インターナルコミュニケーション

ミュニティマネジメントとは?社内のコミュニケーションの管理と成長を担う役割とは

コミュニティマネジメントという概念をご存知でしょうか。これは、企業が社内・社外にコミュニティを作り、保ち、活性化させることで、企業のブランド価値を高め、人を企業につなげ、双方の成長に役立てようとするものです。

こkの記事ではこのコミュニティマネジメントを概説するとともに、実施する際のポイントについてもまとめ、ご紹介します。

現代のビジネス環境は、かつてない速度で変化しています。デジタルトランスフォーメーション(DX)の波は、業務プロセスだけでなく、人と人とのコミュニケーションのあり方そのものを根底から覆しました。企業が大企業になればなるほど、組織のサイロ化(縦割り)、情報の分断、そして個人の孤立化が進む傾向にあります。これらに対する処方箋として、従来のトップダウン型の管理手法ではなく、ボトムアップ型の相互作用を重視する「コミュニティマネジメント」が脚光を浴びています。本レポートでは、この概念を解剖し、実務への適用方法を論じます。

コミュニティマネジメントとは

コミュニティマネジメントとは、その名のとおり「コミュニティ」を「マネジメント」しようとする取り組みを意味します。

しかし、この言葉が内包する意味は、単に「集団を管理する」という物理的な操作に留まりません。それは、企業を取り巻くステークホルダー(従業員、顧客、パートナー)との間に、信頼と共感をベースとした持続可能な生態系(エコシステム)を構築する、極めて戦略的な経営活動です。

従来の経営学において、企業と個人の関係は「契約」に基づく取引関係が主でした。従業員は労働力を提供して対価を得る、顧客は代金を支払って商品を得る。これらは「トランザクション(取引)」の関係です。

しかし、コミュニティマネジメントが目指すのは「リレーション(関係性)」の構築です。トランザクションが一過性のものであるのに対し、リレーションは継続的であり、そこに「感情的な結びつき」が介在します。

コミュニティには、社外のコミュニティと社内のコミュニティとが存在し、さらにオフラインとオンラインのコミュニティとに分けられます。コミュニティマネジメントは国内でまだ一般的な概念ではないため、はっきりとした定義はありませんが、オンラインのコミュニティをマネジメントする意味合いが強いことが多いようです。

アメリカでITやWeb関連の先進を行く企業によって定義づけられ、導入されており、現在に至るまで段階的に発展してきました。

オーディエンスとコミュニティの決定的な違い

企業担当者が最も陥りやすい誤解の一つに、「オーディエンス(聴衆)」と「コミュニティ(共同体)」の混同があります。この違いを理解することが、コミュニティマネジメントの第一歩です。

  • 特徴 オーディエンス(Audience) コミュニティ(Community)
  • 構造 1対n(企業から個人へ) n対n(個人同士の相互作用)
  • 情報の流れ 一方通行(ブロードキャスト型) 双方向・多方向(インタラクティブ型)
  • 主要な価値 コンテンツの消費 つながりと共創
  • 成功指標 リーチ数、PV数、再生数 エンゲージメント率、LTV、熱量
  • ユーザーの関係 他者の存在を意識しない(孤立) 他者と助け合い、認め合う(連帯)

競合記事や専門家の見解にもある通り、オーディエンスに向けたマーケティング(広告や広報)は、情報を広く届けることには長けていますが、深い愛着を醸成するのは苦手です。一方でコミュニティは、ユーザー同士が横につながり、互いにサポートし合ったり、称賛し合ったりする「相互作用」が発生します。コミュニティマネジメントの本質は、この「横のつながり」を意図的にデザインし、企業の成長エネルギーへと転換することにあります。

コミュニティマネジメントが生まれた背景

アメリカでは「コミュニティマネージャー」という職種が注目を集めるようになっています。コミュニケーションの手段にオンラインとオフラインとの垣根がなくなり、コミュニケーションを創出する場であるコミュニティを企業がマネジメントしようという動きが見られるようになってきました。その流れを受けて、日本でもコミュニティマネージャーを名乗る人材が少しずつ増え始めています。

