人材育成

次世代のリーダー育成を成功に導く実践的手法と課題解決の極意

企業が事業を継続させ、新しい価値を生み出し続けるためには、未来の経営を担う人材が必要不可欠です。しかし、多様化する働き方や急速なビジネス環境の変化の中で、次世代を担うリーダーの育成に難しさを感じる企業は少なくありません。本記事では、大企業の人事部門長や研修企画担当者に向けて、次世代リーダーの育成が不可欠である背景と育成上の課題点を整理し、育成のポイントや具体的な手法を徹底解説します。

次世代リーダーの定義と日本企業の現状

企業が事業を継続させ新しい価値を生み出し続けるためには、未来の経営を担う人材が必要不可欠です。企業の将来を託すことができる人材を「次世代リーダー」と呼ぶことがありますが、次世代リーダーは勝手に社内で育っていくものではありません。早い段階で候補者を選定し、計画的に育成する必要があります。次世代リーダーとは、10年後・20年後の企業を牽引する、将来の経営者候補となる人材(社員)のことです。

経済産業省が示した「企業価値向上に向けた経営リーダー人材の戦略的育成についてのガイドライン」においても、「経営力こそが企業と日本経済の成長の鍵」であることが明示されています。「企業の後継者不足」と言われる昨今、環境変化に順応し生き残る企業に成長するためにも、日本企業は経営力を向上させると同時に、自社の将来を担う経営者候補となる人材の育成を強力に進めることが喫緊の課題となっています。

日本企業は、近年の国際競争で欧米諸国に遅れをとっていると言われています。IMD(International Institute for Management Development:国際経営開発研究所)による「世界競争力年鑑2020」によれば、日本は総合順位を2019年度の30位からさらに落とし、2020年度には34位となっています。

この順位低下の要因として「ビジネス効率性」の低さが挙げられます。ここには経営の意思決定のスピードやデジタル活用のほかに、起業家精神、国際経験、多様性など、マネジメント人材に関わる問題も含まれます。市場の変化に柔軟に適応し、効率性の高い経営で国際競争力を高めるには、高い能力・スキルを備えた将来のリーダーを、多様な候補者の中から採用・育成する必要があります。

次世代リーダーの育成に向けては、従来の新卒一括採用や年功序列・終身雇用を前提とした「日本型経営」からの脱却や、テレワークの普及・副業解禁など「多様な働き方」に対応した適正な人事制度の構築なども必要となってくるでしょう。

マネージャーとリーダーの役割の違いと自律分散型組織への移行

次世代リーダーの育成を計画する際、多くの大企業が直面する初期の躓きは、「マネージャー(管理者)」と「リーダー(牽引者)」の役割を混同してしまうことです。かつてのピラミッド型組織においては、上意下達の指示を正確に実行し組織を管理するマネージャーの存在が重視されてきました。しかし、VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)と呼ばれる現代のビジネス環境においては、経営戦略と人材戦略を一体化させ、組織全体にリーダーシップを浸透させることが不可欠です。

マネージャーは、経営層や上位方針に従って予算や事業計画を策定し、短・中期的な目標を達成するために合理的かつ現実的な視点で業務と人材を「管理」することに主眼を置きます。それに対しリーダーは、中長期的なビジョンを描き、冒険的で感情的なアプローチを用いて、チームメンバーが本来持つ能力を最大限に引き出す役割を担います。リーダーは役職の有無にかかわらず、周囲を巻き込みながら共通の目的に向かって影響を与える存在であり、組織の自律性を高めるための原動力となります。

比較項目 マネージャー(管理者) リーダー(牽引者)
主な視点と時間軸 短期的・中期的。現実的かつ合理的な判断を重視する。 中長期的。冒険的であり、感情やパッションを重視する。
役割と行動基準 予算管理、業務の適切な割り当て、環境整備による目標達成 現場で働く社員への目標設定、メンバーの鼓舞、能力の最大化
コミュニケーション 指示・命令・統制を通じたトップダウン式の一方向の伝達 対話・協働・モチベーション喚起を通じた対等で双方向の対話

現代の組織では、特定の役職者だけがリーダーシップを発揮するのではなく、現場のあらゆる層が自律的に考え行動する「自律分散型組織」への転換が求められています。そのため、企業は次世代の経営を担うトップリーダーの育成と並行して、現場の各チームを牽引するミドル層のリーダーシップ開発にも注力しなければなりません。

