
社内ポータルサイトのデザインの重要性とは?デザインの基本原則とデザインする際のポイントを解説

目次
社内ポータルサイトは、社内の情報共有に役立つ重要なものです。ユーザーにとって使いやすいサイトを作るには、コンテンツの配置などの設計が重要になります。
この記事では、どのようなUI(user interface)にすれば使い心地がいいのかなど、コンテンツ作りのヒントをまとめました。参考になる例も含めて紹介するので、社内ポータルサイトの作成を検討している方や、作成するメリットを知りたい方は、ぜひご一読ください。
社内ポータルサイトのデザインの重要性について
社内ポータルサイトは、社内の情報共有を円滑化するために役立ちます。社員が必要な情報に素早くアクセスできれば業務効率が向上し、業務の質も上がるでしょう。
社員が使いやすいデザインにすることにより、組織内に散らばっていた情報に簡単にアクセスできるようになり、社員同士のコミュニケーションが活性化することが期待されます。コミュニケーションが活発になれば、社内で起きているさまざまな課題をスピーディーに解決できます。業務効率化、生産性向上の観点でも、社内ポータルサイトは意義の大きいものです。
特に変化の速い現代では、(サイロ化や全体最適化の問題も発生するなかで)経営層の意思決定後に現場が動いていては他社に後れをとってしまうため、現場への権限委譲が加速度的に進んでいます。
権限を委譲した経営層が現場の状況を知る上でも、社内ポータルは「オープンに情報共有する場」として活用されています。
特にコロナ禍では、出社率などの情報がポータルに掲示され、各社員は全体の状況を把握して出社を判断していました。情報のレベルには差があるものの、フラットな意思決定が重要視されており、社内ポータルがその基盤となるのです。
また、個人情報については必要な社員だけがアクセスできるように制限をかけられます。企業の機密情報も安全な状態で扱い、一元化しながら保護することが可能です。
社内ポータルサイトのデザインを構成する要素
社内ポータルサイトの使いやすさや印象は、情報そのものだけでなく「デザイン」によって大きく左右されます。直感的に操作でき、見やすく、ストレスのないインターフェースを実現するには、視覚的な要素の設計が不可欠です。
ここでは、社内ポータルサイトのデザインを構成する主な要素と、それぞれが果たす役割について詳しく解説します。
配色
配色は、社内ポータルの印象や使いやすさを左右する重要な要素です。企業のブランドカラーを基調にしながらも、情報の種類や重要度に応じて色を使い分けることで、視認性と情報の整理性が高まります。たとえば、緊急の通知には赤、補足的な情報にはグレーなど、目的に応じた明確なルールを設けることがポイントです。全体の色数を絞って統一感を出すことも見やすさに繋がります。
文字
文字は、情報を読み取りやすくするための基本要素です。フォントの種類や大きさ、色の選定はもちろん、見出し・本文・補足といった文章の階層構造を明確にすることで、読み手が必要な情報をすぐに見つけられます。
また、適度な行間や余白を設けることで、画面が詰まりすぎず、視認性が大きく向上します。読みやすいテキスト設計は、全体のユーザー体験にも直結します。
アイコン
アイコンは、文字情報だけでは伝えにくい意味や機能を視覚的に補う役割を担います。特に、メニューやボタンにアイコンを用いることで、直感的に操作内容が伝わり、ユーザーの迷いを減らす効果があります。視覚的に統一感のあるデザインを用いることで、全体のナビゲーションが分かりやすくなり、ポータルの使い勝手を大きく向上させます。
形
ボタンやコンテンツの形状は、ユーザーの印象や操作感に大きく影響します。角が丸い柔らかい形は親しみやすさを与え、角ばったシャープなデザインはフォーマルな印象を与えます。形状の統一は、デザインに一貫性を持たせるだけでなく、ユーザーが操作に迷わずアクセスできる環境づくりにも繋がります。意図に応じた形の使い分けが重要です。
レイアウト
レイアウトは、情報の配置と導線を設計する上で要となる要素です。グリッドデザイン(仮想の縦・横の線によって、ページ上に領域の区切りを設ける)を活用し、コンテンツを均等に整列させることで、視認性と操作性が向上します。また、利用シーンを考慮して、スマートフォンやタブレットでも快適に閲覧できるようにレスポンシブデザインを取り入れることが求められます。ユーザーが迷わず目的の情報にたどり着ける構成が理想です。
