インターナルコミュニケーション

組織とは何か?定義や3要素、良い組織の作り方を徹底解説

組織の定義や意味、目的や良い組織を作る方法を解説

普段、ビジネスにおいて何気なく「組織」という言葉を使っていることもあるでしょう。しかし、組織の明確な意味や定義について、改めて考えたことはあるでしょうか。ただ人が集まっているだけの「集団」とは異なり、組織として機能するためには共有された目標やメンバー同士の協調性が不可欠です。組織の定義や歴史的な変遷、目的の構造を深く理解することは、大企業の人事部門や企業内研修を担当する企画担当者が、変化に強いビジネスチームや自律的な人材育成戦略を考える上で非常に役立つでしょう。この記事では、「組織」について詳しく解説した上で、最新の人的資本経営の視点や社内コミュニケーションの調査実態を交え、より良い組織を作るための具体的な方法を網羅的にご紹介します。

組織の意味と定義

普段、ビジネスにおいて何気なく「組織」という言葉を使っていることもあるでしょう。
しかし、組織の明確な意味や定義についてご存知でしょうか。組織の定義や歴史を深く知ると、ビジネスを考える上で役立つかもしれません。
広辞苑によると「組織」とは、「ある目的を達成するために、分化した役割を持つ個人や下位集団から構成される集団」と定義されています。

また、20世紀前半に活躍したアメリカの電話会社の代表であり経営学者でもあったチェスター・バーナード氏は、組織を「意識的で、計画的で、目的を持つような人々相互間の協働」と表現しています。

さらにバーナード氏は、組織を「意識的に調整された2人またはそれ以上の人々の活動や諸力のシステム」とも定義しています。これは、単に駅のホームや広場に人が集まっているだけの状態はただの「集団(グループ)」に過ぎず、お互いに明確な意思を持って協調・連携しながら活動することで、初めて「組織」として成立するということを意味しています。

企業という枠組みにおいても、各メンバーが自身の専門性や役割を活かしながら、全体の一つの目標に向かって協力し合うことが求められます。

大企業の人事部門がこの定義を理解することは非常に重要です。なぜなら、単に優秀な人材を採用して一つの部署に集めただけでは「集団」に過ぎず、彼らが相互に作用し合う仕組みや風土を意図的に構築して初めて「組織」としてのパフォーマンスが発揮されるからです。
研修企画担当者も、個人のスキルアップだけでなく、チームビルディングや関係性構築に焦点を当てたプログラムを提供することが求められるのではないでしょうか。

組織や所属する枠組みは、以前は組織内部を主要な焦点とし、競争や強化が主な目的でした。しかし、社会や外部環境の要因、そして多様性や流動性が高まる現代では、組織論のアプローチが変わってきました。これにより、組織は外部との関係や調和を重視し、コントロールが難しい側面も考慮しなければなりません。

ここからは今の時代にあった「組織」について、より詳しく解説していきます。
集団と組織の違いをまとめると、以下のようになります。

概念 特徴・定義 企業における具体例
集団(グループ) 物理的、あるいは一時的に同じ場所にいる人々の集まり。明確な共通目標や相互作用が必須ではない 研修の場にただ集められただけの新入社員の集合体
組織(オーガニゼーション) 共通の目的を持ち、役割を分担し、意識的に協働・連携している人々のシステム 全社目標達成のために、各自が役割を果たし連携する営業部と開発部


組織を構成する3つの要素

組織について考える上で、アメリカの経営学者であるチェスター・バーナードが提唱した説も重要です。バーナードは、組織が成立するためには「共通目的」「意思疎通」「協働意思」の3つの要素が必要だと説いています。

共通目的

企業における共通目的とは、「企業理念」や「ビジョン」、あるいは近年注目を集める「パーパス(存在意義)」に該当します。これが企業全体に深く浸透することで、各事業部や部署がより具体的な目標を立てることが可能になります。

もし共通目的が存在しない、あるいは一部の経営層にしか共有されていない場合、メンバー間のつながりが生まれず、組織として団結することが難しくなります。また、この共通目的は「社会的に受け入れられ、かつ市場において有効であり支持されるもの」でなければならないとされています。

