インターナルコミュニケーション

企業風土とは?意味・企業文化との違いや改革方法を解説

目次

「企業風土が変革の妨げになっているのでは?」——そんな声が、人事部門や経営企画の現場でよく聞かれるようになりました。企業風土とは、組織が独自に持つ環境・文化・価値観などの幅広い要素を包含する概念です。目には見えないながらも、経営判断から日々の行動まで、組織のあらゆる局面に影響を与えています。

一方で、弊社ソフィアが実施した調査では、従業員数1,000人以上規模の企業の約8割が「社内コミュニケーションに問題がある」と感じており(2024年調査、n=469)、その根底に企業風土の課題が横たわっている可能性が高いことがわかっています。

本記事では、企業風土の意味・企業文化との違い・構成要素・もたらす影響を整理したうえで、改革が必要なケースの見極め方と具体的なアクションを解説します。

企業風土の意味と定義

「企業風土」という言葉は、企業の特徴や業績を語る場でよく登場します。しかし、その正確な意味や他の概念との違いを把握できているでしょうか。まずは基本的な定義を押さえるところから始めましょう。

「企業風土」の意味

企業風土とは、「ある特定の考え方や行動様式を植え付ける、その企業独特の環境」と定義されています。組織に流れている文化や価値観、習慣などが織り混ざったものを指すので、組織において何らかの意思決定を下す場合、その決定は企業風土の影響を多かれ少なかれ受けていると言えるでしょう。

企業風土は組織の運営方針に大きく関わります。同時に、その組織に所属する個人の思考や行動も大きく左右します。結果として、企業風土はその組織が成功するかどうかにも深く関わることになるのです。

「企業風土」と「企業文化」の違い

企業風土について理解を深めるために、企業文化とどのように異なるのかを確認しておきましょう。

「企業風土」の特徴

・組織が立ち上がった経緯や背景から、リーダーのふるまいなどの独自の慣例までを含めた、多角的な項目が織り混ざって決定される
・組織に所属する人や関わる人が、その組織をどう捉えるかを左右する
・組織が目指すビジョンや、組織が社会に与えている価値のイメージを左右する
・組織が起こす改革や、あらゆる業務プロセスに影響を与える

「企業文化」の特徴

・組織における社員同士の関わり合いや、所属する人が関係する組織内の制度などを示す
・組織に受け継がれている価値観や考え方、行動パターンなどを示す
・組織が目標に向かって進む際の行動を統率する
・組織が掲げる社会的価値などが包括される概念

「企業風土」も「企業文化」も、意味としてはよく似ています。どちらも組織が抱えている特徴を概念的に示しているので、文脈によっては同じ意味で使っても違和感がないでしょう。
ただし、一言で違いを表すなら、「企業文化」は価値観や考え方、それによって起こる行動の選択など、組織が持つ独自の雰囲気を表すケースが多いです。企業が意図的に育んでいる性格というニュアンスが感じられます。一方で「企業風土」はもう少し抽象度が高いシーンで使われることが多い言葉で、ネガティブな意味合いでも違和感なく使用されるのが特徴です。

「企業風土」と「社風」の違い

社風も企業風土と混同されることの多い言葉です。平たく言うと、社風は「そこで働く人がどう感じているか」がベースとなり、企業風土や企業文化によって醸成される企業の「雰囲気」と理解するとよいでしょう。

企業風土も社風も自然発生的なものですが、企業風土は長年の企業活動によって少しずつ蓄積されるものであり、社員が自覚を持っていないことも多くあります。一方で社風は、就職活動の場面でもよく使われるように、外部からも比較的見えやすい「その会社らしさ」を表します。

企業風土と組織の行動・成果の関係

企業風土が何かを理解したところで、次に「なぜ企業風土が組織の成果に影響するのか」という点を見ていきましょう。

企業風土は、組織が培ってきた歴史のなかで同時に育ってきた規範や慣習、行動様式です。長い時間をかけて作られてきたからこそ、従業員に根付き、意思決定の際や、何かを解釈する際の価値観として大きな影響力を持ちます。だからこそ、企業風土は組織の行動や成果にも大きく関わるのです。

