アクティブリスニングとは?期待できる効果や実践的なポイントを紹介

近年のビジネスシーンで注目を集めているコミュニケーションスキルに、アクティブリスニングというものがあります。アクティブリスニングとは、聞き手側が話し手の感情を引き出し、話し手側が自分の力で問題解決ができるようサポートする傾聴を指しています。本記事では、アクティブリスニングの概要・効果・注意点などについて解説し、ビジネスで役立つコミュニケーションの方法を紹介します。

アクティブリスニングとは

アクティブリスニングとは、聞き手側が話し手の感情を引き出し、話し手側が自分の力で問題解決ができるようサポートする傾聴を指します。日本語では傾聴とも訳され、企業・組織の中の人間関係を円滑にするために必要なコミュニケーション方法の1つとして、近年のビジネスシーンで注目されています。

只、聞くのではなく、積極的・能動的(アクティブ)に、話し手の言語・非言語を含めて洞察するのがアクティブリスニングです。

アクティブリスニングの起源は、現代のカウンセリングの研究手法のひな形を作った米国の臨床心理学者カール・ロジャースが提唱したカウンセリング理論です。カール・ロジャースが実践していたカウンセリング理論は、現在ではビジネス・スポーツ・医療など、さまざまな領域で活用されています。

アクティブリスニングは、ロジャースのカウンセリング理論の基礎である「ロジャースの三原則」が土台となっています。以下の3つの要素を押さえておくと、アクティブリスニングがどのようなものなのか理解が深まるでしょう。

● 自己一致

● 無条件の肯定的配慮

● 共感的理解

自己一致

「自己一致」は、聞き手側がありのままの自分を受け入れ、心理的に安定して話し手の話を聴くために必要な状態です。アクティブリスニングする側自身が不安定であれば、話し手の話を素直に聞けなくなります。話をする話し手を受け入れるためには、まずは自分自身が自分を受け入れ、自己一致する必要があります。これは、別の言い方で「純粋性」と言われるものです。

簡単に言えば、アクティブリスニングする側が、話し手に対して、自分の良く見せたり仮面をつけた状態では、話し手に迫ることはできないため、仮面を外すという意味です。私たちは、社会生活の中で意識・無意識に関わらず多くの仮面をつけています。ここで言う仮面を“バイアス” と言い換えることもできるでしょう。

全ての仮面を外し完全な自己一致はなかなか難しいでしょう。それでも自己一致していない不完全さを認め、それも含めて自分を受け入れることで、不安定な心理を落ち着かせる必要があります。

また、自己一致するためには、自分の気持ちや感情を丁寧に伝えることも効果的です。これは、話し手の気持ちや感情を聴きたいという素直な気持ちにおいては、自己一致している状態とも言えます。

アクティブリスニングでは、聞き手が話し手の感情や気持ちを完全に共感することは難しいと考える一方で、聞き手が積極的に話し手の話の内容や態度に注意を払うことで、話し手が胸襟を開くということもあるということが重要です。言葉だけに反応するのではなく、話し手の思考や感情に目を向けていれば、聞き手側の質問も変化してきます。

現場にいるときは、五感(視覚や聴覚など)を使って話し手の話に集中し、話し手に対して全神経を傾ける態度が、自分の姿勢として話し手に伝わると言えます。

1on1や面接の場で、話し手が喋る時間よりも、聞き手が喋る時間の方を少なくしましょうと言われます。これは、カール・ロジャースの自己一致の前提に基づくものです。ただし、自己一致は行動を決定するものだけではなく、アクティブリスニングの姿勢や考え方も重要であるということを確認しておきましょう。

「知ったかぶり」や「同調」という安易な自己一致は避けるべきということです。リスニングする話し手の心理や思考と完全にシンクロすることは不可能です。そのため、自己一致しているかどうかを自信を持って話し手に打ち明け、話し手を理解しているか確認することが重要です。

