ラテラルシンキングとは?ビジネスにおける重要性や活用方法を徹底解説
最終更新日:2026.05.27
目次
正解が一つに定まらない課題が増える中で、企業の人事・研修担当者は、現場が「自ら問いを立て直し、解決策を生み出す力を持つ」ように育てることが求められます。本記事ではラテラルシンキングの基本から、研修に落とし込む手順、社内に定着させるコツまで解説します。
ラテラルシンキングとは
ラテラルとは、英語で「水平の」を意味します。「クリティカルシンキング」のように常識や前提を批判するのではなく、それらを取り払うことから始まる点が特徴です。
まったく新しい角度で物事を見つめ、一方向ではなく多角的に思考を広げていきます。視点だけでなく、視座を変えながら柔軟に発想していくプロセスは、具体から抽象へと思考を広げていくイメージに近いでしょう。
新しい角度から物事を見つめ柔軟に発想していくと、イノベーティブな解決策を見つけるきっかけになります。アイデアが出ない、発想が煮詰まっているときに活用することで、効果を発揮するでしょう。
昨今、ラテラルシンキングを身につけさせようと従業員にアプローチする企業も増え、ビジネスシーンでより一層重要視されています。ラテラルシンキングを身につけることが、ビジネスに成果をもたらすと期待されているのです。
以下では、ラテラルシンキングの考え方や他の思考法との違いなど、ラテラルシンキングのメリットについて詳しくご紹介します。
才能ではなく技術としてのラテラルシンキング
大企業の研修設計で重要なのは、「発想力=センス」と決めつけないことです。創造性トレーニングの効果を検証した定量レビューでは、設計が適切な研修はパフォーマンス向上につながり、その効果は複数の評価軸・環境・対象者に一般化し得ると報告されています。
一方で、研修は”受けた瞬間だけ盛り上がる”ものにもなりがちです。創造性研修の研究では、職場環境が不利だと研修効果が限定され得ることも指摘されており、運用(上司の関わり、会議設計、挑戦の許容など)とセットで設計するのが現実的です。
ラテラルシンキングの提唱者
ラテラルシンキング(lateral thinking)は、エドワード・デボノが1967年に提唱した概念で、デボノ本人の著作として1967年に『The Use of Lateral Thinking』があり、以後ラテラルシンキングは創造的問題解決の文脈で体系化されていきました。
ラテラルシンキングの考え方と始め方
ラテラルシンキングの考え方
ラテラルシンキングによる思考を身につけたい場合、どのように始めればよいのでしょうか。
まずは、自分の中に根付いている常識や前提を取り払うことが必要です。ポイントになるのは、自分の既成概念を疑うだけではいけないということです。
ラテラルシンキングでは、視点を疑うのではなく、変えることが重要です。まったく新しい角度で物事を見つめ、多角的に思考を拡大し、視点だけでなく、どの立場から物事を捉えるのかという「視座」を変えながら、柔軟に発想していきます。
見かたを変える際には、9つの視点から強制的に発想できるオズボーンのチェックリスト法を使うと効果的です。オズボーンのチェックリスト法とは、項目に沿ったチェックリストをあらかじめ用意して、それらに答えることでアイデアを発想するという手法です。
<9つの視点>
- 転用:既存のアイデアを改善することで、ほかの用途に使えないか
- 応用:似たようなアイデアはあるか、参考となる前例はあるか
- 変更:色や形、意味など、新しい視点から考えられないか
- 拡大:大きさや時間といったスケールを拡大することで何が得られるか
- 縮小:サイズを小さくしたり時間を短くしたりすることで何が得られるか
- 代用:既存のものではなく、ほかの材料やアプローチで代用できないか
- 再配置:要素やパターン、流れを変えることで何が得られるか
- 逆転:今と真逆の流れやアプローチにすることで何が得られるか
- 結合:ほかのアイデアや目的を組み合わせることで何が得られるか
ここで一つ、「7つのみかんを3人で分けるにはどうすればいいか」という問題を使って、ラテラルシンキングの代表的な一例をご紹介しましょう。
この問題に対し、多くの場合は「まず1人2つをもらい、余った1つを3等分にする」と答えるでしょう。しかし、ラテラルシンキングにより視点を変えると「すべてミキサーにかけ、ジュースにしてから3等分する」という解決法も正解であると考えることができます。
このように目の前の問題に対する「不満・不安・不足・不便・不快」を洗い出したのちに、視点を意識的に変えながら、アイデアや代替案を言葉にしていきます。
