パーパス経営における課題は?課題解決のためのポイントと具体例を解説

「パーパス経営」とは、社会における自社の存在意義を掲げたパーパスを軸に行う企業経営のことです。変化が早く不確実性が高い昨今のビジネスシーンで注目を集めています。しかし、パーパスを策定したものの、思うような効果が得られていない企業も多いのではないでしょうか。この記事では、パーパス経営の概要から問題と事象、課題の解決方法まで解説していきます。

パーパス経営とは

「パーパス(Purpose)」とは、直訳すると「目的・意図」という意味になります。ビジネスにおいては、企業が何のために存在し、どのように社会貢献をしていくのか、企業が社会に対して持っている存在意義を意味する言葉として使用されています。
「パーパス経営」とは「企業の社会における存在意義を問い、存在意義を軸にした経営を行うこと」を指します。利益創出を目的とした企業活動は社会の変革と同時に、さまざまな社会問題を生み出しました。そのような課題を解決する主体として企業が注目を集めたことを背景に、パーパス経営が重要視されています。ここでは、アパレル企業のパタゴニアの事例にスポットライトを当て、彼らが「パーパス」という言葉ではなく「アカウンタビリティ」という言葉を使用していることです。パタゴニアが使用する文脈では、企業が自然環境を含めた社会全体に対して説明責任を負うことを意味します。現代においては、企業が主役で、自然環境や社会環境が従属すると考えられていましたが、パタゴニアでは逆の立場を取り、自然環境や社会環境が主役であり、人間や企業はその中の一部分に過ぎず、環境や社会が主役であり、企業や人間はその中のプレイヤーであるという考え方にあります。パーパスという存在意義の「存在」を経済から社会や環境において、社会課題を引き受けていくというのがパーパス経営です。

パーパス経営について詳しく知りたい場合は、下記の記事をご参照ください。

日本と欧米ではパーパス経営の課題が異なる

パーパス経営を考える際、日本と欧米では経営スタイルに違いがあります。日本では長期的な視点で経営を行い、従業員との関係が重視されます。一方で欧米では短期的な利益追求が一般的であり、日本社会という大きな枠組みにおける“企業の存在意義”を表しています。日本には「三方良し」「企業は社会の公器」であり、日本には創業100年を越える長寿企業が世界で最も多く存在し、日本文化にも、人間が社会や環境の一部に過ぎないというモチーフが、あちこちにあり、パーパスという概念はむしろ日本的とも言えます。

しかし、パーパスをステークホルダーにコミュニケーションするということにおいては、欧米企業と比較して、日本企業は弱いと言っても言い過ぎではありません。例えば、社員や従業員とのコミュニケーションは、大きく違います。欧米企業はジョブホッピングを前提とした社員は企業に所属します。つまり、早期に成果や結果を出し次の転職先で更に良い条件で雇用してもらおうと考えることが普通です。従って社員は、企業から求めれている事や課題を企業からのコミュニケーションを能動的にキャッチアップします。従ってパーパスという根本的メッセージに関して敏感であり理解しようと努力します。また企業側は、下手なコミュニケーションをすれば、社員にそっぽ向かれるため、コミュニケーションには多大な労力を掛けます。

日本企業は長く終身雇用を続けているため、理念やパーパスを共有する事は苦労してこなかった歴史があります。しかし、日本も人材流動性が高まる中、パーパス策定を契機に伝える力や共感する社員を創造する事は重要です。

パーパス経営の効果

パーパス経営の効果は大きく2つです。
1つ目は、企業としての存在価値を示すことで社会からの信頼を獲得できることです。企業活動を通して社会貢献に取り組む姿勢を推進すると、取引先や消費者からの評価が高くなります。たとえば、アパレル企業が環境問題の解決をパーパスとして掲げ、衣類のリサイクルに取り組む活動があったとします。企業活動と社会問題が密接に絡み合うことで、その企業だからこそ成し遂げられる価値を社会に示すことができ、信頼性の向上につながります。
2つ目は、企業の競争力強化です。社会の変化に合わせて消費者のニーズも多様化していきます。そのような時代で企業が競争に勝つためには、顧客のニーズに応える商品やサービスを提供し続けることが必要でしょう。パーパス経営を通して企業の存在価値を見直すことで、これまでにないイノベーティブなビジネスモデルを確立する可能性が期待できます。

パーパス経営の課題と事象とは

パーパス経営を行う際にはどのような課題が潜んでいるのでしょうか。パーパス経営がうまく推進できない事象と合わせて、解説していきます。

現場の改革に至らない

パーパス経営は、企業全体にパーパスが浸透された状態で行う必要があります。冒頭でも書いた通り、パーパス経営は社会課題を解決することが大きな目的になっているため、長期的視点に基づいてことを進めます。ところが経営層がパーパスを掲げた段階で満足してしまい、現場の改革に至らないケースがあります。具体的にはパーパス経営を推進する前に、従業員への浸透活動が必要にもかかわらずパーパスを策定したことで従業員の意識改革に効果があると思い込んでしまうケースです。現場としては収益やビジョンにむかって業務を進めている一方、パーパス経営が収益性や事業合理とつながらないと、パーパス経営の浸透を阻害する要因になってしまいます。
パーパス経営による効果を得るためには、パーパスの目的や意図を丁寧に説明し、共有することが大切です。また、パーパス経営によって目指すべき意識改革が進んでいるのか、定期的に確認しましょう。