職場は、国や民族と同じで人が集団になっているものなので、そこに文化や風土が育つのは自然なことです。本来なら、人が集まるところに発生する文化や風土に、良し悪しはありません。

ただし企業の場合は、業績を高めたい、長く組織を生き残らせたいという大きなミッションを内包しています。だからこそ企業風土に、良し悪しが生まれます。思うような変革が起こせていない、業績が停滞してしまっているという場合には、企業風土に問題があるのではないかという疑いが当然のように生じるのです。

ここで注意していただきたいのは、「企業風土を変えることが、業績の回復や企業の成功に直結する」という考え方は、必ずしも正しくないという点です。もちろん企業風土が業績改善に大きな影響力を持つことは事実です。

しかし、新規事業で業績を回復したい、DXなどの改革を起こしたいというときに、いきなり企業風土を変えようとするのはナンセンスです。企業風土は長い時間をかけて受け継がれながら形成されてきたものです。風土は変えようと思って変えるものではなく、企業が行うこと、失敗や成功を問わないすべての体験のうえで新しくなっていくものです。模索しながら見つけた新しい成功への手法が組織のなかで根付いていくプロセスで、企業風土も変わっていくと考えるのが自然でしょう。

組織を変えたい場合には、現状の企業風土が求めるビジョンや戦略にどのくらいマッチしているのかをまず整理しましょう。もし弊害となっている企業風土が見つかるようなら、それが培われてきた背景を明確にするところから始めてください。分析の結果、特に弊害が見つからないという場合には、企業風土を変える必要はありません。

現代のビジネスで企業風土が問題視される背景

現代のビジネスにおいて、企業風土という存在が問題視されがちなのはなぜでしょうか。その背景を歴史的な文脈も含めて整理してみましょう。

ビジネスでは合理的な経営判断を求めるのに対し、企業風土は雰囲気・空気を踏まえた判断を求めます。これらがひとつの組織に共存していることは、いわばダブルスタンダードです。両者の示すものの乖離が目立つほど、問題とされるのです。

ただしこれは現代に特有の指摘ではありません。評論家の山本七平は自著『「空気」の研究』(文春文庫)のなかで、戦時中の例を含め現代の日本においても「空気」が「絶対権威のような力」をふるっていると指摘しています。戦時中、戦後、高度経済成長などをたどってきた日本が長らく抱えてきたものが、現代のビジネスでも違和感を残しているのです。

企業風土の連続性とダブルスタンダードの問題

かつての日本の雇用システムでは、終身雇用制、年功序列、企業別労働組合という3つの軸が労働者を守ってきました。労働者は一度就職したら働き続け、その対価として企業は安定した雇用を提供してきたのです。このような暗黙の合意のもと、企業と労働者、そしてその家族は強固な関係を結んできました。この雇用システムは、戦後の日本の大きな成長を支える土壌となり、成功の記憶として風土化し、社会に大きな影響を及ぼしました。

しかしバブル期が終わる頃から徐々にほころびが目立つようになり、今では日本的な雇用システムの在り方は大きな転換期を迎えています。

多くの日本企業は、メンバーシップ型雇用で採用した従業員をこれまで通りの安定した雇用を守り続ける努力を続けてはいるものの、「成果主義」「ジョブ型」などの評価制度・雇用制度を積極的に取り入れています。正社員雇用だけでなく非正規雇用が拡大したのも、大きな変化です。

一方で、政府が企業に定年延長を要請するなどのちぐはぐな動きも見えてきています。かつて従業員が企業に誓った忠誠は、今や「エンゲージメント」という表現に修正され、企業は変化を起こそうとしています。しかし、このような変化で企業が成長できているかというとそうではなく、日本経済の成長を見れば明らかです。結局企業は、新規事業やDXという変革を起こそうとしつつも、長らく培った風土を引きずり続けているので、ダブルスタンダードの差は開く一方なのです。

