リーダーシップの具体例を徹底解説!これからの時代に必要な姿勢と行動
最終更新日:2026.05.28
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ビジネス環境が激変し、先行きが不透明な現代において、多くの大企業で「次世代リーダーの育成」が最重要の経営課題となっています。しかし、ビジネスの現場で「リーダーシップ」という言葉が頻繁に飛び交う一方で、具体的にどのような行動やスキルがそれに該当するのか、現場レベルで明確に定義できている組織は決して多くありません。本記事では、大企業の人事部門長や企業内研修を担当する研修企画担当者の皆様に向けて、リーダーシップの基本概念から、優れたリーダーが日々実践している具体的な行動例、そしてこれからの時代に新たに求められるリーダーの在り方までを網羅的に解説します。自社の状況に最適な育成プログラムを構築し、組織全体のパフォーマンスを飛躍的に向上させるための実践的なヒントとして、ぜひお役立てください。
リーダーシップとは
ビジネスにおいて、リーダーシップという言葉をたびたび耳にすることはないでしょうか。リーダーシップという言葉の意味はわかるものの、具体的にどのようなリーダーシップがあるのか、求められるスキルは何かといった踏み込んだ部分までは理解している人が少ないのが現状です。
リーダーシップとはどのような意味を持つのでしょうか。リーダーシップという言葉は、人や組織によって様々な捉え方があり、社会全体で共通の認識があるわけではありません。
グロービスが運営するMBA経営辞書においては、リーダーシップを「自己の理念や価値観に基づいて、魅力ある目標を設定し、またその実現体制を構築し、人々の意欲を高め成長させながら、課題や障害を解決する行動」と定義づけています。ウォーレン・ベニスは「リーダーシップとは、ビジョンを現実に変える能力である」と言っています。そのため、リーダーシップは、「人々や組織をあるべき状態へするための一連の行為や影響力」と言えるでしょう。
リーダーシップは抽象的な概念であるがゆえに、古くから研究対象とされており、様々な調査結果や論文が存在します。
しかし、リーダーシップが先天的な資質によるものなのか、訓練によって身につくものなのかは意見が分かれており、現時点でも明確になっていません。
リーダーシップについて理解するためには、抽象的な概念であることを前提に、リーダーシップ像が多岐に渡ることやそれらに求められるスキルを把握することが重要です。
リーダーシップとマネジメントの違い
企業内研修を企画する上で、リーダーシップと頻繁に混同されがちな概念に「マネジメント」があります。大企業の人事部門が次世代リーダーの育成プログラムを設計する際、この2つの役割の違いを明確に理解し、カリキュラムに反映させることは極めて重要です。
リーダーシップの主な役割は、組織が向かうべき方向性や中長期的なビジョンを示し、メンバーを鼓舞して新しい価値を創造することです。これに対してマネジメントは、既に設定された目標を確実かつ効率的に達成するために、資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を適切に配分し、業務プロセスを管理・維持する機能を指します。
言い換えれば、リーダーシップが「何をすべきか(What)」や「なぜするのか(Why)」を問いかけ、組織の変革を促進するのに対し、マネジメントは「どのように実行するか(How)」を問い、組織の安定と効率を追求します。現代のように変化が激しく、将来の予測が困難なビジネス環境(VUCAの時代)においては、既存の枠組みを維持・管理するマネジメント能力だけでは不十分です。
未知の課題に対して明確な方向性を打ち出し、組織全体を力強く引っ張っていくリーダーシップの要素が、これからのすべての管理職に強く求められているのです。この違いを明確に意識することで、自社においてどのような人材育成アプローチが必要なのかがより具体的に見えてくるでしょう。
リーダーシップの具体例と種類
リーダーシップには多種多様な定義があり、数多くの分類が存在します。ここでは、代表的なリーダーシップの種類について8つ紹介します。自分自身に合うリーダーシップ像は、おかれた立場や取り巻く状況によって様々です。どのリーダーシップが自分の個性や強みに合致しているかを考えてみましょう。