次世代リーダー育成における課題

HR総研が2020年に企業の人事部門向けに実施した「人事の課題とキャリアに関する調査」に関する調査では、「次世代リーダーの育成」と回答した企業が最も多い結果となりました。これまでは多くの企業において、40歳前後から中間管理職としてマネジメント経験を積ませる育成方法を取っていました。しかし、その方法では「自社の将来を担う次世代リーダーを育成することはできない」という人事部門の強い危機感が、この調査結果から見て取れます。

今後の日本企業では、次世代リーダーの候補者を早い段階から計画的に選抜して育成する企業が増えていくでしょう。また、次世代リーダーの確保には、社内の人材を教育するだけでなく、外部から採用するという選択肢もあります。次世代リーダーの育成に向けて、企業は従来の人材採用や人材育成体制そのものに問題意識を持ち、課題を徹底的に整理することが求められます。現在、企業が直面している人材育成の課題の一例を以下にご紹介します。

若手人材の採用難と定着率の低下

若手の人材が採用できないことや、採用しても定着しないことに課題感を感じている企業は多いのではないでしょうか。将来性のあるビジネスモデル、魅力的なブランドイメージ、オープンな企業風土といったアピールポイントがある企業でなければ、若い人材は集まりにくく、定着させることもなかなか難しいでしょう。

あなたの組織では、「なぜ次世代の人材が必要なのか」という問いに、明確に答えられていますか?単に定年退職する社員を補充するためでしょうか。それとも、ビジネスモデルや顧客サービスを変革し新たな事業の柱をつくるために、それを担うリーダー人材を求めているのでしょうか。まずは採用の目的と求める人材像を整理することが第一歩です。求める人材に選ばれる企業になるために、変化すべきタイミングが訪れているかもしれません。

さらに、現代の若手・中堅社員は「一つの企業で定年まで働き続ける」という終身雇用的なキャリア観を必ずしも持っていません。帰属意識の低下に伴い、企業が多大な時間とコストをかけて優秀な次世代リーダー候補を育成したとしても、成長した途端により良い条件を求めて他社へ転職してしまうリスクが常に存在します。この人材流出リスクが、企業の育成投資を躊躇させる隠れた要因となっています。

教育体制の未整備

次世代リーダーを育成するためにどのような教育をすべきかわからない、というのもよくある課題の一つです。「次世代リーダー研修」と銘打ちながら、座学中心で画一的な従来の研修スタイルを踏襲するだけになっていませんか?

次世代リーダーの教育体制を整備するには、人材育成の考え方を根本的に問い直す必要があります。ビジネスの現場においては想定外の事象が常に発生するものであり、リーダーはその中で素早く的確な判断を行うことが期待されます。会議室やPCの前で勉強するだけでなく、学んだことを現場での実務経験に活かす教育体制を整備してこそ、リーダー人材の育成は実現します。

教育体制の未整備は、特に中規模以下の組織や、リソースに余裕のない大企業の特定事業部において深刻です。リーダー選抜の基準や評価方法を策定するには、通常の人事評価とは異なる専門的な知見が必要となるため、制度構築に長い時間がかかってしまいます。また、短期的な利益に直結しない育成施策は経営層からの投資優先度が下がりやすく、結果として十分なサポート環境が構築されないまま現場に丸投げされてしまうケースが散見されます。

次世代リーダーに求められる能力の曖昧さ

時代や環境の変化とともに次世代リーダーに求められる能力も日々変化します。しかし実際には、企業が次世代リーダーに求める能力が明確になっていなかったり、過去に定義されたものが何年も何十年も更新されないままになっていることが珍しくありません。

将来のリーダーにふさわしい人材を育成するためには、まず次世代リーダーに求められる能力を定義し、時代や環境の変化に合わせて継続的に更新する仕組みを整えましょう。そのうえで、年功序列に従った最終的な社内競争の勝者を選定するだけに拘らず、多面的な角度から次世代リーダーを決定できる仕組みの構築が重要です。