事業の発展につながらない

パーパスを掲げただけで満足してしまい、取り組みを実行できていないケースの場合、事業の発展にはつながらないでしょう。パーパス経営の宣言が事業の発展につながらない場合、かえって信頼性を低下させてしまう可能性もあります。自社の特徴をよく分析したうえで、実現可能なパーパスを策定することが大切です。

パーパスを本気を取り入れ、世界をリードすることができれば、日本経済が打開されるできかもしれな事業が産まれる可能性はあります。以前、京都議定書で環境問題に関する国際協定が初めて結ばれた国際会議が日本で行われたのは、日本の環境技術が高く評価されていたからです。また、日本経済は四面楚歌の状況ですが、日本企業が、社会に対して商品やサービスをて提供することは、世界に先駆けたマーケティング戦略を展開することができます。

コーポレート部門ごとの暗闘

パーパス経営の失敗の一つは、各部門が異なる解釈を持つことですが、一概にすべて悪いというわけではありません。パーパスは上位概念であり、それぞれの部門で異なるかたちで解釈されることもあります。しかし、異なる視点から解釈されることは、パーパスの内包性と解釈の幅を広げる機会でもあります。各部門がコミュニケーションを取り、異なる視点からパーパスを捉え、協力することで、より豊かなパーパスの解釈と実践が可能になります。
ただし、ある部門だけが指導的立場に立って、異なる解釈を排除しようとすることは、失敗の原因となる可能性があります。異なる意見を受け入れることで、より多様な視点からの解釈ができ、パーパスがより強化されることになります。外部の権威や事例を参考にすることも重要ですが、自社に合わせたパーパスを作るためには、各部門が協力し、コミュニケーションを取り合うことが必要です。

現場との距離を感じるパーパス

パーパス経営で失敗する理由には、現場での理解が困難なパーパス内容や美辞麗句ばかり並べただけの策定過程があります。そのような内容はときに現場にストレスを与え、パーパスに対する嫌悪感や抵抗が生まれることもあります。
こうした問題を解決するためには、現場の意見や状況を考慮しながら、パーパスを策定する必要があります。さらに、時間が経過するにつれ、解釈や意図は変化するため、継続的に対話をし、ビジネスとパーパスを結びつけることが重要です。現場の声を聞き、ビジネスとパーパスをバランスよく考慮することで、失敗を防ぎ、組織のビジョンを実現することができます。

パーパスウォッシュ

「パーパスウォッシュ」とは、企業がパーパスを掲げているにもかかわらず、実際には何の行動もせず、社会貢献をしているかのよう装うことを指します。パーパスは、社会貢献が含まれることが多いため、それを掲げる場合には、実際に社会貢献をすることが必要です。言葉と行動が一致していなければ、パーパスは偽善になってしまいます。そのため、パーパスを策定する場合には、実現できるかどうか慎重に検討する必要があるでしょう。目標や理念が、組織のビジネスと整合性が取れているかどうか、確認することが大切です。
また、社会的な貢献についても、組織の実際のビジネスがその目的を達成することができるかどうか、検討する必要があります。

パーパス策定はゴールだと勘違い

パーパスを策定することにより、企業は社会的貢献を果たすための指針を持ち、社会的責任を果たすことができます。しかしながら、パーパスを策定しただけで終わってしまうことがあります。パーパスを策定しただけで業務が一変するわけではありません。関係者からの共感や変化を促すための労力やコストをかけることが必要です。パーパスを策定するだけでなく、実行するための計画や取り組みが重要です。

パーパス経営がなぜうまくいかないのかその要因

パーパス経営がうまくいかない要因として、パーパスに掲げられたキーワードが不明確になっていることが考えられます。パーパス経営を掲げる際に美辞麗句を並べ、それっぽい言葉で語ってしまうと社員やステークホルダーは具体的なイメージができず、共感することができないでしょう。パーパスで掲げた言葉には、経済活動や資本主義という枠組みを越え、イデオロギーや思想的な部分が包含されています。
パーパスは、社内外における一定レベルの合意形成をしたうえで、個別の業務や個別事業との、どのようにつなげるのかが大切です。ここに「抽象」と「具体」のジレンマが起こります。パーパス経営を浸透させるためには、管理や仕組みでのマネジメントするではなく、コミュニケーションでマネジメントする必要があります

パーパス経営の課題を解決するためにパーパス自体を見直してみよう

パーパス経営をうまく進めるために、まずはパーパス自体を見直してみましょう。パーパス経営の重要性を再確認し、最後は言語化できているかチェックします。

STEP1:パーパス経営の重要性を再確認

まずは、パーパス経営の重要性を再確認します。パーパス経営が注目されるようになった背景を考えると共に、得られるメリットを整理しましょう。背景やメリットが納得できる内容
になっていなければ、パーパス経営がスムーズに進むことはありません。
また、パーパス経営が社員にどれだけ浸透して、ステークホルダーが認識できるようになっているか確認します。ステークホルダーとのコミュニケーションを通して、パーパスを可視化し、企業におけるパーパスの習熟度を理解します。