社内ポータルサイトのデザインの基本ルール
社内ポータルサイトを使いやすく、見やすく設計するためには、色や文字だけでなく、情報の配置や構成にも一定の「デザインルール」を取り入れることが重要です。ユーザーが直感的に操作でき、必要な情報にスムーズに辿り着けるサイトにするためには、基本的なレイアウト原則に基づいた設計が欠かせません。
ここでは、ポータルサイトのデザインにおける基本ルールとして押さえておきたい4つの要素を紹介します。
< 1. 近接 >
近接とは、関連する情報や要素同士を物理的に近くに配置することで、ユーザーに「これは同じグループである」と認識させるデザインの基本原則です。
たとえば、見出しとその内容、ボタンとその説明文を近くに置くことで、情報の繋がりが明確になります。要素同士の距離感を工夫するだけで、視認性が高まり、コンテンツ全体のまとまりも感じられるようになります。ナビゲーションやカテゴリ表示などにおいて特に効果的です。
< 2. 整列 >
整列は、テキストや画像、ボタンといったあらゆる要素を同じ基準線にそろえて配置することを指します。整ったラインに要素を並べることで、視覚的な秩序が生まれ、全体がすっきりした印象になります。また、情報がどこにあるかを予測しやすくなり、操作性も向上します。細かい整列の工夫が、プロフェッショナルな印象を与えるとともに、ユーザーのストレスを軽減します。
< 3. 強弱 >
強弱とは、重要な情報に視覚的な差をつけて強調し、ユーザーの注意を誘導するテクニックです。フォントサイズや色、太さなどを使い分けることで、ページ内の情報の優先度を明確に伝えられます。
たとえば、重要なお知らせには大きく太字の見出しを使い、補足情報は小さく目立たない色で表示するといった工夫が効果的です。視覚的なメリハリがあることで、読みやすく、目的の情報にもたどり着きやすくなります。
< 4. 反復 >
反復とは、同じデザイン要素(色、フォント、アイコン、レイアウトなど)を繰り返し使用することで、全体の統一感を持たせる手法です。ページを移動しても同じパターンが使われていれば、ユーザーは安心して使い続けられます。デザインに一貫性があると、初めて使う人でも操作が直感的になり、迷いにくくなります。ナビゲーションやコンテンツ配置での反復は、ユーザビリティ向上に大きく貢献します。
社内ポータルサイトのデザインの目的は二つしかない
社内ポータルサイトのデザインには、複雑に見えて実は明確な2つの目的があります。それは「情報取得の効率化」と「戦略に基づいた行動の促進」です。この2点を達成するためには、単なる見た目の美しさではなく、利用者視点に立った設計と、柔軟に変化へ対応できる仕組みが求められます。
ここでは、この2つの目的を軸に、社内ポータルのデザインが果たすべき役割について詳しく解説します。
①いかに情報取得作業を効率化できるか
社内ポータルサイトの最も基本的な目的のひとつは、必要な情報にいかに素早く、ストレスなくアクセスできるかという「情報取得の効率化」です。
これを実現するために最も重要なのが、検索機能の強化と、それを支える情報分類の設計です。よく見られる失敗として、情報が「発信者の都合」で分類されてしまうケースがあります。たとえば「この情報は人事のもの」「これは広報のもの」といった分類では、利用者が自分の目的に合った情報にたどり着くのが困難になります。
大切なのは、ユーザーが「どんな場面で」「何の目的で」情報を探すかという利用シーンに寄り添った分類を行うことです。業務の流れや利用頻度を考慮した構成にすることで、社員の情報探索にかかる時間と労力を最小限に抑えることができ、業務全体の効率化に大きく貢献します。
②いかに戦略に基づいた行動を促せるか
社内ポータルは単なる情報提供の場ではなく、ユーザーの行動を導く「戦略的な装置」として機能するべきです。企業が目指す方向性に沿って、社員にどのような行動をとって欲しいのかを明確に定義し、それを自然に促すように情報や機能を設計することが重要です。
たとえば「自発的にアイデアを投稿してほしい」「他部署の知見を活用して連携してほしい」といった行動目標に応じて、投稿フォームや連携事例の可視化などを配置し、行動を後押しします。