民主的リーダーシップ
民主的リーダーシップとは、言葉通り組織のメンバーが意思決定のプロセスに参画し、合意形成を図るスタイルです。民主的リーダーシップには、メンバーの心理的安全性を確保し、誰もが自由に意見を出せる雰囲気作りが重要となります。
また、ディスカッションや対話などを通した意思決定に参加しやすい環境づくりも求められるでしょう。ドイツ出身の米国の心理学者レヴィンは、自らが提唱した3つのリーダーシップの中で、 作業の質・メンバーの満足度・リーダー不在時の持続性などの観点から、民主型リーダーシップが最も優れていると結論付けています。(ただし作業量では独裁型が上回ります)
民主的なリーダーシップの下では、メンバーは自分の意見が尊重されていると実感し、組織への帰属意識を大きく高めるでしょう。また、組織全体での定着率の向上や、仕事に対する士気を高める効果も期待できます。
しかし、ディスカッションや対話などを通して組織内での合意形成を図る必要があります。そのため、どうしても意思決定が非効率となり、時間とコストがかかるという側面もあります。緊急を要する事態には不向きな場合があります。
独裁的なリーダーシップ
独裁的なリーダーシップを掲げるリーダーは、メンバーに対して明確な指示と目標を与えます。このケースでは、リーダーとその周辺の幹部クラスにあらゆる決定権が集中しているため、トップダウン型の意思決定がされるのが一般的です。
多くの場合、メンバーにはトップから降りてきた指示を忠実にこなすことが求められています。また、独裁的なリーダーシップの下では、意思決定が迅速に行われるため組織全体でこなせる仕事量は増え、短期的にはパフォーマンスの向上を期待できます。
独裁的なリーダーは、明確で直接的なコミュニケーションを行うため、メンバーにとってはやることが明確になり、業務上の迷いが少なくなります。また、トップダウン型で意思決定がなされるため、組織全体を迅速に動かすことができるでしょう。
しかし、組織における責任を全て自分自身が負っているという自覚があるため、リーダー自身が多大なストレスを感じる傾向にあります。また、組織の方向性がリーダーの価値観に過度に依存しているため、組織の柔軟性が欠如し、仮にミスリードした場合、現場の混乱は言うまでもありません。
自由放任的リーダーシップ
自由放任型リーダーシップは委任型リーダーシップとも呼ばれ、問題のない範囲でメンバーに裁量を与え、自分自身のスタイルで仕事を進めることを推奨するリーダーシップです。これは、管理を徹底する独裁的なリーダーシップとはまさに正反対の概念といえるでしょう。
自由放任型のリーダーが率いる職場では、仕事に前向きに取り組み、常に創意工夫を続けるタイプの人が力を発揮できるでしょう。一方で、リーダーとメンバーのコミュニケーションが不足してしまうと、メンバーに対する統制がとれなくなるというリスクもあります。
メンバーの独創性や創造性が育つ機会を与え、リラックスした職場環境を提供します。また、多くの場合はメンバーの定着率を高めるという効果もあるでしょう。研究開発部門など、高い専門性が求められる環境で有効です。
その反面、経験の浅い社員が組織内にいる場合は注意が必要です。新人には丁寧な指導と実践的なサポートが必要なため、リーダーに放任されてしまうと自分が組織から見放されていると感じてしまう可能性があります。
官僚的なリーダーシップ
官僚的なリーダーシップにおいては、メンバーに対してあらかじめ定められたルール、手順を正確に順守して業務を進めることを求めます。また、メンバーが手順通りに仕事を進めることを厳しく求め、手順からの逸脱を許さないという点では、独裁型のリーダーシップに近いと考えることができるでしょう。
これは、金融、医療などの規制が厳しく、ミスが許されない業界において効果を発揮するリーダーシップです。官僚的リーダーシップは厳格なルールや規制に従って手順通りに業務を進める必要がある組織では効率的です。
また、感情が入り込む余地がないため、確実に与えられた業務をこなしていくことができます。しかし創造性や独創性が入り込む余地がないため、一部のメンバーは非常に息苦しさを感じてしまう可能性があります。
