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SDGsが抱えている問題点とは 企業がSDGsに取り組む前に知っておきたいこと
#サステナブル#SDGs
従業員に対しての調査研究は、かつてはモラルサーベイ(従業員意識調査)を用いて調査することが一般的でした。
従業員満足度(Employee Satisfaction)調査が日本企業で定着したのは2000年に入ってからとされています。
今では、調査を実施している企業は大手企業の3割超に達しています。
この章では、従業員満足度の定義および構成要素について解説します。
従業員満足度とは、端的にいうと「従業員の組織への満足度」を指します。経営方針・労働条件・人間関係・職場環境などに対する従業員の満足度を指数化したものです。
従業員満足度への取り組みは、経営効率の改善・職場の問題点解決・社員の参加意欲喚起に加えて、社員のモチベーション向上による価値提供力強化を通じた顧客満足度向上をもたらします。
従業員満足度への取り組みでカギとなるのが、調査項目の設計です。一般的には、以下のような切り口でアプローチします。
また、従業員満足度にはハーズバーグの二要因理論が関連します。
これはアメリカの臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグが1959年に導き出した理論で、仕事における満足度は一軸ではなく、「満足」に関わる要因(動機付け要因)と「不満足」に関わる要因(衛生要因)に分けられるというものです。
ハーズバーグの二要因理論によれば、動機付け要因に関わる「達成すること」や「承認されること」、「責任」や「昇進」、ひいては「仕事そのもの」が満たされると人は満足感を覚えますが、もし満たされていなくても「不満足」に至るわけではありません。
同時に、衛生要因に関わる「会社の政策・管理方式」や「業務監督」、「給与」や「作業条件」、「対人関係」などは、不足すると不満足を引き起こしますが、満たしていても満足度を向上させるものではありません。
すなわち本理論によれば、従業員満足度の高い企業は動機付け要因が満たされていることになります。
この章では、従業員満足度が高まることによって企業内に起こる変化について解説します。
従業員の従業員満足度が高くなることで、従業員は自社に対して愛着や帰属意識を持つようになります。
これは、従業員がなぜ企業に集うのかという理由そのものともいえるでしょう。
企業が掲げる理念やビジョンに対して共感の度合いが高まり、事業に対する当事者意識が強化されます。
従業員の当事者意識が高いと、企業における経営テーマを社員一人ひとりが自分ごととして捉えるようになります。
社員のコミットメントが高まることで、人事異動や評価制度、企業や事業の方向性などに対する納得感や腹落ち感も得やすくなります。
従業員の満足度が高い企業は、従業員にとって居心地のよい場所になります。
居心地のよい場所ではその空間を共有する人たちが交流を図りやすく、コミュニケーションの活発化へとつながります。
この章では、従業員満足度向上のプロセスについて紹介します。
ゴールを設定する⇒ゴールに対して現状を把握する⇒施策を計画する⇒施策を展開する⇒効果を測定するという流れが一般的です。
まずは、自社において「従業員満足度が高いとはどんな状態か」というあるべき姿を設定します。
ゴールを設定しないと、現状どのような状態にあるのかというポジショニングができないためです。
設定したゴールに対して、満足度がどの程度なのかという現状を把握しますが、その手段として、前述した満足度調査を行います。
ゴールの達成を阻害している要因を課題として抽出するのもこの段階です。
課題に対する打ち手として施策を計画します。
同じ会社とはいえ、組織風土や職場環境によって抱えている課題もさまざまです。
だからこそ、トップダウンで一律の施策を実施するよりも、ボトムアップ方式で部門独自の課題を解決する施策を展開する方がより効果的とされています。しかし一方で経営トップによるリーダーシップのもと人事部門が会社全体の取り組みを主導していくためには、部門責任者による進捗報告と人事部によるモニタリングが欠かせません。
事業部門だけで解決できない課題は、人事部門などが吸い上げて横断的に解決を図りましょう。
計画した施策を実施します。
施策の規模によって、計画立案から次節の効果測定までのサイクルを調整してください。
施策実施後、効果はどうだったのか、目標とのギャップはどれくらいだったかを測定します。
結果は従業員へフィードバックすると同時に、マネジメント層にも報告します。
上記サイクルを回し続けることにより、持続的な従業員満足度向上が実現する仕組みとなっています。
従業員満足度を高める施策は、先述の動機要因を高めるものが有効です。
施策を通じて従業員が「働いていて充実している」「何のために働くのかをしっかり見いだせている」と思えるようになることが重要です。