昭和的な企業風土の問題ではなく、面従腹背的な風土が問題

企業の業績が好調だったり、安定した経営ができたりしているときは、企業風土の改革に注目する流れにはなりません。むしろ成功体験として、今の企業風土は強化されて固定化されていき、経営がますます安定することも考えられます。そのため、昭和的な企業風土そのものが問題であるとは言えません。問題として指摘したいのは、経営合理性と企業風土が二重性を持っていて、表面的には問題なく見えても腹のうちで問題として捉えているという状態になっている危うさです。企業風土が経営合理性とマッチせず下支えにもなっていない場合、社員は潜在的に不安を抱え、場面によってはウソをついて行動することになります。

伝統的な企業風土自体が間違っているとは言い切れません。社会学者エズラ・ヴォーゲル著『ジャパン・アズ・ナンバーワン』など、戦後の日本経済が誇るべき側面も多くあります。しかしこの企業風土が、現代のビジネスにおいて弱みになっている事実から、工夫して付き合っていく必要があることを意識しなければなりません。

企業風土の構成要素

ここまで、企業風土が抱えるジレンマについて考えてきました。次に、企業風土はどのような要素から構成されているのかを確認していきましょう。

ソフト的要素(空気と風土)

企業風土は、ソフト面では「空気」と「風土」によってできていると言えます。職場の雰囲気やコミュニケーションの方法、それによって生じる心情や振る舞いなどが「空気」、職場に植え付けられている価値観や文化、企業がたどってきた歴史などが「風土」です。これらは影響を与え合いながら変幻自在に形状を変えています。価値観や文化はコミュニケーションや振る舞いに影響を与えますし、一方でコミュニケーションや振る舞いが組織の価値観や文化を形成することもあります。

だからこそ、空気と風土はまとめて双方を改善しなくてはなりません。価値観を強く打ち出せば、心情や振る舞いが変化して新しい空気を生みます。職場の雰囲気が変われば、抱かれる価値観も変わります。従業員を巻き込みながら双方に手を入れるのが効果的です。

ハード的要素(経営合理)

企業風土は、ハード面では組織のルール・形態として表れます。一見するとシンプルなようですが、ハードに変革を起こすことは簡単ではありません。目に見えていない経営者の思想や、企業の文化的背景が、ハード面の背景に隠れているからです。

ハード面の要素を変えたい場合には、長期間をかけて従業員一人ひとりの価値観を変えていく必要があります。文化的な変化を起こすことができてようやく、組織のルールや形態が変わっていくものだからです。根気のいることに感じられますが、経営者や管理職が積極的に変化を促すことができれば、社員の意識に効率よく改革を起こせます。

精神的要素

企業風土の精神的要素は、従業員の心理状態や心の側面に大きな影響を与えます。良いメンタルを保持することで、モチベーション向上やコラボレーションの促進が行われ、企業を成長へと導きます。

企業風土の精神的要素には、社員の行動パターンや社員のコミュニケーションパターン、組織からの期待と評価の実態的な認識などがあります。

しかし、社員の精神的要素とハード的要素やソフト的要素が乖離すると、離職などの問題が生じます。そのため企業は、これらの構成要素を適切に調整していくことが重要です。

まとめると、企業風土を構成する3つの要素のポイントは次の通りです。

・ソフト的要素:職場の空気・価値観・コミュニケーション方法。変えにくいが、働きかけに最も敏感な要素
・ハード的要素:組織のルール・制度・形態。背景にある経営者の思想も含む
・精神的要素:社員の心理状態・行動パターン・評価認識。乖離すると離職リスクが高まる

企業風土の改革が必要なケース

企業風土はすべてのケースで改革が必要なわけではありません。自社の状況を正確に診断したうえで、改革が必要かどうかを判断することが重要です。以下のような状況が複数見られる場合は、企業風土の改革を検討する価値があるでしょう。