現場の負担増大と「即戦力のジレンマ」

次世代リーダーの候補となる人材は、多くの場合、現在進行形で現場の最前線に立ち、事業の売上やチームの業績を牽引しているトップパフォーマーです。企業が中長期的なリーダー育成プログラムを本格稼働させようとする際、最大の障壁となるのが「即戦力である候補者を現場から長期間離脱させることができない」というジレンマです。

育成研修やローテーションのために彼らの業務時間を削減すれば、一時的にチームの生産性が低下し、目の前の目標達成が危ぶまれます。現場のマネージャーから強い反発を受けることも少なくありません。しかし、目先の利益の確保にとらわれて育成を先送りにしていては、数年後の組織の成長は完全に停止してしまいます。この課題を乗り越えるためには、経営層自らが「長期的発展のための投資」であると宣言し、現場の負担を軽減するためのリソース補充や、一時的な業績低下を許容する評価制度の柔軟な運用といった全社的な土壌づくりが不可欠です。

従業員自身の「リーダー志向の低下」と報酬の不一致

企業側が育成に本腰を入れようとしても、対象となる従業員側が「そもそもリーダーになりたくない」と昇進を拒むケースが近年急増しています。パーソル総合研究所の調査によれば、リーダー志向(管理職志向)を持つ人材の割合は全年代平均で約2割を下回り(2024年時点で約17%)、特に若手社員(20〜30代)においても積極的な層は約3人に1人(約3割)程度にとどまっており、特に30代から40代にかけて意欲が急激に低下する傾向が見られます。

従業員がリーダー職を敬遠する背景には、主に3つの理由が存在します。第一に、意思決定や部下育成に対する責任の重さを、やりがいではなく過度なプレッシャーとして捉えている点です。第二に、業務量や精神的負担が大幅に増加するにもかかわらず、それに見合うだけの給与増やインセンティブが用意されていないという「報酬の不一致」への不満です。そして第三に、ワークライフバランスを重視する価値観の浸透により、管理職になることでプライベートの時間が削られることを極端に避ける傾向が強まっている点です。企業は候補者に対してリーダーになることの具体的なメリット(裁量の拡大、キャリアの市場価値向上など)を提示し、モチベーションを喚起する施策を講じなければなりません。

育成効果の見えづらさと評価制度との連動不足

リーダー育成は、知識をインプットしたからといって翌日から売上が倍増するようなものではありません。定性的な成長を長期にわたって見守る必要があり、その効果を定量化しづらいという特性を持っています。そのため、経営陣が短期的なROI(投資対効果)を求めた場合、育成プログラムの有効性を証明することが難しくなります。さらに、研修で学んだリーダーシップの理論を現場で実践する機会が与えられなければ、知識はすぐに風化してしまいます。評価指標として「リーダーとしての行動基準」が人事評価制度に明確に組み込まれていなければ、候補者は何を目指して成長すべきかを見失ってしまいます。

次世代リーダーに求められるスキル

次世代リーダーに求められるスキルは企業のステージや事業環境によっても異なりますが、イノベーション創出が求められる組織において、リーダーは「カタリスト」であることが求められます。

Catalyst(カタリスト)とは「触媒、促進の働きをするもの、相手に刺激を与える人」を意味します。企業に置き換えると、「一つの業務だけに縛られず、事業部門やチームを横断し、周囲を巻き込みながらアイデアの種を育てる人」と捉えることができるでしょう。

カタリストとしての役割を担う次世代リーダーに求められるスキルとはどのようなものでしょうか。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 明確なビジョンをもち社内外を説得できる発信力
  • 自分自身としっかり向き合い実践した業務を見つめ直すリフレクション力
  • 多角的な視野での洞察力と迅速な意思決定力
  • 現状打破できる強い精神力と執行力
  • 課題解決する思考力と斬新なアイデアを練り出す発想力

現場を牽引し変革を起こす6つの必須スキル

上記のようなカタリストとしての高度なマインドセットや発想力に加えて、日々の事業運営を牽引しチームのパフォーマンスを最大化するためには、極めて実践的なビジネススキルが要求されます。現場で成果を出し続けるリーダーが備えるべき具体的な能力は、大きく以下の6つに分類されます。