無条件の肯定的配慮

「無条件の肯定的配慮」は、話し手に対し、聞き手側が評価・好みといったジャッジを下さず、ありのままの話し手を受け入れて話を聴く姿勢のことです。たとえば、話し手が社会的・モラル的に反するような発言をしたとしても、感情的に拒否・否定などはせず、その発言に至るまでの背景や話し手の想いについて肯定的な姿勢で聞きます。発言そのものではなく、発言までのプロセスに注目します。

簡単に言えば、常に自分の意見を保留することが大切です。中立で批判的でない態度を持つことで、話し手は安心して自分の考えを話せるようになります。そうすることで、会話が嫌な思いをすることなく、信頼できる場になります。

他人の話を聞くときに自己の判断を保留する方法は以下のようなものがあります。

・話し手や状況に共感を表現すること

・様々な人や文化について学ぶこと

・他人を受け入れる練習をすること

・自分が話し手を批判している瞬間を認識し、その考えを止めること

この無条件とは、聞き手側のバイアスをできるだけかけないことを指しています。誰しもバイアスのスイッチを切って物事や言葉を認識したり判断したりすることはできません。従って、肯定的な配慮ができるように、自身のバイアスに目に向ける必要があるということです。

現象学のエトムント・フッサールは、私たちが認識しているものには、全て、バイアスやフィルターが存在しており、本質的には、モノや話し手を認識するためには、バイアスやフィルターという自己認識に着目する必要があると言いました。常に、何かを見たり聞いたりして認識する時に、「判断保留(エポケー)」を心がけることで、見えてくるものがあると言っています。

現在の日本企業でも、多様性をコラボレーションの機会に変える必要があります。そのためには、自身のバイアスを認識し、無条件の状況を創り出すことが求められ、多様性を価値に変えるための手がかりとなります。

共感的理解

「共感的理解」は、聞き手が話し手側の立場になり、感情に共感しながら話し手を理解しようとする姿勢のことです。この時に重要なのが、お互いの価値観・主義主張などはとりあえず横に置いておき、話し手の目線に合わせ、見ている世界を共有するように寄り添うことです。立場や状況が違う場合も想像力を働かせ、できるだけ話し手の立場に近づくことが大切です。

また、話し手が話した内容を自分の言葉で返すことが大切です。これは積極的な傾聴のテクニックで、話し手の考えや感情を正確に理解するのに役立ちます。これにより、誤解が最小限に抑えられ、自分の意見が尊重され、理解されたことが話し手に伝えられます。

さらに、聞いたことを反映する方法の1つとして、「言い換え」があります。

たとえば、部下(話す側)から「子どもが産まれたばかりで、仕事と家庭をどうすれば良いかわかりません」と相談があれば上司(聴く側)は「仕事」と答えれば良いでしょうか。または「家庭」と答えれば良いでしょうか。アクティブリスニングにおける共感は「子どもが産まれた状況の中で、うまく仕事と家庭をバランスが取れない状況にモヤモヤしている気持ちがあるかな?」と質問します。

上記は単純に話し手の言っていることを言い直しているだけかもしません。しかし、話し手の発言や言葉を借りながら、話し手の見えない情動や発言に至る感情をまず引き受けるという姿勢が伝わります。

ワークライフバランスという一般論的には整理されていることでも、各人の個別の事情においては、一般論だけで片付くものばかりではありません。そこの個別事情や個人性に踏み込んでいく姿勢を言い換えることで表出することが共感的理解です。

現代におけるアクティブリスニングの必要性

急速なテクノロジーの進化やグローバル化・多様化の波を受け、競争が激化している現代のビジネスシーンにおいて、時代に適合した優秀な人材を育成することは、すべての企業の急務です。アクティブリスニングは、そのような人材育成の領域でも注目されており、社員のマネジメント力・コミュニケーション能力の向上を期待されています。

現在、私たちは世界中で多様な人々のさまざまな価値観が交わるデジタル空間にいます。そのため、話し手の状況を理解することは、ますます難しくなっています。情報を整理することはできますが、人々の文脈や情報を結びつけ、状態を理解することは、AIや機械には難しい課題です。だからこそ、状況や状態を確認することが不可欠なのです。