さらに、組織に変化をもたらさないため、新たな環境への適応が求められる状況においては、官僚的リーダーシップが不利に働くでしょう。現在の不確実な状況やデジタルの活用される時代に、人間よりも機械の方が優れているのではないでしょうか。
コーチングリーダーシップ
コーチングリーダーシップとは、文字通りコーチングの心得を持ったリーダーが発揮するリーダーシップです。コーチングとは、メンバー1人ひとりの目標達成に伴走し、自発的な成長を促すスキルです。
メンバーが自発的に目標達成に向かって動くようになれば、組織全体のパフォーマンスも大きく上がるでしょう。このタイプのリーダーシップは、リーダーとメンバーの双方にとって最もメリットが多いとされています。
しかし、他者の考えを引き出すコーチングの技術そのものが一朝一夕で身につくものではないことから、ビジネスの現場であまり活用されていないのが実情です。仮にコーチングの優れたスキルを持っていれば、メンバーの強みを的確に把握し、新たなスキルの開発につなげることができます。
その結果、個々のメンバーが自分自身に自信を持つようになり、活気のある環境を実現できるでしょう。コーチングリーダーシップには多くの利点がある一方で、ヒリヒリとした議論やメンバーとのコンフリクト(衝突)が求められるシーンでは本領を発揮できません。緊急の指導や指示が必要なメンバーにおいては別のアプローチが求められます。
サーバントリーダーシップ
サーバントリーダーシップとは、メンバーに対する奉仕を前提にした上でメンバーを導くことに主眼を置いたリーダーシップ像です。サーバントとは、日本語で奉仕者や使用人という意味であり、このことからリーダーからメンバーへの奉仕が重んじられていることが分かります。
リーダーの尽力によって、チームメンバーが働きやすい環境が実現すると組織全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。また、サーバントリーダーシップにおいては、メンバーから厚い信頼が得られる可能性があることも特筆すべき点です。
サーバントリーダーシップにおけるリーダーは、メンバーへの無私の奉仕を通じて、メンバーの忠誠心、仕事への士気、生産性を高めることが可能です。また、メンバーが力を発揮できる環境づくりを重視することから、メンバーの能動的な試みや主体的なアクションを促進することができます。
ただサーバントリーダーシップにおけるリーダーは、自分のことよりもチームへの奉仕を優先させる傾向にあるため、リーダーに負荷が集中し、疲弊して燃え尽きてしまうリスクがあります。一歩間違うとサーバントと標榜しながら、メンバーに責任や実行を押し付けている(実質的な放任状態になっている)かもしれません。
ビジョナリーリーダーシップ
ビジョナリーリーダーシップとは、メンバーに中長期的なビジョンを示すことによって刺激を与え、組織に変革をもたらせるリーダーシップです。リーダーが掲げる新しいアイデアに対してメンバーからの信頼を獲得することにより、変革に向けて強力な推進力を獲得することができます。
中長期的なビジョンに基づく先見の明を持ったリーダーは、組織において強力な絆を確立し、一丸となって目標に向かっていくことができます。ビジョナリーリーダーシップを持つとされるリーダーは、自分が掲げたビジョンに納得感を持ってもらうために、組織のメンバーとのコミュニケーションを重視し、常に信頼関係を育むよう努めています。
ビジョナリーリーダーシップは、中長期的なビジョンが組織全体で共有されることにより、組織に強固な一体感をもたらすことができます。特に、時代遅れの組織風土や慣行に対して抜本的な改革を行いたい際に、ビジョナリーリーダーシップの真の効果を発揮するでしょう。
ビジョナリーリーダーシップによって率いられる組織では、中長期的なビジョンが極めて重視されるため、直近で差し迫っている課題や短期的な目標が軽視されてしまうリスクがあります。つまり、視座の高さゆえに、現実にある壁や問題が見えにくい一面もあります。また信頼関係で手にしたメンバーのモチベーションを思いのままにしてはいないでしょうか?