また、ビジネス環境は常に変化するため、ポータルもそれに応じて柔軟にアップデートできる構造が求められます。行動が変われば成果も変わる。だからこそ、継続的に運用・改善できる可変性の高いポータルデザインが成功の鍵となります。
頻繁に変更することができるサイトデザインが重要
社内ポータルサイトは、一度作って終わりではなく、業務や戦略の変化に応じて柔軟に変化できる設計が重要です。仕事の内容や優先順位が変われば、ユーザーが必要とする情報や行動も変わります。そのため「サイトも変わるのが当たり前」という意識が求められます。
たとえば「商品の価格が変わった」と一斉通知するだけではなく、「お客様ごとに必要な情報をすぐ確認できる」構造が理想です。そのためには継続的に運用・改善できる体制と、可変性のあるプラットフォームの採用が不可欠です。
情報の柔軟な配置変更やレイアウトの更新が簡単にできる設計にしておくことで、現場のニーズに即応し、常に最新かつ最適な状態を保つポータル運用が可能になります。
社内ポータルサイトのコンテンツの管理の重要性
ポータルサイトでは、どの情報をどの場所に置くかというコンテンツの配置が重要になります。以下では、コンテンツ管理の側面から、サイト作りのヒントをまとめます。
カテゴリー分けの重要性
ポータルサイトは、さまざま情報を扱います。そのため、情報が散らばってしまうと、ユーザーが必要な情報にすぐにアクセスできず不便に感じてしまいます。
コンテンツをサイト内にわかりやすく配置するためには、情報をカテゴリーごとに分けて整理するのがおすすめです。ユーザーが情報を探す際の手間が最小限になり、ポータルサイト利用時のストレスも押さえることができます。
アクセス制御
社内ポータルサイトは、社内全体で共有したい情報のほか、個人的な情報も扱うことが多いサイトです。住所などの個人情報を扱う際は、アクセス権を限定する必要があります。特定の情報または機能において、アクセスできるユーザーを限定し、安全性を高めましょう。アクセス制御を行うことは、個人が安心して使えるポータルサイトにするために不可欠です。
またここまでの内容は、いわゆる一般的なWebサイトと社内ポータルサイトに共通する基本的な作り方を解説しました。上記は基礎として押さえつつ、次の章では、情報を提供するだけの場ではない社内ポータルサイトとしての機能について説明します。
一般的なWebサイトと社内ポータルサイトは何が違うのか
前章までの一般的なWebサイトと社内ポータルサイトでは、何が違うのでしょうか。以下では、両者がどのように違うのかを整理します。
ユーザーは社員である
社内ポータルサイトは、ユーザーが社員に限られ、一般の人がアクセスできないのが最大の特長です。閉じられたサイトだからこそ、機密情報も扱える充実した内容になります。ユーザーが社内に限定されている強みのひとつは、社員へのインタビューなどを通して、ユーザーインサイトを予め把握することができる点です。
「インサイト」は、ユーザーが言語化できていないニーズを指します。具体的にはユーザーが抱える課題や問題、欲求や要求、行動の背後にある動機や意図、などユーザーの内面的な要素を把握することを指します。ユーザーインサイトを予め把握することができる強みがあるにもかかわらず、インサイトを定義しないままなんとなく社内ポータルのコンセプトやUI(user interface)を設定してしまう企業が多く見受けられます。これは大きな間違いです。
社員はサイトのUIや、デザインに関して不便を感じていたとしても、なかなか意見を口にしないものです。ポータルサイトは会社の仕組みの一環と捉えているので、使いやすくしようとわざわざ働きかけるよりも、不満を持ちながらも現状に従う社員が多いでしょう。徐々に不便なサイトにも慣れていきますが、業務効率が悪くなったり、社内コミュニケーションに齟齬が生じたりするマイナス面は修正されません。このようにサイレントクレームがあることを想定に入れて初期段階からユーザーの利便性について、感想などをやりとりするのが賢明です。
一般大衆向けのWebサイトであれば、ログやコンバージョンを確認することで、利便性や不満がある程度数字で見えてきます。しかし社内ポータルは一般向けのWebサイトとは質が異なるものです。ログだけではなく、社員へのインタビューやアンケートなどの認知データを活用して、状況を見ていく必要があります。要望があれば改善を施し、利便性が向上したかも含めて丁寧に確認しましょう。