大企業の研修においては、新入社員や中途入社者に対して、単なる業務スキルの前にこの「共通目的」を徹底的に腹落ちさせるオンボーディングが極めて重要と言えるでしょう。

意思疎通

同じ目的を持った個人が情報を集約し、互いに共有すると意思疎通が生まれます。意思疎通は、目的の再確認や生産性アップにつながり、組織としての機能を強めます。コミュニケーションが不足してしまうと、組織において芽生える個々の感情やトラブル、その解消がしにくくなってしまいます。

協働意思

協働意思とは、メンバー同士が互いに互いの役に立ちたいと思う意思のことです。「貢献意欲」と表現されることも多く、貢献したいという思いはモチベーションになり生産性を高め、組織の売上や協調性を高めます。
この前向きな意欲こそが組織を突き動かし、このような意思がなければ業務は進まず、組織としての力も弱まってしまうでしょう。

協働意思は、組織に属する個人が、その企業やチームに対して自主的に抱く感情です。協働意思が高い組織では、メンバー同士の自然な連携や「助け合い」が生まれ、組織全体の実行力が強固になります。

しかし、この意識を自発的に育むためには、精神論に頼るのではなく、従業員が成果を出した際に企業側がそれを適切に認め、成果に見合った評価を与える「人事評価制度」や「報酬制度」などの仕組みが前提として必要不可欠です。これらが整備されて初めて、「この会社のために頑張ろう」という真の協働意思(エンゲージメント)が継続的に醸成されるでしょう。
組織の成立を満たす3要素をまとめると、以下のようになります。

要素名 概要・定義 人事・研修部門の具体的アプローチ
共通目的 組織全体で共有されたビジョンや理念 理念浸透ワークショップ、経営陣からの継続的なメッセージ発信
意思疎通 メンバー間の円滑な情報共有と対話 1on1ミーティングの導入と質的向上、心理的安全性の醸成研修
協働意思 組織に貢献したいという自主的な意欲 納得感のある人事評価制度の構築、ピアボーナスなど承認文化の醸成

組織が設定する目的の種類

メンバーが集まって組織を維持・運営するための目的は、単に売上や利益といった数値化できるものだけではありません。大企業において組織が設定すべき目的は、大きく分けて「意義目標」「成果目標」「行動目標」の3つの階層に分類されます。

人事部門や研修担当者は、これら3つの階層の繋がりを理解し、従業員に適切に落とし込むための目標管理(MBOやOKR)を設計することが求められます。

意義目標

意義目標とは、企業理念やビジョンを達成するために設定される、企業が社会で存在し活動し続ける意義に関する根本的な目標です。

例えば、生活インフラを提供する企業であれば「自社のサービスを通じて人々の生活を安全で豊かなものにする」、食品メーカーであれば「安全でおいしい食事を通じて人々に健康と笑顔を届ける」といったものが該当します。これは組織の存在理由そのものであり、メンバーの働く誇りや内発的モチベーションの源泉となります。
人事部門は、採用活動や全社キックオフなどの場で、この意義目標を力強く語ることが大切です。

成果目標

成果目標とは、各部署やチーム、あるいは従業員個人が達成すべき、具体的な数値を伴う目標を指します。これは画一的なものではなく、個人のスキルや役割に応じて異なります。

行動目標

行動目標とは、例えば「月に1件は必ず新規顧客との商談を成立させるために、毎週20件の架電を行う」「毎日必ず部下5人と5分間のコミュニケーションをとる」など、自らの行動をコントロールするための指標です。

研修企画担当者は、現場の社員がこの行動目標を自律的かつ具体的に設定できるよう、SMARTの法則(Specific, Measurable, Achievable, Related, Time-bound)などを活用した目標設定スキル育成プログラムを提供することが効果的でしょう。

ピーター・ドラッカーの「組織論」

ピーター・ドラッカーは、組織の中心を目標やビジョンにおくアプローチを提唱し、その考え方は日本でも広まりました。彼のアイデアは、目標の設定やビジョンの明確化を通じて、組織を活力あるものにし、従業員の動機づけにも役立つとされています。

