ラテラルシンキングとは?ビジネスにおける重要性や活用方法を徹底解説

ラテラルシンキングは、柔軟な発想をすることで、新たな答えを導き出す思考法です。問題や課題に行き詰まった際に、常識にとらわれず多方面に物事を見てみると、状況を打破する革新的な施策を思いつくことがあります。これまでにないイノベーティブなアイデアを導き出すきっかけになるので、昨今ビジネスシーンでも重要視されています。

そこでこの記事では、ラテラルシンキングについて詳しく解説していきます。ビジネスにおける活用方法や、そのコツについても紹介します。

ラテラルシンキングとは?

ラテラルとは、英語で「水平の」を意味します。「クリティカルシンキング」のように常識や前提を批判するのではなく、それらを取り払うことから始まります。
まったく新しい角度で物事を見つめ、一方向ではなく、多角的に思考を広げていきます。視点だけでなく、視座を変えながら柔軟に発想していくプロセスは、具体から抽象へと思考を広げていくイメージに近いです

新しい角度から物事を見つめ柔軟に発想していくと、イノベーティブな解決策を見つけるきっかけになるでしょう。アイデアが出ない、発想が煮詰まっている時に活用することで、効果を発揮します。
昨今、ラテラルシンキングを身につけさせようと従業員にアプローチする企業も増え、ビジネスシーンで重要視されています。ラテラルシンキングを身につけることが、ビジネスに成果をもたらすと期待されているのです。

以下では、ラテラルシンキングの考え方や、この他の思考法との違いなど、ラテラルシンキングの メリットについて、詳しく紹介していきます。

ラテラルシンキングの考え方

ラテラルシンキングによる思考を身につけたい場合、どのように始めればいいのでしょうか。

まずは、自分の中に根付いている常識や前提を取り払うことが必要です。ポイントになるのは、自分の既成概念を疑うだけではだめだということです。

ラテラルシンキングでは、視点を疑うのではなく、変えることが重要です。まったく新しい角度で物事を見つめ、多角的に思考を拡大し、視点だけでなく、どの立場から物事を捉えるのかという「視座」を変えながら、柔軟に発想していきます。

見かたを変える際には、9つの視点から強制的に発想できるオズボーンのチェックリスト法を使うと効果的です。オズボーンのチェックリスト法とは、項目に沿ったチェックリストをあらかじめ用意して、それらに答えることでアイデアを発想するという手法です。

<9つの視点>

  • 転用:既存のアイデアを改善することで、ほかの用途に使えないか
  • 応用:似たようなアイデアはあるか、参考となる前例はあるか
  • 変更:色や形、意味など、新しい視点から考えられないか
  • 拡大:大きさや時間といったスケールを拡大することで何が得られるか
  • 縮小:サイズを小さくしたり時間を短くしたりすることで何が得られるか
  • 代用:既存のものではなく、ほかの材料やアプローチで代用できないか
  • 再配置:要素やパターン、流れを変えることで何が得られるか
  • 逆転:今と真逆の流れやアプローチにすることで何が得られるか
  • 結合:ほかのアイデアや目的を組み合わせることで何が得られるか

ここでひとつ、「7つのみかんを3人で分けるにはどうすればいいか」という問題を使ってラテラルシンキングの代表的な一例を紹介しましょう。
この問題に対し、多くの場合は「まず1人2つをもらい、余った1つを3等分にする」と答えるでしょう。

しかし、ラテラルシンキングにより視点を変えると「すべてミキサーにかけ、ジュースにしてから3等分する」という解決法も正解であると考えることができます。
このように目の前の問題に対する「不満・不安・不足・不便・不快」を洗い出したのちに、視点を意識的に変えながら、アイデアや代替案を言葉にしていきます

ラテラルシンキングは、柔軟に視点を切り替えることで、イノベーティブな発想を生み出し、状況を打破するのです。ビジネスシーンに応用すれば、コスト課題や顧客数など差し迫った課題を一気に解決する糸口になりえます。

ロジカル・シンキングとの違い

ビジネスシーンでよく用いられる「ロジカルシンキング」との違いについて触れていきます。

ロジカル・シンキングとは、既成概念をもとにして、物事を論理的に深く掘り下げて考えていく思考法です。前提に縛られながら、矛盾を無くし筋道を立たせることを突きつめて1つの結論にまで落とし込んでいきます。

