
2025.10.15
Power Automate×Teamsで実現する業務効率化:導入事例と伴走支援ガイド

目次
DX推進を担う大企業の情報システム部門では、社内の定型業務の自動化や効率化が急務となっているのではないでしょうか。Microsoft TeamsとPower Automateの連携により、日常業務の多くを簡単に自動化し、社内コミュニケーションを円滑化することが可能です。しかし、真に効果を発揮するためには専門家による導入支援とユーザー教育が欠かせません。あなたの組織でも、ツール導入はしたものの活用が進まない、といった課題はありませんか?本記事では、Power AutomateとTeamsの効果的な活用ポイントと具体的な事例をご紹介します。
Microsoft Power Platformとは
Microsoft Power Platformは、Microsoftが提供するローコード開発のビジネスアプリケーションプラットフォームです。平たく言うと、プログラミングの知識がなくても簡単な操作でアプリやワークフローを作成できるツール群のことです。
具体的には、Power Apps(業務アプリ構築)、Power Automate(プロセス自動化)、Power BI(データ分析)など複数のツールを含みます。これらのツールを活用することで、企業は業務プロセスの効率化やデータの可視化を実現し、日々の業務負担を軽減できるでしょう。
とくにPower Automate(旧称Microsoft Flow)は、さまざまなアプリやサービスを連携させて反復作業を自動化できるツールです。たとえばTeamsと連携することで、Teams上の活動(メッセージ通知や承認依頼など)の自動化や他サービスとのデータ連携が可能となり、煩雑な定型タスクを削減できます。
Microsoft 365契約者であればPower Automateを利用でき、Teams内で使う場合も追加のライセンスは不要です。0からコーディングを行うよりも、少ないプログラムコードで開発ができるローコードで迅速に業務改善策を開発できるため、ビジネスのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し競争力を高める重要な手段として注目されています。
また、Power Platformはエンタープライズレベルのコンプライアンスとガバナンスを備えており、ローコード環境を安全に管理・監視するための統制も備えています。これにより企業はデータを安全に扱いつつ柔軟な業務改善が可能になるでしょう。
さらにAI機能やチャットボットの作成にも対応しており、業務プロセスのさらなる自動化や高度な意思決定支援も実現します。リアルタイムで業務状況を把握し速やかな対応を促すことができるため、Power Platformは全社的なDXを加速させる革新的な基盤と言えるでしょう。
(※実際にPower Automateを導入した企業からは「手作業の多いプロセスを置き換えることができた。Power Automateのおかげで追加コストなしに事業拡大が可能になった」という声も報告されています。)
このように、適切に活用すれば省力化とコスト削減を両立できる点も大きな魅力です。ここまでPower Platformの概要をご紹介してきました。では、なぜ専門的なサポートが必要なのでしょうか。
Power Platformのサポートの必要性
強力かつ多機能なPower Platformですが、その導入から運用までを円滑に進めて最大限の価値を引き出すには、専門的なサポートが重要だと思われます。各種ツールの機能やベストプラクティスを理解するには一定の知識が必要であり、ユーザーが効果的に使いこなせるようになるためのトレーニングや支援が欠かせません。
また、Power Platform自体が日々進化し新機能やアップデートが定期的にリリースされています。その変化に対応し、常に最新の情報や最良の手法を取り入れるためにも、専門家からのサポートを通じて知見をアップデートすることが不可欠でしょう。
さらに、実際に運用している最中にトラブルや不具合が発生した場合、迅速かつ的確に対応できる体制がないと業務が滞るリスクがあります。システム障害の解決やエラーのトラブルシューティングには高度な専門知識と経験が求められるため、社内に十分なリソースがない場合は外部の力を借りることが有効です。
