労務管理が難しい在宅勤務におすすめのツールをご紹介!

在宅勤務が浸透し始めている中、コーポレート部門では労務管理の規定変更に戸惑っているケースも多いのではないでしょうか。

在宅勤務をはじめとしたテレワークには厚生労働省が一定のガイドラインを設けているものの、運用の詳細までは網羅されていないことや、企業によって環境が異なることからそのまま適用できない点も多々あります。さまざまな企業で在宅勤務導入時から曖昧になっていた労務管理の問題が少しずつ指摘されるようになり、在宅勤務を推進する企業の課題として挙げられています。

そこで本記事では、在宅勤務における労務管理の課題について整理しつつ、これらを解決するためにおすすめのツールをあわせてご紹介します。

在宅勤務は労務管理が難しい

物理的な出退勤がなくなる在宅勤務においては、労働時間の管理がとても困難です。また、業務時間中の様子が目視で把握できないので、状況の把握も難しくなります。
コーポレート部門だけでなく、マネジメント層にとっても頭の痛い問題であるといえるでしょう。まずは、労務管理においてどのような点が課題になりうるかを挙げていきます。

勤怠管理の課題

一番の課題はやはり勤怠管理です。始業・終業時刻の管理はいうまでもなく、就業時間中にどんな業務をどのくらいのペースで行い、どれだけの成果を上げたか、すべてを網羅した上で、上司と部下、チーム間で不平不満のない運用が求められます。

またこれらは人事評価、ひいては給与にも影響するため、センシティブな問題につながる点にも注意してください。これらはツールの導入だけでは解決が難しいのですが、詳細は後述します。

評価制度の課題

次の課題は「評価制度」です。日本企業のほとんどは海外のような完全成果主義型ではなく、業務へ取り組む姿勢や、個人の目標を達成するまでのプロセスなども評価指標に含まれます。ですが、業務の様子が可視化できないリモート勤務になってしまうと成果物以外で評価をすることが難しくなります。営業職であれば売上がそのまま評価になりますが、デスクワーク職においてはこれまでの評価指標の多くを変えざるをえなくなるはずです。

実は、日立や資生堂といった大手企業が、海外で主流の「ジョブ型」と呼ばれる雇用形態を導入し始めていることをご存知でしょうか。これは、日本固有の「人に仕事を割り当てる」という「メンバーシップ型」の人材採用と逆に、「仕事(役割)に対して人を割り当てる」という形態を指します。

「人に仕事を割り当てる」メンバーシップ型では、従業員をいくつかの等級に分け、仕事内容にかかわらず同じ等級であれば同じ賃金が支払われていました。しかし、ジョブ型においては割り当てられた仕事の達成度によって賃金が支払われることになります。そうなると、どのような基準で人材を評価するかというパフォーマンス測定が問題となります。各職務によって内容や程度がバラバラなので、評価基準が複雑化するわけです。

すべての日本企業がすぐにジョブ型の雇用形態に移行することはないでしょうが、企業のグローバル化に伴ってそのような動きが起こっていることも把握しておくとよいでしょう。

コミュニケーションの課題

HR総研の調査によると、テレワークを「実施しない」企業の理由として4番目に「コミュニケーションが不安(27%)」が挙がっています(なお、「勤怠管理が困難」は2番目)。

コミュニケーションには、「上司から部下への業務指示を行うもの」と「部下から上司への報連相を行うもの」との2方向があるほか、「雑談」のようなゆるい会話もあります。前者は業務遂行のために必須ですが、後者もチームビルディングや信頼関係、ひいてはコミュニケーションコスト削減のために欠かせないものです。

チームメンバーの関係がしっかりと構築されていないと、労務管理にも不平不満が生じやすくなるものです。「労務管理の課題」の項で「ツールだけでは解決が難しい」とお伝えしたのはこれが理由でもあります。