この背景には、市場環境と労働環境の双方における構造的な変化があります。

市場環境の変化:「機能」から「意味」へ

モノが溢れる成熟社会において、機能や価格だけで差別化することは困難になりました(コモディティ化)。消費者は商品そのものではなく、その商品を使うことで得られる体験や、そのブランドが持つ世界観(ストーリー)に価値を見出すようになっています。

「誰から買うか」「どんな仲間と一緒に使うか」が購買決定要因となる中で、ブランドを中心としたファンコミュニティの存在は、LTV(顧客生涯価値)を最大化するための最強の防壁となります。SNSの普及により、消費者の購買行動が「検索・比較」から「共感・推奨(口コミ)」へとシフトしたことも、コミュニティの重要性を高めています。

労働環境の変化:「帰属」から「協働」へ

社内においても同様の変化が起きています。終身雇用が崩壊し、人材の流動性が高まる中、優秀な人材ほど「給与」だけでなく「ビジョンへの共感」や「成長できる環境」を求めて企業を選びます。

テレワークの普及は物理的なオフィスという「場」を奪いました。その結果、雑談や偶発的な出会いが失われ、組織への帰属意識(エンゲージメント)を維持することが難しくなっています。物理的な場に代わる「心理的な居場所」としてのコミュニティ機能が、組織維持のために不可欠となっているのです。

データで見る社内コミュニケーションの危機的状況

弊社ソフィアが実施した『インターナルコミュニケーション実態調査2024』の結果は、大企業が直面しているコミュニケーションの深刻な不全を浮き彫りにしています。

まず、社内コミュニケーションツールの導入状況を見ると、ビジネスチャットツールの導入率は76%に達しており、多くの企業でデジタル基盤の整備が進んでいることがわかります。しかし、ツールがあればコミュニケーションが円滑になるかというと、現実はそう甘くありません。

同調査において、従業員の意識に関する衝撃的なデータが明らかになりました。会社の経営戦略に対して「共感している」と回答した従業員は、わずか1割程度に過ぎないのです。9割の社員が、会社の向かう方向性に心からの共感を抱いていない、あるいは無関心であるという事実は、組織力の低下に直結する重大なリスクです。

さらに、現場では情報共有に関する「三重苦」が発生しています。

  • 「ない」:必要な情報が共有されていない。
  • 「遅い」:情報が現場に届くまでに時間がかかりすぎる。
  • 「見つからない」:情報はどこかにあるはずだが、検索しても出てこない、あるいは場所がわからない。

この三重苦は、業務効率を著しく低下させるだけでなく、従業員のストレス要因となり、モチベーションを削ぎ落とします。組織が多層化・縦割り化する中で、公式のトップダウンルートだけでは情報が毛細血管(現場の末端)まで行き渡らないのです。だからこそ、部署や階層を超えて情報が有機的に流通する「コミュニティ型」のコミュニケーション回路を構築することが急務となっています。

なお、コミュニティマネジメントの概念はソーシャルメディアマネジメントと混同されることがあります。コミュニティマネジメントが扱う領域はソーシャルメディアマネジメントのように一部のコミュニティに限ったものでなく、企業が創出する、あるいは関わるコミュニティ全般を担当するという違いがあり、働き方も多様です。

ソーシャルメディアマネジメントが主に情報の「拡散」と「リーチ」をKPIとするのに対し、コミュニティマネジメントは関係性の「深度」と「熱量」をKPIとします。X(旧Twitter)やInstagramはあくまで「手段」の一つであり、コミュニティマネジメントの本質は、プラットフォームを問わず、ステークホルダーとの強固な信頼関係を築くことにあります。

コミュニティマネジメントの定義

現時点で主流となっているコミュニティマネジメントの定義は、「企業のブランドや提供価値を中心として、それに対する社内外のファンの集合体(=コミュニティ)を企業が創出・維持・活性化すること」です。コミュニティマネジメントは前述の理由でソーシャルメディアマーケティングとは異なります。