要するに、Power Platformを安心かつ効果的に活用するためには適切なサポート体制が不可欠なのです。導入準備から日々の運用・改善に至るまで専門的な支援を受ければ、プラットフォームの潜在能力を最大限に引き出し、ビジネス目標の達成に近づくことができるでしょう。
それでは、具体的にどのような課題がサポートによって解決できるのでしょうか。
Power Platformのサポートによって解決できる課題
Power Platform活用時に直面しがちな課題も、適切なサポートを受けることで早期に解決できるでしょう。ここではサポートによって解消できる主な課題をご紹介します。専門家の支援を受けることで、以下のような問題に対処し、Power Platform導入の効果を最大化できます。
システム設計・構築の最適化
Power Platformを用いて自社の業務ニーズに合ったシステムやアプリを構築する際は、各ツール(Power Apps、Power Automate、Power BIなど)を適切に組み合わせることが求められます。専門的なサポートがあれば、業務要件に合致した最適なカスタマイズや拡張が可能となり、現場の業務プロセスにフィットしたシステム運用を実現できるでしょう。
とくにローコード/ノーコードとはいえ、設計段階での細かな最適化が最終的な業務効率や生産性向上に直結します。そのため、経験豊富なエンジニアの支援を受けて設計をブラッシュアップすることが効果的だと思われます。
データ統合とシステム連携の問題
Power Platformを他のシステムやデータベースと連携させる際には、データ形式の違いや変換エラー、接続方法の難しさといった課題が発生しがちです。
たとえば社内の基幹DBや他部門のシステムとPower Automateでデータをやり取りする場合、APIの扱いやコネクタの設定でつまずくケースがありますが、サポートを受ければ、こうしたデータ統合の課題を効率的に解決することができるでしょう。専門家の支援により、異なるシステム間の接続設定も円滑に行え、シームレスなデータフローが確保可能です。業務効率化のためにはデータ連携の確実な実現が重要であり、その点でのサポートは大きな価値を持ちます。
自動化フローの設計とエラー解決
Power Automateによる業務プロセスの自動化では、複雑なフローの設計やエラー処理が必要になる場合があります。
フローの構築自体はドラッグ&ドロップで比較的容易ですが、条件分岐が多い業務ロジックや外部サービスとの連携を含むと設計が複雑化し、思わぬエラーも起こり得るでしょう。
自動化は手作業削減に大きく貢献しますが、フローの途中で処理が止まる、期待した結果にならないといった問題が起きないよう、設計段階でエラーを最小限に抑える工夫が必要です。
この点、専門サポートを活用すればフロー設計のレビューやテストを通じて不備を早期に発見・修正できます。実際、Teamsのチャネルへ自動投稿するフローなどでは、ネットワークや認証の一時的な失敗に備えたリトライ処理や、エラー発生時の通知方法などを組み込むことが重要ですが、経験のあるエンジニアの支援があれば、そうしたポイントも的確に対処できるでしょう。複雑な業務ロジックを反映したフローの構築も、サポートがあれば実現しやすくなるのではないでしょうか。
データセキュリティとガバナンスの確立
Power Platformでは多数のデータソースを扱えるため、セキュリティとガバナンスの確保が極めて重要です。特に企業内の機密データを扱う場合、データ保護やアクセス権管理を適切に行わなければ情報漏洩や不正アクセスのリスクが生じます。サポートを通じて専門家の助言を得れば、組織のセキュリティポリシーに沿った設定やガバナンス体制の確立が可能です。
たとえばPower AutomateのDLP (データ損失防止)ポリシー設定や、環境ごとの利用権限の管理方法など、セキュリティ強化策を講じる際にも専門的な支援が有効でしょう。適切なガバナンスの下で規制やコンプライアンス要件を満たすことで、組織全体の信頼性向上にもつながります。
ユーザー教育とトレーニング
Power Platformは非IT部門の一般ユーザーでも扱えるツール群ですが、効果的に活用するには一定の学習が必要でしょう。とくに最初は使い方が分からず、つまずく社員も少なくありません。