さらに、現代社会はグローバル化・多様化が進んでおり、事業1つを取っても多様な人材が参加しているケースが増えています。しかし、急速な変化に現場は対応しきれておらず、多様なビジネスパーソン同士が相互理解をするための足場が十分にできているとは言えません。そのような状況もあり、物事の見方・考え方・文化的背景が違う者同士をまとめ、マネジメントしながら仕事を遂行できる人材が必要とされています。

ビジネスパーソンのマネジメント力に必要とされる要素には、傾聴力・質問力・フィードバック・関係構築能力などがあります。アクティブリスニングはとくに、傾聴力・質問力を鍛えることに有効です。これによりコミュニケーション能力が向上すると、ビジネスパーソン同士の連携が円滑になり業務の遂行が促進されます。

さらに、コミュニケーションが活性化されると、情報・意見の交換が盛んになります。他者の視点・考えが共有されることにより、ビジネスパーソンそれぞれが自身の業務や事業計画について多角度的に把握でき、仕事全体の質が向上することにも期待できます。

自社の社員同士だけでなく、社外のビジネスパーソンと仕事をする際など、あらゆる人間関係のマネジメント・コミュニケーションにおいて、アクティブリスニングの効力は発揮されます。

アクティブ(積極的に)リスニング(聴いている)とは何か?

アクティブリスニングとはその名称の通り、積極的に話し手の話を聴く姿勢のことですが、具体的に積極的に話を聞いているとはどのような状態なのでしょうか。

たとえば、ある社員が「一生懸命この業務を頑張ります」と発言したとしても、聞き手側には意図が十分に伝わっていない可能性があります。その発言がどのような文脈なのかは、声のトーン・表情・言語・状況などさまざまな背景にもよるため、言語(文章)としての意味だけでは本当の意図はわかりません。

さらに言えば、話し手自身が自分の言いたいことが理解できていない場合もあり、単に感情的な反応が言語として発せられている場合すらあります。たとえば、苦手な社員と一緒に仕事をしたくない無自覚の本心から、取ってつけたような業務の断りの理由を無意識に用意するなどです。

話し手の状況を理解するのは言葉だけや非言語だけでは難しく、聞き手の姿勢として過去の経緯や文脈を考慮し、想像力を使って対話にアプローチしないと深くは理解できません。その深層にある文脈や背景を聴くために、最大限の想像力で話し手の心理にアプローチしますが、話し手の発言に対しては自分の解釈や判断を入れず、判断や解釈を一時的に保留することが重要です。

私たちは、判断や解釈を無しに、物事や言語を認識することはできません。現代病で「ゲシュタルト崩壊」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、オーバーワークやストレスが強い状態が続くあまり、記号や言語のつながりや文脈が文章や一連の流れとして認識することができず、バラバラの単体でしか認識できない症状です。これは、コンピューターで言えばバグであり、内蔵されているプログラムが壊れていることと同じです。

私たちは、国籍や業界、組織または、成功体験、失敗体験の中で、ゲシュタルトという認知パターンを獲得しています。これはバイアスの正体であり、バイアスの効用です。このバイアスに着目し、解釈する前に、判断する前に、保留することは訓練が必要です。

本当の意味で、発言以外の話し手側の情報にアンテナを張り、言葉の外にある意味の補足材料をキャッチすることが必要だということです。その意味において、「ロジャースの三原則」が土台になっているアクティブリスニングは、話し手を肯定しながら共感し、話し手の立場に立って傾聴するため、言葉の外にある情報を敏感に受け取ることができます。

積極的に話を聴くとは、話し手の本当の意図を汲み取ることであり、聴き手側の胸襟を開き、感じたことを伝え、確認しながら対話と質問を重ね、話し手の意図を引き受けていくことで、自分の力で問題解決ができるようサポートすることです。それを、アクティブ(積極的に)リスニング(聴いている)と呼んでいます。

単純なコミュニケーションテクニックと言えばそれまでですが、カール・ロジャースの提唱するアクティブリスニングには、コミュニケーションの不可能への果敢な積極性が背景にあることを確認しておきましょう。