この定義を分解すると、以下の3つの重要な要素が浮かび上がります。

中心性(Brand Centered) : コミュニティは何らかの共通項が必要です。それが企業の「ブランド」や「提供価値(ミッション・ビジョン)」です。単に人が集まるだけでは群衆ですが、共通の価値観の下に集まることでコミュニティとなります。

双方向性(Creation & Maintenance) : 企業が一方的に箱を用意するだけでなく、参加者と共に創り上げ、維持していくプロセスが重要です。

活性化(Activation) : 静的な状態ではなく、常に代謝が行われ、熱量が維持されている動的な状態を目指します。

インターナルとエクスターナルのシームレスな結合

定義において「社内外」とされている点が極めて重要です。かつて、社内向けの「インナーブランディング」と社外向けの「マーケティング」は別々の部署が担当する分断された領域でした。しかし、SNS時代においてこの境界線は溶けつつあります。

従業員が自社のファンでなければ、説得力を持って顧客にその魅力を伝えることはできません。逆に、顧客からの熱烈な支持は、従業員の誇り(プライド)を醸成し、エンゲージメントを高める要因となります。

エンジャパンの事例(後述)のように、社内の様子をオープンに発信することで採用力を高める手法や、顧客コミュニティの声を製品開発に活かすことで社員のモチベーションを高める手法など、社内と社外のコミュニティを循環させるエコシステムの構築こそが、現代のコミュニティマネジメントの真骨頂です。

コミュニティマネジメントで得られる効果

それでは、なぜここにきてコミュニティマネジメントが注目を集めるようになったのでしょうか。コミュニティマネジメントを導入することによって企業が得られる3つの効果について解説します。

ブランドに対する愛着・忠誠心の向上

社外のコミュニティに対しては、発信するブランドメッセージの最適化や、顧客の購買や口コミといったリアクションを企業の商品やサービスに反映することでつながりを深め、顧客のブランドへの愛着(エンゲージメント)を高められます。

また、コミュニティマネジメントによって、社員によるサービスのクオリティを高める効果が期待できます。対外的に発信する自社のブランドの意義や目的を社内にもしっかりと伝えることで、社員自身が自分の会社を好きになったり、自社の製品やサービスを良いものだと感じるようになります。こうした社内コミュニティへのブランドイメージの浸透と共感醸成の結果、ブランドイメージに基づいたより高い品質のサービスの提供がのぞめます。また、ブランドへの愛着を通じて自社へのエンゲージメントが向上し、テンション・離職予防の効果も期待できます。

コミュニティから生まれる着想

コミュニティマネジメントでは、コミュニティの声を聞き取り、企業に還元していく活動も担います。

社外のコミュニティからは、ユーザー目線でのフィードバックを得られます。企業目線では見つけられなかったニーズを発掘できる可能性があるかもしれません。社内のコミュニティも同様で、もっともユーザーに近い現場の声を聞くことで、サービスやその運用方法の改善につながる前向きな意見を得ることもできます。

これらの声は企業において、新たな着想となるでしょう。

問題の検出

コミュニティから発せられる反応は、残念ながらポジティブなものに限られません。社外のそれは放置しておくとクレームや顧客離れにつながり、社内ではコミュニケーション不全、そして離職へとつながりうるものです。

ここでコミュニティマネジメントが機能することで、こうした最悪の事態を回避するための迅速な対応を先んじて行えます。

ロイヤルティ向上によるLTV最大化と組織力強化

社外のコミュニティに対しては、発信するブランドメッセージの最適化や、顧客の購買や口コミといったリアクションを企業の商品やサービスに反映することでつながりを深め、顧客のブランドへの愛着(エンゲージメント)を高められます。

