営業DXに欠かせないインサイドセールス|役割と成功のポイントを徹底解説
最終更新日:2025.11.19
目次
コロナ禍や市場変化を背景に、営業部門でもデジタルトランスフォーメーション(DX)による変革が急務となっています。特に鍵となるのが非対面で見込み顧客の育成(ナーチャリング)を行う「インサイドセールス」です。営業DX時代において、従来の”足で稼ぐ”訪問中心の営業から脱却し、データ活用と効率を上げることを重視したインサイドセールスへの注目が高まっています。
本記事では、インサイドセールスの役割や求められる背景、導入メリット、現状の課題、さらには成功させるポイントまでを論理的に解説します。大企業で営業DXを推進し、組織の売上拡大やリード獲得につなげたい広報・経営企画部門の方は必見です。
営業におけるDXはどんなものがあるのか?
営業組織におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して営業プロセスを抜本的に変革する取り組みです。具体的には、見込み顧客を獲得するためのデジタルマーケティング、顧客を育成して商談化につなげるインサイドセールス、営業活動を最適化・効率化するセールスイネーブルメントという大きく3つの段階に分けて考えられます。
例えば、ウェブサイトやSNS、オンライン広告によるリード獲得がデジタルマーケティング、獲得したリードを非対面でフォローして商談に育てるのがインサイドセールス、そして商談から受注・顧客化までの営業全般を支援する仕組みづくりがセールスイネーブルメントです。これら3段階を連携させて最適に機能させることで、営業DXは初めて成果として現れます。特に本記事で焦点を当てるインサイドセールスはこの中核となるプロセスであり、営業DX成功のカギと言えるでしょう。
営業におけるインサイドセールスとは?
インサイドセールスとは、社内(内勤)で行う非対面型の営業活動を指します。電話やメール、Web会議ツールなどデジタル手段を活用し、対面せずに顧客とコミュニケーションをとって商談機会を創出することから、「内勤営業」とも呼ばれます。
従来は営業担当者一人がリスト作成から訪問・クロージングまで一貫して行っていましたが、そのプロセスの一部を分業し、見込み顧客へのアプローチと育成に特化した専門チームがインサイドセールスです。インサイドセールス部門のミッションは、営業全体の効率を上げることにあります。限られた営業リソースでより多くの有望な商談を生み出すために、非対面での効率的な顧客アプローチを担うのがインサイドセールスなのです。
インサイドセールスの役割
インサイドセールスの主な役割は、マーケティングなど他部門から提供された見込み顧客(リード)に対し、継続的にコンタクトを取りながら興味・関心を高めていくことです。具体的には、メール配信や電話フォロー、オンライン商談を通じて顧客の課題やニーズをヒアリングし、自社の商品・サービスの価値を適切に伝えます。
その過程で購買意欲が十分に高まった見込み客を抽出し、商談クロージングを担当するフィールドセールス(外勤営業)に引き継ぎます。一方、まだニーズが顕在化していないリードに対しては、定期的に情報提供やヒアリングを行って関係構築を図り、将来的な商談の芽を育てます。こうしたリードナーチャリング(顧客育成)を地道に行うことで、営業機会の最大化と受注率の向上を目指すのがインサイドセールスの役割です。
ポイントは、顧客ごとに課題や興味関心の度合いが異なるため、それぞれの状況に応じたコミュニケーション戦略をとることです。対面では表情や雰囲気からニーズを汲み取ることもできますが、非対面では言葉遣いや資料、データを駆使した丁寧な情報提供とヒアリング力が求められます。インサイドセールスにはこのような高いコミュニケーションスキルと提案力が必要不可欠と言えるでしょう。
インサイドセールスが求められる背景
インサイドセールスというポジションが注目され、各社で設置が進んだ背景には主に二つの理由があります。
対面訪問の非効率さの改善