アクティブリスニングしないとコミュニケーションは成立しない

私たちの日常的に行っている聴く行為というのは表層的なやり取りが多く、混乱や誤解が生じるようなケースが多々あります。忙しくて挨拶が雑になっただけなのに、「あの人に良く思われていないのでは?」と早合点することがありますが、そのような誤解はまさに表面的なコミュニケーションです。言語や非言語のサインは目に見えますが、それは本質的な意味や解釈ではなく、あくまで手がかりに過ぎません。ハラスメントや過度な正確さから、言葉や外見などを制限することは、問題の是正には役立つ一方で、コミュニケーションを基本的に難しくする可能性もあります。一方で、アクティブリスニングは異なります。真の意味で話し手側の発言の意図を理解するには、意識的に言葉の外にある情報をキャッチするアクティブリスニングが必要になります。

私たちはコミュニケーションができていると考えがちですが、多くの場合、本当の意味でのコミュニケーションが取れているとは言えません。出社時や休憩時にはなんとなくいつもの流れで挨拶し、テンプレートのようなビジネス会話を行い、決まった形で雑談を繰り返していることが多いものです。

このような決まった型ばかりで会話を行い、アクティブリスニングを怠ると、本質的なコミュニケーションを成立させることができず、1on1などの対話や議論による問題の分析も曖昧なものとなりかねません。社員同士の劣化したコミュニケーションが横行するとはつまり、互いを尊重し合い情報を共有する土台が劣化している状態に等しく、組織としての統率力を損ない、企業としての力を失うことにもつながるリスクがあります。

言語や形を制限してもコミュニケーションは、同じコミュニケーションは繰り返させることはあり得ません。言語や記号レベルで発している内容は同義でも、非言語的コミュニケーションにおいては、微細な変化はあります。表情、こわばり、笑顔、など身体的動きや語気、声のトーンなど、日々違いがあります。この機微に神経を傾けることがアクティブリスニングです。

本来の人間のコミュニケーションとは、話し手の絶えず変化する声のトーン・表情・言語・状況を手がかりに、発言の裏にある意識的・無意識的な意図や感情を推察し、総合的に話し手の言葉を受け取ることです。ビジネス上の対話においても重要で、話し手が何に困っていてどのようなサポート・連携を必要としているのか察知するためには、アクティブリスニングによって話し手の発言の本当の意図を汲み取る必要があります。

これは、1on1や面接など、特別な場所だけやることではなく、日々の何気ない雑談でも、ルーティン化された進捗の会議でも一緒です。「気にかける」という姿勢こそ重要なのです。

言語や情報伝達だけの論理的なコミュニケーションだけに頼っていては、簡単にチームや職場が崩壊するでしょう。

アクティブリスニング実践で期待できる効果

アクティブリスニングには、1対1でのコミュニケーションの質が向上する他にも、期待できる効果があるのでしょうか。ここでは、アクティブリスニングを実践することで得られる副次効果・波及効果について解説します。

社内コミュニケーションと職場コミュニケーションの活性化

アクティブリスニングを用いた積極的傾聴では、話し手を肯定し受け入れている姿勢で話を聴きます。肯定し受け入れられている場合、話し手側は真剣に話を聴いてもらえていると感じるため、自己開示したい気持ちが促進されます。アクティブリスニングが常態化し、自己開示が当たり前になることによって、話しやすい場の雰囲気を醸成させることができ、社内コミュニケーションの活性化につながります。

ところが近年では、テレワークなど出社しない形の業務形態が浸透しており、企業・組織では遠方で働く社員同士の「コミュニケーション」「連携」に関する課題が持ち上がっています。遠方で社員が仕事をする場合、ビデオチャットツールなどを介した対面とは勝手の違うコミュニケーションが発生するため、社員同士のつながりが薄くなっているからです。

また、部門間でのコミュニケーション不足はサイロ化につながるリスクもあるため、早急な対策を講じることが多くの企業で課題となっています。部門間でのコミュニケーション不足は各部門の意図・目的の共有が難しくなり、事業や業務全体の流れが見えにくくなるため、経営に大きな影響を及ぼすからです。