これはビジネス的な観点では、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の最大化を意味します。新規顧客の獲得コスト(CAC)が高騰する中、既存顧客の離脱を防ぎ、継続的な購買やアップセルを促すことは経営の生命線です。コミュニティを通じて「企業から大切にされている」「自分の意見が反映された」と感じた顧客は、強力な推奨者(アンバサダー)となり、新たな顧客を連れてくるという好循環を生み出します。

また、コミュニティマネジメントによって、社員によるサービスのクオリティを高める効果が期待できます。対外的に発信する自社のブランドの意義や目的を社内にもしっかりと伝えることで、社員自身が自分の会社を好きになったり、自社の製品やサービスを良いものだと感じるようになります。こうした社内コミュニティへのブランドイメージの浸透と共感醸成の結果、ブランドイメージに基づいたより高い品質のサービスの提供がのぞめます。また、ブランドへの愛着を通じて自社へのエンゲージメントが向上し、リテンション・離職予防の効果も期待できます。

弊社ソフィアの調査で明らかになった「戦略への共感が1割」という現状に対し、コミュニティマネジメントは有効な解決策となります。トップダウンの「通達」では伝わらない熱量や文脈が、コミュニティ内での「対話」を通じて咀嚼され、自分事化されるからです。

従業員エンゲージメントの向上は、離職率の低下だけでなく、生産性の向上、サービスの質の向上、ひいては顧客満足度の向上へとつながる「サービス・プロフィット・チェーン」の起点となります。特に人的資本経営が叫ばれる現在、人材という資産の価値を最大化するために、コミュニティ的なアプローチは避けて通れません。

共創によるイノベーションとナレッジの共有

コミュニティマネジメントでは、コミュニティの声を聞き取り、企業に還元していく活動も担います。

社外のコミュニティからは、ユーザー目線でのフィードバックを得られます。企業目線では見つけられなかったニーズを発掘できる可能性があるかもしれません。社内のコミュニティも同様で、もっともユーザーに近い現場の声を聞くことで、サービスやその運用方法の改善につながる前向きな意見を得ることもできます。

これらの声は企業において、新たな着想となるでしょう。

これをビジネス用語では「共創(Co-creation)」や「オープンイノベーション」と呼びます。

社外においては、ユーザーは単なる消費者ではなく「開発パートナー」となります。例えば、新商品のコンセプト段階でコミュニティに問いかけ、フィードバックを得ることで、市場投入のリスクを低減させることができます。UGC(User Generated Content)と呼ばれるユーザー生成コンテンツ(使用例やカスタマイズ方法の投稿など)は、企業が思いつかなかった新たな魅力を発見する宝庫です。

社内においては、「ナレッジマネジメント」の側面が強くなります。縦割り組織では、ある部署の成功事例や失敗の教訓が他部署に共有されず、車輪の再発明が繰り返されることがよくあります。コミュニティというフラットな場を用意することで、部署を超えた「知の還流」が起こります。「〇〇について詳しい人はいないか?」という問いかけに対し、組織図を超えて誰かが答える文化が醸成されれば、組織全体の学習スピードは劇的に向上します。これは、弊社調査で課題とされた「情報の見つからない・遅い」という問題を解決する特効薬となり得ます。

リスクの早期発見と自浄作用

コミュニティから発せられる反応は、残念ながらポジティブなものに限られません。社外のそれは放置しておくとクレームや顧客離れにつながり、社内ではコミュニケーション不全、そして離職へとつながりうるものです。

ここでコミュニティマネジメントが機能することで、こうした最悪の事態を回避するための迅速な対応を先んじて行えます。

SNS時代において、ネガティブな情報は一瞬で拡散し、企業のブランドを毀損します(炎上)。しかし、日頃から健全なコミュニティを構築していれば、小さな不満の種を早期に発見し、炎上する前に対応することが可能です。また、ロイヤルティの高いファンが多いコミュニティでは、誤った情報や悪意ある攻撃に対し、ファン自身が訂正や擁護を行ってくれる「自浄作用」が働くこともあります。