労務管理の課題を解決するツール

では、労務管理における課題を解決するためにはどのような対策を行うべきなのでしょうか。まずはツールについて、おすすめを紹介します。

勤怠管理ツール

勤怠管理はツールで解決しやすいものです。ポイントは、勤務時間の記録ができることと、給与システムと連携していることです。

・ジョブカン勤怠管理

https://jobcan.ne.jp/

クラウド型の勤怠管理システムではシェアNo.1を占める「ジョブカン勤怠管理」は、変形労働・フレックス・裁量労働といった複雑な勤怠管理に対応していることから、在宅勤務での勤怠管理にも適しています。打刻方法が多彩なほか、それらすべてが社会保険労務士によって監修されているため、法令を遵守しながら正しい勤怠管理を施行できます。工数管理やデータ集計にも対応しており、これらを各種会計・給与ソフトと連携させることができる点も優秀です。

・jinjer勤怠

https://hcm-jinjer.com/

契約継続率99.4%、サポート満足度91.6%(いずれも2019年10月末時点)とユーザーから高い信頼を得る「jinjer勤怠」。クラウド上でマルチデバイスでの勤怠管理を実現するほか、労働時間の自動集計、経費精算、給与管理も網羅しています。これらの機能を必要に応じて低価格で組み合わせて導入できる点も大きな魅力といえるでしょう。

・人事労務freee

https://www.freee.co.jp/hr/attendance-management/

freee自体は会計ソフトで有名ですが、勤怠管理にも対応しており、やはり一番の強みは実績の豊富な会計サービスとのシームレスな連携でしょう。勤怠管理自体も先に挙げたツールと同じく多様なデバイス・コミュニケーションツールから行うことができ、働き方改革に対応した労務管理システムを標榜しているので、すでにfreeeを導入されている企業は導入がよりスムーズになるはずです。

コミュニケーションツール

オフィスでは隣の席の社員に気軽に話しかけることができますが、在宅勤務だと相手の状況が見えないため話しかける際のハードルが高くなります。そこでコミュニケーション量の減少を防ぎ、スムーズに業務を進めるためにはコミュニケーションツールの活用が有効です。コミュニケーションツール活用のポイントは「できるだけ各自の状況を可視化する」「コミュニケーションに最低限のルールを設ける」の2点です。

話しかけたい相手の在席状況が確認できる「プレゼンス機能」や、普段使用しているスケジューラーと連携できる機能がついていれば、相手の状況を視覚的に確認した上で都合の良いタイミングで話しかけることができますし、労務管理上も社員の勤務状況を確認できて便利です。

ただし、いくら相手の状況が可視化されていても、それを無視して話しかける人がいたり、スケジューラーとコミュニケーションツールが連携されていても、各自がスケジューラーにその日の予定を登録していなければ、可視化の意味がありません。ツール導入と同時に、最低限の利用ルールを用意し、共有しておくことが不可欠です。

これらの点に留意して、自社の勤務体系や既に導入されいている業務ツールの状況に合ったコミュニケーションを選択してください。

・Microsoft Teams

https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/microsoft-teams/group-chat-software
マイクロソフト社のチャットツール「Teams」は、テキストチャットやボイスチャットなどチームでのコミュニケーションを包括しています。また、プレゼンス(在席)機能も備えているため、社員が業務を行っているかどうかを管理者が確認することもできます。

・Zoom

https://zoom.us/jp-jp/meetings.html

Zoomは2020年初頭にビデオチャットサービスで最大のシェアを占め、その後セキュリティの脆弱性が指摘されて一時期は企業利用が減りましたが、現在はほとんどの問題が解消されています。操作が簡単で、社内外のやりとりが簡単という点も魅力です。

・Slack

https://slack.com/intl/ja-jp/

Slackは組織内で「チャンネル」を作り、自由に発言のできるテキストチャットツールです。先に挙げた勤怠管理ツールのいくつかと連携しており、Slack経由で打刻をすることもできます。また、多くのサードパーティアプリとも連動させることができ、RSSを利用したニュース配信やオリジナル絵文字の作成、チーム全体へのリマインダーなど、ユニークな使い方も可能です。