変革や新規事業の繰り返す失敗・停滞

DX推進や新規事業開発に着手しても、社内から「でも、それは難しい」「前例がない」といった声が繰り返し上がり、前に進まないというケースがあります。このような状況では、「前例踏襲」「上意下達」を是とする企業風土が変革の妨げになっている可能性があります。

弊社ソフィアの2024年調査では、大企業に勤める約8割が「社内コミュニケーションに問題がある」と回答しており、そのうちコミュニケーション問題の発生要因として「組織の文化や体質」を挙げた回答が33%に上っています。企業風土が具体的なビジネス課題の温床になっている実態が確認できます。

経営戦略・理念の現場への浸透不足

経営層が掲げるビジョンや戦略が、現場に届いていないと感じている組織も少なくありません。弊社ソフィアの2024年調査では、経営目標・戦略を「十分把握している」と回答した現場社員はわずか8%にとどまっており、「十分共感している」に至っては9.9%という結果でした。情報が届いても共感に至らない背景には、風土レベルの問題が潜んでいることが多いです。

離職率の上昇・エンゲージメント低下の継続

優秀な人材が繰り返し離職する、エンゲージメントサーベイのスコアが改善されない、といった状況が続く場合、人事制度の問題だけでなく、企業風土が根底で影響している可能性があります。弊社ソフィアの2025年調査では、自社のエンゲージメントが高いと感じている回答者は38%にとどまり、39%が「どちらでもない」と回答しています。

部門間の連携不全・縦割り問題の慢性化

同じ会社でありながら、部門間で情報が共有されない、協力関係が築けないという状況が慢性化している場合も、企業風土の見直しが必要なサインです。弊社ソフィアの2024年調査では、コミュニケーション問題の発生個所として「部門間」が58%と最多で、「部門内の上司と部下」51%、「経営陣と社員」42%と続いており、縦横双方に問題が広がっている実態が明らかになっています。

企業風土がもたらす影響

企業風土の課題点を踏まえながら、その実態を見てきました。では実際に、企業風土は経営状況や従業員にどのような影響をもたらすのでしょうか。3つの視点から解説します。

社員のモチベーションや生産性への影響

企業風土は、従業員のモチベーションを左右します。たとえば、威圧的な雰囲気のある企業では、自分の意志よりも指示のほうが強さを持つため、従業員はモチベーションを失ってしまいがちです。また、コミュニケーションにおいて距離が遠すぎる環境だと、同じくモチベーションが下がることが考えられます。

このようにしてモチベーションが下がった状態だと、情報共有が希薄になり、結果的に負のループに陥るかたちで、生産性にも悪影響が出てしまうと考えられます。

弊社ソフィアの2025年調査では、職場に対する満足度の要因として最多は「人間関係・上司部下関係」(54%)であり、「職場環境」(48%)や「待遇・報酬」(43%)を上回っています。職場の人間関係という企業風土の中核的要素が、働く人のモチベーションに最も直結していることが実証されました。

コミュニケーション・協調性・イノベーションへの影響

企業風土は、コミュニケーションの方法や密度にも影響を与えます。協調性を大事にする企業風土では、従業員は自分の意見を口にできず周囲の意見に従うようになります。とりわけ大企業の場合は、従業員が歯車化し、主体的な判断やコミュニケーションを手放してしまうようになるでしょう。

表面的にいくら円滑にコミュニケーションが取れていても、実際はウソのコミュニケーションを重ねているという状態に陥ることがあります。結果、個人が孤立した状態が生まれ、コミュニケーションがますます希薄化します。創造性のあるやりとりも生まれなくなり、イノベーションは起きず、個人がそれぞれの利益を求めるような組織へとなってしまう可能性もあります。