ラテラルシンキングは、このロジカル・シンキングを基礎としつつも、発想を深堀りするのではなく水平方向に抽象化していく考え方です。唯一無二の結論というものは存在せず、複数の答えを導き出すことが可能です。
ただし、単に突飛な発想をすればいいというわけではありません。ラテラルシンキングにも、論理性・整合性が問われることを、必ず意識するようにしましょう。

クリティカルシンキングとの違い

クリティカルシンキングも、ビジネスシーンで頻繁に使われる思考法のひとつです。
クリティカルシンキングは「批判的思考」と呼ばれ、自分を第三者的立場から見ることで、無意識的にとらわれている常識や前提を取り払い、問題を批判的に問い続けます。批判を繰り返すことで、より深く、鋭い思考にたどり着けるのです。

批判的なスタンスをとるという意味で、クリティカルシンキングとラテラルシンキングは似ています。しかしクリティカルシンキングは上記のように、常識を疑いながら、内生的に思考を深めていくというものです。

一方で、ラテラルシンキングは、常識をすべて取り払って、自由に発想するものです。つまりラテラルシンキングは、思考を深めていくというより、横へ横へと広げながら、解決策を見つける作業になります。ここに、両者の大きな違いがあります。

このようにラテラルシンキングは、ロジカル・シンキング・クリティカルシンキングとは異なるものですが、決してライバル関係にあるわけではありません。互いに補完関係にあり、組み合わせることで相乗効果が期待できます

意見が思い浮かばないといった思考停止状態から抜け出すために どれかを選ぶのではなく、思考法をバランスよく合わせることが大切です。組み合わせることで多角的な思考になり、最善の結論を導き出すことができます。

なぜビジネスにおいてラテラルシンキングが重要なのか?

ラテラルシンキングも、クリティカルシンキングも、ロジカル・シンキングも、身につければ必ずビジネスで成果が出るという類のスキルではありません。
しかし、このような考え方ができなければ、昨今のビジネスシーンにおいて成果を見出すのは困難を極めるでしょう。

その理由として、ビジネスの世界では、学校の課題のようにあるひとつの明確な答えを導き出せないことが挙げられます。あらゆる可能性を対象に分析と判断を繰り返していくことで、最善の解決策を見出す必要があるのです。

特に現代社会は「VUCA」の時代と呼ばれています。変化や不確実な要素が多く、先行きを予測することが難しい時代です。これまで以上に成功を保証する答えを見つけることが難しくなっています。

だからこそ、変化に柔軟に対応し、自由に動ける人材が必要になっています。
とりわけ大企業では、古くからの慣習や上下関係、風通しの悪さなどによる、業務フローの定型化が問題視されているケースが多く、前例に倣ってアイデアの借用が常態化しています。誰かが辿ってきた道を進むだけでは、予測不可能な変化が起きた際、対応することができないのです。

そこで、ラテラルシンキングにより視点を変えることができる人材を育成することは、問題を多角的に捉え、ビジネスを有利に進めることが期待できます

また、新型コロナウイルスの影響で、自律型人材の需要が高まりました。言われたことをそのままやるのではなく、自ら主体的に行動できる人材が求められています。

このように、ラテラルシンキングは、ビジネスの世界で着実な成果を生み出すために、必要な思考プロセスなのです。

ラテラルシンキングをビジネスで活かす方法

ここまで、ラテラルシンキングの考え方や重要性について解説してきました。ここからは、ラテラルシンキングをビジネスで活かす方法について紹介します。ポイントを押さえることで、効率的にラテラルシンキングを身につけることができます。

問題設定を疑う

ビジネスの場面では、定められた問題設定に対して結論を出す というシーンが多くあります。
ラテラルシンキングでは、この問題設定について根本的に疑うところから始めます。問題設定の仕方そのものを転換することで、これまでにない視点で発想していきます。

たとえば、「アイスクリーム販売店で、食べ終わったあとのカップをポイ捨てする人が多い」という問題があるとします。

この課題に対して、ラテラルシンキングによる思考法を活用すると「アイスクリームをコーンで販売する」という発想が導き出されます。ゴミの捨て方について対策考えるのではなく、問題を転換して、アイスクリームの容器を変更してしまおうという思考になるのです。