そこで、サポートによるユーザー教育プログラムやトレーニングを活用すれば、スムーズな展開が期待できるでしょう。基本的な操作方法から実践的な応用まで、専門家が指導することでユーザーが段階的にスキルを習得できます。
たとえばPower Automateのトレーニングでは、テンプレートの利用方法から簡単なカスタマイズの仕方、エラーになった時の対処法まで現場で役立つ知識を教えることができます。
組織全体での利活用を促進するためにも、計画的なトレーニング支援によって各ユーザーが自律的にツールを使いこなし、日々の業務に活かせるようになることが重要なのです。
パフォーマンスの最適化
業務が拡大しPower Platformで扱うデータ量や処理件数が増えてくると、パフォーマンス低下が課題となることがあります。たとえばPower Automateのフロー実行が遅くなったり、Power BIのダッシュボード更新に時間がかかったりなどという場合があります。
リソース最適化に関する問題はユーザーの生産性や体験に大きく影響しますが、サポートを受けることで迅速な改善策を講じることが可能になります。
専門チームはデータ処理方法の見直しやクエリの効率化、必要リソースの増強などパフォーマンス向上のベストプラクティスを提供してくれるでしょう。
たとえば、不要なループ処理を削減したり、トリガーの頻度を調整することでフロー全体の実行速度を上げる、といったアドバイスが考えられます。
これによりアプリケーションや自動化フローがスムーズに動作し、日常業務に支障をきたさないユーザーエクスペリエンスが確保できるでしょう。
ここまで課題についてお話ししてきました。では、具体的にはどのようなサポートサービスが提供されているのでしょうか。
Power Platformのサポートサービス
Microsoftの提供するPower Platformサポートサービスでは、プラットフォームを効果的に活用するための幅広い支援が用意されています。技術的な問題解決から運用改善、セキュリティ強化まで企業ニーズに合わせた支援を行うものです。主なサポート内容には以下のような分野があります。
基本サポート
MicrosoftのPower Platformはサブスクリプション(Microsoft 365 等)経由で利用するため、契約ユーザーには基本的なサポートリソースが自動で提供されています。具体的には、公式のオンラインドキュメント、コミュニティフォーラム、学習リソースなど自己解決に役立つ情報源が利用可能です。
ユーザーはまずドキュメントで一般的な問題の解決方法を調べたり、コミュニティ上で他ユーザーの質問・回答を検索することで多くの疑問を自己解消できるでしょう。こうした基本サポートを活用しつつ、解決が難しいケースでは次のような追加サポートが役立ちます。
トラブルシューティングサポート
Power Platform(Power AppsやPower Automateなど)でアプリやフローが思ったように動作しない、途中でエラーが発生するといった技術的トラブルに対しては、専門のサポートチームによるトラブルシューティング支援が受けられます。
たとえば「Power Automateのフローが途中で停止してしまう」「Power Appsで作成したアプリがエラーを出す」といった場合、サポートに問い合わせれば詳細な原因調査や具体的な解決手順の提示をしてもらえるでしょう。これによりシステムの稼働を迅速に正常化し、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
パフォーマンス最適化支援
Power Platform上で大量のデータを扱うアプリや複雑な処理を行うフローでは、パフォーマンス低下が起こることがあります。このような場合、サポートチームがアプリやレポートの性能を改善するためのアドバイスを提供してくれるでしょう。
具体的には、データ処理方法の見直し、クエリや式の最適化、必要に応じたプラン変更(より高性能なプランへのアップグレード)などです。適切な指導の下で改善策を講じることで、アプリケーションがスムーズに動作しユーザーエクスペリエンスが向上します。
データ連携のサポート
Power Platformでは他のMicrosoft製品(Dynamics 365やSharePoint、Azure、Teamsなど)や外部システムとのデータ連携が重要になります。サポートサービスでは、各種コネクタの設定やAPI接続、データソース連携に関する問題解決も担います。