社内においては、従業員のモチベーション低下や組織的な不正のリスクを感知するセンサーとして機能します。「最近、あの部署の元気が無い」「現場から無理な納期の不満が出ている」といった定性的な情報は、公式の報告ラインには上がってきにくいものです。コミュニティマネージャーがこうした「組織の感情」をモニタリングし、人事や経営層にフィードバックすることで、離職ドミノやコンプライアンス違反を未然に防ぐことができます。これは、エンゲージメントサーベイなどの定量データ(ハードデータ)だけでは見えない組織の実態を補完する重要な機能です。

コミュニティマネジメント実施のポイント

コミュニティマネジメントを実施する際、具体的にどのようなことに気をつけておくべきなのでしょうか。ここでは3つのポイントを解説します。

この3つのポイントは、コミュニティ構築のフェーズ(立ち上げ→活性化→定着)に対応しており、どれか一つが欠けてもコミュニティは機能しません。

場の提供

まずはなにより、コミュニケーションが生まれる場であるコミュニティを提供する必要があります。

一昔前のコミュニケーション手段はオフラインが主でしたが、最近はSNSの活用がどの企業でもほぼスタンダードであり、O2O(Online to Offline)といったオンラインからオフラインへとつなげるコミュニケーションも普及しています。

これは社外だけでなく社内においても同様で、社内SNSやリアルイベントへの誘導といったものが該当するでしょう。

つながりの提供

コミュニケーションを促進するものは「つながり」です。ブログとほぼ同時期にスタートしたSNSが広く普及することとなった要素の1つに「フォロー」という機能があるように、つながりはコミュニケーションを広く、ときには深くさせます。

コミュニティマネジメントでは、場を提供するとともに、場をプロモーションすることで、多くの人が参加し、かつそこでなんらかのアクションを起こすよう、さまざまな仕組みを作っていきます。

盛り上がりのメンテナンス

コミュニケーションを長期的に持続させるためには、「起爆剤」となる要素も必要です。そこで、定期的にイベントを開催するなど企業がコミュニティに介入することによって、コミュニティの活性レベルを維持していきます。

また、こうした施策によってコミュニティがどの程度活性化しているのかを把握する「効果測定」も行いましょう。SNSであれば投稿数やリアクション数、アクセス数など、KPI(重要業績評価指標)を決めておき、数値を監視しながら介入していくことも重要です。

コミュニティマネジメントの成功事例

日本でもすでにコミュニティマネジメントを実施している企業が何社も存在し、しかも目に見える成果を上げています。今回はコミュニティマネジメントに成功した企業事例を3つご紹介します。

事例1:ブランドの継承と「空気感」の改革(ヤマハ発動機株式会社)

同社ヤマハがコミュニティマネジメントを行った目的は、「ブランドを若手に継承すること」「社員のエンゲージメントを高めること」でした。社員の感情や情緒を大切にし、会社全体の雰囲気に関わる社内の「いい雰囲気」づくりのため、コミュニケーションツールである社内報を刷新しています。

社員の仕事から生み出される価値を捉え直して「社員の気配を感じられる、血の通ったコンテンツをつくる」計画は見事に成功し、2018年の社内報閲読率は84.8%にも上ったといいます。

 【分析と洞察】

ヤマハの事例が示唆するのは、インナーブランディングにおける「情緒的価値」の重要性です。単に会社の業績や方針を伝えるだけの無機質な社内報ではなく、そこに働く「人」の想いや体温が伝わるコンテンツへと転換した点が勝因です。これは、コミュニティマネジメントの本質である「人を中心としたつながり」の実践に他なりません。高い閲読率は、社員が自社に対し「読むに値する(関心を持つに値する)場所だ」という信頼を寄せている証左であり、ブランドのDNAが若手社員へと自然な形で継承される土壌が作られています。

事例2:100年の歴史を持つメディアの再定義とプロセスエコノミー(オリンパス)