ドラッカーの言葉やアイデアは、基本的で哲学的な要素も含まれており、彼の有名な言葉である「凡人が非凡な働きをする組織が目指すべき組織」などはその代表的な例です。彼の考え方は、目標管理やビジョンの重要性を強調し、組織をより効果的に運営するための指針を提供しています。

また、ドラッカーは、組織を企業・個人・社会という3つの視点において説明しています。
「マネジメントの権威」と呼ばれる彼は、組織のマネジメント層が組織を機能させ、社会的貢献へつなげるために果たすべき「3つの役割(タスク)」を以下のように提唱しています。
これは現代の大企業における管理職育成の根幹をなす哲学でもあります。

まず、組織は「企業の特有の目的と使命を果たすもの」として働くといいます。企業のミッションは主に利益を生み出すことと、その周辺にあるさまざまな目的を果たすことです。

それぞれの企業が担う社会的な目的(例えば、保険会社なら「契約者の万が一のときの補償を行う」、レストランなら「おいしく安全な食事を提供する」など)を果たし、独自の価値(独自性)を追求して本業に真剣に向き合うことが、結果として確かな売上とファン獲得につながるとドラッカーは説いています。

続いて、個人に対して組織は「仕事を生産的なものにし、人に成果をあげさせる」ものとして働くといっています。組織とは、企業の資産でもある個人が、単に作業をするだけでなく、生産的で成果を感じられる活動をする場所だというのです。従業員一人ひとりの強みを活かし、自己実現と組織の成果をリンクさせることがマネジメントの重要な役割となります。

人事部門は、管理職が部下の強みを発見し、それを活かすための適材適所の配置やコーチングスキルを身につけるための支援を行う必要があるでしょう。

最後に社会に対して組織は「自らが社会に与えるインパクトを処理するとともに、社会的な貢献を行う」ものであるといっています。企業の運営によって発するインパクトを自分の組織で処理しつつ、社会の一部として世の中になんらかの還元をするものが組織だという主張です。

これは現代におけるESG(環境・社会・ガバナンス)経営やSDGsへの取り組みに通じる概念であり、組織は利益追求だけでなく、事業活動が社会環境に与える負の影響を最小化し、持続可能な社会の実現に貢献する責任があることを示しています。

フレデリック・テイラーの科学的管理法

フレデリック・テイラーは、20世紀初頭に科学管理法(Scientific Management)として知られる管理理論を提唱したアメリカの工業技術者・経営学者です。科学管理法は、効率的な生産プロセスの確立と労働者の生産性向上を目指す経営手法です。

テイラーは、適切な労働者を選抜し、労働者にとって最適なトレーニングを提供することが重要であると考えました。適格な労働者が適切に訓練を受けることで、効率的な仕事の実行が可能となります。

また、科学管理法では、仕事のタスクを細分化し、各タスクの標準化を図ります。これにより、労働者は特定のタスクに専念し、それを効率的にこなすことができるようになります。

さらに、テイラーは最適な作業手順を科学的に確立することを提唱しました。これにより、無駄な動きや時間の浪費を最小限に抑え、生産性を向上させます。

また、労働者には生産性向上の成果に応じた報酬を提供することとしており、これが働くモチベーションを高め、生産性を向上させる要素の一つとなります。

科学管理法は一部で成功を収めましたが、労働者のモチベーション低下や人間性を無視する傾向があり、批判も受けました。そのため、後に人間関係学や行動科学の発展とともに、より人間中心の経営理論が広まり、テイラーのアプローチを補完する形で経営が進化しました。

現代の大企業人事においても、この歴史から学ぶべき教訓は多く存在します。例えば、業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める際、業務の細分化やマニュアル化(現代版の科学的管理法)は有効です。

しかし、人間を単なる「タスクを処理する歯車」として扱ってしまえば、エンゲージメントの低下や離職を引き起こします。テイラーの時代とは異なり、現在の労働者は意味ややりがいを求めています。

したがって、業務の標準化を進める一方で、従業員の自律性やクリエイティビティを尊重し、ウェルビーイング(心身の健康と幸福)を担保する「人間中心のマネジメント」を並行して推進することが、人事部門の大きな役割となっています。