ここで紹介した分類のほかにも、心理学者ダニエル・ゴールマンが提唱した「6つのリーダーシップスタイル(ビジョン型〔権威主義型〕、コーチ型、関係重視型〔親和型〕、民主型、ペースセッター型〔先導型〕、強制型〔指示命令型〕)」など、アプローチの仕方は多岐にわたります。組織のフェーズやメンバーの成熟度に応じて、これらのスタイルを柔軟に使い分けることが、現代のリーダーには求められています。
以下の表は、代表的なリーダーシップの種類とその特徴を簡潔にまとめたものです。
| リーダーシップの種類 | 主な特徴とアプローチ | メリット | デメリット・注意点 |
| 民主的 | メンバーを意思決定に参画させ、合意形成を図る | 帰属意識や士気の向上、定着率の改善 | 意思決定に時間とコストがかかり非効率 |
| 独裁的 | トップダウンで明確な指示と目標を与える | 迅速な意思決定、短期的なパフォーマンス向上 | リーダーの疲弊、組織の柔軟性の欠如 |
| 自由放任的 | メンバーに裁量を与え、自主性を尊重する | 創意工夫の促進、プロフェッショナルの力の発揮 | 経験の浅い社員の迷い、統制の喪失リスク |
| 官僚的 | 定められたルールや手順の厳格な順守を求める | 確実な業務遂行、ミスが許されない環境での安全性 | 創造性の阻害、環境変化への適応力の低さ |
| コーチング | 対話を通じてメンバーの自発的な成長を促す | 個人の自信向上、長期的なパフォーマンスの底上げ | スキル習得が困難、緊急時の対応には不向き |
| サーバント | メンバーへの奉仕を前提に環境を整え導く | メンバーからの厚い信頼、能動的なアクションの促進 | リーダーへの負荷集中、燃え尽き症候群のリスク |
| ビジョナリー | 中長期的なビジョンを示し、組織に変革をもたらす | 強力な推進力の獲得、組織の一体感と変革の実現 | 短期的な課題の軽視、現実の壁が見えにくくなる |
優れたリーダーシップを持つ人の具体的な行動例
リーダーシップの理論や種類を理解したとしても、それを実際のビジネスの現場でどのように実践すればよいのか悩む人事担当者は少なくありません。リーダーシップは抽象的な精神論ではなく、日々の具体的な「行動」として現れます。大企業において次世代リーダーを育成・評価する際は、以下の6つの具体的な行動例を指標として活用することが非常に有効です。
1つ目の行動は「仕事を適切に任せる」ことです。優秀なリーダーは、プレイングマネージャーとして全てを自分一人でこなそうとはしません。各メンバーの適性、現在のスキルレベル、そして仕事へのやりがいを注意深く見極めた上で、少し背伸びをすれば届く適切な業務を割り振ります。これにより、メンバーの成長機会を創出し、中長期的なチーム全体の生産性を向上させます。
2つ目の行動は「具体的に褒める」ことです。日頃からメンバーの言動やプロセスを細かく観察し、目標達成に貢献した良い行動や成果を、タイミングを逃さず具体的に伝えます。ポジティブな評価はメンバーの自己効力感とモチベーションを大きく高めます。また、改善を促すためのネガティブなフィードバックを行う際にも、頭ごなしに否定するのではなく、最後は必ず期待を込めて褒めることで、相手の前向きな姿勢を維持させます。
3つ目の行動は「思考することを促す」アプローチです。メンバーが業務上の壁に直面した際、経験豊富なリーダーが直接答えを教えるのは簡単ですが、それではメンバーの自律的な問題解決能力は育ちません。優れたリーダーは、コーチングスキルを用いて「あなたはどう思うか?」「別の視点はないか?」といった適切な問いかけを行い、メンバー自身の中から答えを引き出すサポートに徹します。
4つ目の行動は「個人に合わせた指導をする」ことです。過去の画一的なマネジメント手法や、リーダー自身の過去の成功体験を無意識に押し付けるのではなく、多様なメンバーそれぞれの価値観、能力、抱えている個人的な課題に寄り添います。一人ひとりの「やりがい」の源泉が異なることを理解し、個別にカスタマイズされた指導を実践します。
5つ目の行動は「明確な役割を持たせる」ことです。チームが混乱なく共通の目標に向かって前進できるよう、各メンバーに対してチーム内で期待される役割と責任範囲を明確に伝達します。役割が曖昧な状態では、業務の重複や責任の押し付け合いが発生します。役割を明確化することで、メンバーは自分の立ち位置を正しく理解し、迷いなく業務に集中できるようになります。
6つ目の行動は「適宜フィードバックを行う」ことです。問題が発生した際や、逆に素晴らしい成果が出たタイミングを逃さず、客観的かつ具体的な事実に基づいて即座にフィードバックを実施します。このとき、リーダーからの一方的な指摘や説教で終わらせるのではなく、相手の背景や言い分に耳を傾ける「傾聴」の姿勢を持つことが、強固な信頼関係の構築に直結します。