オリンパス株式会社でも、インターナルコミュニケーションを変革することを目的に、100周年を機に社内報のリニューアルを実施しました。

オリンパスの課題は、社員の問題意識向上、考える場所の創出、そして最終的にはオリンパスのファンを社内に作ることでした。そのために用いたツールは、1957年に創刊された歴史ある社内報です。

創刊以来一度も編集方針が定められたことがなかったという社内報ですが、リニューアルプロジェクトにおいては編集方針をしっかりと定め、ターゲットを明確にし、エンターテイメントの要素も記事に含めました。コンテンツには社員の意見もアンケートで取り入れ、メモリアルイヤーを飾るにふさわしい社内報を発刊することができました。

 【分析と洞察】

この事例で特筆すべきは、「社員の意見もアンケートで取り入れ」というプロセスそのもののコミュニティ化です。完成された情報を一方的に配るのではなく、作る過程に社員を巻き込む(共創する)ことで、当事者意識(オーナーシップ)を醸成しました。これは「プロセス・エコノミー」的なアプローチであり、社員を「読者」から「参加者」へと変えるコミュニティマネジメントの巧みな手法です。結果として、社内報は単なる情報伝達ツールを超え、社員同士が共通の話題で盛り上がる「ファンコミュニティの核」として機能し始めました。

事例3:社内の熱量を社外へ開放する「オープン社内報」(エンジャパン「ensoku!」)

エンジャパンの社内報「ensoku!(エンソク)」は、オウンドメディアとして社外の人でも読めるようになっています。

エンジャパンというブランドを中心に、社内報というメディアを通じて社内外のコミュニケーションの場を創出し、人材を主体に企業が外向きであり内向きでもあるメッセージを発信する好例といえるでしょう。

 【分析と洞察】

エンジャパンの取り組みは、社内(インナー)と社外(アウター)の壁を取り払うという点で、極めて先進的なコミュニティマネジメントの事例です。社内のありのままの様子(イベント、社員の活躍、日常の風景)を社外に公開することで、以下の2つの効果を生んでいます。

採用ブランディングの強化: 求職者に対し、飾らない会社の雰囲気を伝えることで、カルチャーフィットする人材を惹きつけ、入社後のミスマッチ(リアリティショック)を減らします。

インナーモチベーションの向上: 社員にとって、自分たちの活動が社外から見られ、評価されることは誇りになります。また、「見られている」という意識が、より良い組織文化を作ろうとする規律を生みます。

これは、社内コミュニティの熱量を社外のファン作りに転用する、エコシステム型の成功モデルと言えます。

まとめ

コミュニティマネジメントは、これからの人材マネジメントにも必要となってくる、人のスキルや経験ではなく、人格や心の動きといったソフト面をマネジメントするものです。企業が顧客に選ばれ、社員からも選ばれる組織になるためには不可欠なマネジメント手法の1つであるといえるでしょう。ソフィアではコミュニティマネジメント実施の支援を行っていますので、お気軽にお問い合わせください。

技術が進化し、AIが業務の多くを代替する時代において、最後に残る企業の競争優位性は「人」と「そのつながり」です。弊社ソフィアの調査が明らかにしたように、ツールの導入だけでは埋められない「共感の欠如」や「情報の断絶」という課題に対し、コミュニティマネジメントは「対話」と「感情」という人間的なアプローチで解決策を提示します。それは、組織を機械的なシステムとしてではなく、血の通った有機的な生命体として捉え直し、そのポテンシャルを最大限に引き出すための経営OSのアップデートに他なりません。

お問い合わせ

よくある質問
  • コミュニティマネジメントと従来の社内広報(インターナルコミュニケーション)の決定的な違いは何ですか?
  • 従来の社内広報が「正確な情報の伝達(Information Delivery)」を主眼とし、トップダウンの一方通行型になりがちであるのに対し、コミュニティマネジメントは「関係性の構築と熱量の創出(Relationship Building & Activation)」を主眼とします。