たとえば「外部システムとのデータ同期中にエラーが出る」「社内DBとの接続設定方法がわからない」といった場合に、適切な修正方法を提案してもらえるでしょう。これによりシステム間のデータフローを円滑にし、必要な情報が滞りなく行き来する環境を確保できます。
カスタムコードのサポート
Power AppsやPower Automateでは、場合によってはJavaScriptやPower Fx、あるいは各種スクリプトを用いて高度なカスタマイズを行うことがあります。そのようなカスタムコードに関する問題解決もサポートサービスの範囲です。
具体的には、コードレビューやデバッグ支援、より効率的な実装方法のアドバイスなどが受けられます。複雑なコードを含む場合でも、専門エンジニアが改善点や修正案を提示し、アプリやフローが本来意図したとおりに機能するよう支援してくれるでしょう。
セキュリティおよびコンプライアンスサポート
企業にとってデータセキュリティやコンプライアンスは非常に重要な要素です。Power Platformのサポートサービスでは、アクセス制御やデータ保護設定の最適化についても支援が提供されます。
たとえば「どのユーザーにどこまで権限を与えるか」「機密データを扱うフローの作成ルール」などについて相談でき、組織のセキュリティポリシーに沿った設定を実現できるでしょう。また業界標準や法規制に従ったガバナンスを確立するための助言も行われ、不適切なデータ利用や漏洩を防止する体制作りを後押しします。
プラットフォームのアップデート対応
Power Platformは定期的に機能強化やバグ修正のアップデートが行われますが、アップデートが既存のアプリやフローに影響を与える場合もあります。
その際、サポートサービスでは事前検証や影響範囲の確認、必要に応じた回避策の提案などを行います。
たとえば「最新アップデート後にフローの一部が動かなくなった」という場合でも、迅速に原因を特定し修正方法を示してもらえるため、常に最新機能を安心して活用できるでしょう。アップデートに伴う変更点の情報提供や、環境調整のサポートも受けられるため、継続的にプラットフォームを活用しやすい環境が整います。
ベストプラクティスと運用改善支援
Power Platformを最大限に活用するには、設計・運用におけるベストプラクティスを遵守することが重要です。サポートチームは業務プロセスの自動化やデータ管理、レポート作成などに関して効率的な方法や改善策を提案してくれるでしょう。
たとえば「より効果的な承認フローの組み方」や「データ整理の手法」「エラー発生時のログ確認方法」など実践的なアドバイスが得られます。
また、Power Platformと他のMicrosoft製品(AzureやDynamics 365、Teams等)との連携についても専門知識に基づくガイダンスが提供され、より強力な自動化・分析基盤を構築するサポートも行われます。
これにより、単一の部門やシステム内に留まらない全社横断的な活用へと発展させることが可能でしょう。
トレーニングと学習リソース提供
サポートサービスの一環として、Microsoft Learnをはじめとする公式学習リソースを活用したトレーニングも提供されます。これによりユーザーや社内開発者は、製品の基本から高度な機能まで体系的に学ぶことができ、自己解決能力を高めることができるでしょう。
たとえばオンラインのラーニングモジュールを使った研修や、ハンズオン形式のワークショップ実施などが挙げられます。サポートを上手く活用し組織全体のスキル向上を図ることで、Power Platformの潜在能力を最大限に引き出すことが可能となります。
さて、ここまでMicrosoftが提供するサポートについてご紹介してきました。一方で、外部の専門パートナーによる支援も重要な選択肢の一つです。次に、そうした専門的なサポートについて見ていきましょう。
Power Platformの活用における専門的なサポートについて
自社でPower Platformを効果的に活用しようとする際、全てを内製でまかなうには相当の知識・経験が必要です。そこで外部の専門家によるサポートを得ることは、大企業・組織にとって非常に有益だと思われます。