枠組みを疑う

人は、無意識のうちに、自分の置かれている環境の枠組みにとらわれてしまうものです。
たとえば企業においては、「業界」や「部門」という枠組みによって、実現できることを自ら狭めてしまっている可能性があります。

枠組みを疑い、視野を広く持つことで、普段は考えつかない新しい発想に出会えるかもしれません。まずは、自分がどのような枠組みに置かれていて、何を前提に物事を考えているのか客観的に分析しましょう。

その上で、自分の思考は偏っていないか、可能性を狭めていないかを問い続けることが新たな発想を生み出すポイントになるでしょう。

目的を疑う

目的として置いているものが、そもそも妥当でないという場合もあります

たとえば、「売上を増やす」という課題があるとします。しかし、どれだけ考えても売上を増やすことは難しく、議論がそこから進まなくなってしまいました。

このとき、目的を転換して「売上を増やすのではなく、利益を増やそう」と考えれば、状況は打開されるかもしれません。利益を増やすという目的であれば、経費を減らす選択肢でも達成することができます。

このように、ラテラルシンキングでは、そもそもの目的を変えることもポイントです。目的を変えることで思考の方向性が変わり、別の視点から解決策を見つけることができます。

先入観を疑う

自分の中に根付いている先入観を疑うことで、発想が大きく広がることもあります。

たとえば、本に関する企画を考えている際、無意識に「本は紙で読むもの」という先入観を持っているとします。この場合、どんなに考えても紙の書籍に関するアイデアしか出てこないでしょう。しかし、紙ではなく電子書籍、もしくはインテリアとして飾るための本という、まったく違った認識で本をとらえることができれば、思考の方向性がガラリと変わります。他の人が思いつかないようなユニークな結論にたどりつけるかもしれません。

視点を変える

柔軟に視点を切り替える意識を常に持つことで、思考の範囲を広げられます。一方向に固まった視点は、ものを見る範囲を狭めてしまいます。目の前にある課題を、別の視点で考えられないかを常に意識する訓練をしましょう。状況を大きく変えるヒントになるかもしれません。

抽象化する

認識の前提を取り払うためには、課題を抽象化することも効果的です。
「具体化」は個別のテーマやアイデアに落とし込んでいく作業ですが、「抽象化」は物事の共通点を探しながら思考の軸を見つける作業になります。課題の抽象度を高めることで、議論や発想の幅が広がり、かつて思い至らなかったようなアイデアにたどり着けるかもしれません。

ラテラルシンキングの鍛え方

ラテラルシンキングを鍛えたい場合は、思考をトレーニングするのがおすすめです。これまでにないイノベーティブなアイデアを導き出すためにも、以下のトレーニング法をチェックしてみてください。

・ブレインストーミング

    ブレーンストーミング法は、誰の意見も否定せずに、アイデアを発展させていく思考法です。自由に発言することで、多くのアイデアを出すことができます。

・シックスハット法

    シックスハット法は、客観・直感・否定・肯定・創造・俯瞰の6つの立場で、アイデアを捉え直す思考法です。これまでとは違う視点でアイデアを得ることができます。

・アフィニティ・ダイヤグラム

    アフィニティ・ダイヤグラムは、情報をグループ化して考えるフレームワークです。データ、ユーザーのニーズ、意見、洞察など、情報を細かく分類することで、より状況を把握しやすくなります。

・SCAMPER

    SCAMPERは、アイデアを派生させていくための思考法です。既存のアイデアを様々な角度から見直したり、検討したりすることで、より精度の高いアイデアを導き出します。

社員のラテラルシンキングを鍛えたい場合には、研修を行うのも効果的です。ラテラルシンキングの鍛え方をもっと詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

まとめ

ラテラルシンキングは、柔軟な発想で、まったく新しい結論にたどりつくための思考法です。問題設定や先入観など、無意識に持っている制限を取り払うことに意識的に取り組み、自由に発想していきましょう。

ラテラルシンキングは、課題を思わぬ方向で解決できることから、ビジネスシーンでも活用することができ、イノベーティブなアイデアの創出が期待できます。ロジカル・シンキングやクリティカルシンキングといった代表的な思考法とは補完関係にあるため、組み合わせて使うとより効果を発揮するでしょう。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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