1. 主体性と判断力

リーダーは、上位者からの指示を待つのではなく、組織の置かれた状況から自ら課題を発見し、能動的に行動を起こす主体性が求められます。加えて、ビジネス環境は常に変化するため、当初の計画に固執することなく、最新の状況に合わせて柔軟かつ迅速に意思決定を行う高度な判断力が必要です。周囲を巻き込みながら自らの責任で方針を転換できる強さが、チームの停滞を防ぎます。

2. 目標設定・計画立案力

「誰が、いつまでに、何を達成するのか」という具体的なロードマップを描き、チーム全体に進むべき方向性を示すスキルです。優れたリーダーは、単に高い目標をトップダウンで押し付けるのではなく、メンバーの意見や現場の状況を丁寧に吸い上げ、チーム全員が納得しモチベーション高く取り組める現実的な目標を合意形成するプロセスを重視します。

3. コミュニケーション能力

チームの協力を最大限に引き出すための根幹となるスキルです。リーダーの言葉の選び方、情報の伝達頻度、そして非言語コミュニケーション(態度や表情)は、メンバーの行動に多大な影響を与えます。相手の立場に立って話を深く聴く「傾聴力(アクティブリスニング)」を磨き、多様な価値観を持つメンバーに対して共感的に接することで、心理的安全性の高い職場環境を構築します。

4. 課題解決力

プロジェクトが計画通りに進むことは稀であり、常に予期せぬトラブルや障壁が発生します。リーダーには、発生した事象の表面的な対処にとどまらず、論理的なフレームワークを用いて根本的な原因を多角的に分析する力が求められます。さらに、自部門内に閉じることなく、他部署や外部パートナーとも円滑に連携し、組織横断的な最適解を導き出す突破力が必要です。

5. コーチング力

メンバーの自律的な成長を促すための重要な支援スキルです。指示や命令で相手を動かすのではなく、適切な「問いかけ」を通じて、メンバー自身に解決策や気づきを導き出させます。個々の強みや特性を正確に把握し、主体性を尊重しながら建設的なフィードバックを繰り返すことで、指示待ち人間ではなく、自ら考えて行動できる人材を育成します。

6. メンタリング力

自身の豊富な実務経験や専門知識を還元し、メンバーの長期的なキャリア形成や精神的な成長をサポートするスキルです。単なる業務の進め方の指導を超え、一人のビジネスパーソンとしての悩みや壁に寄り添い、深い信頼関係に基づく助言を提供することで、組織に対するエンゲージメントを高める役割を果たします。

次世代リーダーの育成方法

ここからは、ソフィアが考える次世代リーダーの育成に必要な3つのポイントについて解説します。

機会(実践・経験・1次情報取得)

次世代リーダーの候補者には、若手社員時代から実際に経営そのものを経験させる必要があります。修羅場で困難な場面を数多く経験させることは、極めて重要です。

具体的には、「海外子会社」や「事業部門全体」のトップ、あるいは別会社のトップとして出向させるなどの方法が効果的です。経営者の意思決定は環境変化に順応するものでなければなりませんし、過去に前例のない環境に遭遇しても事案を分析してスピーディーに意思決定する能力を身につける機会を積極的に与えましょう。また候補者の職務経験・業務能力・育成記録などの1次情報を詳細に取得し、候補者の選抜基準や評価基準などを策定して、次世代リーダー育成に向けた社内環境を整備しましょう。

さらに、実践の機会を提供する前段階として、候補者自身の「自己理解の促進」を組み込むことが極めて有効です。リーダー候補者は、自身の強みや弱みはもちろんのこと、高ストレス下や想定外のプレッシャーに直面した際にどのような行動特性(ダークサイド)が現れるかを客観的に把握しておく必要があります。Hogan Assessments(ホーガンアセスメント)などの科学的な性格診断ツールや、周囲からの評価を可視化する360度サーベイを活用し、自己認識と他者評価のギャップに向き合う機会を設けることで、修羅場での自己コントロール能力を飛躍的に高めることができます。また、企業側は求めるリーダー像に基づく明確な「行動基準」を提示し、それを人事評価制度へ直接反映させることで、候補者が目指すべき方向性をブレさせない仕組みを構築する必要があります。

学習(振り返り・一般化・抽象化)

