者へのアピール

前章でお伝えしたとおり、今の人材は成長できる環境を求めています。そのため、企業内大学を設置することは、求職者に対して大きなアピールとなります。成長意欲が高く、入社してからも学び続ける優秀な人材を確保し、入社後も囲い込む効果的な施策といえるでしょう。

社員側のメリット

企業内大学には社員側にも大きなメリットがあります。

・専門的な知識を身につけられる

企業内大学で用意できるコンテンツは、集合研修と比べると多種多様です。また、特定のキャリアを構築するための学習カリキュラムを設けることもできるため、長期的に学習を続け、現場で実践し、生きたスキルを習得することもより現実的になるでしょう。

・講師になることでスキルアップにつながる

企業内大学では社員を講師として登壇させることもあります。知識をアウトプットすることによって、自分自身の理解を深めることができます。また、伝え方という面でのコミュニケーションスキルも同時に磨かれることになります。教えるという行為を通じて得られるものは多いでしょう。

・他部署とのコミュニケーション機会になる

企業内大学では部署・部門を超えた人たちが同じ場所に集まることから、コミュニケーションを通して自然と新たな発見が生まれます。同じ方向を目指しているという意識もお互いを高め合う良い刺激になるでしょう。社内SNSなどをあわせて活用し、オフラインとオンラインのコミュニケーションを並行しながら全社に伝えていくことで、その輪はどんどんと大きくなり、より多くの人を巻き込んでいくはずです。

一般的な社員研修制度との違い

ここからは、従来の社員研修制度と今回取り上げる企業内大学制度との違いについて詳しく見ていきましょう。

目的

〈社員研修〉
社員研修は、業務上必須とされるスキルを修得させるために用いられます。コンプライアンス研修や情報セキュリティ研修、プライバシーマーク研修などは社員の希望にかかわらず全員が必ず知っておくべきものなので、企業内研修ではなくこれまで通り社員研修(eラーニング含む)で実施すべきものといえるでしょう。

〈企業内大学〉
一方、企業内大学は社員の「学びたい」「成長したい」という意欲に企業が応えるものであり、彼らの能動的な学習とキャリアアップを目的とします。「何を学びたいか」「どのように成長したいか」という個人の指向によって学ぶ内容が多様化するという点が社員研修と異なります。

講師陣

〈社員研修〉
社員研修は、セミナーを提供する企業の外部講師を招聘して実施することが主です。プロの講師が講義を行うため一定水準のレベルに到達した学習内容となっていますが、自社向けにカスタマイズされていないというデメリットもあります。

〈企業内大学〉
企業内大学では、外部講師に加えて自社の社員を講師に起用することもあります。社内のロールモデルたる人材が実際に手ほどきをしてくれるというのは、受講者にとっても刺激にもなるはずです。ただし、プロの講師ではないため「教えるスキル」が十分に育成されるまでにある程度の時間を見込む必要があります。このような課題を解決するために「講師になるためのプログラム」を企業内大学に設けてもよいかもしれません。

講座内容が決まるまでの流れ

〈社員研修〉
社員研修では、人事部門が主体となって経営課題や事業課題を抽出し、それを解決するための内容を講座とします。トップダウンでコンテンツが決まるとも言い換えられるでしょう。

〈企業内大学〉
企業内大学は逆にボトムアップ型となっており、社員の「こんなことを学びたい」がコンテンツになることが多いようです。もちろん自社の経営や事業とあまりにもかけ離れたものでは現場に即さず意味をなさないため、前提としてこれらの現状を社員に理解してもらったうえで、コンテンツの起案をしてもらう必要があるでしょう。

企業内大学の普及が進んでいないのはなぜ?