フレデリック・ラルーの「ティール組織」と組織の発達段階

『ティール組織』の著者フレデリック・ラルーによると、組織には以下のように5つに色分けされた発達段階があります。

  • – 衝動型(レッド)組織:力によって無理やり人々を支配していく原始的な組織
  • – 順応型(アンバー)組織:厳格な上下関係やルールがある組織
  • – 達成型(オレンジ)組織:目標の達成を何よりも重視しマネジメントやアクションを行う組織
  • – 多元型(グリーン)組織:上下関係にとらわれないコミュニケーションで、価値観や組織理念を共有していく組織
  • – 進化型(ティール)組織:信頼関係によって結ばれている個人同士が流動的に役割をこなす組織

現代の多くの企業は、達成型組織に属します。しかし達成型組織には意思決定や行動までのスピードが遅くなるケースが多く見られるため、最近ではよりフラットにコミュニケーションを取れる多元型組織、進化型組織へと変化してきました。

その理由として、現代ビジネスにおける「アジリティ(Agility)」と「柔軟性(Flexibility)」は、どちらも組織や企業が変化に適応し、競争力を保つために重要な要素となるからです。現代では、ビジネスは急速な変化や複雑な問題に対処する必要があり、従来の階層的な構造だけでは適切な対応が難しいでしょう。

多元型組織と進化型組織は、柔軟性・アジリティ・イノベーションを促進するための手段として、組織内の協力と自己責任を強化します。これにより、組織は変化に適応し、競争力を維持・向上させることが可能となります。

大企業が「達成型(オレンジ)」から「多元型(グリーン)」や「進化型(ティール)」へと移行する過程では、必ずと言っていいほどマネジメントの葛藤が生じます。これまで数値管理と統制で組織を引っ張ってきた管理職にとって、権限委譲や対話を重視するスタイルへの転換は容易ではありません。人事・研修部門は、こうしたパラダイムシフトを乗り越えるため、管理職向けに「サーバントリーダーシップ(支援型リーダーシップ)」や「コーチング」の研修を手厚く行い、新しい時代の組織運営を牽引できる人材を育成する必要があります。
組織の発達段階についてより詳しくは、以下の記事をご覧ください。


ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリ のリゾームによる組織の概念

組織という概念をさらに理解するために、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリとの言葉を紹介します。
ポスト構造主義時代を代表する哲学者である彼は、「リゾーム」という組織モデルの概念を提唱していました。

リゾームとは地下茎を表す単語です。表面的な部分だけ見ると集合離散をくり返して同じ形で留まることのない物体も、必ず一定の範囲で振り幅を持っており、もとを辿れば、それぞれが根元の部分でつながっています。

このように一見すると無秩序に動いているように見えても、互いに抑制を効かせているというのが、リゾームモデルの特徴です。共通の根元の役割を果たすのは、多くの場合哲学や理念などです。日本の古い企業のように、以心伝心が可能で、阿吽の呼吸で会話できる組織を作るのはこの時代には難しいかもしれませんが、経営の哲学を問い直すことで、自社企業の組織としてのまとまりを見直すことができます。

今まで組織の中心にあった構成要素が、社会や外部環境、人の多様性や流動性といった要因によってコントロールしにくくなっています。とくに人の行動や意思決定は管理が難しい部分です。

この流動性や多様性を受け入れ、コントロールしようとすることは難しいため、むしろ管理するというより変化を受け入れる方針が現代における組織運営で重要であると言えます。

企業は設備や機械を管理できますが、人を完全に管理することは困難でも、この変化を受け入れることで、組織は柔軟性を持ち、新しいアイデアやアプローチに対応できるようになります。この考え方は「リゾームモデル」とも関連しており、表面ではバラバラに見えても、根元の部分ではしっかりとつながっているという状態です。

リゾームは、組織や企業が従来のように階層的な構造ではなく、むしろ「場」として存在するような考え方を示しています。将来的には、私たちは複数の組織やコミュニティに同時に所属し、集まったり離れたりしながら学び成長していくことが一般的になるでしょう。