弊社ソフィアの2024年調査によれば、社内コミュニケーション問題の具体的な内容として「業務に関連する情報が共有されない」(46%)、「合意形成が遅い・できない」(38%)、「フィードバックが十分に貰えない」(33%)が上位に挙げられています。企業風土が引き起こすコミュニケーション不全が、業務の質そのものに悪影響を与えている実態が確認できます。

株主・消費者など第三者への影響

企業風土は、従業員だけでなく、株主や消費者などの第三者からの評価をも左右します。企業風土は、ブランド価値や社会的意義のイメージから形成され、ステークホルダーから信頼を得られるかどうかに深く係ってきます。イメージを高めることができれば、ブランド価値も上がり、競争力も上がります。業績が良好になり、企業は発展・成長へと進んでいきます。

一方でイメージが低下すると、競争力が下がり、サービスの品質低下を招くでしょう。結果、顧客離れやステークホルダーからの信頼喪失につながりかねず、深刻な事態になることもあります。

ここまで見てきたように、企業風土を変えるには企業風土にだけ着眼点を置いても意味がありません。その企業風土が導き出した実績や成功・失敗などの結果を解釈して、なぜそのような結果が出ているのかを吟味するステップが必要不可欠です。吟味できたらその解釈をもとに変えるべき風土を洗い出し、それに従ってまずは組織の認識を変えていきます。それを長期間浸透させることで、企業風土の変化を促すことができます。

また、大企業の場合はどのようなアクションから始めるのが効果的でしょうか。以降では、具体的な方法についてご紹介します。

企業風土改革のきっかけづくり

企業風土の改革において何より大事なのは、きっかけ作りです。このとき、小さくはじめることが大切です。大きく仕掛けると、大失敗するリスクもあります。経営の上手な経営者のほとんどは用心深く、小さな種を仕掛け、手応えを得てから水平展開します。その姿勢からヒントを得ましょう。

具体的には「アウトサイダーを起点とする方法」と「ショックドクトリンを用いる方法」があります。

アウトサイダーを起点とした変革

新しいビジネスやイノベーションは、一般に「アウトサイダー」によって生み出されると言われています。彼らの多くは、ビジネスの主流から外れた経歴を持っていたり、ビジネスの分野にずっといたとしても主流派からは外れた思想や経験の持ち主です。革新的な思考を持っていて、新たな可能性を見出すことに長けた存在です。

このようなアウトサイダーから発想を得ることで、当たり前とされているルールにとらわれず、新たなアイデアを得られます。アウトサイダーを集めて、権限も予算も好きなように付与してみると、革新的なアイデアが見つかるかもしれません。

ショックドクトリン(危機を機会にする発想)の活用

また、様々な危機や問題が組織変革のきっかけとなるケースがあります。国や地域が抱えるリスク、企業の合併・廃止などの業界における危機などがその例です。こうした危機的状況は、企業文化を変え、ひいては企業風土を変えていくためのきっかけになるのです。固定観念を取り払い、凝り固まった過去から脱却するための千載一遇の機会になります。

企業風土を改革する具体的な方法

実務担当者が企業風土変革を展開する際に、手段や目的を誤解することはよくあります。企業風土は整合性を調整する必要があり、新しい事業戦略や変革を前提にした場合、現在の組織風土との整合性が合わず、抵抗や停滞が生じることがあります。

実際には変革や結果が起き、それを組織や社員が解釈し、思考パターンやコミュニケーション、行動が変化することによって、風土が形成されます。端的に言えば、変革した事実や結果に基づいて風土が後から変化していき、新しい事業が生まれるのです。

以下では、企業風土を変革する具体的な方法を解説します。

問題点の洗い出しと改善すべき点の明確化

まずは組織が抱える問題点を調査します。一定の期間で繰り返しながら、現状の問題と、そこにある本質を明確化しましょう。問題が洗い出せたら、解決のための手順を定めていきます。どのような状態になるのが理想なのか目標を設定して、いくつかのステップに分解しながら達成への目処を立てていきます。ステップごとの目標を達成するにはどのような情報が必要なのかも整理しておきましょう。