優れたリーダーシップを持つ人に備わる姿勢
リーダーシップは表面的な行動やスキルの習得だけでは完成しません。その根底にある「姿勢(あり方)」や「マインドセット」が、リーダーシップの質と周囲への影響力を大きく左右します。リーダーとして長期間にわたり周囲に良い影響を与え、組織を牽引し続けるためには、以下のような特有の姿勢が備わっている必要があります。
まず注目すべきは、「理感一致(りかんいっち)」の姿勢です。これは、組織からリーダーに対して期待される論理的な役割や業績目標(理)と、リーダー自身の内面から湧き出る想いや経験に基づく「自分らしさ(感)」を高い次元で一致させる考え方です。組織の歯車としてただ指示をこなすのではなく、自分らしさを組織の成果に結びつけることで、リーダー自身に周囲を巻き込むブレない強い推進力が生まれます。
次に、メンバーの無限の可能性を信じる「肯定的なコミュニケーション」の姿勢です。上司からの高い期待がメンバーの実際の成果を向上させる「ピグマリオン効果」や、周囲から関心を向けられることでモチベーションが上がる「ホーソン効果」など、心理学的なメカニズムを感覚的・理論的に理解しています。これに基づき、日頃からメンバーの欠点を探すのではなく、強みに焦点を当てたポジティブな声掛けを実践しています。
さらに、メンバーに対する「心理的・環境的支援」を同時に両立させる姿勢も極めて重要です。メンバーが業務に対して抱える不安やプレッシャーを取り除き、自信を持たせる心理的なサポート(メンタルケア)を行うと同時に、チーム内のギスギスした人間関係の改善や、非効率な業務プロセスの見直しといった物理的な「環境づくり」にも積極的に介入し、働きやすい職場を自ら創り出します。
組織の理念を「自分事化」し、日々の業務で体現し続けることも優れたリーダーの姿勢です。短期的な部門の利益や個人の損得勘定に囚われることなく、長期的な視野で組織の理念やパーパスに基づいた行動を貫きます。また、経営層から降りてきた抽象的な方針や全社目標をただの「伝書鳩」として部下に下ろすのではなく、自らの頭でその意義を深く咀嚼し、メンバーが心から納得して共感できる「自分の言葉」に翻訳して伝える高いコミュニケーション能力を持っています。
最後に、リーダーが一方的に正解や指示を与えるのではなく、メンバーと共に「問い」を立てる共創的な姿勢です。変化が激しく正解が存在しない現代のビジネス環境においては、リーダー一人で全ての解決策を見出すことは不可能です。だからこそ、権威を振りかざすのではなく、メンバーと同じ目線に立ち、一緒に悩み、ディスカッションを通じて新たな価値や解決策を創り出すフラットな関係性の構築が求められているのです。
「リーダーはこうあるべき」という固定観念への疑問
リーダーはこうあるべきだという強固なリーダーシップ論が、世間一般には溢れています。しかし、実際にはこのような一般論で説かれる伝統的なリーダー像が、必ずしも正しくないことがあります。特に、リーダーは常に一人が担うべきとされる風潮がありますが、場合によっては複数人でリーダーを担う方がチームとして良い方向に進むこともあるでしょう。ここでは、一般的なリーダーシップ論が当てはまらないケースについてみていきます。
状況や環境による複数リーダー体制の有効性
本来、リーダーは一人に委ねられるケースが多いですが、場合によっては複数のリーダーがいた方が良いこともあります。もし、リーダーが一人だけである場合、一人に決定権が委ねられ、判断を誤った際の軌道修正が難しくなるでしょう。また、リーダーとしての業務が集中してしまい、疲弊する可能性もあります。
リーダーを複数人立てた場合は、相互に協力しながらより広い視点で情報収集と判断を行うことが可能です。また、それぞれのリーダーが持つ知識や経験、スキルといった強みを生かすことができるでしょう。さらにリーダーの一人が離脱せざるを得なくなったとしても、チーム全体の動きが止まらないというメリット もあります。
自分の強みを発揮できるケースが変えれば全員がリーダーになれる
自分自身の強みが発揮できるリーダーシップスタイルを見つけるためには、自分が持つ強みを磨き、それが発揮できる課題とケースを探すことが重要です。
そのためにはまず、自分が置かれた状況や組織全体で目指すべき方向性に対して、自分自身の個性や強みが適切な形で発揮できるか照らし合わせてみましょう。後述の通り、リーダーシップのタイプやこれらを発揮するのに必要なスキルは多岐に渡ります。このことから、全ての人にリーダーになる素質はあるといえるでしょう。まずは自分が自信を持てる専門性やリーダーシップのスタイルを探すことから始めることが重要です。