第一に、対面訪問の非効率さの改善です。従来の外勤営業では、ニーズが不明確な見込み客にも手あたり次第アポイントを取り訪問していましたが、それでは移動時間も含め非効率で、営業担当者一人当たりが対応できる商談数に限界がありました。インサイドセールスを導入すれば、確度の高い見込み客に集中してアプローチできるため、商談数・成約数を増やしやすくなります。
マーケティング部門と営業部門の”断絶”を埋める必要性
第二に、マーケティング部門と営業部門の”断絶”を埋める必要性です。近年、多くの企業でマーケティングチームがウェブ経由で大量のリードを獲得するようになりました。しかし、そのリードを営業部門にそのまま渡しても、「質が低い」と判断され放置されたり、追いきれないまま埋もれてしまうケースが少なくありません。
そこで、マーケティングから営業への架け橋として、リードの育成・温度感の見極めを専門に担うインサイドセールスが必要とされるようになりました。事実、弊社ソフィアの2024年調査では、社内コミュニケーション上の課題として「部門間の連携」を挙げた企業が58%にのぼっています。マーケと営業の情報共有・連携不足は多くの企業に共通する悩みであり、インサイドセールスはその課題解決の切り札となる存在です。
特にマーケティング部門が集めたリードをより良質な状態に育てて営業に渡す仕組みは、中長期的に見込み顧客を逃さず育てていく上で不可欠です。こうした背景から、デジタルマーケティングの隆盛と歩調を合わせて、インサイドセールス組織を置く企業が急増してきました。近年のテレワーク普及や営業DXの加速も追い風となり、インサイドセールスはBtoB営業の新たな常識になりつつあります。
インサイドセールス導入のメリットは何か?
インサイドセールスを導入すると、企業の営業活動にはどのようなメリット・効果がもたらされるでしょうか。主なポイントを整理します。
商談機会の最大化と機会損失の防止
専任チームが見込み顧客をフォローし続けることで、これまで埋もれていたリードを活性化できます。継続的な顧客フォローによって関係性を構築し、ニーズの顕在化を待つことで、リード育成不足による営業機会の取りこぼしを防ぎます。インサイドセールスは「顧客を育てる」ことで商談数そのものを底上げし、売上機会を最大化します。
分業による生産性向上と受注率アップ
インサイドセールスとフィールドセールスが役割分担することで、各担当者が自分の専門業務に集中でき、営業プロセス全体の効率が向上します。インサイドセールスが温めた成約確度の高い案件だけを外勤営業に渡せるため、訪問あたりの受注率・成約率が大幅に上がります。「確度の低い案件で外勤営業の時間を浪費しない」という分業効果によって、チーム全体の生産性と売上成果が向上します。
ナレッジの蓄積・共有による営業力強化
インサイドセールス部門が電話やメールでの顧客対応履歴、反応データを詳細に記録することで、営業活動が見える化されます。得られた情報をCRMや営業支援システム(SFA)で管理すれば、顧客の声や効果的なトーク内容などが社内に蓄積され、他の営業メンバーとも共有可能です。
これにより属人的な営業から脱却し、組織的に営業ノウハウを蓄積・展開できるようになります。新人育成にも役立ち、長期的に営業組織全体の底上げにつながるでしょう。
顧客ニーズの把握とサービス改善へのフィードバック
インサイドセールスは顧客と日常的に接点を持つため、顧客の生の声を集めやすい立場でもあります。その中で得られた顧客の課題・要望を社内で分析し、商品サービスの改善やマーケティング施策に反映できます。例えば「○○機能が欲しいという声が多い」などのフィードバックをプロダクト開発に活かすことで、提供価値を高める好循環も生まれます。
インサイドセールスは単なる営業支援にとどまらず、顧客理解を深めるセンサーの役割も果たし、結果的に顧客満足度向上やLTV(顧客生涯価値)向上にも貢献します。
インサイドセールスの実態とは
商品やサービスがあふれる中において、近年、顧客のビジネス課題に踏み込みながらセールスを行うことがより求められています。だからこそ、見込み顧客を育成するインサイドセールスにも、顧客の課題をヒアリングするスキルや、解決への仮説を立てるスキルが必要です。
顧客の課題に触れられないと、顧客の育成へとつなげることはできません。同時にサービスに対する豊富な知識も必要となり、複合的なスキルが求められるポジションであると言えるでしょう。