人事部門は、この「リゾーム」の概念を現代の働き方に適用して考える必要があります。例えば、副業の解禁、アルムナイ(退職者)ネットワークの活用、フリーランスやギグワーカーとの協働など、現代の大企業は「正社員だけで構成される閉じた組織」から「境界が曖昧な開かれたコミュニティ」へと変貌しつつあります。

物理的なオフィスや雇用形態という枠組みで人を管理するのではなく、「企業のパーパス」という地下茎で様々な人材を繋ぎ止め、共感によって惹きつける「エンプロイーブランディング」の手法が、今後の採用や組織維持において決定的な意味を持ちます。



構造としての組織デザイン

ここからは意図的に組織をどう作るか、もしくは組織の枠組みをどう変えるかについて解説します。その際、「組織デザイン」の考え方を知っておくと便利です。

「組織デザイン」とは、会社が掲げる目標に適した組織を構築すること、もしくは目標達成のために今ある組織の枠組みを変えることです。枠組みを変えるというのは、具体的にはホールディングス化する、ある事業を切り出して一つの会社のように扱う「カンパニー制」を採用する、または他社と協業するなどのイメージです。
このような大きな組織変更は外部に公表されるため、ステークホルダーへの経営メッセージを発信することにもつながります。組織デザインには、主に以下の分類があります。

  • – 機能別サービス組織:最も一般的な企業組織の形態。製造や販売など、経営機能ごとに組織が分かれている
  • – 事業部制組織:製品やサービス、またはマーケットごとに組織が分かれ、それぞれに決裁権限を持つ。代表的なものに「商品別組織」「顧客別組織」「地域別組織」などがあり、より個々の組織の独立性を高めると「カンパニー制」となる
  • – プロセス別組織:職能や事業、エリアなどの業務遂行要素の組み合わせに応じて組織が分かれているもの。プロジェクト型組織やマトリクス型組織などもこの一種で、表向きの組織図は機能別サービス組織に見える場合もある
    さらに現代のビジネス環境では、より機動性の高い組織体制も導入されています。
  • – チーム型組織体制:プロジェクトごとに多様なスキルを持つメンバーを集めてチームを編成する手法です。これにより、階層を介さずに柔軟かつ迅速な意思決定が可能となり、異なる専門分野の交わりから革新的なアイデアも生まれやすくなります。ただし、チーム間の調整やリーダーシップの確立、目標の明確化など、管理面での難易度が高いという人事上の課題も存在します。

組織デザインは、企業価値向上やコスト削減、経営課題の解決に向けた変革などさまざまな目的のもとで行われます。目的が複数ある場合も少なくありません。全体に関わる大きな機構改革もあれば、部分構造の統廃合などの小さな動きとなるケースもありますが、いずれも経営者は少なくないエネルギーを消費しながら組織デザインを行います。

ここで注意したいのは、組織の枠組みを変えることで人や組織が思い通りに動くようになるかというと、必ずしもそうとは言えないということです。事業環境の変化のスピードに応じて組織が進化していくためには、別の工夫も合わせて行うことが必要です。より良い企業風土をいかにして作り、エンゲージメントを高めていくかという課題も、同時に意識することが大切です。
枠組み(ハード面)の変更だけでなく、企業が組織を真に機能させ、より成長していくための「良い組織づくり(ソフト面)」には、人事部門が主導する以下の施策が不可欠です。

適切な人事評価制度の構築:従業員が日々の業務に対して適切な評価を受けていると実感できる制度づくりです。成果に対する見返りを保証することは、従業員の「企業に貢献したい」という協働意思を育む前提条件となります。
企業のビジョンや理念の共有(社内浸透):明確な共通目的を全従業員へ浸透させ、組織全員が同じ目標に向かって走れる「軸」を作ります。
スキルを高める教育制度の確立:従業員の自律的な成長を促し、組織全体の生産性を高めるための継続的な教育・研修制度の整備が必要です。特にジョブ型雇用への移行期においては、自らキャリアを切り拓くための学習環境の提供が急務です。
流動性と構造は対照的に思えるかもしれませんが、実際には構造も変化することがあり、新しい構造が出現することもあります。重要なのは、その瞬間においてコミュニケーションと合意形成を通じて必要な構造を選択することですが、その際、最新の構造である必要はなく、その状況に最適な構造を選びとることが大切です。
以下の記事では、組織デザインについて解説するとともに、成功事例についてもご紹介しています。