リーダーシップ発揮に必要なスキルの具体例
リーダーシップの円滑な発揮は、コミュニケーションが非常に重要な要素となります。もちろん、行動力や迅速な意思決定なども必要ですが、周囲に伝える手段がなければ意味がありません。どれほど崇高なビジョンを持っていても、それがメンバーに伝わり、共感を呼ばなければ組織は動きません。
また、以下に示すコミュニケーションスキルは、生まれ持った個性や素質とは異なり、体系的なトレーニングによって誰でも身に付けることができます。大企業において人材育成プログラムを企画する際、これらの具体的なスキルセットをカリキュラムに組み込むことが非常に効果的です。
ディスカッション
ディスカッションとは、一つのテーマに対して意見を出し合うことにより、全員が納得できる形での結論を見いだす取り組みのことです。ディスカッションは、後述するディベートとは違い、意見の正しさを競い合って勝敗を決めるわけではないことが特徴です。
ディスカッションは特定のテーマにおいて多様な視点から深い議論ができるため、質の高い意思決定の手段として役立ちます。リーダーには日々、困難な意思決定を行う機会が数多く訪れるでしょう。組織の総意をまとめ、全員が同じ方向を向くためには、リーダー自身がディスカッションのスキルを持つ必要があります。
対話
対話とは、単なる雑談ではなく、意見の違いがあることを前提にした上で、あるテーマに基づいて深く話し合うことを指します。組織には様々な文化的背景、価値観、事情を持ったメンバーがいるため、組織としての方向性を決めるためには、異なる意見をすり合わせるメンバーとの対話が欠かせません。
一方、それ相応の職権がリーダーに与えられていれば、面倒な対話を省いてリーダーの一存で組織の方向性を強制的に決めることはできます。しかし、意見を無視されたと感じたメンバー達は決して主体的に行動せず、結果として組織としてのパフォーマンスが大きく下がってしまう可能性があるので、優れたリーダーには、対話のスキルも強く求められるのです。
ディベート
ディベートとは、賛否両論がある特定のテーマについて肯定側と否定側に分かれ、それぞれ与えられた役割に沿って論理的に議論する手法です。肯定と否定に関わらず、客観的な根拠を用いて自分たちの意見を相手に認めさせることがディベートの目的となります。
ディベートにおいては、意見の正しさを証明する正確なデータを集め、論理的に説明しなければなりません。ディベートのトレーニングを通して、ビジネスで必要な論理的思考力(ロジカルシンキング)や限られた時間で相手を説得するスキルが飛躍的に磨かれます。
リーダーは組織内のメンバーや、顧客・取引先といった組織外のステークホルダーを論理的に説得する場面に頻繁に直面します。そのような重要な局面で、ディベートで培った論理的思考力が間違いなく役に立つでしょう。
プロジェクトファシリテーション
プロジェクトファシリテーションとは、プロジェクトの状況に応じて柔軟に方向修正しながら、メンバーの能力を最大限に引き出すための取り組みを指します。プロジェクトファシリテーションを行う前提として、プロジェクトの最終的な目的と、そこに至る遂行の道筋が明確にメンバー間で共有されている必要があります。
また、メンバーとの十分かつ円滑なコミュニケーションを継続的に行うことも重要です。近年はAIやIT技術の急激な発達などにより、社会や市場が変化するスピードが異常なほど上がっています。そのため、当初の計画に固執するのではなく、変化を前提としたプロジェクトの進め方が求められているのです。
このような不確実性の高い状況下でリーダーシップを発揮するためには、プロジェクトファシリテーションは次世代リーダーにとって不可欠なスキルといえるでしょう。
ストーリーテリング
ストーリーテリングとは、相手により深く印象を与えるために、伝えたい内容を単なる事実の羅列ではなく、ストーリー(物語)に仕立てる手法です。人間は物語に感情移入する生き物であるため、ストーリーテリングの手法を使うことで、伝えたい内容が聞き手の記憶に残り、深い共感を得やすくなるという絶大なメリットがあります。
リーダーはチームの困難な目標を達成するために、メンバーの心を動かし、行動を促す必要があります。しかし、ただ数字やタスクを指示するだけでは不十分であり、メンバーがその仕事の意義に十分に納得感と共感を持った状態で行動に移してもらうことが重要です。チームメンバーに主体的に、かつ情熱を持って動いてもらうための一つの強力な手段として、ストーリーテリングが極めて有効です。
レトリック