そのような重要なポジションであり、かつ相応のスキルを求められながらも、主な評価軸は獲得アポイントメントの数であり、担当するのは新人や若手であることが多いです。インサイドセールスを数年経験した後、昇格的にフィールドセールス担当となるようなキャリアコースを構築している会社も多く存在します。
また、デジタルマーケティングに高いコストをかけ、インサイドセールスを強化していても、吸い上げた顧客情報やその背景にある意図や仮説がフィールドセールスに十分伝わっておらず、顧客をがっかりさせてしまっている会社もあります。
営業のDXにおけるこれからのインサイドセールス
では、営業のDXが進んだ先にある、これからのインサイドセールスとはどのようなものでしょうか。
前述のように、インサイドセールスはマーケティング部門と、フィールドセールス部門のかすがいとなることを求められます。マーケティング部門の仮説と施策およびそれによって得られた定量的な顧客データと、フィールドセールス部門の仮説と行動およびそれによって得られた定性的な顧客データをつなぐ役割を担っていくこととなります。そのためにはマーケティング(主にデジタルマーケティング)の理解と営業(セールス)全般を理解した上で、オンライン/オフラインでマーケティング部門と営業部門と密にコミュニケーションをとっていく必要があります。
企業によっては、昔でいうテレフォンアポインターと業務は変わっていないのに名前だけがインサイドセールスとなっている場合があります。しかし、気力と体力勝負でひたすら架電する仕事は、DX時代におけるインサイドセールスとは言えません。
せっかくマーケティング部が見込み客を集めても、「ごり押し」「お願い」で質の低いアポイントばかりとってしまうのでは本末転倒です。実際、インサイドセールスを設けたことで営業の質が下がり、問い合わせに対する決定率(購入率)が低下しているという企業も多くあります。
インサイドセールス部門が、単なる営業(フィールドセールス)の予備隊や昔のテレアポ部隊になるのではなく、組織としての地位を高く保ち、マーケティング部門とフィールドセールス部門のデータ連携およびコミュニケーション連携の中心的役割を担うことで、マーケティングを含む営業活動全体のDXが促進され、中長期の売上の伸びを期待することが可能となります。
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インサイドセールスを成功させるには?
インサイドセールス導入の効果を最大化し、営業DXを成功させるためにはいくつかのポイントに留意する必要があります。単にチームを作れば成果が出るわけではなく、組織横断の視点と継続的な改善が重要です。以下にインサイドセールスを成功させるためのポイントをまとめます。
明確な目標設定とKPIの共有
インサイドセールスの活動目的を組織内で明確にし、共通の評価指標を設定することが重要です。営業部門では「受注率」「売上額」、マーケティング部門では「リード獲得数」など部門ごとに指標が異なりがちですが、最終的なゴールは同じ「売上拡大」であることを再認識し、共通のKPIを定義します。
例えば「○ヶ月以内に有効商談○件創出」など、インサイドセールスとマーケ・営業が協働して追う指標を決めておけば、チーム間でベクトルを合わせやすくなります。KGI(経営目標)と紐づいたKPIをSMARTな基準で設定し、定期的に効果検証・改善する体制が必要です。こうした目標設定プロセス自体が、部門間のコンセンサス形成にもつながります。
マーケティング&営業との密接な連携
インサイドセールスは単独では成果を出せません。マーケティング部門との連携では、リード情報の受け渡し基準やフォローすべき対象の優先度を事前に合意しておきます。例えば、「○○な条件を満たすリードはインサイドセールスが対応し、一定以上に育ったら営業へ引き渡す」といったワークフローの標準化を行います。
逆に営業からマーケティングへフィードバックする仕組みも設け、例えば「低確度と判断された案件はマーケに戻し、ナーチャリング施策を依頼する」等のルールを決めておくと良いでしょう。また、定期的に三部門(マーケ・インサイドセールス・営業)合同のミーティングを開き、リードの状況や商談結果を共有することも大切です。