たとえば、ある企業において、営業部門では価格を抑えた商品を主力にする動きがある一方、生産部門では既存の商品の改良や品質の高い商品を開発したい意向がある、といったケースです。対面でコミュニケーションを取っている場合はこのような目的のズレは起こりにくいですが、テレワークなどの対面しない業務形態の場合、コミュニケーション不足によって意思疎通が図れず、社員・部門間での目的の不一致は増える一方です。

もちろん、アクティブリスニングは遠方同士でのコミュニケーションにも活用できますが、対面と同じように話し手の言葉の外にある情報をキャッチすることはできません。なぜなら、ビデオチャットツール・チャット・メールなどのやり取りは、対面よりも言葉の外にある情報が少ないからです。それでも、テンプレートのようなやり取りよりは意義があるので、積極的に活用すると遠方同士のコミュニケーションの質を向上させられるでしょう。

ツールやデジタル技術が進んでも、実際には伝達の方法が変わっただけで、言語や非言語のサインは何も変わっていません。これらの進歩は空間的にも時間的にも効率が向上していますが、アクティブリスニングという姿勢やスキルには何ら影響を与えておらず、個々人のアクティブリスニングやコミュニケーションスキルが向上しないかぎり、コミュニケーションの量が増えても、むしろ質が低下している可能性があります。

テレワークを含めた社内コミュニケーションについては、詳しくはこちらの記事で解説していますので、合わせてご覧ください。

課題解決能力の向上

アクティブリスニングには、話し手側の課題解決能力を向上させる効果もあります。聞き手側は話を聴いている時にアドバイスや原因究明などは行わず、話し手自身が課題解決の方法を見つけ出せるよう促すことを目的に傾聴します。

たとえば上司が部下の話を聴いている時、経験からすぐに答えを教えてしまうと、部下は自力で解決する機会が奪われ成長することができません。アクティブリスニングによって聞き手が適切な内容・タイミングで質問を投げかけることにより、部下が内省し改善や修正を実践する機会ができ、上司・先輩に助けられた形ではなく、自分自身で課題を解決した感覚を得ることができます。

上司・先輩社員による誘導的なコミュニケーション(間接的なサポート)があったとは言え、自分自身の力で課題を乗り越えた経験は自信にもつながり、別の業務にも挑戦的な姿勢で挑めるようになるでしょう。このように、社員の課題解決能力を向上させ成長するための手法としても、アクティブリスニングは活用することができます。

ハラスメントの抑止

アクティブリスニングは、話し手の発言から本当の意図を聴き取るコミュニケーションです。そのため、会話においては本音に近い意思疎通ができ、互いの感情や主義主張をある程度は共有できるため、良好な人間関係を構築しやすくなります。結果、アクティブリスニングによって作られた社内の風通しの良い雰囲気がハラスメントの抑止になり、人間関係におけるトラブルへの対処がしやすい状態になります。

企業とは年齢・性別・価値観の違う人が集まる場であり、そこにはさまざまな軋轢・すれ違いなどが起きるのが当たり前です。ジェネレーションギャップや性差などは顕著で、上司による部下への指導もやり方によってはパワハラになりますし、性別の違う者同士のコミュニケーションにおいてもセクハラになる可能性があります。

社員の属性を区分し態度や言葉を統制することは、問題の早期解決のようにみえますが、本質的ではありません。コミュニケーションの本質自体をしっかりと学び実施することが重要です。言葉や言語に反応するのではなく、意図や背景を聴くという前提のコミュニケーションにすれば、ハラスメントは格段に減るでしょう。

私たちは、見えるものに反応し、感情が支配される生きものです。ハラスメントは誰でも起こり得る事です。しかし、一呼吸を置き、自分と話し手の感情や気持ちに集中し、アクティブリスニングをすることで、より良い関係性と活力ある職場に変えるきっかけになり得ます。