レトリックとは、日本語では「修辞法」と呼ばれ、コミュニケーションにおいて相手を説得あるいは納得させるための手法やテクニックを指します。具体的には、比喩、反語、倒置法などがレトリックの手法として挙げられます。
レトリックは一般的に、大勢の聴衆に納得感を与え、感情を鼓舞するための手法として用いられ、米国大統領の演説や歴史的なスピーチなどで意図的に使われることが多いです。特に、ありのままの平易な言葉で伝えると相手に自分の意図や熱量が十分に伝わらないと判断した際に、レトリックを使うとより説得しやすくなるでしょう。
一方で、レトリックは言葉の装飾であるため、語り手の都合が良い形に話す内容を変えてしまう側面もあるため、場合によっては事実を歪める詭弁になりうるという点には十分な注意が必要です。高い倫理観を持って適切に活用することがリーダーには求められます。
組織内でリーダーシップを高める具体的な方法
企業が自社の社員に優れたリーダーシップを発揮してもらうためには、個人の生まれ持った資質に頼るだけでなく、組織としての戦略的かつ意図的な育成アプローチが不可欠です。大企業の人事部門や研修担当者が取り組むべき、リーダーシップ能力を高めるための具体的な方法と、その背景にある課題について解説します。
弊社ソフィアの調査では、2024年08月21日~09月17日にかけて従業員数1,000人以上の企業に勤める496名を対象に実施した「フル_IC実態調査2024_材料」、および2025年10月に623名を対象に実施した「フル_IC実態調査2025」において、現代の大企業が抱える深刻なコミュニケーション課題が浮き彫りになりました。調査結果によれば、リモートワークなど働き方の多様化により、従来の対面を前提とした情報共有や意思疎通の手法が限界を迎えており、見直しが急務となっています。また、組織の多層化や部門間の分断(サイロ化)、ナレッジの分散や活用不足といった構造的な問題が、リーダーシップの円滑な発揮を大きく阻害していることが示唆されています。
このような環境下でリーダーシップを高めるための1つ目の方法は、「階層別・テーマ別の体系的な研修プログラムの導入」です。例えば、若手社員向けには自らを律するセルフリーダーシップやロジカルシンキングの基礎を、中堅層や管理職候補には変革型リーダーシップ、メンバーの思考を促すコーチングスキル、そして対話の基盤となる1on1ミーティングのスキルを学ぶ研修を提供します。経済産業省が定義・提唱した『社会人基礎力』において、社会人基礎力として「働きかけ力」の重要性を説いており、体系的な研修を通じて、リーダーに必要な知識とフレームワークをインプットすることが第一歩となります。
2つ目の方法は、「アセスメント(評価)と客観的なフィードバックの活用」です。リーダーシップは主観的な評価になりがちであるため、360度評価(多面評価)やエンゲージメントサーベイなどを導入し、客観的な指標でリーダーの現状の振る舞いを可視化します。弊社ソフィアの調査では、大企業において1on1やエンゲージメントサーベイといったマネジメント施策の導入自体は進んでいるものの、実際の運用や活用のあり方には組織・部門ごとに大きな「ばらつき」が見られることが課題として指摘されています。制度を導入して終わりにせず、評価結果をもとにした定期的なコーチングやフォローアップ研修を行うことが、真のリーダーシップ開発につながります。
3つ目の方法は、「インフォーマルなコミュニケーションの再評価と環境整備」です。リーダーシップは公式な会議や面談の場だけで発揮されるものではありません。弊社ソフィアの調査では、社内イベントや「雑談」などの非公式なコミュニケーション(インフォーマルコミュニケーション)を含め、関係性構築の手段が多様化しており、それぞれの役割を組織内で再整理する必要性が高まっていることが明らかになっています。リーダーがメンバーと自然な形で対話し、心理的安全性を構築できるようなツール(社内SNSやチャットツールなど)の活用や、オフィス環境の整備を人事部門が主導して行うことが、間接的かつ強力にリーダーシップの発揮を後押しします。
以下の表は、弊社ソフィアが実施したインターナルコミュニケーション実態調査の概要と、そこから導き出されたリーダーシップ育成上の課題をまとめたものです。
これからの時代に必要なリーダーシップの具体例
理想とされるリーダーシップ像は時代の要請や社会環境の変化によって常に変わります。ここでは、最近話題となっている、現代の複雑で不確実なビジネス環境において特に注目されている新しいリーダーシップについていくつか具体例を紹介します。
デジタルリーダーシップ