ただし、これらのICTツールを通すとコミュニケーションする内容が進捗報告や報連相など業務に必要な用件に偏りがちです。そのため、ランチ時にZoomを解放して顔を見せ合う機会を作ったり、Slackに雑談用のチャンネルを作ったりと、ゆるいつながりを共有する場を設けることも検討してください。

これらのツールをフル活用し、メリハリをつけながら、在宅勤務で不足しがちなコミュニケーションを補うよう心がけることが重要です。

評価制度の課題はツールでは解決しない

評価制度については、ツールではなく制度を見直す必要があります。在宅勤務で導入をおすすめする評価制度が「役割等級制度」です。

先述したように、日本では、人に職務を割り当て、職務の難易度・重要性や遂行能力によって等級を決定する「職能資格制度」(メンバーシップ型とも呼ばれる)が多くの企業で採用されており、近年になって、あらかじめ定義された職務に人を当てはめる「職務等級制度」(ジョブ型とも呼ばれる)を導入する企業も増え始めています。
そして、在宅勤務でおすすめの「役割等級制度」(ミッション型とも呼ばれる)は、経営目標を達成するために社員が果たすべき役割(ミッション)を定義し、この役割に等級を持たせるというものです。そして、役割に対して人をアサインするという手法をとります。職務は一度定義してしまうと途中で軌道修正が難しいですが、役割であれば修正が比較的容易な場合が多いという点が、この制度のメリットです。

年功序列に象徴されるように、もともと日本企業では主流の職能資格制度では従来、人に対して賃金が支払われていたため、パフォーマンスの見えづらい在宅勤務で顕著に評価の課題が生じ始めました。とはいえ、一人ひとりに割り振られる業務の成果が明確な「職務等級制度」に移行するには、社内に存在する業務を一つひとつ定義して評価の基準を設ける必要があり大変な手間がかかる上に、各人の業務の範囲が明確になることで社員間の協力や連携が生まれにくくなったり、定義しきれない業務が放置される等のデメリットが懸念されます。

しかし、役割等級制度は、それぞれの責任が明確でありながらも、役割を全うするために社員が自ずとあらゆる手段をとり、周囲を巻き込みながら主体的に業務に関わる必要があります。そのため、業務の進め方については個人の裁量が広がりつつも、より全体最適での協力体制やナレッジシェアが組織内に発生しやすくなり、評価の面でも基準を明確にしやすいのです。これらの点において、役割等級制度は在宅勤務と相性が良いといえます。

今後は、企業において各社員が果たすべき役割に応じて賃金が支払われるべきと考えます。それによって社員は自分の役割に一層責任を持つようになるようになるでしょう。これは、在宅勤務の導入にかかわらず、グローバルの熾烈な競争の中で日本企業が生き残っていくために、そう遠くないうちに直面する課題であったともいえます。

ただし、在宅勤務の導入と評価制度の改革を同時に行うことは率直にいうと極めて困難です。評価制度をこれまで実現できなかった役割等級制度へと切り替えること自体が難しいにもかかわらず、それを在宅勤務というリモートの形態で実現することは至難の業です。

そうはいっても、先述のとおりどちらも避けては通れない課題なので、まずは評価制度の見直しを図りつつ、現場のフィードバックを得ながら在宅勤務へと徐々に適用していく流れがよいでしょう。

ツールも重要だが評価制度の見直しも忘れずに!

在宅勤務における労務管理は、テクノロジーで解決できるものと、ルールを見直すことで解決できるものと両方が存在します。そのどちらが欠けていても、どこかで無理が生じることになるでしょう。

ツールの導入だけで比較的容易に解決できるものもあれば、評価制度のように長い時間をかけて試行錯誤をしていくものもあります。まずは自社で生じうる課題を洗い出し可視化したうえでどういった施策が有用なのかを検討し、労務管理を円滑に運用する計画を立てるようにしてください。

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