重要なのは、発言した内容を必ずしも意図した通りに話し手が受け取らないかもしれないことを、コミュニケーションの前提にしておくことです。誤解や勘違いが起こることを想定し、社内で共有した上で、ハラスメント等のトラブルが起きた際、早急に申告し対処できるような体制を作っておくことも大切です。その体制作りの土台として、アクティブリスニングによって風通しの良い雰囲気を社内に醸成しておくことが必要になるでしょう。

管理職がアクティブリスニングしないとビジネスは成功できない

ビジネスにおいて、管理職がアクティブリスニングによって社員とコミュニケーションを取り、マネジメントする習慣がないと、企業は経営・事業で成功することは難しくなります。

とくに企業は基本的にピラミッド構造になっており、トップダウン形式で意思疎通を図ることが一般的です。ビジネスでマネジメントを担当する者、つまり管理職は社員の上下関係の仲介役であり、コミュニケーション上の課題・問題が集中することになります。

この時に管理職はアクティブリスニングを実践し、各ポジションの社員の本音を引き出しながら手を取り合えるよう促し、関係性を良好な状態に持っていくことが役割となります。

管理職が機能しないことは社員のパフォーマンスを低下させることであり、企業の経営にも影響を及ぼします。つまり、管理職のアクティブリスニングの実施はビジネスにおいて必須事項だと言えるでしょう。人的資本経営と標榜される現代であればなおさら、メンバーの感情やコンディションを、アクティブリスニングを活用しながら聴くことが重要な仕事になりつつあります。

ビジネスシーンにおけるアクティブリスニングのポイント

ビジネスシーンでアクティブリスニングを実施する際、まずは問題を明確にしましょう。ビジネス上のコミュニケーションの背景には、必ず「進めるべき業務」と「解決すべき課題」が潜んでおり、話し手側は聞き手側に対し、行動・意識の変化を促す目的があります。そのため、アクティブリスニングを行う際には、話し手の発言をありのまま受け入れ、目的を察することで解決すべき問題を明確にすることが重要です。

また「話し手側の気持ち」と「話し手側の精神状態」に注意を払い、発言そのものだけでなく、その内面についても意識しておきましょう。とくに日本人は、自身の内面や感情について話さない傾向にあるため、気持ち・精神状態に注目することで深いコミュニケーションが取れるようになります。

さらに、話し手の声のトーン・表情・仕草・スピード感などに注目し、相槌・視線・手の動きなどのボディーランゲージやジェスチャーを使って適宜反応しましょう。話し手に対し、話を聴いていることが伝わるように反応することがポイントです。

アクティブリスニングから対話へ

ここまでアクティブリスニングについて解説しましたが、アクティブリスニングはあくまでも話し手の話を聴くための手法であることを忘れてはいけません。アクティブリスニングから対話につなげ、お互いの主義主張・感情などの内面を理解し、許容し合うことが重要です。

具体的には、お互いが交互に話し手・聞き手(アクティブリスニングの実践者)となることで、互いの内面について引き出し合うことが対話の実践です。アクティブリスニングによっ

て、話し手・聞き手の双方が発言についての認識を一致させ、互いの立場や内面について想像力を働かせることにより、より深い関係性を構築することができます。

また、当たり前のようにアクティブリスニングを行うことによって、話し手側自身も気づかなかった無意識の感情・行動が浮き彫りになることもあります。たとえば、ある業務に対して社員同士で共有していたネガティブな感情について、一方の社員は不安を起因としており、もう一方は怒りを起因としているなど、アクティブリスニングで内面を深掘りするほど根本的な違いが露わになってきます。ビジネスにおいては、この無意識の発露が新たなアイデアや業務改善などの種となるため、アクティブリスニングによる対話が重要視されるのです。

アクティブリスニングの手法

アクティブリスニングを行う際には、積極的に使って欲しい手法があります。「ロジャースの三原則」をベースに行っても良いのですが、よりアクティブリスニングの効果の精度を高めるには、具体的な手法を用いることがオススメです。

ここではアクティブリスニングでとくに有効な6つの手法について解説します。

明確化と言語化

話し手の発言の中に潜んでいる本当の感情や事実を見つけ出し、適切な表現に言い換えて聴き返す手法です。聞き手が言語化することでサポートし、話し手自身が気づいていない気持ちや考えを発見できるように促します。