本記事では、経産省が主導する人材マネジメント研究会における、「MVV浸透を通じたエンゲージメント向上施策」を紹介します。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは、企業の使命・あるべき姿・企業の価値観を指します。
これらを定義することは、従業員のエンゲージメントにも影響を与え、リテンション(離職の防止)や人材採用にもつながります。
ただし、MVVは社員へ浸透して初めてその成果を発揮することに注意してください。
従業員満足度を高める施策を成功させるには、社内報やイントラネットなどを活用したメディアコミュニケーションや、社内表彰やワークショップの対話型コミュニケーションを活用し、MVVそのものの浸透を図るとともに、施策実施の背景や目的を共有することが必要です。
従業員満足度を向上させるためには、社員一人ひとりとの対話を踏まえて、主体的なキャリア開発を促すためのサポートプロセスが重要となります。eラーニングやキャリアカウンセリング、さらには部門責任者や役員との1on1ミーティングや小集団活動により、従業員それぞれの貢献意欲醸成を図ると同時に、エンゲージメント向上を促しましょう。。
MVV浸透施策を最終的に従業員満足度の向上へとつなげるために、組織活動との連動は欠かせません。
改善活動や新規事業提案、社長賞といった社内表彰や、評価制度の見直しと業績目標への反映、社内報などのメディアを利用したベストプラクティスやロールモデル紹介などを通じて、MVVを組織内で具現化していきます。
ドラッカーもマネジメントの重要な要素としてMBO(目標管理)を提唱しています。
どういった行動が褒め称えられるのかという具体的なイメージを持って従業員が行動することで組織風土を醸成し、従業員の意識改善につなげるのです。
ただ、こうした手法はすでに多くの会社が採用しているはずです。
うまくいく会社とそうでない会社の違いはどこにあるのでしょうか。
MVV浸透施策を展開しても上層部が一方的に発信するだけでは、従業員満足度向上は期待できません。ワークショップ、社内広報さらにはカウンセリング面談など、さまざまな接点を通じた、ひろがりのある社内コミュニケーションが不可欠といえます。
この章では、前章で触れた、施策実施の最初の取り組みにあたる満足度調査を行う際の注意点を解説します。
なおこの調査は繰り返し定点観測していくものなので、必ず押さえておきましょう。
満足度調査はその目的を従業員に明示することが重要です。
回答によって評価への悪影響や人事異動があるのではないかと懸念すると、従業員からはなかなか本音を聞き出すことができないためです。
調査には他意がないことをしっかりと伝えておきましょう。
調査項目はなるべく簡素にしてください。
アンケートはコミュニケーション媒体なので、自由記述の項目にたくさんの意見を書いてくれる人は、それだけ伝えたいことが多く、レスポンスを求めています。書いたことが社内で反映されない、もしくは何の言及もされないと、従業員からは不満を招きやすくなります。
とくに記名式で多くの項目に答えさせる調査では、従業員が『人事評価に影響するのでは』などの不安を抱きやすくなり、本音を聞き出すことが難しくなります。
アンケートを行う時点では現状把握に過ぎないので、項目はなるべくシンプルにまとめます。
なお、海外では1分ほどで完結する5〜15問程度の項目で構成された「パルスサーベイ」が活用されており、今後は日本でもトレンドになると予測されます。
脈拍を定期的に測定するように、「高い頻度で企業と従業員の健全性を測る」ことがパルスサーベイの目的です。
調査項目を簡素化するだけでなく、現在発生している問題や事案をすぐに把握し速やかに解消できるメリットがあります。
最後に、従業員満足度向上の成果を発揮している企業がどんな取り組みを行っているのか紹介します。
三井不動産グループは、持続可能な社会実現を軸に置いた長期経営方針「VISION2025」というものを掲げています。その理念のもと具体的な6つの目標を取り上げ、社長以下のマネジメント層をメンバーとする「経営会議」が具現化に向けた取組を推進していますが、その1つが「多様な人材が活躍できる社会の実現」です。
具体的にはグループミッション「個の力を高め結集してグループの力へ」を念頭に置きつつ、人材マネジメントの充実・ワークライフバランス改善・働き方改革といった課題の解決を進めています。
一人ひとりの社員がプロフェッショナルとして個の力を高めつつ、多様なスキルを結集してチームとしての付加価値提供力を向上させるべく、同グループでは4つのサイクルを有機的に組み合わせることで人材育成体制の充実を図っています。
①OJT
人材育成の基本となるOJT(ON THE JOB TRAINNING)を重んじ、業務遂行における気付きや社員同士のコミュニケーションを通じて、個々の成長を促します。
②面談
希望するキャリア・ビジョン実現を支援すべく、所属長・人事部門との面談を通じ、育成上の課題・本人の不安・労働環境や育成状況の把握に努めます。
③ジョブローテーション
複数領域を経験させるために定期的なジョブローテーションを実施、環境変化にも柔軟に対応できる真の専門性を身につけます。