導入の検討段階から、展開後の運用・追加開発支援まで一貫して対応可能なサービスが求められており、実際に多くの企業がパートナー支援を活用しています。適切な専門支援を受けることで、ビジネスの成長を加速させることも十分に可能でしょう。ここでは、専門家による代表的なサポートサービスの例をご紹介します。
Power Platform導入支援
Power Platformを導入する際には、初期段階から十分な知識と経験に基づく計画策定が必要です。導入支援サービスでは、まず組織のニーズや課題を綿密にヒアリングし、Power Platform上で解決すべきテーマを整理します。
その上で最適なツールの選定(Power Appsから始めるべきか、Automate中心か等)や環境構築を行います。専門家がビジネスプロセスを詳細に分析し、ユーザーが使いやすい形にカスタマイズされたソリューションを提案・構築します。この段階から伴走することで、社内の合意形成や必要な準備もスムーズに進めることができるでしょう。
Power Platformトレーニング
前述のユーザー教育と重なりますが、従業員向けトレーニングはPower Platform活用の成否を分ける重要なポイントです。専門家が実践的なトレーニングプログラムを提供し、Power BI、Power Apps、Power Automateといった各ツールの使い方や活用方法を指導します。
初心者向けには基本的な操作方法から始め、徐々に応用編(たとえば自分の業務に即したアプリを作ってみる等)へと段階的にレベルアップさせます。実際の業務シナリオに沿ったハンズオン研修を行うことで、従業員のスキル向上を図り、結果として効率的な業務プロセス改善につなぐことができるでしょう。
問題解決サポート
Power Platform利用中に問題や課題に直面した場合、すぐ相談できる問題解決サポートは、停止時間の最小化・生産性向上に大きく貢献します。専門家が問い合わせに素早く対応し、技術的な支援やトラブルシューティングを行います。
たとえば「このエラーの意味が分からない」「フローの特定部分だけ動かない」など、困ったときに直接エキスパートのアドバイスを得られる安心感は大きな価値でしょう。適切な問題解決サポートによりビジネス運営へ影響を与えるリスクを軽減し、現場は本来の業務に集中できます。
カスタマイズ開発支援
Power Platformは高い柔軟性を持ち、各社固有の要件に合わせたカスタマイズ開発も可能です。しかし、より複雑なアプリやフローの開発には専門知識が欠かせません。
カスタマイズ開発支援では、組織の特殊なニーズにマッチしたアプリケーションや自動化ワークフローの設計・開発をプロがサポートします。社内のIT部門だけではリソース不足という場合でも、外部の力を借りて効率的かつ堅牢なソリューションを構築できるでしょう。結果として、その企業にとって最適な形でPower Platformの価値を引き出すことに貢献します。
プロジェクト管理と運用支援
Power Platform活用は一度アプリを作って終わりではなく、継続的な改善と運用管理が重要です。プロジェクト管理と運用支援サービスでは、システムの監視・最適化や利用状況の分析、改善提案の作成など幅広い観点でサポートが提供されます。
専門家が、組織全体でより効果的にPower Platformを活用するための戦略的アドバイスやガイダンスも行います。ありがちな、各部門で乱立するアプリやフローを整理し標準化するためのポリシー策定、費用対効果の分析といった管理面での支援です。これによりツール活用が組織戦略と合致し、長期的な成功につながるでしょう。
続いて、現場でのサポートについても考えてみましょう。
Power Platformを活用する現場へのサポートについて
Power Platformを実際に日々の業務で使いこなす主体は、IT部門の技術者や経営層ではなく現場の従業員です。そのため、現場ユーザーに対するサポートをどう提供するか、どのように支援していくかが重要なポイントになります。ここでは、現場での活用を後押しするためのサポート施策について考えてみましょう。
Power Platform活用を促すガイドラインの作成
現場でPower Platformを活用し、可能な限り現場の課題を現場で解決できるようにするには、実務に沿った柔軟なガイドラインやルールを設けることが有効です。