情報は企業特殊情報であり、整理することは非常に困難
社内ポータルのデザインを、かっこよくリニューアルしたいということもあるでしょう。しかし、一般的なWebサイトと同じ感覚でサイトのデザインを「かっこよく」変えてしまうのは「情報がどこにあるのか分からない」などの混乱のもとになります。ユーザーにとって正しいリニューアルであれば、サイトの利便性向上に繋がります。
次に、社内ポータルサイトでは使われる言葉が一般的な意味や表現とは違って、社内だけで通用するハイコンテクストな情報になっていくことがよくあります。社内特有の略語などが多く見られ、前提の文脈なしでは正しく読めないものになるのです。これだと、新たに組織に入ってきた人にとっては不便です。
さらに年月がかなり経っている場合、そもそもの意味や文脈が変化していることすらあり、情報を正しく受け取ることが困難な状態になっていることもあるでしょう。特殊な情報を扱う場所だからこそ、ユーザーに正しく伝わるよう改善が必要です。
社内コミュニケーションの場ともなる
社内ポータルサイトは情報をまとめる場所ですが、昨今では社内コミュニケーションが交わされる場所としても位置づけられます。社内ポータルサイト上に、双方向でメッセージを送り合える機能を加えたり、社長メッセージなどの動画をアップしてメディアとして使ったりするケースも多く見られます。
このように社内ポータルサイトは、コミュニケーションサイトとしての役割も持っていますが、自社のコミュニケーションに沿ったポータルサイトに仕上がっていなければ上手く機能しません。社内ポータルを活用して社内コミュニケーションを変革したい場合には、コミュニケーションのスタイルにあわせてサイトを改修していく必要があります。
社内ポータルサイトのデザインの設計
社内ポータルサイトは、社内のコミュニケーションを深めていくことに役立ちます。以下では、社内ポータルサイトが社内コミュニケーションをどのように促進するのかについて触れていきます。段階的にサイトが及ぼす効果が変化し、コミュニケーションは活性化していきます。
情報の倉庫
初期段階の社内ポータルサイトは、便利な「情報の倉庫」という状態です。必要な情報が一元化されて、分かりやすく整理されており、誰もがいつでも簡単にアクセスできる状態です。社内ポータルサイト内で検索をかけたり、カテゴリーから探したりすることで、時間をかけずに知りたい情報にアクセスできるでしょう。
もし、多くの社員が抱きそうな共通の疑問があれば、予めサイト上にFAQ(よくある質問)を掲載して対策しましょう。管理側とユーザーの双方の負担軽減になります。
社内ポータルサイトの利便性の高さは、社内の情報共有やコミュニケーションを円滑化します。情報の鮮度を保つためにも、適切な頻度で更新を行うことも忘れてはなりません。
コミュニケーションの場
社内ポータルサイトはコミュニケーションの場として、組織全体のコミュニケーション文化を底上げしてくれる可能性を持っています。単に会社と社員のコミュニケーションになるだけでなく、社員同士がコミュニケーションをする場にもなりえます。
たとえば社内掲示板・チャット機能などのコミュニケーションツールを導入すれば、いつでもどこでもニーズに応じたタイミングでコミュニケーションを取ることができます。
デジタル上で従業員同士がスムーズに交流できるようになると情報のやりとりが活発化になり、業務の効率やチームワークの向上に繋がることが期待できます。
デジタルワークプレイスとしての活用
社内ポータルサイトをデジタルワークプレイスとして活用することも可能です。個人レベルだけでなく組織全体でナレッジが共有され蓄積されていき、さらにコミュニケーションのログが残ります。後でなにか必要な情報が出てきたら、簡単に事後確認することもできます。同じ空間にいなくても遠隔でコミュニケーションをとれるようになり、情報共有のハードルが下がり、協業が進むでしょう。
デジタルワークプレイス化の促進は、業務の効率化につながり、アウトプットの品質向上や、その他さまざまな改革が期待されます。新しい変化を促すために、サイトを情報発信がしやすいデザインにしたり、検索の利便性を高めたりといった仕組み構築が重要となります。
デジタルワークプレイスで実現できる働き方改革について詳しく知りたい場合は、以下を参照してください。