ラテラルシンキングは、柔軟に視点を切り替えることでイノベーティブな発想を生み出し、状況を打破します。ビジネスシーンに応用すれば、コスト課題や顧客数など差し迫った課題を一気に解決する糸口になりえるでしょう。
オズボーンのチェックリストの強み
アメリカの実業家アレックス・F・オズボーンが考案した創造的発想(ブレーンストーミング等)は、努力や才覚だけに依存せず、アイデアを生みやすくする発想法として広く活用されています。研修で扱いやすい理由は、参加者の経験差があっても「質問」が思考を前へ進めてくれる点にあります。
また、オズボーンの発想質問群に着想を得て、EberleがSCAMPERを体系化したことも知られています。現場では「発散の型」として研修に組み込みやすいのが利点です。
ロジカル・シンキングとの違い
ビジネスシーンでよく用いられる「ロジカルシンキング」との違いについて触れていきます。
ロジカル・シンキングとは、既成概念をもとにして、物事を論理的に深く掘り下げて考えていく思考法です。前提に縛られながら、矛盾をなくし筋道を立たせることを突き詰めて、一つの結論にまで落とし込んでいきます。
ラテラルシンキングは、このロジカル・シンキングを基礎としつつも、発想を深掘りするのではなく水平方向に抽象化していく考え方です。唯一無二の結論というものは存在せず、複数の答えを導き出すことが可能です。
ただし、単に突飛な発想をすればいいというわけではありません。ラテラルシンキングにも、論理性・整合性が問われることを、必ず意識するようにしましょう。
研修設計での「ラテラル→ロジカル」の順番
研修担当者が押さえるべきポイントは、対立概念として教えないことです。まずラテラルで「掘るべき場所(新しい仮説・問い)」を増やし、その後、ロジカルで「実行可能な案」に落とす流れにすると研修がアイデア出しで終わる状態を避けやすくなります。
クリティカルシンキングとの違い
クリティカルシンキングも、ビジネスシーンで頻繁に使われる思考法の一つです。
クリティカルシンキングは「批判的思考」と呼ばれ、自分を第三者的立場から見ることで、無意識的にとらわれている常識や前提を取り払い、問題を批判的に問い続けます。批判を繰り返すことで、より深く、鋭い思考にたどり着けるのです。
批判的なスタンスをとるという意味で、クリティカルシンキングとラテラルシンキングは似ています。しかしクリティカルシンキングは常識を疑いながら、内生的に思考を深めていくというものです。
一方で、ラテラルシンキングは、常識をすべて取り払って自由に発想するものです。つまりラテラルシンキングは、思考を深めていくというより、横へ横へと広げながら解決策を見つける作業になります。ここに、両者の大きな違いがあります。
このようにラテラルシンキングは、ロジカル・シンキング・クリティカルシンキングとは異なるものですが、決してライバル関係にあるわけではありません。互いに補完関係にあり、組み合わせることで相乗効果が期待できます。
意見が思い浮かばないといった思考停止状態から抜け出すためにどれかを選ぶのではなく、思考法をバランスよく合わせることが大切です。組み合わせることで多角的な思考になり、最善の結論を導き出すことができます。
ラテラルシンキングのメリットとデメリット
人事・研修担当者が導入判断をするには、「期待できる効果」と「つまずきやすい落とし穴」を同時に把握する必要があります。
メリット(研修の狙いとして置きやすいもの)
・前提を外して代替案を増やせるため、行き詰まり局面の打開策が出やすい
・部署・職種が違うメンバー間でも「問い」を共有しやすく、共通言語になりやすい
・既存の成功体験に依存しにくくなり、変化対応力の底上げにつながる
デメリット/注意点(研修運用で事故が起きやすいポイント)
・発散だけで終わると「結局やらない会議」になり、研修の評判が落ちる
・職場側に挑戦の余地(権限・時間・評価)がないと、研修効果が出にくい(環境要因)
・心理的安全性が弱い職場では、突飛な発想が言語化されにくい(運用設計が必要)
したがって、人事としては「①発散→②収束→③小さく試す(実験)」までを研修の”型”として定義し、現場で回る単位に落とし込むのがおすすめです。
ビジネスにおけるラテラルシンキングの重要性
ラテラルシンキングも、クリティカルシンキングも、ロジカル・シンキングも、身につければ必ずビジネスで成果が出るという類のスキルではありません。 しかし、このような考え方ができなければ、昨今のビジネスシーンにおいて成果を見出すのは困難を極めるでしょう。
その理由として、ビジネスの世界では、学校の課題のようにある一つの明確な答えを導き出せないことが挙げられます。あらゆる可能性を対象に分析と判断を繰り返していくことで、最善の解決策を見出す必要があるのです。