現場の担当者が自由かつ効果的にPower Platformのツールを利用するための指針を示し、各部門の業務プロセスに合った形で問題解決が進められる環境を整えることが重要でしょう。
Power Platformは高度なプログラミングスキルがなくても現場の社員が自分でアプリやフローを作成できるため、日々発生する小さな課題や効率化ニーズに対して素早く対応できます。
しかし、現場ユーザーが効果的に活用していくためには、一定のルールを設けつつも各自の判断でツールを活用できる自由度が不可欠です。たとえばアプリやフローの作成・管理に関する社内ルール(命名規則やドキュメント作成ルール等)を定めながらも、現場の裁量で業務に合ったツールの設計や改善が行えるようにすることが推奨されます。
こうしたガイドラインによって、現場担当者が実際の業務で直面する問題に対し自律的にPower Platformを使って解決策を構築できる環境を提供することが目的です。現場の柔軟性と自律性を支援することで、日常業務の効率化が促進され、組織全体の生産性向上にもつながるでしょう。
現場活用の具体例:ある部署では社内アンケート収集にMicrosoft Formsを用いていましたが、回答結果を逐一メールで共有するのに手間がかかっていました。そこでPower Automateのガイドラインを参考に、Formsに回答があった際に自動でTeamsのチャンネルへ通知メッセージを投稿するフローを現場社員自ら作成しました。これにより定期的な回答チェックやメール転送の手間が省け、メンバー全員がTeams上でリアルタイムに結果を把握できるようになりました。
適切なルールとサポートがあれば、このように現場主導で小さな業務改善を積み重ねることが可能になるでしょう。
現場・管理・技術部門間のコミュニケーション促進
現場でのPower Platform活用を支援する上で鍵となるのは、部門間の円滑なコミュニケーションです。
IT技術部門は新しいツールや機能を導入し、適切な設定・カスタマイズを行う役割を担います。管理部門(情報システム部やDX推進部門)はプロジェクト全体を俯瞰し、リソース配分や進捗管理を行います。そして現場部門は実際に業務を遂行し、ニーズや課題を最も直接的に感じている人々です。この三者がしっかり連携し声を掛け合うことで、Power Platform導入の効果を最大化できるのです。
技術部門が新機能を導入する際には、現場のニーズや課題を正しく把握するためにも管理部門との連携が欠かせません。技術部門だけで良かれと思って開発・導入しても、現場の実情に合わなければ活用が進まない可能性があります。そのため管理部門がプロジェクト全体を調整し、技術部門と現場をつなぐ役割を果たすことが重要です。
また現場の声をダイレクトに反映させるため、管理部門がうまく情報ハブとなって技術部門に要望を伝え、実装に反映する仕組みづくりも必要でしょう。
コミュニケーションを円滑にする具体策としては、定期的な全体ミーティングやフィードバックの機会を設けることが有効だと思われます。さらに、Power Platform活用時には各部門が共通の目標を共有し、ベストな使い方を模索する姿勢が大切です。
たとえば月次で現場ユーザー・管理部門・IT部門が集まり「今月こんな改善フローを作ってみた」という情報交換や、困っていることの共有を行うだけでも、お互いの理解が深まり協力体制が強化されるでしょう。
ここまで現場サポートについてお話ししてきました。最後に、とくに効果的とされる「伴走支援」というアプローチについてご紹介しましょう。
Power Platformのサポートには伴走支援がおすすめ
最後に、大規模な導入や本格展開を検討する際にとくに有効な「伴走支援」という考え方について触れておきます。
伴走支援とは、企業の目標達成や課題解決に向けて外部の専門家やパートナーが寄り添いながら継続的に支援する形態を指します。一回きりのアドバイス提供や単発の問題対応に留まらず、クライアントの状況を深く理解した上で中長期的に関与する点が特徴です。
伴走支援では、外部の視点を活かして社内では気付きにくい課題を指摘できたり、計画倒れを防止するためのフォローが期待できます。クライアント企業の成功を共に目指す信頼のパートナーシップとして位置づけられ、単なるベンダー以上の価値を提供します。Power Platformのように組織横断で活用が広がるプラットフォームにおいては、こうした伴走型のサポートが非常に有効だと思われます。