社内ポータルサイトをデザインする際のポイント
社内ポータルサイトを作る際には、目的に沿ってデザインを戦略的に考える必要があります。以下では、効果的なデザインを完成させるために留意しておきたいポイントをまとめます。
情報の整理整頓
そもそも情報が整理されていない場合、ポータルサイトを作っても意味がありません。ハイコンテクストな言葉は定義を明示するなどして、共通の前提を整えるようにしましょう。同じ前提のもと、社内の全員が情報にアクセスできれば、問い合わせなどを減らすことができ、社内の管理部門にとっても、現場にとっても時間節約になるでしょう。
また、現段階において、申請書や契約書などの各書類が、紙やPDF、エクセルデータで入り混じっていることはないでしょうか。このあたりは法務部門が契約書を体系化し、Web化に適した形式になっているか見直す必要があるでしょう。
誰にとって最適な情報設計なのかを考える
ユーザーは多くの場合従業員なので、従業員が求める情報を効率よく得られるようにデザインを整えていきます。オーナーと従業員では、興味を持つ情報に違いがあるものです。オーナーは、経営などのビジネスに役立つ情報に関心がありますが、一方で従業員は、自分の身の回りに関する情報にアンテナを張っています。
たとえば異動・転勤などの人事情報や、評価に関する情報などは、従業員にとってとりわけ興味の深いジャンルです。しかしトップメッセージにはそこまで重要には感じられないでしょう。トップメッセージは、あくまで企業から出されるメッセージであり、従業員の業務に直接的な影響があると感じられないからです。
しかし、サイトのエンゲージメントが上がれば、従業員も、企業からのメッセージに関心を持つようになってきます。エンゲージメントを上げるためにも、まずは従業員にとって役に立つ情報をまとめて、見やすい形式でまとめるのが第一歩となります。社内で使われる用語の定義を明確にして、誰でも理解できる情報へと整理しつつ、人事情報も、適宜アップデートしていくことで、サイト内の情報の鮮度を保ちましょう。
従業員の認知負荷を下げる
コミュニケーションテクノロジーの進歩は、人間の情報処理能力を圧倒するほど多くの情報を提供しています。しかし、多くの情報の解釈と処理は困難であり、私たちは限られた情報を深く理解することができません。これは、組織内のコミュニケーションでも同様です。
特に、社内ポータルでの情報共有やコミュニケーションでは、情報が膨大になりがちで、受け取る側は情報を選択しなければなりません。そのため、情報の伝達効率は低下してしまいます。複雑な情報を効果的に伝えるためには、認知負荷を軽減する工夫が必要です。
情報を分かりやすく伝えるためには、ストーリーテリングなどと用いて表現方法に注意を払わなければなりません。また、情報量自体を絞る必要があります。要点を押さえた明瞭なメッセージや、視覚的な手段を活用することで、情報の理解度を向上させることができます。
UIとUXについて
UI(user interface)・UX(user eXperience)改善を踏まえたデザインにすることも大切です。従業員が慣れるまでは、華美なデザインやパワフルな機能は避けたほうがいいでしょう。また、文字が多くて見にくいデザインも避けましょう。
一般的な自治体のWebサイトのように情報がぎっしりつまったサイトは、内容的には充実していても使いにくく、利用性が低いためユーザーにとってはいいものとは言えません。できるだけシンプルでわかりやすく、とはいえ抽象化しすぎないようなバランスが重要となります。使う言葉を単純化するのも工夫のひとつです。かっこよさを追求するのではなく、使いやすさに特化した作りにしましょう。
業務ツールとの連携を強化する
社内ポータルは、情報を得る場としてだけでなく、業務の起点となるハブとして機能させることが重要です。そのためには、日常的に使う業務ツールとの連携を強化することが効果的です。
たとえば、SlackやMicrosoftTeamsといったチャットツール、GoogleカレンダーやOutlookなどのスケジュール管理ツール、ワークフローや経費申請といった社内システムをポータルと統合し、ワンクリックでアクセスできる仕組みを整えます。これにより、ユーザーは複数のツールを行き来する手間が省け、作業効率が大幅に向上します。また、通知機能や連携ウィジェットなどを活用することで、情報の見逃し防止にもつながります。