悩みや問題について話している場合、話し手は本心や感情的な反発などに気づいていない場合も多く、その影響によって問題・課題解決に思考が向いていないことがあります。たとえば、業務内容への不満を口にしている社員が、実は一緒に働く上司・同僚と意見が衝突することのストレスが原因で、業務内容を批判していたりするケースです。

このような場合も多々あるため、アクティブリスニングの原則でもある発言の意図への注目を怠らず、話し手が本当は何を感じ、言いたいのかを明確化していきましょう。その上で、話し手自身に気づいてもらうように適切な返答を行っていきます。

アクティブリスニングをするには、会話に完全に集中する必要があります。五感をフル活用して話を聞き、話し手に全神経を注ぎます。この積極的な傾聴テクニックを効果的に使うには、携帯電話など気が散るものを遠ざけ、空想を避け、内なる対話を停止します。話し手に焦点を合わせ、他のことを一時的に忘れることが大切です。

また、話し手の言葉や非言語的な反応に着目し、話し手の気持ちを言葉で表現することは、非常に大きな影響を与えます。事例や比喩、あるいは聞き手の過去の似たような経験なども有効です。

非言語コミュニケーション

コミュニケーションにおいて、人々の言葉以外の表現は全体の約65%を占めていると言われています。この非言語的なサインに気を配ることで、話し手の感情や伝えようとしていることを深く理解することができるのです。たとえば、話す速度は多くを語ります。早口で話す場合、緊張や不安を表している可能性が高く、ゆっくり話す場合は疲れや慎重さを表している可能性があります。

アクティブリスニングでは、このような非言語的な行動も非常に重要です。話し手への真の関心を示すために、オープンで威圧感のないボディーランゲージが効果的になります。具体的には、腕を組まず、話を聞きながら微笑むこと、前のめりに姿勢を取ること、重要なポイントで頷くことなどが含まれます。さらに、話を積極的に聞いている際には、表情を通じて否定的な反応を与えないように気をつけることも大切です。これらの要素に意識を向けることで、より効果的なコミュニケーションを実現できます。

また、アクティブリスニングにおいて、アイコンタクトや相槌によるコミュニケーションも重要な側面です。話を注意深く聞いていることや話し手に集中していることを示す手段となります。また、周囲の気を散らすものに気を取られていないことを伝える役割もあります。

テクニカルな手法として、50/70 ルールがあります。アイコンタクトを保つ時間を聞いている時間の約50%から70%に設定し、4~5秒ごとに自然に目をそらしたりします。また、話し手の目に見て聴くよりも、少し目線を落として、顎のあたりに視線をずらすと話しやすい場合もあります。

オープン・クエスチョン

オープン・クエスチョンとは、はい・いいえなど、単純な返事で返せないような質問を投げかけることです。「トラブルが起きた時あなたはどんな対処をしましたか?」や「課題の根本的な改善部分はどこですか?」など、説明を含めないと返答できないような質問です。

オープン・クエスチョンが有効な理由は、説明が必要な質問を投げかけることで、今思っていること・考えていることを吐き出してもらえるからです。また、自分の言葉で説明することにより抱えている不満・不安が軽減し、内側にある思いを打ち明けることで心を開きやすくなるメリットもあります。

アクティブリスニングにおいて、より踏み込んでコミュニケーションを取るためには、オープン・クエスチョンによる問いかけが有効になります。

パロット

パロットとは、日本語に訳すと「オウム返し」の意味になります。たとえば、「取引先の人と喫茶店で打ち合わせしたんですよ」「そうなんですか、喫茶店で」といった流れで、話し手の発言をそのまま返答する手法です。

一見すると話し手が不愉快になりそうな返答ですが、その効果はまったく逆で、話し手側は自分の話が伝わっていることに安心感を得ることができます。また、「今の話は〇〇という認識で合っていますか?」とオウム返しすることにより、話す側が自身の発言を客観的に振り返る瞬間ができ、自分自身と向き合うことにもつながります。