STEP2:社会への貢献度や実現可能性

次に、社会への貢献度や実現可能性に着目します。パーパスを設定する時に、他社のパーパスを参考にしたり、SDGsの提案を模範にしたりしていると、自社に合っていないパーパスになることがあり、本当に自社の発展につながるのかわからない、かたちだけの目標になるリスクがあります
また、実現可能性にも着目します。自社の発展とパーパスが紐づいていないと、到底実現できないような目標になってしまいます。パーパスと現場に乖離が起き、社員のモチベーションは不安定、収益の向上にもつながりません。パーパスは、自社が実現可能な目標になっており、かつ社会に貢献できる内容になっていなければなりません。

STEP3:独自性や潜在課題を意識する

パーパスを掲げる時には、独自性や潜在課題を意識しましょう。どこにでもあるような当たり前のパーパスを掲げると、業界での競争優位には立てません。自社にしかできない独自性を持ったパーパスを考えることが大切です。
パーパスを検討する中で、潜在課題に目を向けます。パーパスと社会を正しく結びつけるためにも大切で、社会の潜在的な課題を汲み取れているかを確認するようにしましょう。

STEP4:言語化ができているか最終チェック

独自性のあるパーパスを検討した後は、言語化できているのか最終チェックしましょう。理想的なパーパスが策定できても言語化ができないとうまくいきません。
言語化は、パーパスを社員に説明し、具体性のある行動に結び付けるためにも大切です。社員のモチベーションを高めるための言葉選びが重要であり、言語化したパーパスを用いたコミュニケーションを取るようにしていきましょう

パーパスを顧客や従業員に浸透させる方法

パーパスを顧客や従業員に浸透させるためには、インターナルコミュニケーションが重要です。広報活動によって、パーパスの概念や目的、設定に至った背景を顧客や従業員に浸透させていくことが大切です。

経営陣と従業員の関係性を近づける

経営陣と従業員の間に信頼関係がしっかりしていないと、パーパスの浸透はできません。普段から気軽にコミュニケーションが取れる関係性を構築しておき、従業員の自社に対する帰属意識を育む必要があります
経営陣と従業員の関係性が近くなれば、パーパスに共感してもらいやすく、内容に納得ができるようになります。場合によっては、忌憚のない意見で話し合い、企業の目指すべき目標の整合性が取れるようになるでしょう。

パーパスに触れる機会を増やす

パーバスを従業員に浸透させるためには、パーパスに触れる機会を増やしましょう。例えば、朝会での社長のメッセージによってパーパスの目的を伝えることができます。バーパスはこれから会社が目指すべき目標を掲げているため、社内研修を通して触れる機会を作るのもいいでしょう。
また、パーパスの浸透には社員自ら情報発信に携わってもらうのも良い方法です。どうすれば浸透することができるのかを社員が考えることで、目標に向けた行動が無意識にできるようになります。

自分たちにしかできないパーパスとする

パーバスは、存在意義であり、存在の証明であります。企業の在り方が変化する中で、社会課題を引き受けていくということではありながらも、パーパスは固有でユニークではなければならず、背伸びせず自分たちにしかできない内容にしましょう。「自分にしかできない仕事」というパーパスが広がると、自分たちの仕事や事業を意味づけします。これは動機につながります。この特別な存在という感覚は、社員や組織の潜在力は発揮させ思ってみなかった発想を産んだり、わくわくする職場になります。社員に情熱や意味づけを産み、組織に使命を与えます。

パーパス経営の課題を解決する際のポイント

パーパスを浸透させるためには、現場に近いミドル層へのアプローチが重要です。経営層から直接現場に働きかけることも大切ですが、普段の業務とパーパスをつなげた指示やアドバイスができるわけではありません。ミドル層がパーパスの実現に向けて真剣に取り組むことで、社内にパーパスの考えが浸透していきます。
ただし、ミドル層の掛け声だけに頼ってはいけません。現場の社員が自分の仕事とパーパスを結び付けることができなければ効果につながりません。現場の社員に対して「危機感」ではなく「使命感」が醸成するような環境構築が必要です。使命感のもとでパーパスは育まれていき、仕事の中に自然と浸透していくようになります。また、ミドル層にあたる現場のリーダーは、社員との1on1ミーティングの機会を設け、社員に使命感を与えていくようにしましょう。

まとめ

パーパス経営とは、企業が社会貢献するために掲げる目標・意図のことです。パーパス経営の課題解決によって、社会やステークホルダーからの信頼を得ることができ、他社との差別化ができるようになります。また、パーパスの浸透のためには、インターナルコミュニケーションが大切であり、従業員が本気で自分ゴトとして仕事とパーパスを結び付ける必要があります。そのため、パーパスの浸透のためには、経営層だけで進めてしまうのではなく、社内全体を巻き込んだ推進が大切になるでしょう。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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