セキュリティ対策を強化する
社内ポータルには、機密情報や業務に関わる多くのデータが集約されるため、セキュリティ対策は非常に重要です。まず、SSO(シングルサインオン)や二段階認証の導入によってログイン認証の強度を高め、不正アクセスを防ぎます。
また、部署や役職に応じてアクセス権限を適切に設定し、必要な情報だけが表示されるように管理することで、情報漏れのリスクを低減します。
さらに、外部からの攻撃や内部不正に備え、定期的にセキュリティ診断を実施し、システムの脆弱性をチェック・改善する仕組みを整えることが、信頼性の高いポータル運用には欠かせません。
社内ポータルサイトのデザインは段階的に変化させなければならない
社内ポータルサイトのデザインを変化させたい場合は、ユーザーの抵抗感を招かずに行うことがカギです。以下では、段階的に変化を起こすための方法をまとめます。
コミュニケーションの設計
ユーザーになじみやすいように、最初のレイアウトは見やすさを重視したデザインがおすすめです。同時にユーザーに前提知識、共通認識を刷り込むことで、シンプルな内容でも齟齬なく情報を受け取れる土壌を作り、コミュニケーションのコストを下げましょう。
「なにかデザインの変化を加えたい」となったら、まずは直感的にできる操作改善など、小さな変更から始めるのがおすすめです。変更の内容を周知し、ユーザーからのフィードバックをもらって改善を続けましょう。抵抗を招かない程度の変更を重ねながら、長期的には、情報密度が高いデザインへと変化することができるでしょう。
ログやコミュニケーションの段階設計
デザインの変化を段階的に設計することによって、ユーザーが変化に適応しやすくなります。コミュニケーションが円滑に行えるようになり、コミュニケーションコストを下げることができます。
ログの取得
サイトが充実しアクセスが伸びてきたら、サイトの状態を精査します。ユーザーがどのような情報にアクセスしているかをログで取得しつつ、アクセス数や閲覧時間なども取得し分析することでユーザーの行動パターンを把握し、よりニーズに合ったポータルサイトの姿を洗い出します。
アンケート
社内ポータルサイトのブラッシュアップにおいては、アンケート調査も有用です。変化の前後でデザインを比較し、使いやすさや見やすさに関する質問をしましょう。また、ユーザーに直接、改善案を募集してもいいでしょう。できるだけ多くの人に回答してもらえるように、実施期間や回答方法を明確に提示するのがコツです。
回答が集まったら、集計し、分析します。デザインの改善案を見つけ、次の段階で取り組むべき課題を洗い出すなど、回答内容を吟味しながら役立てていきます。
デザインの改善案の策定
ログやアンケートの分析結果によって改善案が出てきたら、どのデザインで改善を行うかを決めます。ユーザーが求める情報をスムーズに探せるようなデザインへ改善しましょう。
改修と運用
ユーザーからのフィードバックをもとにデザインを改善したら、次は本番環境で展開します。変更を加えたことは、通知機能などでユーザーに知らせます。一気に大きくデザインを変えると、ユーザーが操作に戸惑い、抵抗感を生みかねません。ユーザーが変化に適応しやすいよう、変更は段階的に行います。その後の変更のペースは、ユーザーの反応やフィードバックを参考にしながら、マイナーチェンジを重ねます。
社内ポータルサイトのデザインの例
社内ポータルサイトのデザインを検討する際、掲載する情報や想定される使い方に基づき、いくつかの類型から大きな方針を考えることが出来ます。いくつかの例を紹介いたします。
ECサイト型
今や生活者の購買活動の最も主要な場所の一つとなったECサイトでは、ありとあらゆる商品を全てページとしてWEBに掲載することにより、キーワード検索によってお目当ての商品にたどり着くことができるようにし、ユーザーが探索を始めやすい粒度のラベル付けを行い、カテゴリー・階層に分けて整理することで、欲しいものが明確でないときにも同種の商品群を眺めながら必要なものに出会うことが出来るようになっています。
また同時に、“売れ筋商品”など特に目立たせたい商品を表示させる領域も備えています。社内の情報やリンクを「従業員が欲しいもの」=「商品」になぞらえ、社内の情報を精査した上で適切な情報カテゴリーを設けたサイト構造を設計します。検索機能を備えたグループウェアを基盤として活用できる場合、従業員にとって目的の情報を探しやすい使い勝手の良いポータルサイトとなります。