同社はオフィスビル・物流施設・ホテル商業施設さらにはグローバルと多様な領域を手掛けており、やる気次第でさまざまなフィールドでの活躍を可能にしています。
④研修
実務面での専門性習得の研修の提供だけでなく、経営問題を議論し合う「MEET21研修」やロールモデル発見をサポートする「クロスエキスパート研修」を開催しています。社員の多様な能力を向上させる研修プログラムを、個人の能力に合わせて受けられる体制を整えています。
同社では生産性の向上を通じた労働時間削減により、従業員のプライベート充実・自己改革の意欲増進・育児や介護との両立を促し、個々の従業員が能力を十分発揮できる労働環境の実現をめざしています。結果として顧客への付加価値も拡大し、持続的成長につながるという考え方です。
具体的には、フレックスタイム制、連続休暇制度、ファミリーデー、フレッシュアップ休暇制度等を通じて残業時間削減・有給休暇取得を促しています。
とくに育児支援に関しては、法定制度だけでなく事業所内保育所・法定を超える育児休業期間・費用補助制度などに取り組み、結果として正社員の復帰率100%を20年にわたり維持しています。
同社では多様なライスステージの人材が活躍できる組織づくりをめざし、意識改革・組織単位での業務改革、インフラ整備を柱とする働き方改革をすすめています。
・意識改革
広報や社内イントラを通じた経営トップによる情報発信や好事例紹介に加え、男性の育児支援促進を目的とする施策(育パパトレーニング休暇制度等)の展開
・業務改革
部門別の業務効率化推進と事務局(働き方企画推進室)のサポート
・インフラ整備
シェアオフィス「WORKSTYLING」の活用、在宅勤務制度の定着、事業所内保育所の活用等
カナダのマクドナルドでは、店舗従業員(社員・アルバイト)向けにスマートフォンアプリを開発しました。
業務上必要不可欠なシフト調整やメンバーとの連絡が同アプリで解決するという、ユーザー目線で利便性に優れたアプリです。
さらにそのアプリ上にカナダマクドナルドの想いや取り組みを高頻度で配信し、企業のメッセージが自然と目に入るようにしました。
カナダマクドナルドは、安全性問題の発生などによってブランドに傷がつきかけていたタイミングで、「こんな時だからこそ改めてしっかりやっていく」という前向きなメッセージを発信し続け、従業員からの共感や納得を醸成することに成功しています。
大山乳業は、自社商品である「白バラ牛乳」からネーミングをとって「白バラ大学」という取り組みを行っています。
今の新卒や若手社員は、企業に属することで成長したいという思いを持っています。
それを、自社に入社・在籍することで知識やスキルを得られるという形に具現化したのが「社内大学」という制度です。
シラバスや学生証づくりから始まる白バラ大学はエンターテイメント性をも含んでおり、社員は楽しく主体的に「大学へ通う」ことができるわけです。
また、学生証があると社外(パートナー企業や地域住人)を巻き込むことができたり、ニュース性に富んだりというメリットがあるほか、従業員が自社へ愛着を持つことにもつながる、社内研修とは異なる取り組みといえるでしょう。
4つ目は、2020年「働きがいのある会社」ランキングのベストカンパニーに選出されたソフィア(当社)の取り組みです。
当社はインターナルブランディング・インターナルコミュニケーションの専門家集団であり、自社でも同じく働きがいを生む社内コミュニケーションの活性化を取り組みとして実施しています。
①フリーアドレス制
毎日異なるメンバーと隣り合わせで座ることで、新たな会話を促進しています。
普段の業務とは異なるメンバーとの交流から革新的なアイデアが生まれることもあるとのことです。
②夏合宿
全員参加の夏合宿を創立から毎年行っています。
社員が自分たちでその年ごとのテーマと内容を企画し、グループワークや課題に取り組むことで効果的なチームビルディングを実現しています。
③社員同士の対話の機会を増やす
四半期ごとのキックオフに加え、会社の課題について話し合う「ソフィア会議」、金曜夜にテーマを持ち寄って話し合う「TGIF」など、通常業務の枠を越えた対話の機会によって相互理解が生まれています。
なお、従業員同士の相互理解はコミュニケーションコストを下げるというメリットがあります。
④「自律した個人」の集まりを目指した勤務体系
リモートワークやフレックスタイムを積極的に取り入れており、2017年には総務省より平成29年度「テレワーク先駆者」にも選定されています。
また、業務やスキル習得に必要な書籍を自由に購入することができ、会社がその費用を負担することで従業員の就労への動機づけや意欲の向上を図っています。
従業員満足度への取り組みは、単に調査だけを意味しません。現状の課題を抽出したうえで組織一丸となって満足度向上を目指さなければいけません。社員を巻き込むためにはインターナルコミュニケーションの活性化が重要となりますので、まずは社員の意識を調査することから始めてみてはいかがでしょうか。
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