現代の組織観の変化

組織という言葉が持つ意味は、時代の変遷に応じて変化しています。どのような流れで変化が起きたのかを見ていきましょう。

生産としての組織から生命的な組織観に変化している

組織という言葉が持つ意味は、時代の変遷に応じて変化しています。どのような流れで変化が起きたのかを見ていきましょう。

外部環境の変化

従来の工業化の時代は、機械や物質こそが価値であり、それを作るために人が動いていました。価値創造の主はモノだったのです。しかし、サービス業の発展が起き、重要視されるのがモノではなく人になるという変化が起こります。

モノが中心にあった時代には、厳しいルールと管理によって世の中が成り立っていました。しかし人がメインになれば、厳格な規定よりもいかに個別最適化したルールを即興で作るかのほうが重要になってきます。かつて価値を産み出す装置という機械的な組織は、生命体のようなイメージに変化してきています。

現代のビジネス環境では、物理的な資産よりも人の力が非常に重要です。市場はグローバリゼーションの時代が終わり、多様な要素が影響を与えており、企業にとって多くの機会が存在します。また、この状況下では、成功するためには柔軟で変化に適応できる会社が商機をつかみやすくなります。つまり、迅速な行動力と変化に強い柔軟性を持つことが重要であることがわかります。

人的資本開示の必要性

人が最も重要な資産である組織が標準化し、今では企業はこぞって人材投資に力を入れるようになりました。企業としてどのくらい人材に投資できているかがその企業の成長性を示す指標となり、ステークホルダーの判断材料にもなっています。人的資本の開示を求められるケースも増えているので、企業は積極的に数値を開示することが求められます。

人材や人財という言葉が、企業の株主たちにも注目されており、そのため人に対する投資や取り組みに本腰を入れる企業が増えてきました。
しかし、単に開示することで人的資源を管理できているということにはなりません。リソースを確保した上で、企業は人材から組織力を高めるための活動に努める必要があります。
「人的資本開示」について詳しくは下記の記事をご覧ください。


人的資本の不可能性

人的資本開示の必要性は上場企業においては、株主と対話を通して磨き上げるものです。しかし、人的資本開示にむけた施策が人材に対する投資効率を完全に実現できるかといえば、留意する必要があります。

マックス・ウェーバーは、行き過ぎた官僚制の問題点を指摘しています。これは、主観性よりも客観性、属人的な判断よりも標準化、計算可能性を重視しすぎることで、組織が過度に合理的になり、人間性や創造性を排除する可能性があるということを指摘しています。これを「ザッハリッヒ」と表現しています。

日本の大企業における「大企業病」や官僚主義にも、この問題が関連しています。
たとえば、人的資本開示を過度に意識するあまり、可視化や指標化を強調し、管理業務を増やしすぎれば、多様性やイノベーションが生まれにくくなるといった逆効果も考えられます。

ビジネスにおいては、合理性や客観性は重要であり、予算や計算可能性は不可欠です。しかし、未来のビジョンや不確実性に対処するためにも、人間的な要素や柔軟性を尊重し、単なる指標や数値だけにこだわらず、創造力やイノベーションを育てる必要があります。

組織は、静的なアプローチから動的なアプローチへの転換が求められており、これは今後の探求課題となるでしょう。どのようにして合理性と人間性のバランスをとり、不確実性の中で成長し続けるかが、経営とビジネスの重要な課題ではないでしょうか。


ポストモダン時代に必要な良い組織の作り方

ここまで組織の定義や歴史的背景、現代における組織観の変化を見てきました。では、変化した組織に求められるものの形を踏まえて、企業はどのような点に注意して組織づくりを行えばいいのでしょうか。最後に、これからの時代における理想的な組織の要素と実践的な手法をご紹介します。