企業内大学という制度は、現段階ではそれほど多くの企業に普及してはいません。
これには主に3つの理由があります。

・身につけさせる能力の定義が難しい

社員に学びたいことが多々あるとしても、それがそのまま企業が提供する学習になるわけではありません。身につけられる能力が先述のとおり自社の経営課題や事業課題を解決するもの、もしくは関連するものである必要があります。無闇にコンテンツだけを増やすと形骸化するリスクも生みかねません。

・コンテンツ企画をするのが難しい

もしお題はあっても、それをコンテンツにするのは極めて難しいものです。学習の形式も、講義やディスカッション、ロールプレイ、eラーニングとさまざまなものがあります。講師を任された当人だけでなく人事部門が全面的にサポートしないと具体化は困難でしょう。

・講師の選出が難しい

社員だけでなく、マネジメント層・経営層に関しても、講師経験のある人は多くないでしょう。優れた選手が優れた監督になるとは限りません。また、周囲からすれば適任だとしても本人が講師を望むかどうかは別です。講師の選出にあたって自社の独自基準をどう策定するかもポイントになります。

・仕組みの構築が難しい

企業内大学は、受講者がニーズに合わせて受講するという性質上、多様なニーズに合わせ、メニューの数が多くなりがちです。また、誰が受講予定で、誰が実際に受講したかなど、履歴の管理も煩雑になります。数多くの研修メニューと多様な受講者グループを管理するためには、いくつかの作業の自動化を手助けするツールの導入も重要です。

企業内大学の事例

最後に、企業内大学をすでに実践している企業の事例を紹介します。

コカ・コーラカンパニー「コカ・コーラユニバーシティ」

コカ・コーラ社の日本法人であるコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社は、次世代リーダーの育成を主な目的として「コカ・コーラ ユニバーシティ ジャパン(CCUJ)」という企業内大学を2020年に設立しました。
2020年度は各本部から選抜された一般職と日本コカ・コーラ社から計80名が参加し、キックオフミーティングでは同社の代表取締役社長カリン・ドラガンや人事本部長からの激励メッセージ、自己紹介セッションを実施したとのことです。今後は約10カ月間、デジタルラーニングと対面型を組み合わせたトレーニングを実施するとしており、動向については要注目です。

ソフトバンク株式会社「ソフトバンクユニバーシティ」

ソフトバンク株式会社の企業内大学である「ソフトバンクユニバーシティ」は、設立が2010年と日本でもかなり早期に導入されています。各コースの講師は約8割が同社の社員ということで、業務で得たノウハウ(知恵・知識・経験)の体系的なシェアに役立っている上、「明日からできる、使える」ことを重きに置いているため非常に実践的です。
プログラムの内容は、学びたい社員が自ら挙手をして自社事業の推進に必要なスキルを修得する「ビジネスプログラム(約80コース)」と、役職・役割に応じたスキルを修得する「階層別プログラム」の2つがあります。
社員の主体性を尊重しているという言葉どおり、受講者の満足度が90%以上と、成功例としては十分な事例でしょう。

東芝ソリューション株式会社「Toshiba e-University」

東芝ソリューション株式会社の人材開発を目的とした企業内大学である「Toshiba e-University」も2002年設立とかなり歴史のあるものです。
「Toshiba e-University」には一般的な大学と同じく「学部」があり、受講者が自分の目標とするキャリアを実現するために所属を決めます。カリキュラムは基礎と専門に分けられており、集合研修やeラーニングの研修を受講できます。
さらに、「My Study Room」というマイページ機能から学習状況の確認・管理や受講申し込みのできる点はLMS(ラーニングマネジメントシステム)に近いものです。
また、タレントマネジメントシステムや社内SNSとの統合も検討するとしており、企業内大学でありながら従来の研修方法も包括した人材育成のプラットフォームを目指しています。

まとめ

企業内大学・社内大学のポイントは、「内製化」と「知恵を実務に活かすサイクルを作ること」です。
内製化することで社内にノウハウを蓄積できますし、実務に活かせる学習コンテンツが用意できれば、社員も自発的に学習する意欲を持てるはずです。ただし、この企業内大学が自走し始めるまで、仕組みの構築には相当な負荷がかかります。弊社でも、企業内大学・社内大学の内製化を支援しておりますので、進め方やツール選定などに迷ったら、ぜひ一度ご相談下さい。

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