サービスサイト/サポートサイト型
WEB上でサービスを提供している企業は、ユーザーが離脱しないために、ユーザーの目的に可能な限り寄り添いつつ、煩雑にならないよう画面上の情報量は最低限におさえ、必要なアクションをサイト上に配置しています。
「法人のお客様」なのか「個人のお客様」なのか、ユーザー自身に当てはまるものを選びつつ、「荷物を送りたい」のか、「荷物を受け取りたい」なのか、サービスを利用する目的に応じた道案内がサイト上に施されています。
社員が必要な情報を探しやすくするだけでなく、従業員が自分から能動的には探しにいかないが、潜在的に必要としている情報、あるいは会社やIT部門側が意図的に従業員に取得してほしい情報がある場合に有効なレイアウトです。
その際、一般的に社内ポータルサイトの情報は発信者側の分類(人事部からの通達、総務部からの通達、情報システムからの通達、など)がなされていることが多いものですが、従業員が業務において必要とする情報が、必ずしも一部署の管轄だけで十分かというと、決してそうではありません。
たとえば「長期休暇を取得する」時には、人事部に対して必要な届け出の書面様式の他、総務部が提供している支援制度を利用でき、情報システム部からはPC等の情報通信機器に関する処理の方法が案内されているかもしれません。
また「顧客から〇〇という課題解決のための施策の相談があった」ときの回答を探す際に、製品の仕様情報を確認する他、なぜその製品が課題解決に繋がるのか?という過去の提案資料、あるいは自社がその領域に長けていることを示す実績資料を全て用意することが望ましいかもしれません。これらがバラバラに格納されている場合、見落としが発生し、本来期待される生産性が損なわれてしまいます。従業員がどんな“シーン”に情報を必要とするのか、業務にどこまで寄り添えるかがデザインの鍵となります。
オウンドメディア型
旧来、企業が生活者と広くコミュニケーションを取るためには、TV CMや新聞などマスメディアを活用する必要がありましたが、近年では自社独自のメディア(オウンドメディア)を持つことで企業が直接生活者との接点を持つことができるようになりました。
ユーザーにとって価値のある情報を数多く掲載し、そのメディアを多くの人に見られるように成長させることで、より細やかに潜在顧客と繋がり、購買あるいはその他の行動をユーザーに促すことができます。
社内ポータルサイトにおいては、勤怠管理や各種社内規定やドキュメントなど、従業員が業務において絶対にアクセスしなければならないコンテンツを持つことができます。必須すぎて“価値がある”と捉えづらい感覚もありますが、非常に影響力のあるメディアとなりうる場であることは間違いありません。
経営計画の落とし込みやミッション・ビジョン・バリューの浸透、DXの大方針への共感醸成など、従業員の意識や行動の変革を目指すとき、絶対に見にくるポータルサイトという場で、「メッセージコンテンツ」「すぐに実践できるTIPSコンテンツ」「参考にしやすい他社事例」「具体的な第一歩を踏み出すための社内の仕組みへの申し込みフォーム」などをメディア的に取り揃え、従業員の行動変容を目的としたポータルサイトとしてデザインすることができます。
まとめ
社内ポータルサイトは、社内の情報共有に役立つ重要なものです。ユーザーにとって使いやすいサイトを作るために、コンテンツの配置などの設計を工夫しましょう。
従業員にとって最適な情報設計になっているかを常に意識して、UX/UIを向上していきます。もし既存の社内ポータルサイトを変えたい場合には、ユーザーの抵抗感を招かないように最大限の配慮をすることが重要です。使いやすい社内ポータルサイトで社内のコミュニケーションを深め、組織の力を高めていきましょう。
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株式会社ソフィア
先生
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人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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