特に現代社会は「VUCA」の時代と呼ばれています。変化や不確実な要素が多く、先行きを予測することが難しい時代です。これまで以上に成功を保証する答えを見つけることが難しくなっています。だからこそ、変化に柔軟に対応し、自由に動ける人材が必要になっています。
とりわけ大企業では、古くからの慣習や上下関係、風通しの悪さなどによる業務フローの定型化が問題視されているケースが多く、前例に倣ったアイデアの借用が常態化しています。誰かが辿ってきた道を進むだけでは、予測不可能な変化が起きた際に対応することができないのです。
そこで、ラテラルシンキングにより視点を変えることができる人材を育成することは、問題を多角的に捉え、ビジネスを有利に進めることが期待できます。
また、新型コロナウイルスの影響で、自律型人材の需要が高まりました。言われたことをそのままやるのではなく、自ら主体的に行動できる人材が求められています。
このように、ラテラルシンキングは、ビジネスの世界で着実な成果を生み出すために必要な思考プロセスです。
部署間連携とナレッジ共有への効果
大企業で「ラテラルシンキングが必要」と言われやすい背景には、部門最適が進みやすく、問いが部門ごとに閉じる構造があります。弊社ソフィアの調査では、部署間コミュニケーションを「必要だと思う」「どちらかといえば必要だと思う」が合計74.8%と、多くの従業員が必要性を感じています。
一方で、ナレッジ共有では「情報がいろいろな場所にあり、どこにあるか分からない」が27.6%、「他の部署の情報にアクセスしづらい」が22.5%など、情報の分散・アクセス性がボトルネックになりやすい傾向が見られます。こうした状況では、単なるツール導入よりも「問いの立て直し」や「前提の疑い方」を共通言語化する方が、改善案が出やすくなるでしょう。
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ビジネスでのラテラルシンキング活用法
ここまで、ラテラルシンキングの考え方や重要性について解説してきました。ここからは、ラテラルシンキングをビジネスで活かす方法についてご紹介します。ポイントを押さえることで、効率的にラテラルシンキングを身につけることができるでしょう。
問題設定を疑う
ビジネスの場面では、定められた問題設定に対して結論を出すというシーンが多くあります。
ラテラルシンキングでは、この問題設定について根本的に疑うところから始めます。問題設定の仕方そのものを転換することで、これまでにない視点で発想していきます。
たとえば、「アイスクリーム販売店で、食べ終わったあとのカップをポイ捨てする人が多い」という問題があるとします。
この課題に対して、ラテラルシンキングによる思考法を活用すると「アイスクリームをコーンで販売する」という発想が導き出されます。ゴミの捨て方について対策を考えるのではなく、問題を転換して、アイスクリームの容器を変更してしまおうという思考になるのです。
枠組みを疑う
人は、無意識のうちに、自分の置かれている環境の枠組みにとらわれてしまうものです。
たとえば企業においては、「業界」や「部門」という枠組みによって、実現できることを自ら狭めてしまっている可能性があります。
枠組みを疑い、視野を広く持つことで、普段は考えつかない新しい発想に出会えるかもしれません。まずは、自分がどのような枠組みに置かれていて、何を前提に物事を考えているのか客観的に分析しましょう。
その上で、自分の思考は偏っていないか、可能性を狭めていないかを問い続けることが、新たな発想を生み出すポイントになるでしょう。
目的を疑う
目的として置いているものが、そもそも妥当でないという場合もあります。
たとえば、「売上を増やす」という課題があるとします。しかし、どれだけ考えても売上を増やすことは難しく、議論がそこから進まなくなってしまいました。
このとき、目的を転換して「売上を増やすのではなく、利益を増やそう」と考えれば、状況は打開されるかもしれません。利益を増やすという目的であれば、経費を減らす選択肢でも達成することができます。
このように、ラテラルシンキングでは、そもそもの目的を変えることもポイントです。目的を変えることで思考の方向性が変わり、別の視点から解決策を見つけることができます。
先入観を疑う
自分の中に根付いている先入観を疑うことで、発想が大きく広がることもあります。
たとえば、本に関する企画を考えている際、無意識に「本は紙で読むもの」という先入観を持っているとします。この場合、どんなに考えても紙の書籍に関するアイデアしか出てこないでしょう。しかし、紙ではなく電子書籍、もしくはインテリアとして飾るための本という、まったく違った認識で本をとらえることができれば、思考の方向性がガラリと変わります。他の人が思いつかないようなユニークな結論にたどり着けるかもしれません。