上層部によるリーダーシップの発揮

改善すべき点がわかりやすく整理されたら、変革を推進します。上層部がきっかけを作りながらリーダーシップを発揮していくことが重要です。企業文化の促進ができているか、社員のモチベーションが高まっているかなど、結果を随時精査しながら進めていきましょう。

フィードバックとオープンな情報公開

フィードバックは、業務や学習において重要な役割を果たします。情報が可視化され、細かい点にも意識がいくことで、大きな改善・大きな成果につながりやすいからです。フィードバックの際には、単に成果を良い悪いで評価するだけでは意味がありません。評価とともに、具体的な改善点や、改善につながるアドバイスを含めることが必要です。

質の高いフィードバックのやりとりは、企業風土の改善スピードを高めることに寄与します。もらった指摘に迅速に対応し、それによって得た結果をわかりやすく開示することで、フィードバックのやりとりの質を意識的に高めましょう。

共通言語のローコンテクスト化と再インストール

企業風土について考える際に見落とされがちなのが、言葉や言語の問題です。言葉は過去の風土を踏まえているもの。古くから使われている言葉を用い続けることは、過去の表現に捉われているということでもあります。そこで一旦、共通言語などのハイコンテクストな言葉をローコンテクスト化しましょう。ロジカルシンキングなど個々の社員のコミュニケーションを変えることで、過去の風土に影響されない状態を作り、正確な意思疎通を図ることができます。

多角的な視点の取り込み

改革の際には、従業員・顧客・ステークホルダーなどの多角的な意見を取り入れるのがコツです。広い視野で、さまざまな立場から自社を見ることで、部署の文化や地域のニーズを客観的に見つめ直せます。社員にも、自分たちのアイデアを積極的に共有するよう呼びかけ、意見を増やしていきましょう。これにより、偏りの少ないインクルーシブなアプローチが実現します。

企業風土の改革と心理的安全性の関係

企業風土の改革において、近年特に注目されているキーワードが「心理的安全性」です。心理的安全性とは、Googleが行った「プロジェクト・アリストテレス」(2015年)で、チームのパフォーマンスを左右する最重要因子として特定した概念で、「このチームでは、リスクをとってもネガティブな反応をされない」と感じられる状態を指します。(参考:Google re:Work

心理的安全性が高い組織では、社員が本音を言いやすく、アイデアが活発に飛び交い、人と人とが信頼しあえる状態になります。一方、心理的安全性が低い組織では、社員は「失敗を指摘される」「異論を唱えると評価が下がる」という懸念から、沈黙を選びます。この沈黙の蓄積こそが、面従腹背的な企業風土を生む土壌となるのです。

弊社ソフィアの2025年調査では、部署を越えた対話の機会(職場内対話会71%、部門横断の交流会72%)が社内イベントの中で最も高く継続評価されているという結果が出ています。心理的安全性を支える関係性構築の機会が、強く求められている実態がわかります。

心理的安全性を高めるためには、まず管理職・リーダー自身が「失敗しても大丈夫」という姿勢を示すことが重要です。加えて、部署を越えた交流機会の設計、1on1の定着化、フィードバック文化の醸成といった施策を組み合わせることで、心理的安全性を土台とした企業風土の変革が期待できます。

企業風土改革においてインターナルコミュニケーションが果たす役割

企業風土の改革を進める上で、見落とされやすいが実は重要な要因が「インターナルコミュニケーション(社内コミュニケーション)」です。いくら経営層が変革の旗を振っても、その意図や情報が現場に届かなければ、組織全体の風土は動きません。

情報が届いても、共感は自動的に生まれない

弊社ソフィアの2024年調査では、自社の経営目標・戦略を「十分に共感できない」理由として「現場の実情や実務と乖離している」「成果の評価基準が不明確」がそれぞれ33%で最多でした。これは、単に情報が届いているかどうかの問題ではなく、コミュニケーションの質が共感を生むかどうかに直接関わっていることを示しています。