つまり、話し手に安心感を与えながら、自己理解・内省を促す効果があるのが、オウム返しです。アクティブリスニングでも重要な手法であるため、覚えておく必要があるでしょう。

パラフレーズ

アクティブリスニングにおけるパラフレーズは、話し手の発言の意図を整理してまとめ、要約したり別の言葉に言い換える手法のことです。

聞き手は話し手の話を聞いた後、話の内容を自分の言葉で言い換えて話し手に確認することで、話し手側に話を聞いてもらえている感覚を持ってもらえます。結果、話し手の聞き手への信頼感も向上し、関係性が良好になるといった効果も期待できるでしょう。

簡単に言えば、話し手の感情や気持ちを、言語化し、事象と一緒に伝えることです。上記のパロットのような事実を言い直すに加えて、聴き手が話し手の感情を想像し、感情や気持ちを聴き手が言語化して、事象に沿えて伝えることです。

ミラーリング

ミラーリングとは心理学の概念で、自分と同じような仕草・行動する人を好意的に見てしまう心理効果のことを指します。アクティブリスニングでも用いられている手法で、聞き手が鏡のように同じ仕草などを行うことで、話し手に親密感や安心感を持ってもらいます。

代表的なミラーリング対象は、姿勢・表情・仕草・声のトーンなどが挙げられます。気をつけなければならないのは、大げさになったり、わざとらしくやらないことです。話し手と波長を合わせるイメージで、自然に話し手の動作を真似すると良いでしょう。

アイ・アクセシング・キュー

アイ・アクセシング・キューとは、話し手の視線の動きから大まかな思考を予測する技術です。実践心理学の手法の1つにも数えられており、視線解析とも呼ばれています。アクティブリスニングでも用いることができ、話し手の思考を予測しながら話を聴くことで、より適切な反応や返事をすることができます。

具体的には、左上・左真横に目が動けば記憶・想起しており、右上・右真横に目が動くと想像・構成に脳を使っていると考えられています。左下は内的対話をしているとされ、右下は身体の感覚・触覚に脳を使っている状態です。

右利き・左利きで逆になる場合もありますが、アイ・アクセシング・キューは20歳前後には確立され、以後は変化しないことも特徴です。つまり、どの世代に対しても使用できるのがアイ・アクセシング・キューの強みであり、多様な人が集まったビジネスでのコミュニケーションにも活用できます。

アクティブリスニングでは判断と解釈を極力抑えることが重要

私たちは話し手を理解する際、まず自分自身を通して考えます。英語を学ぶように、知っていることから知らないことを学ぶプロセスを逃れることはできません。話し手を本質的に理解することは不可能であり、話し手の発言や印象は私たちの想像の域を出ません。

さらに、中立的で非批判的な態度を保つことは困難ですが、話し手を理解する上で重要です。この態度は、話し手が自由に考えを共有できる安心感を生み出します。こうしたアプローチにより、会話は安全な空間となり、話し手は恥ずかしさや非難を恐れることなく話すことができます。

しかし、このような態度を身につけるのは簡単ではありません。共感を示したり、異なる文化について学ぶことで、より受容的なコミュニケーションを促進できます。また、自分が話し手をどのようなフィルタを通して見ているかを自覚することも重要です。

まとめ

本記事では、アクティブリスニングについて詳しくお伝えしました。アクティブリスニングは、聞き手が話し手の感情を引き出し、話し手側が自身の問題解決ができるようサポートする傾聴のことです。

アクティブリスニングには複数の効果が期待でき、社員の成長・マネジメントの向上・社内コミュニケーションの活性化・ハラスメントの抑止など、さまざまな領域にポジティブな影響を及ぼします。そのため、多くの企業で実践されており、これからのビジネスシーンで必要視されるコミュニケーションスキルと言えるでしょう。

アクティブリスニングの実践は、最初は違和感があるかもしれませんが、共感・肯定など、人間的な感覚を用いたコミュニケーションスキルであるため、比較的すぐに慣れることができます。社内コミュニケーションの活性化や業務の質向上を社内で目指す場合は、アクティブリスニングを実践してみてはいかがでしょうか。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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