理念や価値観を中心においたインターナルブランディング

ポストモダン時代では、先述の「リゾーム」のように、組織をまとめる強固なファクターを持っていることが大切です。理念や価値観などを組織内に浸透させ、共感を得ながら行動変容を促していきましょう。

組織内のすべてのメンバーが共有する理念や価値観は、組織のアイデンティティや目標を明確にし、組織全体の方向性を示す役割を果たします。
これにより、メンバーは共通の目標に向かって協力し、組織全体が一体感を持つことができます。また、共有された理念や価値観は、組織文化を形成し、組織内の行動指針や行動様式を示す役割を果たします。これにより、メンバーは一貫性のある行動をとり、一人ひとりがかなめとなり組織文化を支える要素となるでしょう。

このように自社のブランドや理念を従業員に腹落ちさせる一連の活動は、インナーブランディングと呼ばれます。社員の意識を変え、組織の文化を根付かせていくことで、より理想的な企業のあり方を実現していくことができます。
インナーブランディングについてのより詳しい概要や実際の手法は、以下の記事をご参照ください。


ルールや制度よりもコミュニケーション(インターナルコミュニケーション)の重視

組織のまとまりを作るためには、厳格なルールや細かい制度を作るよりも、コミュニケーションを活発にさせることが何よりも重要です。

社内やグループ会社など、同一の組織内におけるこのような広報活動をインターナルコミュニケーションといいます。「社内広報」や「インナーコミュニケーション」とも呼ばれ、具体的には社内報や社内セミナー、対話集会などの活動が考えられます。社内コミュニケーションを活性化させることで、波及効果が生まれメンバー間の共通認識を浸透させ、高い熱量で然るべき方向に動く組織を作れます。

ここで、現代の企業が直面しているコミュニケーションのリアルな課題を見てみましょう。弊社ソフィアの調査(フル_IC実態調査2025)では、従業員数1,000人以上の大企業に勤める方々を対象に、社内コミュニケーションの実態について大規模なリサーチを行いました。

弊社ソフィア「フル_IC実態調査2025」調査概要

項目 内容
調査時期 2025年10月
調査方法 インターネットリサーチ
対象 従業員数1,000人以上の企業に勤めている現場及びコーポレート部門の方
回答者数 496名
質問数 46問
テーマ インターナルコミュニケーションにおける課題と対策、コーポレート部門からの情報発信、社内コミュニケーション媒体の活用状況

弊社ソフィアの調査では、職場に対する評価や認識を前提として整理したうえで、以下の「6つの観点」から調査を実施しました。

  • – 社内コミュニケーションの実態
  • – 1on1などのマネジメントコミュニケーション
  • – ナレッジ共有
  • – 非公式なコミュニケーション
  • – 働き方
  • – エンゲージメント運用

同調査の分析から明らかになったのは、リモートワークやハイブリッドワークに代表される「働き方の多様化」により、従来の対面を前提とした情報共有や意思疎通の手法が根本的な見直しを迫られているという実態です。また、大企業特有の「組織の多層化」や「部門間の分断(サイロ化)」といった従来からの課題に加え、テレワーク下における「ナレッジの分散や活用不足」、さらには「偶発的なコミュニケーション機会の喪失」など、新たな論点も明確に顕在化しています。
こうした状況の中で、人事部門が主導して「1on1」や「エンゲージメントサーベイ」といった施策の導入を進める企業は多いものの、実際の現場における運用や活用のあり方には大きなばらつきが見られます。制度として形だけ導入しても、マネージャーの対話スキルが不足していれば効果は薄く、サーベイを取りっぱなしでフィードバックを行わなければ、かえって従業員の不信感を招くことになります。
また、社内イベントや日常の雑談などの「非公式なコミュニケーション」を含め、関係性構築の手段はデジタル・アナログを問わず多様化しており、それぞれの位置づけや役割を全社的に整理する必要性が高まっています。
これからの時代の強い組織を作るためには、人事部門が単に制度という「ハード」を導入して終わるのではなく、従業員同士の有機的なつながりや共感を生む対話の機会を戦略的にデザインする、インターナルコミュニケーションの高度化が不可欠です。組織の壁を越えたコラボレーションを生み出し、一人ひとりの主体性を引き出すための仕組みづくりこそが、人事・研修担当者に求められる最大のミッションと言えるでしょう。
インターナルコミュニケーションについて詳しくは、以下の記事をご参照ください。