大企業こそコミュニケーション設計が重要

弊社ソフィアの2024年調査では、情報共有のための施策として「チームメンバーとの定期面談・ミーティング」(54%)、「1on1(個人面談)」(50%)が上位を占める一方、部門間コミュニケーションの施策は定例会議(48%)に依存する傾向が強く、日常的な接点を仕組み化する取り組みは少ないことがわかっています。また、「何も実施していない」との回答も26%を占めており、部門間コミュニケーション促進への取り組みに格差があることも明らかになっています。

企業風土の変革は、インターナルコミュニケーションを整備することで、はじめて全社に浸透します。経営層のメッセージを一方的に発信するだけでなく、現場の声を吸い上げ、双方向のやりとりを設計することが、風土改革の実効性を高める鍵となります。

企業風土変革における葛藤と向き合い方

企業風土を変革する上では、さまざまな葛藤が生じるものです。その葛藤にどう向き合うかが、改革の成否を分けると言っても過言ではありません。

企業では、基本的に社員同士が直接顔を合わせて働きます。だからこそ、組織を変えることに難しさがあるのです。変革を起こすとなれば、組織で共に働いている仲間を裏切るかたちになりかねません。新しい事業を始めることで、既存の事業を脅かすことになるかもしれません。このような葛藤があるのは当然のことです。そのため、リーダーシップをとりつつ、丁寧にコミュニケーションを重ねることで、調和をとっていくことが大切です。

特に重要なのは、コミュニケーションです。相手の立場で気持ちを理解するスキルは、組織内のコミュニケーションを円滑にしてくれます。相手の気持ちや事情を理解することで、信頼関係が生まれ、ポジティブな風土が生み出されていきます。結果、さまざまな問題の解決につながるでしょう。

また、葛藤を避けたいと感じる気持ちは自然ですが、避け続けていてはどんどん厳しい状況になってしまうこともまた事実です。葛藤しながら模索を続けることで、個人や組織は成長し、少しの間違いではダメージを受けてもへこたれない体質になっていきます。このような強さのある環境は、心理的安全性の高い環境になるでしょう。まずは葛藤を無闇に避けようとせず、向き合って超えていきましょう。

企業風土改革が失敗しやすい原因と対策

企業風土の改革は、多くの場合、途中で頓挫したり形骸化したりします。その主な原因と対策を整理しておきましょう。

「風土を変えること」が目的化する落とし穴

企業風土の改革でもっともよくある失敗は、「風土を変えよう」という取り組みそのものが目的となり、事業戦略や業績改善との繋がりが見えなくなることです。前述の通り、風土は変えようとして直接変えるものではなく、事業活動や体験の積み重ねによって後から変化するものです。改革の入口は、常に「何を実現するために風土の何が妨げになっているか」という問いから始めましょう。

弊社ソフィアの2025年調査では、エンゲージメントサーベイの運用において「スコアを上げること自体が目的化している」と感じる回答者が45%(「そう思う」11%+「どちらかといえばそう思う」34%)に上りました。手段が目的化するリスクは、企業風土改革においても同様に存在します。

トップダウンのみで現場を置き去りにするリスク

経営層がいくら声高に変革を叫んでも、現場の社員が「自分事」として受け取らなければ動きません。弊社ソフィアの2025年調査では、エンゲージメントサーベイが「役に立っている」と感じる割合は、経営層・人事部では約48%であるのに対し、現場社員では35%にとどまり、否定的な評価も25%を超えています。改革施策が「上の人たちのもの」になっていないか、常に確認が必要です。

短期での結果を求めすぎることの弊害

企業風土は長年かけて形成されたものです。短期間で大きな変化を期待すると、効果が見えずに施策が打ち切られるというケースが多く見られます。改革を「長期的な旅」として位置づけ、小さな変化を丁寧に積み重ねながら進める姿勢が重要です。1年・3年・5年という時間軸でマイルストーンを設定し、モニタリングを続けることが成功のカギとなります。