AIやIT技術の爆発的な発展に伴い、DX(デジタルトランスフォーメーション)を始めとしたデジタルを活用したビジネスモデルの変革や業務改善の試みがより一層重要になっています。デジタルが必要されているからこそ、単にシステムを導入するだけでなく、技術やテクノロジーをもった人間がビジョンを創るのです。
そのため、これからの時代のリーダーには、デジタル技術そのものや最新の動向について深く理解し、組織のデジタル化を促進することが強く求められます。デジタルリーダーシップを効果的に発揮するには、将来的なビジョンに基づき、DXによって実現する組織の具体的な将来像をメンバーにわかりやすく示すことが重要です。
また、DXにはこれまでの慣れ親しんだ業務プロセスの破壊や、価値観の根本的な変革も伴うため、変化を恐れ反対するメンバーとの粘り強い対話を始めとした、高度なコミュニケーションに関するスキルも必要になるでしょう。デジタルと人間の心理の両方を理解するバランス感覚が問われます。
インクルーシブリーダーシップ
インクルーシブリーダーシップとは、メンバーの多様な価値観を受け入れた上で、一人一人が持つリーダーとしての能力を活かし、組織全体のパフォーマンス向上につなげる考え方です。ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)が企業の生存戦略となる中で不可欠な概念です。
イノベーションのカギとして組織の多様性が重要視されつつある中で、リーダーには異なるバックグラウンド、文化、価値観を持つメンバーに対する寛容さが強く求められます。また、多様なメンバーの個性を深く理解し、彼らが心理的障壁を感じることなく、自然体で力を発揮できるような環境作りも重要な責務です。
インクルーシブリーダーシップにおけるリーダーは、多様なメンバーの意見を否定せずに聴く傾聴力、自らが規範となり行動する力などを備えていることが求められています。マイノリティの意見であっても、それが組織のイノベーションの種になり得ると信じて引き上げる姿勢が必要です。
デザイン思考リーダーシップ
デザイン思考は、ある製品やサービスの使い手の立場に立って、潜在的なニーズを把握する手法です。デザイン思考では物事の原因と結果といった客観的で論理的な側面に留まらず、使い手の感情といった主観的な部分にも踏み込むことが大きな特徴です。
テクノロジーの進化により、変化の激しい現代においては、消費者が求める商品やサービスも刻々と変化し、機能的な価値だけでは差別化が難しくなっています。リーダーには、従来の延長線上にある改善ではなく、デザイン思考のフレームワークに基づいた徹底的な顧客起点の発想が求められるでしょう。メンバーに対しても、常にユーザーの感情に寄り添うアプローチを推奨し、失敗を恐れずプロトタイピング(試作)を繰り返す文化を根付かせる必要があります。
グローバルリーダーシップ
現代のビジネスでは、国境という概念がなくなりつつあり、グローバル化が急速に進んでいます。そのため、多くの企業では国内市場にとどまらず、国際的に活躍できるグローバル人材を強く求めています。
当然ながら組織のリーダーにも、激化する国際競争に対峙する上でグローバルな視点が必要不可欠になるでしょう。グローバルリーダーシップにおいては、単なる語学力に留まらず、異文化理解や地政学的なリスクマネジメントなど多彩なスキルが必要です。
多様なバックグランドを持つ多国籍なメンバーを指揮することから、前述したインクルーシブリーダーシップの側面も強く必要になるでしょう。また、今後の複雑な国際情勢を見通し、多様な価値観を持つメンバー全員が共感できる普遍的で明確なビジョンを示すことも重要です。
まとめ
リーダーシップはビジネスの現場で頻繁に出現する用語ではあるものの、非常に抽象的な概念であるため、人や組織によって解釈が異なります。実際、本記事で見てきたように、リーダーシップにはマネジメントとは異なる明確な役割があり、意思決定のアプローチによって数多くの種類が存在します。また、コミュニケーション能力を中心に、求められるスキルや日々の行動例も多岐に渡ります。
しかし、多様なリーダーシップの形があるがゆえに、旧来の強権的なリーダー像に縛られる必要はありません。自分が置かれた環境において、自分の個性と強みが発揮できれば誰にでもリーダーになる資質があるといえるでしょう。
人事部門長や研修企画担当者の皆様は、本記事で紹介した具体的な行動例や理感一致の姿勢、そして弊社ソフィアの調査データが示すコミュニケーションの課題を踏まえ、自社の状況に合わせた効果的な次世代リーダーの育成プランをぜひ設計してみてください。意図的な環境整備と継続的なトレーニングが、組織を力強く牽引するリーダーを生み出す鍵となります。