次に、育成の振り返りを通じて、候補者が実際に直面した課題の整理と洗い出しを実施します。候補者は育成先において、資金繰り、売上低下、コスト増、利益減少、人材不足、内部統制とコーポレートガバナンスなど、さまざまな修羅場や悩みを経験しているものです。これらを詳しくヒアリングして候補者へのフィードバックを具体的に進めましょう。また、次世代リーダー育成プログラムを自社で継続的に運用するためにも、候補者の育成結果と検証データの蓄積を同時並行で進めましょう。

この振り返りと学習のプロセスにおいて、多くの企業が取り入れているのが「1on1ミーティング」です。しかし、弊社ソフィアの調査では、社内コミュニケーション促進の取り組みの上位が「1on1」である一方で、「効果的でない」と感じられている取り組みのトップもまた「1on1」であるという皮肉な実態が明らかになっています。形骸化した1on1は、上司への単なる業務進捗の報告会に陥ってしまい、候補者の内省や抽象化のプロセスをまったく支援できません。

さらに、弊社ソフィアの「インターナルコミュニケーション実態調査2024」では、経営戦略に対する従業員の「戦略共感」がわずか1割(約10%)に留まっていることが判明しました。また、組織の最大のボトルネックとして「部門間の壁」が立ちはだかり、情報が共有されない・遅い・探せないという「情報共有の三重苦」が多くの大企業で深刻化しています。

加えて、弊社ソフィアの「フル_IC実態調査2025」(従業員数1,000人以上の企業を対象に実施、回答者496名)では、働き方の多様化やリモートワークの普及によって、従来の対面を前提とした情報共有手法が限界を迎えていることも示されています。ナレッジが分散し社内コミュニケーションの機会が変容する中で、次世代リーダーには、分散した暗黙知を言語化し部門の壁を越えてナレッジを組織全体に還元・一般化する高度なファシリテーション能力が求められます。これを実現するためには、表面的なスキルトレーニングだけでなく、組織のコミュニケーション基盤そのものを見直し、「対話・教育・ツール」の三本柱を連携させた本質的な学びの環境を構築することが必須です。

コンテンツ(栄養)

次世代リーダーを育成するには、コーチャー(実務指導をする先輩社員)をつけて定期的に対面で指導を行う方法もありますが、動画コンテンツなどを活用した社内講座を設けることも効果的です。

候補者は日常の業務を抱えながら育成プログラムをこなすことが一般的であるため、業務を遂行しながら日常的かつ効率的に学習を進められるコンテンツが必要です。候補者の育成結果の検証を通じて具体的な成功事例・失敗事例のデータを蓄積することで、より効果の高いコンテンツの構築につなげましょう。

育成を単発のイベントで終わらせないためには、これらのコンテンツを体系的に配置し、中長期的なPDCAサイクルを回し続けることが重要です。Eラーニングや動画プラットフォームを通じて基本的なマネジメント理論をインプットさせ、現場での実践後に1on1で振り返りを行う。この「インプット(コンテンツ)→ 実践(機会)→ リフレクション(学習)」のループを高速で回すことが、リーダーとしての行動変容を確実に定着させる最大の秘訣となります。

次世代リーダーの育成事例

最後に、次世代リーダーの育成事例についてご紹介します。

総合建設会社A社の事例

総合建設会社A社では、これまで行っていた階層別研修が形式的なものとなってしまい、実施の効果が長続きしないことに課題感を持っていました。

そこでソフィアでは、次期管理職層を対象に、動画やEラーニングを使用した事前・事後課題を課す集合研修を行うよう提案しました。研修参加者はまず次世代のリーダーに求められる視点を学習し、その後同社の現状と将来についてチームで検討を行い、検討結果をまとめて会社に対して提言(プレゼン)を実施しました。

研修の参加者にとっては、自社の課題を自分事として考え、幹部に直接思いを伝えてフィードバックを受けることで、経営者の視点を学ぶ機会となりました。逆に言えば、幹部にとっても現場の実情への理解が深まることから、幹部と現場の相互理解を促進する結果につながりました。

自己認識ギャップを解消し部門の壁を越えた製造業B社の事例

ある大手製造業B社では、次世代リーダーの候補者が「プレイングマネージャー」として自身の個人目標達成ばかりに注力してしまい、チーム全体の業績向上や人材育成に手が回らないという深刻な課題を抱えていました。また、部門間の連携不足が新製品開発のスピードを低下させていました。