視点を変える
柔軟に視点を切り替える意識を常に持つことで、思考の範囲を広げられます。一方向に固まった視点は、ものを見る範囲を狭めてしまいます。目の前にある課題を、別の視点で考えられないかを常に意識する訓練をしましょう。状況を大きく変えるヒントになるかもしれません。
抽象化する
認識の前提を取り払うためには、課題を抽象化することも効果的です。
「具体化」は個別のテーマやアイデアに落とし込んでいく作業ですが、「抽象化」は物事の共通点を探しながら思考の軸を見つける作業になります。課題の抽象度を高めることで、議論や発想の幅が広がり、かつて思い至らなかったようなアイデアにたどり着けるかもしれません。
ラテラルシンキングの鍛え方
ラテラルシンキングを鍛えたい場合は、思考をトレーニングするのがおすすめです。これまでにないイノベーティブなアイデアを導き出すためにも、以下のトレーニング法をチェックしてみてください。
・ブレインストーミング
ブレーンストーミング法は、誰の意見も否定せずにアイデアを発展させていく思考法です。自由に発言することで、多くのアイデアを出すことができます。
・シックスハット法
シックスハット法は、客観・直感・否定・肯定・創造・俯瞰の6つの立場で、アイデアを捉え直す思考法です。これまでとは違う視点でアイデアを得ることができます。
・アフィニティ・ダイヤグラム
アフィニティ・ダイヤグラムは、情報をグループ化して考えるフレームワークです。データ、ユーザーのニーズ、意見、洞察など、情報を細かく分類することで、より状況を把握しやすくなります。
・SCAMPER
SCAMPERは、アイデアを派生させていくための思考法です。既存のアイデアをさまざまな角度から見直したり検討したりすることで、より精度の高いアイデアを導き出します。
社員のラテラルシンキングを鍛えたい場合には、研修を行うのも効果的です。ラテラルシンキングの鍛え方をもっと詳しく知りたい方は下記の記事もぜひご参照ください。
反復できる習慣としての研修設計
一度の集合研修だけでは定着しづらいため、研修後の”職場課題”に紐づけた反復が鍵です。弊社ソフィアの調査では、情報共有施策として「研修・トレーニング」が49.6%と、面談・1on1と並ぶ上位に入っています。
すでに研修が主要コミュニケーション施策として使われている企業が多いからこそ、研修を「一回のイベント」ではなく「職場実装の起点」にする設計が効きます。
企業におけるラテラルシンキング研修の設計
対象者の選び方
初回は「全社員一斉」より、部署横断プロジェクトや新規事業、業務改革など、アウトプットが必要な母集団がおすすめです。ラテラルシンキングは”考え方”なので、現場で使うテーマが明確なほど学習転移が起きやすくなります。
研修時間の目安と構成例
最低90分〜半日で「理解→演習→収束」まで回せます。構成例は「概念10分→演習(オズボーン/SCAMPER)30分→発表15分→ロジカル収束20分→職場実験設計15分」です。
成果指標の置き方
KPIは「受講満足」だけだと弱いため、研修目的別に二層にします。たとえば「研修後2週間で提案数が何件出たか(量)」「採用された提案が何件か(質)」「部署間の協働回数が増えたか(行動)」などです。
職場側の運用設計
創造性研修は職場環境が不利だと効果が限定され得るため、上司向けの運用ガイド(否定しない、問いを言語化する、試行を評価する)も同時に配布するのが安全です。
また、弊社ソフィアの調査では、上司との1on1が「義務」34.2%、「任意/推奨」28.4%で合計62.6%と広がりが見られます。1on1や定例会議に「問いの立て直し」を組み込むと、研修が現場の習慣へ接続しやすくなります。
まとめ
ラテラルシンキングは、柔軟な発想でまったく新しい結論にたどり着くための思考法です。問題設定や先入観など、無意識に持っている制限を取り払うことに意識的に取り組み、自由に発想していきましょう。
ラテラルシンキングは、課題を思わぬ方向で解決できることから、ビジネスシーンでも活用することができ、イノベーティブなアイデアの創出が期待できます。ロジカル・シンキングやクリティカルシンキングといった代表的な思考法とは補完関係にあるため、組み合わせて使うとより効果を発揮するでしょう。
企業の人事・研修担当者にとっては、「研修で学ぶ」だけでなく「職場で回る運用」に落とすことが成功の分岐点です。弊社ソフィアの調査で示唆される部署間連携・ナレッジ共有の課題に対し、問いの立て直しを共通言語にすることは、施策を”現場に届く形”へ変える一手になります。