こうした部門間連携体制の構築によって、効率的なリード育成とフォローアップが実現します。「社内のどこかにリード情報が埋もれてしまう」という事態を防ぎ、組織全体でリードを育てる文化を醸成しましょう。
適切な人材の配置と育成
インサイドセールスには顧客対応スキルとデータ活用スキルの両方が求められるため、人材の選定と育成が肝心です。社内から登用する場合は、コミュニケーション力が高く学習意欲のある人を充て、十分な研修を行います。特に新人だけで構成する場合は経験不足から試行錯誤が多くなるため、可能であれば専門知識を持つリーダー人材を配置し、OJTで育成する体制を取りましょう。
外部から採用する場合も、単なるコールセンタースタッフではなく、マーケティング視点やITリテラシーを持った人材を選ぶと理想的です。またインサイドセールスマネージャーの役割も重要で、KPI管理やチームのモチベーション維持、営業部門との調整役などを担える人を置くことで、現場が安定して成果を出しやすくなります。社内に経験者がいなければ、外部の専門支援サービスやコンサルタントを活用するのも一手です。
ツールの活用とデータベース整備
インサイドセールス活動を効率化・高度化するために、適切な営業支援ツールを導入しましょう。例えば顧客管理のためのCRMやSFA、メール配信・スケジュール管理ができるMAツール、通話内容を録音・テキスト化できる電話システムなどです。特にリードから得た情報を一元管理するデータベースは必須です。
顧客とのやりとり履歴や属性情報をしっかり記録・共有することで、チーム内で共通認識を持ってフォローできます。加えて、リモート商談のためのWeb会議システムやチャットツールも整備し、顧客とのコミュニケーション手段を充実させましょう。
ツール導入時には、単に形だけ入れるのではなく使いこなせるよう操作教育を行うことも大切です。便利なツールも現場で活用されなければ意味がありません。ツールの機能を活かして、リードスコアリングの自動化やメールのテンプレート化などを進めれば、担当者の負荷軽減とアプローチ精度向上につながります。
スモールスタートと継続的改善
インサイドセールスの導入は、最初から完璧を目指すよりも小さく始めて徐々に拡大する方が成功しやすいと言われます。例えばまず特定の商品やセグメントに対して試験的にインサイドセールスを配置し、成果と課題を検証してから全社展開するアプローチです。
導入後も定期的にKPIの達成状況をレビューし、課題があればプロセスやスクリプトを改善していきます。うまくいかない施策に固執せず、柔軟にPDCAを回すことが大切です。加えて、営業環境や顧客ニーズの変化にも対応できるよう、チーム内で知見を共有し常に戦略をアップデートしていきましょう。現場の声を吸い上げて施策に反映し、小さな成功体験を積み重ねることで、組織としてインサイドセールスを軌道に乗せることができます。
まとめ
本記事では、営業のDXが叫ばれる現在の状況下で、営業組織がどのように変革しているのかをインサイドセールスに焦点を当て整理しました。営業職はまさにDXの影響を受けて変革期の真っ只中にあります。
インサイドセールスはその変革の軸となる重要な分野であり、正しく運用すれば見込み顧客の着実な育成による商談創出、ひいては新規顧客の獲得や業容の拡大につながります。一方で、運用方法を誤れば組織内の一貫性を欠き、せっかく集めたリードを活かせずに顧客の信頼を失うリスクもあるため注意が必要です。
単にツールを導入して形だけ真似るのではなく、組織設計と業務フロー自体を見直し、従来とは異なる進化した営業スタイルを確立していくことが大切です。インサイドセールス成功のポイントは本記事で述べた通り、「人・プロセス・データ・ツール」の各要素を整備し、部門を超えて協力してPDCAを回すことにあります。
ぜひ自社の状況に合わせてインサイドセールスを活用し、営業DXによる営業力強化を実現してください。
営業のDXについて、より効果的な進め方を知りたい方は、ぜひソフィアへご相談ください。