まとめ

組織とは、ある目的を達成するために個人から構成される集団のことです。企業組織の場合は、利益の追求や社会的意義の達成などが共通の目的となります。

バーナードが提唱した組織の3つの要素を踏まえると、共有された目的をもとにコミュニケーションを取り合い、互いに貢献意欲を持ちながら関わることが、組織を成立する上で欠かせないということがわかります。

モノの生産が中心にあった時代には、厳しいルールと管理によって世の中が成り立っていました。
しかし、現代ではサービス業の発展で人が軸になり、組織はより生命体めいた形に変化し、人的投資の重要性に注目が集まるようになっています。

経済産業省が「人材版伊藤レポート」等で提唱する人的資本経営の波が到来し、組織はかつてないスピードで変化を迫られています。経営戦略と連動した動的な人材ポートフォリオの構築や、リスキリングを通じた自律的キャリアの形成支援など、人事部門が果たすべき役割は高度化・複雑化しています。

内部から自発的にまとまる組織を作っていくには、企業は、インナーブランディングやインターナルコミュニケーションを活発に行う必要があります。多様化する働き方の中で、人事部門や研修企画担当者が現場のコミュニケーション課題に寄り添い、1on1の質的向上やエンゲージメント向上施策を泥臭く運用し続けること。それこそが、不確実性の高い次世代を勝ち抜く、レジリエンス(回復力)を備えた強い組織づくりへと直結するのです。

お問い合わせ

組織とは何か?組織の定義や意味についてよくある質問
  • 「組織」と単なる「集団(グループ)」の決定的な違いは何ですか?
  • 単なる集団は、人が同じ場所や同じ部署に集まっているだけの状態を指します。一方、組織は「共通の目的」を持ち、メンバーがその目的達成のために「役割を分担」し、「互いに協調・連携」しながら活動している状態を指します。チェスター・バーナードの定義によれば、「共通目的」「協働意思」「意思疎通」の3要素が揃い、相互に作用し合って初めて機能する組織となります。

  • 組織の「意義目標」と「成果目標」は、現場のマネジメントでどう使い分けるべきですか?
  • 意義目標は「自社のサービスを通じて社会の課題を解決する」といった定性的な企業理念やパーパスを表し、組織全体の求心力や働く誇りとなるものです。一方、成果目標は「今期売上〇〇億円」「顧客獲得数〇〇件」といった定量的なビジネス数値を指します。研修担当者は、現場のマネージャーが日々の「成果目標」を追うだけでなく、それが企業全体の「意義目標」にどう繋がっているのかを部下に語り、腹落ちさせる「意味づけのコミュニケーション」ができるよう教育を行うことが重要です。

  • 人的資本経営時代において、人事部門が最も意識すべきポイントは何ですか?
  • 従業員を「管理・統制すべきコスト」ではなく、「価値を生み出す源泉(資本)」と捉え直すことです。「人材版伊藤レポート」が示す通り、経営戦略と連動した「動的な人材ポートフォリオの構築」や、従業員が自律的に学び続ける「リスキルの促進」、そして多様な知を活かす「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進が不可欠です。これらをスローガンで終わらせず、具体的な人事評価制度や研修プログラム、社内コミュニケーション施策に一貫して落とし込むことが鍵となります。

  • リモートワーク下でインターナルコミュニケーションを活性化させるための第一歩は何ですか?
  • まずは現場のコミュニケーション課題をデータとして可視化することです。エンゲージメントサーベイやパルスサーベイを適切に運用し、部門間の分断状況や1on1の実施品質を定点観測します。その上で、経営層からのトップダウンのメッセージ発信(社内報やオンライン対話集会)と、現場におけるボトムアップの非公式コミュニケーション(オンライン雑談の場やピアボーナス等)を両輪でデザインしていくことが、弊社ソフィアの調査結果からも効果的であると示唆されています。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。