    広報が「読ませる」ことをゴールにするなら、コミュニティは「行動させる(対話、協力、提案など)」ことをゴールにします。弊社調査で提唱されている「対話・教育・ツールの活用ノウハウ」という三本柱のうち、特に対話とツールの活用による「横のつながり」を強化するのがコミュニティマネジメントです。

  • コミュニティマネージャーは専任である必要がありますか?また、どのようなスキルが必要ですか?
  • 立ち上げ期や変革期においては、専任またはそれに近いリソース(業務時間の50%以上)を割くことが望ましいです。片手間の運用では、コミュニティの熱量を維持できず、過疎化するリスクが高いためです。

    必要なスキルとしては、以下の3つが挙げられます。
    1.ファシリテーション力:
    議論を活性化させ、参加者の発言を引き出す力。

    2.コンテンツ企画力:
    メンバーが関心を持つ話題やイベントを企画する力。

    3.データ分析力:
    アクティビティログやアンケート結果から、コミュニティの状態を客観的に把握し改善する力。

    また、社内外の利害関係を調整する政治力や、泥臭いドブ板営業(個別の声がけ)を厭わないマインドセットも重要です。

  • 経営層に対し、コミュニティマネジメントの投資対効果(ROI)をどう説明すればよいですか?
  • コミュニティの効果は定性的であり、短期的なPL(損益計算書)には表れにくいため、説明が難しい部分です。しかし、以下のロジックで説明することが可能です。

    1.リスク回避コスト:
    離職率の低下による採用・教育コストの削減額、炎上やコンプライアンス違反の未然防止による損害回避額。

    2.LTVの向上(社外の場合):
    コミュニティ参加者と非参加者のLTV比較データ(一般的に参加者の方がLTVが高い傾向にあります)。

    3.イノベーション創出:
    コミュニティ発のアイデアが事業化された件数や、それによる売上貢献。

    4.エンゲージメントスコアとの相関:
    eNPSなどのスコア向上と、業績や生産性との相関関係を示す。

    最初は「小さな成功体験(スモールスタート)」を作り、定性的なエピソード(「コミュニティのおかげでこんな課題が解決した」という現場の声)を集めて提示することから始めると、理解が得られやすいでしょう。

  • ツールを導入しましたが、誰も発言せず「過疎化」しています。どうすれば活性化できますか?
  • 過疎化の最大の原因は「心理的安全性の欠如」と「メリットの不明確さ」です。以下の対策を試みてください。

    ハードルを極限まで下げる: 業務に関係のない「雑談チャンネル(ペット、ランチ、趣味)」を作り、まずは「書き込むこと」への抵抗感をなくします。

    リーダーが率先して「弱み」を見せる: 役職者が完璧な投稿ばかりしていると、部下は委縮します。リーダーが「困っていること」や「失敗談」を投稿し、助けを求めることで、周囲が発言しやすい空気を作ります。

    指名して巻き込む: 全体に投げかけるのではなく、「〇〇さんはどう思いますか?」と特定の人にメンションを飛ばし、回答があれば大いに感謝・称賛します。

    オフラインとの併用: オンラインだけで盛り上げようとせず、ランチ会や飲み会などのリアルな場で関係性を温めてから、オンラインへ誘導するO2O施策が有効です。

  • 縦割り組織の壁が厚く、部署を超えたコミュニティ作りが阻まれます。どう突破すればよいですか?
  • 組織図に基づく「公式な部署」の枠組みでコミュニティを作ろうとすると、利害関係が邪魔をします。突破口は「テーマベース」のコミュニティです。

    例えば、「DX推進」「働き方改革」「若手リーダー育成」「SDGs」といった、部署横断的な課題や関心事をテーマにしたコミュニティ(ギルドやプロジェクトチーム)を立ち上げます。これなら、所属部署の壁を超えて参加する大義名分が立ちます。また、有志による部活動やサークル活動への支援(部費の補助など)も、斜めの関係性を構築するのに非常に有効です。部門間の壁を溶かすには、業務上の「縦糸」だけでなく、興味・関心による「横糸」を通すアプローチが必要です。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。