まとめ

企業風土とは、組織に流れている文化や価値観・習慣などが織り混ざったもので、企業の意思決定・生産性・実績を左右する重要な概念です。しかし、組織に課題があるからといって企業風土をいきなり変えようとするのは間違いです。まず現状の企業風土の問題点やその背景にある課題を明確化し、長期的に改善していく姿勢こそが必要です。

企業風土の改善を目指す場合には、リスクへの葛藤があるでしょう。しかし葛藤を恐れずにコミュニケーションを続け、丁寧に試行錯誤を重ねることが、より良い企業風土を育むための近道です。

大企業の人事担当者や研修企画担当者にとっては、インターナルコミュニケーションの設計と心理的安全性の醸成が、企業風土改革の実践的な入口となります。弊社ソフィアでは、組織風土の診断から変革コンサルティング、研修・ワークショップの設計・実施まで、一貫してサポートしています。企業風土の課題でお悩みの方は、ぜひご相談ください。

「企業風土」とは?「企業文化」との違いや、企業風土がもたらす影響についてよくある質問
  • 企業風土とはどういう意味ですか?
  • 企業風土とは、ある企業特有の環境や雰囲気、そしてそこで働く人々の行動様式や集団規範などを合わせた、その企業を特徴づける文化のようなものです。暗黙的なモノが多いです。

    もう少し具体的に説明すると、企業風土には以下のような要素が含まれます。

    企業理念やビジョン: 会社が目指す方向性や価値観
    社風: 社内の雰囲気や働き方
    人間関係: 同僚や上司との関係性
    コミュニケーションの仕方: 情報共有や意見交換の方法
    リーダーシップのスタイル: リーダーの行動や考え方が組織に与える影響
    歴史や伝統: 企業が長い年月をかけて培ってきた文化や慣習
    社内制度: 評価制度、人事異動、福利厚生など
    これらの要素が複雑に絡み合い、企業独自の風土を形成します。企業風土は、目に見えない部分も多く、企業の規模や業種、歴史などによって大きく異なります。

  • 職場の風土とは何ですか?
  • 職場の風土とは、ある職場に特有の雰囲気や規範です。風通しが良いとか悪いとかというレベルで表現されます。

    具体的には、以下のような要素が組み合わさって、職場の風土を形作ります。

    人間関係: 同僚や上司との関係性、コミュニケーションの取り方、言葉の使い方
    仕事の進め方: 目標設定の仕方、進捗管理の仕方、評価の仕方など、仕事に対する考え方や取り組み方
    価値観: 会社が大切にしている価値観や理念
    歴史や伝統: 職場が過去の経緯から醸成された慣習や規範
    社内制度: 評価制度、人事異動、福利厚生など

  • 「会社の風土」の言い換えは?
  • 似た意味を持つ言葉

    企業文化: 会社全体が共有する価値観や行動様式を指します。
    組織文化: 組織全体が共有する価値観や行動様式を指します。
    社風: 会社の雰囲気や特徴を簡潔に表す言葉です。
    職場の風通し 関係性やコミュニケーションといった、物理的な環境だけでなく心理的な環境も含めた言葉です。
    ニュアンスの異なる言い換え

    社内雰囲気: より具体的な雰囲気を表す言葉です。
    職場空気: 社員同士の関係性やコミュニケーションの雰囲気を表す言葉です。
    企業カルチャー: より流行りの言葉で、企業文化を指すことがあります。
    組織風土: 組織全体が共有する価値観や行動様式を指し、企業風土とほぼ同義です。
    状況に合わせて使い分けましょう

    どの言葉を使うかは、どのような文脈で「会社の風土」という言葉を使いたいのかによって変わってきます。

    より一般的な表現: 企業文化、組織文化
    より具体的な雰囲気を表したい場合: 社内雰囲気、職場空気
    より流行りの言葉を使いたい場合: 企業カルチャー
    組織全体の価値観や行動様式を強調したい場合: 組織風土

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。