この課題に対し、B社では次世代リーダー層向けに「360度サーベイ」を導入し、自己評価と他者(上司・同僚・部下)からの評価のギャップを客観視させるアセスメントプログラムを実施しました。そのうえで、リーダーとしての「マインドセットの変容」を促す階層別研修と、現場での実践をサポートするための定期的な1on1コーチングを組み合わせました。

結果として、候補者は「自分一人で背中を見せて引っ張る」という属人的なスタイルから、「問いかけを通じて部下の主体性を引き出す」コーチング型のリーダーシップへと行動を変容させました。さらに、自己の課題に気づいたリーダーたちは、自部門内に留まらず他部門との積極的なコミュニケーションを開始し、組織最大のボトルネックであった「部門間の壁」を越えてプロジェクトを推進する力を劇的に向上させることに成功しました。

まとめ

日本企業にとって次世代リーダーの育成は経営上の最重要テーマであり、短期的視点ではなく長期的視点に立って自社の育成環境を整備することが必要です。経営者がコミットメントし、人事部門など社内の連携を図りながら、早い段階から候補者を選抜し育成する体制を早期に整えましょう。

次世代リーダーの育成は、決して一朝一夕で成し遂げられるものではありません。働き方の多様化やコミュニケーションチャネルの複雑化が進む現代において、従来型の画一的な教育手法を踏襲するだけでは、真のリーダーは育ちません。候補者が失敗を恐れず挑戦できる「実践の機会」を戦略的に提供し、その経験を質の高い1on1や対話を通じて「学習・言語化」させ、さらに効率的な「コンテンツ」で支援し続けること。この一連のエコシステムを組織全体で構築し、人事評価制度と連動させることが、不確実な時代を生き抜く強靭な企業を創り上げるための第一歩となるでしょう。

次世代リーダーの育成に重要なポイントについてよくある質問
  • 次世代リーダーの育成の課題は何ですか?
  • 1.若手の人材が採用できない・定着しない
    2.教育体制が整っていない
    3.次世代リーダーに求められる能力が曖昧

  • 次世代リーダーの育成方法はどのようなものですか?
  • 1.機会(実践/経験/1次情報取得)
    2.学習(振り返り、一般化、抽象化)
    3.コンテンツ(栄養)

  • 次世代リーダーに求められるスキルは?
  • 次世代リーダーには、多様化する社会に対応できる柔軟性や、変化を恐れずに新しいことに挑戦する姿勢が求められます。具体的には、
    ビジョンを示し、チームを鼓舞する力: 組織全体を一つの方向に導くビジョンを示し、メンバーのモチベーションを高める。
    多様な価値観を尊重し、チームをまとめる力: 多様なバックグラウンドを持つメンバーの意見を尊重し、チームとしての一体感を生み出す。
    変化に対応し、新しいアイデアを生み出す力: 不確実な未来においても、変化を恐れずに新しいアイデアを創出し、組織を革新に導く。
    デジタル技術を活用し、イノベーションを推進する力: 最新のデジタル技術を駆使し、業務の効率化や新たなビジネスモデルの創出を推進する。
    などが挙げられます。

  • 悪いリーダーの特徴は?
  • 悪いリーダーの特徴は様々ですが、一般的に以下の点が挙げられます。

    コミュニケーション不足: 部下の意見を聞かず、一方的に指示を出す。
    責任転嫁: 失敗した時に責任を部下に押し付ける。
    変化を恐れる: 新しいことに挑戦せず、現状維持を優先する。
    部下の成長を妨げる: 部下の意見を否定したり、成長の機会を与えない。
    自己中心的: 組織全体の利益よりも、自分の利益を優先する。
    これらの特徴を持つリーダーは、チームの士気を下げ、組織の活性化を阻害する可能性があります。

  • 次世代リーダー研修とは何ですか?
  • 次世代リーダー研修とは、将来の組織を担う人材を育成するためのプログラムです。経営者としての視点や思考力を養い、組織を牽引できる能力を身につけさせます。具体的には、戦略立案、問題解決、コミュニケーションスキル、リーダーシップ論など、幅広いテーマを学びます。これにより、変化の激しい時代に対応できる、柔軟で創造的なリーダーを育成することを目的としています。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。