伴走支援を受ければ、技術面の理解はもちろんのこと、現場の業務プロセスや抱える課題を深く理解し、適切なソリューションを提案できる支援者が常にそばにいる状態となります。
さらに、社内の技術担当・管理者・現場従業員の間を外部パートナーが取り持つことでコミュニケーションが円滑化し、導入準備から現場での実践定着までスムーズに進められることが期待できるでしょう。
当社ソフィアでは、このような伴走支援の考え方に基づき、お客様企業の情報システム部門やDX推進部門と密に連携しながら現場のニーズを的確に把握してサポートすることを重視しています。通常のシステムインテグレーター(SI)が管理部門からの要件に従ってシステムを構築することが多いのに対し、当社ではその要望の背後にある本当の課題を洗い出し、より効果的な解決策を提案するよう心掛けています。
現場の人々が真に必要としている機能を見極め、業務効率化につながる形でソリューションを提供する――このアプローチにより、現場から経営層まで納得感の高いIT活用を実現します。具体的な伴走支援の取り組み例として、当社が支援したある企業では以下のような成果がありました。
•新しいPower AutomateフローやPower Appsアプリのアイデア創出段階から一緒に検討し、現場の潜在ニーズを引き出すワークショップを実施。現場社員から出てきた小さな改善アイデアを具現化し、短期間で試作フローを構築しました。
•トライアル導入期間中、週次で定例ミーティングを開き、現場ユーザーからのフィードバックを即座に反映。例として「承認フローの通知先を追加したい」といった要望にその場で対応し、翌週には改善されたフローを提供。ユーザーの満足度・信頼感を醸成しました。
•本番運用後も運用レポートを定期提出し、利用状況データに基づく改善提案を実施。これにより、利用が進んでいない部署へ追加トレーニングを行うなど、組織全体への定着を支援しました。
このように伴走支援は、単なる問題解決に留まらず継続的な価値提供を行う点が大きなメリットです。外部パートナーが自社内のチームの一員のように寄り添ってくれることで、社内にはない知見や客観的視点を取り入れつつ、安心感を持ってDX推進に取り組むことができるでしょう。
まとめ
Microsoft Power Platformは、その柔軟性と多機能性によって業務効率化やデータ活用を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。
実際、Power Automateなどの自動化ツールを適切に使えば年間数万時間規模の工数削減も夢ではなく、Forresterの調査では3年間で合計26,660時間(50%効率換算で1.41百万ドル相当)の作業時間削減効果が示されたケースもあります。
また自動化によって人為的ミスを27.4%削減できたとの報告もあり、品質向上と効率化を両立する手段としてPower Platformは非常に有効でしょう。
しかし、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、導入時の綿密な準備や運用中の適切なサポートが欠かせません。とくに、現場の課題に応じた柔軟なサポート体制やユーザーのスキルアップを促すトレーニングプログラムは成功の鍵となります。
導入後のトラブルシューティング、パフォーマンス最適化、セキュリティ対策といった運用面でのサポートも、Power Platformをスムーズかつ安全に活用するために重要です。これらの支援策によって現場の自律性が高まり、ビジネスプロセスの改善が進めば、組織全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速するでしょう。
本記事で紹介したポイントを踏まえ、ぜひ貴社の状況に合った最適なPower Platform活用方法とサポート体制を検討してみてください。外部の専門家とのパートナーシップも活用しながら、社内にストレスなく新しいツールを展開すれば、現場発のDXを促進していくことができるでしょう。
適切な伴走支援の下でPower AutomateとTeamsをはじめとするPower Platformを使いこなし、日々の業務効率化とデータドリブンな意思決定をさらに強化していきましょう。きっと御社のDX推進において大きな成果が得られるはずです。